札幌公明

議会報告Assembry report

2025/02/20 令和7年第1回定例議会

令和7年第1回定例議会2025/02/20

代表質問福田こうたろう議員(手稲区)

札幌市議会本会議において公明党議員会を代表して 福田こうたろう 議員が代表質問を行いました。
以下、質問とそれに対する答弁の要旨を紹介します。

目次Contents

1市長の政治姿勢について

質問

(1)物価高騰対応に係る予算措置について

我が国の物価上昇は、前年同月比で2%を超える高い水準で推移しています。最近は米や野菜などの食料品の価格高騰が続いており、普段の買い物でも実感するところです。

それに伴い、昨年12月の毎月勤労統計速報では、現金給与の総額が前年同月比で4.8%上昇するなど、36か月連続のプラスとなっており、実質賃金は前年比0.6%の増となっていますが、物価上昇と比べて収入が増えていない世帯はまだ多く、引き続き市民を支援する必要があると考えます。

これまで我が会派は、物価高騰への対応について、令和4年から要望を行ってきましたが、それに対して、札幌市も国の補正予算を活用しながら、対応を行ってきたところであります。

こうした中、政府も昨年の11月に国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策を閣議決定し、12月17日には一般会計総額13兆9,000億円に及ぶ補正予算が成立しました。

この補正予算は、我が党が先の衆議院議員選挙において公約として掲げた、低所得世帯への給付やエネルギー価格への支援、地域の実情に応じたきめ細かい支援を行うための「重点支援地方交付金」の追加措置などがしっかりと盛り込まれた内容となっています。

我が会派では、昨年11月29日に秋元市長に対し物価高対応などを求める緊急要望を行ったところ、昨年の第4回定例会で住民税非課税世帯への給付金事業が予算計上され、給付に向けて準備が進められているところであります。

給付金事業以外の取組については検討中と聞いているところですが、本定例会において、物価高対応を含んだ補正予算案が提出されています。

そこで質問ですが、物価高対応に係る補正予算について、市長の考えを伺います。

(2)地域の実情に合わせた持続可能な公共交通の確保について

昨今の深刻なバス運転手不足に起因した相次ぐ減便や廃止によって、市民生活に大きな影響が生じており、私も地域から不便を訴える声をお聞きしているところです。

こうした中、運行を路線バス事業者以外が担う形で交通インフラを維持しようとする取組が地域に広がっております。

例えば、私の地元である手稲区では、循環バス「富丘高台線」の廃止をきっかけとして、令和4年度から札幌市によるデマンド交通の実証運行が始まっています。

運行開始当初から、地域の協力を得ながら周知に努め、坂道が多い高台にお住まいの高齢者を中心に、買物や通院のための地域の足として愛用されており、いよいよ、この4月からは本格運行へ移行します。

また、厚別区においては、地域住民が中心となって移動手段を確保しようとする動きが生まれています。それは、今年度末をもって、JRや地下鉄の駅を結ぶ「厚別ふれあい循環線」が廃止されることを受け、沿線の地域住民が立ち上がり、貸切バス事業者や札幌市と新たな循環バスの運行開始へ向けた検討を重ね、準備を進めています。

さらには、こうした札幌市や地域が主体となった取組のほか、交通分野以外の事業者が主体となって移動手段を確保する取組も生まれてきております。

地下鉄やJRの駅がない清田区では、医療機関へのアクセス向上を目指し、複数の医療機関が連携して、清田区内の病院や区役所などに設置した停留所を結ぶデマンド交通の実証運行を実施し、現在は、利用者ニーズの確認など、その効果検証に取り組んでいます。

我が会派は、これらの各地域において切実な訴えを聞いてきており、その取組の実現へ向けての後押しを行ってきました。そのなかで特に実感していることは、地域によって公共交通の実情は様々でありますが、交通は市民生活やまちづくりの根幹でありインフラであることから、移動手段を可能な限り確保していくことが重要であります。

そこで質問ですが、バスネットワークの再編が進む中で、地域ごとの実情に応じた移動手段の確保に関する札幌市の考え方について伺います。

(3)市民の声を取り入れた新たな雪対策について

本市において、市民意見をしっかりと市政に反映するために現在検討が進められている「市民参加の仕組みづくり」については、昨年、約半年間かけて、成人式を題材に、どのように多様な市民と行政が課題の解決に向けて一緒に考えていけば良いのかという観点の下、プロセスの検証を行ってきました。

成人式の議論では、市民アンケートの結果や関係者からのヒアリングなどを基に論点を設定したうえで、無作為抽出した市民によって札幌市の人口構成の縮図を構成し、正確な情報提供に基づいてじっくりと議論する、いわゆるミニ・パブリックスと呼ばれる手法を用いた市民会議を実施しました。

会議では、多様な参加者同士で真剣な話し合いが行われ、事業の方向性を決めるに当たって貴重な意見を収集できたと聞いています。また、普段は市政に意見を言う機会のない方々が多数参加され、会議後には、当初の考え方が大きく変わった、あるいは、今後市政に意見を言ってみたいという声も多く上がったそうです。

この度の検証では、段階的に市民の声をまとめ上げながら、政策の方向性を決定していくという丁寧なプロセスを経ることによって、サイレントマジョリティを含めた市民の多様な考えを表面化し、反映していくことの効果や、その意義もあらためて明らかになったのではないかと感じております。

さて、本市はこれから除排雪に関する議論を進めていこうとしておりますが、この「雪」は、まさに札幌に住む市民一人ひとりにとって最も身近なものであり、だからこそ成人式の例のように多様な市民を交え、小さな声も丁寧に聴きながら、しっかり議論していかなければならない、このことを我が会派は一貫して主張してきたところです。

本定例会には、除排雪の議論を進めるに当たり審議会を設置する条例案が出されております。専門的な見地からのご意見も踏まえて検討を深めていくという観点から、審議会の必要性は承知しております。

しかし、審議会において市民意見をしっかり取り入れた多面的な議論がなされるためには、先に実施したミニ・パブリックスのように、これまでとは異なる新しい手法で進める必要があるものと考えます。

併せて、人口減少局面に転じたことを皮切りに、本市はこれまで経験したことのない新たなステージに突入したと考えられ、その中でも市民の大きな関心事である除排雪は、担い手不足や労務費・燃料費の高騰の情勢にあり、今、大きな転換期にあるといえます。

解決策になり得る1番のポイントは、やはり先端技術の有効活用であり、これまで取り組んできたような公的除排雪作業の効率化・省力化という観点からだけではなく、これまでの発想を飛躍させて、札幌の冬の暮らしを快適にする観点から新たな技術の導入についても真剣に検討していただきたいと考えています。

そこで質問ですが、新たな雪対策を検討するに当たっては、新たな手法により市民意見を把握することが重要と考えていますが、今後どのように取り組んでいくつもりか、市長の考えを伺います。また、冬の暮らしを快適にする観点からの新たな技術の導入についての考えはいかがか伺います。

(4)今後の暑さ対策について

札幌における令和6年の夏の平均気温は、平年と比べると2度以上(2.1度)高く、記録が残る1877年の統計開始以降、記録的な猛暑として記憶に新しい令和5年の夏に次ぐ、史上2番目の暑さとなりました。

さらに、この暑さにより、熱中症による搬送件数についても、令和5年度は562人、令和6年度は367人と、2年連続で、10年前と比べ2倍を超える水準が続いております。

長期的にも、夏の平均気温は、この100年の間で約1.8度上昇しており、冷涼と言われてきた札幌の夏の姿も様変わりしつつある中、市民の健康を守る観点からも、暑さ対策は喫緊の課題となっています。

わが会派では、令和5年8月に行った、公共施設等に対するエアコン設置の加速化を求める緊急要望を皮切りに、その後の議会においても継続的に、暑さ対策の充実について取り上げてきたところであり、昨年の第3回定例会での我が会派の代表質問において、「公共施設等への今後のエアコン設置の考え方」及び「公共的活用をされている民間施設へのエアコン設置の促進」について、市の考えを伺いました。

これに対し秋元市長からは、公共施設については「施設の性質や利用形態等を考慮し、健康への配慮を要する市民が利用する施設などから着手する」との前向きな答弁があった一方で、公共的活用をされている民間施設への対応については、「財政状況を勘案しながら助成の在り方について検討を進める」と、いささか慎重な答弁に留まっていたところであります。

介護施設を例に挙げると、札幌市老人福祉施設協議会が令和5年9月に行った調査によれば、調査への回答があった特別養護老人ホームのうちおよそ7割で、入居者の居室にエアコンが設置できていない状況とのことであります。

また、町内会館など地域の身近な民間コミュニティ施設は市内に約270か所ありますが、このうちエアコンが一部でも整備されている施設は、市が把握する限りでは約5割程度に留まっているとのことです。

コロナ禍において大きく抑制されていた地域コミュニティ活動は、ようやく持ち直してきたところであります。

そのような中、地域コミュニティ活動の中核となる施設が、地域のために尽力する方々の健康を脅かしかねない状態にあることは、あってはならないことであります。

市民の健康を守るためには、市有施設だけでなく、社会福祉施設やコミュニティ施設を始め、一定の公共的な役割を担う民間施設についても、市有施設と同様に整備が進んでいくよう、何らかの支援策を講じることは行政の責任ではないでしょうか。

そこで質問ですが、民間施設を含む、公共的な役割を担う施設へのエアコン整備について、現在の対応状況と、今後の進め方について伺います。

(5)人口減少時代における札幌経済の発展について

①市内企業の成長と札幌経済の発展

札幌市の人口は、令和2年の約197万人をピークとして令和42年には38万人減の約159万人となることが予測されています。これに伴い、特に経済活動を主に支える生産年齢人口も同期間において40万人の減少が見込まれています。

また、こうした労働力の減少に加えて、令和5年の民間企業の調査によると、北海道内における社長の平均年齢は61.4歳となっており、平成2年から33年連続で上昇している等、経営者の高齢化も進む中、札幌経済を支える企業の生産性維持や市民生活へのサービス提供の継続にどのように取り組んでいくのか真剣に考えなければなりません。

早くから、全国的に後継者問題や担い手の高齢化などが深刻化していた農業分野では、農業機械の共同利用や家族単位での営農から生産法人化や流通大手との提携などにより、効率化や大量生産を進め、コスト削減や品質の安定、ブランド化などに成功した事例もあります。

このような農業における成功事例は、札幌の産業構造の中心となっている第3次産業においても、例えば、企業間の合併や第三者による事業承継、事業の共同化など、企業の競争力を強化するために、大いに参考になると思います。

札幌市内の企業の99.5%が中小企業となっており、札幌経済は中小企業によって支えられていることを考えると、中小企業の競争力向上を図らずして、札幌経済の発展はあり得ません。

一方で、人材不足やエネルギーコストを始めとした諸経費の高騰が続く中、これらの諸課題に対応するには、小さな組織、少ない働き手でも最大の効果を発揮するような企業経営のコンパクト化など、従来のビジネスモデルから脱皮し、時代に対応した経営戦略を進めることが重要であります。札幌市が今後の人口減少局面においても経済成長に向けて殻を破り続けていくためには、限られた経営資源を最大限有効に活用していくことが必要不可欠であるものと考えております。

そこで質問ですが、人材や資金などの経営資源が限られる中、どのように市内企業の成長を促し、札幌経済を発展させていくのか札幌市の考えを伺います。

②札幌経済をけん引する企業の創出・育成

限りある経営資源を効率的に活用していくには、同業種、異業種に関わらず、様々な企業間による連携の促進が必要です。札幌市では、オープンイノベーションの推進によるスタートアップの育成や、「大札新」と銘打った積極的な企業誘致に力を入れています。

もちろん、このような新たな企業が札幌経済へ大きな活力を与えることは論を待ちません。

しかし一方で、札幌市内には、既に地域の強みを生かしながら様々な分野で活躍する地場企業も多く存在しています。このような札幌の地場企業が、日本を代表するような企業へと成長することは、札幌経済の柱となって多くの関連企業への波及効果をもたらすことが見込まれるほか、他の企業にとってもロールモデルとなり得ます。

人口減少を始めとして社会経済情勢が大きく変動する環境において、札幌経済が発展するためには一社でも多くの企業が札幌経済を支える存在となっていくことが重要であると考えます。

そこで質問ですが、今後の札幌経済をけん引する企業の創出、育成についてどのように取り組んでいくのか伺います。

(6)2040年に向けた「創造的福祉社会」構築への取組について

今後、日本は少子高齢化と人口減少により、2040年過ぎに高齢者人口はピークに達し、生産年齢人口が大幅に激減すると試算されています。

そうした中、地域におけるつながりが衰退し続け、孤独・孤立の問題を深刻化させ、国民の幸福度を押し下げています。国連の「世界幸福度報告(2024年版)」によると、人々の繋がりの豊かさを示す、社会関係資本の指標とされる「社会的支援」と「寛容さ」において、日本はそれぞれ46位、125位と低迷しており、その改善が課題となっています。

2040年に向けて少子化の流れを抑制しつつ、互いの支え合いを基盤にした新しい社会の構築へどのように踏み出すか、これからは正念場の15年となります。

昨年9月、我が党は、今後を見据えた社会保障のあり方を模索し、「公明党2040ビジョン中間とりまとめ」を発表しました。

この重要な時期において、大衆福祉の原点を再確認するとともに、これまでの「全世代型社会保障」を基盤として、新たな「創造的福祉社会」の構築に挑戦するとしました。「創造的福祉社会」とは、人口減少時代の諸課題に対処する制度改革だけでなく、「人々の繋がりと支えあいを幾重にも創り上げ、全ての人々の尊厳を守るとともに、それぞれの自己実現に最適な環境を提供できる社会」を指します。

こうした社会を目指す中で、これまでの「弱者を助ける社会」から「弱者を生まない社会」への転換をうながし、助けを必要とする人々の尊厳を守りつつ、「社会的分断」を防いでいく事が重要と考えるところです。

また、2040年へ向け介護サービスの需要は強まる一方ですが、深刻な人手不足で経営危機に直面し、閉鎖を余儀なくされる事業所も出てきていると聞いています。地域包括ケアの一翼を担う、訪問介護の報酬の減額や人手不足が一因とされます。

ゆえに、事業としての持続可能性を高める事が出来るよう、ICT、介護ロボット、AIの活用などで、生産性の向上に資する取組を強力に推し進めるとともに、介護度の改善などを評価しインセンティブを与えるなど、「成長できる介護」がいまこそ求められます。

そのために「成長できる介護」の実現に向け、介護職員が張り合いをもって努めることが出来るよう、本市として成果に応じた評価を上乗せする取組の推進が不可欠と提言します。

正念場の15年において、住み慣れた地域で安心して暮らし続ける事ができるよう、より一層、介護サービスの質と量の向上が求められるところです。

そこで質問ですが、2040年に向けた「創造的福祉社会」の構築について、市長の考えを伺います。また、併せて、「創造的福祉社会」の構築において、重要な役割を担う介護サービスの質と量の向上についてどの様に進めて行くのか伺います。

答弁

(1)物価高騰対応に係る予算措置について

〇今回の補正予算においては、食材費が高騰する中、学校給食の保護者負担を据え置くための公費負担に加え、令和6年度に実施した定額減税に係る調整給付の支給額が不足する方などへの給付金の支給のほか、市民への幅広い支援として、家事用の水道基本料金2か月分を減額することとした。

〇さらに、事業者への支援としては、食料品等の物価高騰の影響を受けている保育所等の事業継続の支援や、公共交通の確保のためのバスやタクシー事業者への支援を実施。

〇その他、ご指摘の昨年の第4回定例会で予算計上した住民税非課税世帯への給付金は、2月中に給付を開始することを予定しており、総額約273億円の物価高騰対策を確実に実施し、必要な支援を市民や事業者に対し速やかに届けてまいる。

(2)地域の実情に合わせた持続可能な公共交通の確保について

〇バス路線の減便や廃止などが進み、一部の地域で市民生活に影響が出ている中、運転手不足によるバス路線の再編は当面続くことが想定されるため、各地域の実情にあわせて、今後の地域交通をどのように確保していくかは重要な視点であると認識。

〇このため、昨年策定した「札幌市地域公共交通計画」では、路線廃止に伴い公共交通が空白となる地域には地域のご意見を聞きながら札幌市が主体となって代替の交通手段を提供することに加えて、地域の実情をよく知る地域住民が主体となって移動手段を確保する動きに対しても札幌市が支援することを位置付け、取り組んでいるところ。

〇札幌市としては、これらの取組を地域に寄り添いながら進めるため、担当課を新設して体制強化も図ることとしており、今後も「地域・事業者・行政」の三者が一体となって取組を進め、持続可能な公共交通の確保を目指してまいりたい。

(3)市民の声を取り入れた新たな雪対策について

〇除排雪など市民生活に影響の大きい行政サービスの在り方の検討に当たっては、政策形成過程の初期段階から市民の皆さまとともに考え、議論し、行政への信頼感や納得感をいただきながら形作っていくことが重要。

〇そのためには、まず現状や課題などについて積極的に情報提供するとともに、議論や検討が必要な理由を明らかにした上で市民の意向や考え方を把握し、それを踏まえて検討を進めていくことが重要。

〇その手法として、成人式の際に実施したSNSを活用したアンケートやミニ・パブリックスは新たな手法として有効なものと考えており、審議会の議論と併せ、市民全体の意向等をできる限り表面化することに取り組んでまいりたい。

〇また、快適な冬の暮らしを支えるため、生活道路の除雪やつるつる路面の情報などをSNSで配信してきたところであるが、更なる快適性向上を目指し、先端技術の活用についても審議会のほか、企業・大学とも連携しながら推進してまいる。

(4)今後の暑さ対策について

〇気候変動に起因する暑さへの対応は、市民の健康を守るための喫緊の課題と認識しており、健康への配慮を要する市民が利用する施設などを優先し、整備を進める考え。

〇市有施設については、令和6年度の既往予算や令和7年度予算において所要の措置を講じ、対象とする施設の約9割で整備が進む見込み。

〇社会福祉施設や市民集会施設など一定の公共性を有する民間施設についても、令和6年度補正予算や令和7年度予算に、対象となる施設のうち、未整備であると見込まれる施設の整備を進めるための予算を計上したところであり、新たに作成するリーフレットの配布等を通じて、積極的な制度の活用を促進してまいる。

〇こうした取組により、民間施設を含む公共性を有する施設へのエアコン整備を推進し、市民の健康を守るための暑さ対策に取り組んでまいりたい。

(5)人口減少時代における札幌経済の発展について

〇1点目の市内企業の成長と札幌経済の発展について

経営資源が限られる中、企業が持続的に成長していくためには、製品やサービスの付加価値向上やデジタル化による生産性向上等が重要であり、これらに取り組む企業への支援を進めているところ。

〇さらに、社会経済情勢が大きく変化する中で、札幌経済が成長を続けていくためには、企業が持つ事業価値を高め、次世代に引き継いでいくことが必要であり、新分野への展開や、事業・組織再編のほか、事業承継なども重要な取組であると認識。

〇ついては、経済団体や金融機関を始めとした関係機関とも連携し、これらの経営革新等に取り組む企業をそれぞれの経営状況に応じて多角的に支援することで、札幌経済の発展に努めてまいりたい。

〇2点目の札幌経済をけん引する企業の創出・育成について

札幌市が持つ地域の強みや時代の潮流を捉え、経済成長の原動力となる企業を継続的に生み出していくことが、雇用の拡大と地域経済の好循環につながるものと認識。

〇そのため、大きな成長が見込まれる市内中小企業を選定し、専門家による集中的な支援を実施するなど、札幌経済をけん引する企業の育成に向けた取組を進めているところ。

〇こうした企業の創出・育成はもとより、新たな経済発展の鍵となるGX産業や次世代半導体関連産業の集積や成長に積極的に取り組むことで、足腰の強い札幌経済を構築してまいる。

(6)2040年に向けた「創造的福祉社会」構築への取組について

〇1点目の創造的福祉社会の構築について

少子高齢化や人口減少が進む中、近隣関係の希薄化や単独世帯の増加など、社会から孤立し、複合的な課題や制度の狭間等の課題を抱えた世帯の増加、顕在化などは大きな課題。

〇孤立を防ぎ、暮らしにくさや困りごとを抱える方が地域で安心して生活するためには、人々がつながり、支え合い、互いにその個性や能力を認め合う社会を目指すことは非常に重要と認識。

〇本市においては、多様化した地域課題を受け止め、医療、介護、福祉などを包括的に提供する取組を進めることで、互いに支え合い、つながり合って、安心して暮らし続けられるまちを目指してまいる。

〇2点目の介護サービスの質と量の向上について

2040年に向けて、介護サービスの需要が増加する中、介護人材は人手不足となることが見込まれる。このため、介護職の社会的評価を高めるなど、介護サービスを持続可能にするための取組が重要と認識。

〇札幌市では、介護人材確保・定着に向けて、若年層への啓発やICTを活用した介護現場の生産性向上支援など、様々な取組を進めているところ。

〇今後とも、国や道と連携し、介護サービスの質と量の向上について、引き続き推進してまいる。

2水素社会実現に向けた取組について

質問

昨年12月に、日経フォーラム「グローバルGX・金融会議札幌」が開催されました。私も参加しましたが、行政、金融、投資、エネルギーなどの、国内外の専門家による、日本のGX・金融の将来像についての議論が、様々な事例紹介とともに、丸二日間に渡って、熱心に交わされていました。

札幌、北海道の再生エネルギーのポテンシャルの高さは、異口同音に語られていましたが、洋上風力の先行事例として世界をリードしているデンマークが、投資を呼び込んだ時と比べ、資材高騰等により投資回収が難しくなっていることや、巨大な施設を設置する地域と共生した再生可能エネルギー事業が重要との指摘が、強く印象に残りました。

これから、魅力的な投資案件を示し、広く資金を呼び込もうとしている札幌市にとって、先に述べた環境の変化に着実に対応し、成功のストーリを創り出していくには、札幌市、北海道の地域特性を踏まえた技術を磨き、それを活用したまちづくりを進めていくことが極めて重要です。

我が会派では、水素エネルギーの普及に向けた札幌市の取組に、大変注目してきたところであり、先の第4回定例会において、水素社会の実現に向けた機運醸成について質問をするなど、これまでも質疑を重ねてきました。

現在整備中の大通東5丁目水素ステーションは、今春のオープン予定と聞いています。昨年の12月には、我が党の国会議員と、我が会派の市議会議員全員が現場視察を行い、困難を乗り越え着実に準備を進めている様子を、肌で実感しました。

また、今月行われた雪まつりでは、大通会場3丁目のGX脱炭素エリアを視察しましたが、札幌の企業が開発した水素ストーブや、水素の炎のフォトスポット、燃料電池自動車からの給電のみで無料休憩所内の電力を賄っている様子が展示されており、市民や観光客にとって、水素エネルギーの活用が、体感できる取組でした。

このように、水素社会の実現に向けたこれまでの取組には、一定の評価をしているところですが、一方で、本格的な水素社会の実現に向けては、モビリティを始めとする、水素需要の拡大が求められます。水素ステーションは整備されたものの、一般の市民や事業者にとっては、FCVの導入はまだハードルが高いものと感じられます。

日常における水素利用の本格普及は、これからといったところであり、市民が水素エネルギーに触れられる機会は、まだまだ少ないのが現状です。

今後は、より一層、市民や事業者に、実際に水素をエネルギーとして使ってもらう取組や、水素を身近に感じてもらえるような取組を推進することが重要と考えます。

そこで質問ですが、水素社会の実現に向け、新年度ではどのようなことに取り組むつもりなのか、市長の考えをお伺いします。

答弁

〇水素社会の実現に向けては、水素の様々な利活用の方法を多くの方々に知っていただき、需要の拡大につなげていくことが重要と認識。

〇今年度、策定を予定している「札幌市水素エネルギー基本方針」においては、運輸分野と建物分野を中心に、まちづくりを通じて水素エネルギーの利用拡大を図ることとしており、新年度はこの方針を踏まえた取組を進めてまいる。

〇具体的には、積雪寒冷地における商用車の運用実証などを行い、活用事例を積み重ねながら、幅広い分野で水素車両を導入するための環境整備を行っていく。

〇また、建物への純水素型燃料電池の導入支援策を拡充し、商業施設など多くの人が集まる場所への設置を促すことで、これまで以上に市民や事業者が水素を身近に感じられるまちづくりを進めてまいる。

3北海道の半導体関連産業集積における札幌市の役割と今後の取組について

質問

最先端半導体の国産化を目指すラピダス社の千歳進出が表明されてから早くも2年が経ち、試作ラインの稼働開始予定とされている4月まで、あと約1か月半となりました。

昨年12月には、最先端半導体の製造に欠かせない、オランダのASMLエーエスエムエル社製の「EUV露光装置」が北海道に到着し、国内で初めてラピダスの千歳工場に搬入が開始されるなど、順調にプロジェクトが進められていることがうかがえます。

ラピダス社が千歳への進出を表明して以降、千歳市はもとより、近接する恵庭市や苫小牧市においても、半導体製造装置メーカーや物流企業などの進出あるいは進出表明が相次いでおり、北海道における半導体関連産業の集積に対する期待が、一層高まっていると感じています。

こうした動きの中、札幌市においても、積極的に半導体関連企業の誘致に取り組むとともに、200万都市としての札幌市の役割を改めて確認し、札幌の都市機能を活かした取組を進める必要があると考えます。

札幌市には大学や研究機関が集積し、材料科学やAIなど半導体関連分野の研究も進められているほか、北海道大学とラピダス社では、高度人材の育成と先端半導体研究について協力を進めるということであり、ラピダス社が2ナノ半導体の評価・分析を行う拠点を、2024年中を目途に大学のキャンパス内に設置することも発表されています。

また、ラピダス社によると、パイロットライン稼働時に働く人数は、技術者だけで最大400人を見込んでおり、IBMとの技術協力のためアメリカに派遣している150人の技術者も順次、北海道に転入されているとのことであり、一定数の方が居住地を札幌市内に構えるといった話も聞こえています。

ラピダス社は、最先端の半導体製造とこれを実現するために必要な海外企業との連携を目指すということですから、今後、国内外から世界中で活躍する高度技術者が道央圏に集まることも予想できます。

次世代半導体生産拠点とそれを支えるサプライチェーンについては、ラピダス社が千歳の美々ワールドに立地したことを踏まえれば、短期的には道央圏南部への集積が中心となることが予想されますが、札幌市としても、その都市機能を活かし、自ら北海道における半導体産業の中核的な役割を果たす気概をもってほしいと思います。

そこで質問ですが、ラピダスの本格稼働を見据えて、北海道の半導体産業集積における札幌市の役割と今後の取組について伺います。

答弁

〇197万人の人口を擁し、高等教育機関が集積する札幌市は、これまでも北海道における人材育成拠点としての役割を担ってきたところ。

〇道内への半導体関連産業の集積に向けては、とりわけ高度人材の育成が不可欠であり、札幌市の役割は一層大きくなるものと認識。

〇そのため、次年度以降は国の交付金を活用しながら、北海道大学等と連携し、半導体関連の人材育成体制の強化や教育研究拠点の整備、研究開発支援等に取り組む。

〇また、高度人材を国内外から受け入れる観点からは、外国語での生活情報の提供や教育環境の充実も重要であることから、関係団体とも連携しながら、庁内一丸となり受入環境の整備に取り組んでまいる。

4市内企業が外国人留学生を採用するための取組について

質問

生産年齢人口の減少や人手不足の課題が深刻化し、多様な人材の確保が求められる中、外国人が労働力として着目されるようになり、日本国内においては2024年10月末時点の外国人労働者及び外国人を雇用する事業者が過去最多となりました。

一方で、北海道及び札幌圏において、2024年10月末時点の外国人労働者及び外国人を雇用する事業者の増加率は国を上回るものの、札幌圏の外国人を雇用している事業者は、約2,700社と、大阪圏(域)の約16,900社、名古屋圏(域)の約11,300社、福岡圏(域)の約7,100社と比較すると圧倒的に少ない状況となっております。

外国人労働者が職場に加わることで、多様な文化や価値観が交わり、新たなアイデアや視点がもたらされることに期待ができる一方で、コミュニケーションスタイルの違いや、働き方や時間感覚に対する認識の差、文化の違いによる摩擦が生じる可能性があります。

実際に市内企業においては、外国人採用の課題や雇用しない理由として「外国人の日本語能力」や「労働慣習や文化の違い」が上位に挙げられており、特に言葉による業務指示や意思疎通の面での不安が高くなっていると聞いております。

外国人の中でも留学生は、一定期間日本で生活をしており、英語等の外国語の能力はもちろん、日本語でのコミュニケーションが可能であることに加え、日本での日常生活や文化にも馴染みがあり、外国人採用への不安は和らぐものと考えます。

特に日本に強い関心を持ち、留学にまで踏み切る外国人は、日本の“ファン”とも言え、社会の大事な一員として職場での活躍はもとより、海外への住環境などの魅力発信においても好影響をもたらすことが期待できることからも、企業が採用するメリットは大きく、外国人留学生の採用をより一層促進していくべきと考えます。

そこで質問ですが、市内企業が外国人留学生の採用をする意義をどのように捉えているのか、また、市内企業が外国人留学生を採用していくために、札幌市がどのような取組を進めていくのか伺います。 

答弁

〇今後は大卒学生も減少することが想定される中、企業側は外国人留学生もターゲットに入れて、採用力を高めることが求められる。

〇また、留学生を採用することで、多文化の共生や多言語対応が可能になるなど、企業の活性化につながる効果を期待できることから、市内企業が留学生を採用する意義は大きいと認識。

〇現在、国内の留学生約28万人のうち半数程度が首都圏に在籍しているが、卒業後に日本での就職を希望する留学生のうち約2割は希望が叶っていない状況であることから、首都圏から札幌に留学生を呼び込める可能性は十分にあると考えている。

〇そこで、札幌市としては、UIターンの一環として、市内企業と留学生とのマッチングを支援するために、首都圏において留学生のみを対象とした合同企業説明会を開催するなど、外国人採用という選択肢が市内企業にとって一般的になるよう取り組んでまいりたい。

5地域活性化に資するローカルイノベーションの振興について

質問

(1)創業を増やす取組について

ローカルイノベーションとは、地域特性に応じた創業や起業を促進し、地域における社会と技術のシステムそのものが変動する現象のことであり、地域社会の資源を活用して、新しい事業や商品、サービスを生み出すことで、住民の横のつながりを再生するなど、社会課題の解決に資する効果もあります。その振興に関して2点伺います。

1点目は、創業を増やす取組についてです。

昨今、小規模ながらも魅力的な商品やサービスを提供し、地域の価値向上や活性化につなげる「スモールビジネス」、日本語でいうところの「小商い」が注目を集めています。

昨年、NHKなどの報道情報番組において、番組ディレクターに「スモールビジネスの…、震源地を突き止めた」とまで言わしめた、東京都小金井市にある「コウカシタヒガコインキュベーション」をご存じでしょうか。

JR東小金井駅近くの、高架下約150mに渡り、たたみ4畳から6畳ほどの小さな面積ですが、バラエティーに富んだ小さな店舗が立ち並ぶ、一角があります。

この施設には、創業を目指す方が、共同で使えるシェアキッチンがあり、そこで起業ノウハウや顧客を得た後に、同じ施設内にある、広さは狭いものの低廉な金額で借りられる店舗に移り、お店を開くことができる、という円滑な事業展開を支える仕組みがあります。

低廉な費用で、かつ同一施設内で、事業の立ち上げから店舗開店まで、一連の流れで事業展開可能なことから、これまで資金面などの問題から、起業したいができない、といった、起業潜在層を取り込み、実際の起業につなげるという効果的な支援ができており、そのことが地域の活性化にも結び付いています。

この施設の一番のポイントは、「低廉な価格で希望者に施設を提供できる」という点であり、いかにして土地の賃借料と建設費を抑え、かつ、魅力的な貸店舗を作れるかが重要なポイントなっています。どの地域でも簡単に取り組めるものではありませんが、潜在層の最初の一歩を踏み出すための、後押しとなっているのは、紛れもない事実です。

経営効率化の流れの中で、以前にはあった商店主のような存在がどんどんいなくなり、商いにおける顔の見える関係は失われつつあります。一方で東小金井駅周辺にはバラエティーに富んだ「小商い」が多くの人々を引き付けています。

この「コウカシタヒガコインキュベーション」のように起業潜在層に刺さるような取組を積極的に進めていくことが、経済成長を含め、札幌のまちの成長において重要になってくると考えています。

そこで質問ですが、創業環境の整備など、創業を増やすための施策について、札幌市としての現状認識と今後の取組の方向性についてお伺いいたします。

(2)今後のスタートアップ支援について

今後のスモールビジネスの成長に、期待するところですが、複雑多様化した地域課題の解決や、地域経済の活性化などにおいては、社会に変革をもたらすようなビジネスモデルを実現し、短期間で急速な成長を遂げる、いわゆるスタートアップがキープレイヤ―になると考えています。

昨年9月のNoMaps2024で、FTI(株式会社ファストトラックイニシアティブ)の深津幸紀(こうき)氏は「“ベンチャーキャピタル、いわゆるVC、が先か、起業家が先か”の議論があるが、答えは“VCが先”である。スタートアップエコシステムにおいて、VCは非常に重要な存在」と言われていました。

また、昨年11月、我が会派は、スタートアップ先進地域と呼ばれる福岡市を訪問し、九州地域のエコシステム構築に大きく貢献している、FTGベンチャービジネスパートナーズの副社長である山口泰久氏にお会いするとともに、官民共働型スタートアップ支援施設「FukuokaGrowthNext」、いわゆる「FGN」を視察しました。

山口氏は、日本政策投資銀行の、社内ベンチャーで、キャピタリストとして10年間で約50社に投資し、うち約20社が上場という優れた(輝かしい)投資成績を残されました。

その経験を買われ、福岡銀行からVC立ち上げの要請を受け、以来7年間で、100社に投資され、そのうち企業価値が、投資時から100倍の、500億円超となった九州大学からのベンチャー企業、QPS研究所をはじめ、5社が上場と、7年を経て結果が見え始めたところです。

また山口氏は、①若者への教育が不可欠として、九州大学ビジネススクールと提携し、大学の研究シーズを題材にしたビジネスプランを学生に作らせるという授業を行っていました。更に、②大学の基礎研究を事業化するための資金供給を行う、いわゆるGAPファンドの確保・充実にも奮闘されていました。加えて、③スタートアップ企業の一番の課題は、社長となる人材がいないことであり、特に大学発ベンチャーではそれが顕著であることから、「経営者プール」を作るため、経営者候補の募集を行い、適任者を維持しておられました。

一方FGN(FukuokaGrowthNext)については、今年度、支援の要となる「スタートアップカフェ」の大幅リニューアルを行い、ほぼ年中無休(360日程度)で、夜9時まで対応可能な相談機能の強化とともに、①人材マッチング機能、②多彩なメンター陣によるマンツーマンの支援、③バックオフィスサポートなどの事業を新たに開始していました。

加えて福岡市は、ふるさと納税を活用した、ソーシャルスタートアップ支援を新たに始めています。選ばれた10社が、プレゼンによる寄付集めを行い、返礼分は市が負担、寄せられた寄付は市を介して、全額スタートアップに渡すというもので、今年度は合計3000万円を集めたとのことです。

秋元市長は、NoMaps2024で官民共創のまちづくりに関するセッションに福岡の関係者等と共に登壇し、「先行している福岡の事例も参考にしながら北海道を盛り上げていきたい」と熱く話されており、今後の更なる展開に期待したいと思います。

そこで質問ですが、福岡市の事例がそのままの形で札幌市に取り入れることは難しいと承知してはおりますが、本市の地域特性を踏まえ、「社交場ヤング」はもとより「EZOHUB」や「エア・ウォーターの森」など、民間資源を活用したスタートアップ支援を、今後どのように進めていくのか、お伺いします。

答弁

(1)創業を増やす取組について

〇創業を促進し地域の開業率を引き上げることにより、雇用を生み出すことは、経済の活性化につながることから、成長段階に応じた切れ目のない支援を行うことが必要と認識。

〇札幌市においては、平成26年に「札幌市創業支援等事業計画」を策定し、相談窓口を運営しているほか、創業促進のための補助制度や起業家マインドを学ぶプログラムを展開するなどソフト面の支援を実施。

〇このほか、創業間もない事業者も入居対象として、札幌市産業振興センター内にオフィススペース「SapporoBusinessVILLAGE(サッポロビジネスビレッジ)」を設置するなど、ハード面での支援も実施。

〇このような支援を継続するとともに、様々な機会をとらえ、利用者の声を聞きながら、関係団体とも連携し、支援内容を充実させることで、誰もが創業しやすい環境づくりに努めてまいる。

(2)今後のスタートアップ支援について

〇支援にあたっては、民間企業を含め多様な人が集い、交流し、新たなビジネスアイデア創出につながる、スタートアップコミュニティの形成を促すような機能が重要であると認識。

〇令和6年6月、市役所本庁舎に開設した社交場ヤングは、都心の利便性も活かしながら、相談会や投資家とのマッチング機会の提供などによるコミュニティ形成を進めており、今後、更なる取組の強化を図っていく考え。

〇また、市内各地に様々な特色を持つ民間支援施設が複数存在することから、スタートアップに対する相談対応や交流イベントの開催などを通じて、各施設の強みを活かした、より効果的な連携体制の構築に努めてまいる。

6民間活力を生かした製品プラスチックの資源循環について

質問

プラスチックは軽量で、自由自在に形成でき、透明なもの、着色されているものがありますが、その分添加物も混合されます。また、硬度の高いポリカーボネート、金属やガラス繊維などが混合された複合材料など、機械的強度が多種多様であり、私たちの生活に幅広く浸透した必要不可欠な素材であるといえます。しかしながら、その多様性がリサイクルを大変難しくしている一面もあります。

こうした中、世界では、国際的なプラスチック規制の枠組みである「国際プラスチック条約」を作ることが目指されましたが、EUと産油国の溝が埋まらず、目標であった「2024年内の合意」は実現しませんでした。

我が国は、アメリカに次いで世界第2位のプラスチックごみ大国となっており、脱炭素社会の構築、海洋プラスチックの問題等が顕在化している今日、プラスチックごみの汚染防止、プラスチックのリサイクルは持続可能な資源循環の社会へ移行する上で喫緊の課題と考えます。

我が国では廃プラスチックの約87%がリサイクルされておりますが、そのうち62%がサーマルリサイクルのため、CO2が排出され、資源循環の観点からマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルへの抜本的な方向転換が必要です。

先日、我が会派が視察したNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)では、廃プラスチックを熱分解しガス化、油化し、プラスチック原料にリサイクルする技術、また製造コスト低減の研究開発が行われています。

また、民間企業では、グリーンケミストリーやサーキュラーエコノミーを推進しており、プラスチックリサイクルにおいては熊本、富山で先進的な取組がなされております。

このような様々なリサイクル技術を組み合わせ、化学工学的に柔軟性のあるリサイクル工程により、コスト低減や環境負荷低減ができるよう抜本的な対策をするべきと考えます。

そのような中、本市においては、令和4年に施行された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」に基づいて、リサイクル手法を検討する際、これまでの容器包装リサイクル法に基づくリサイクルルート、いわゆる32条ルート(容リルート)だけではなく、再商品化事業者と連携し国の認定を受け実施する手法、こちらは33条ルートとも言いますが、これ(大臣認定ルート)も検討しております。

そして、33条ルートに関しては、昨年12月より、民間事業者から幅広く提案を聴取する「プラスチックのリサイクル手法に関するサウンディング型市場調査」が実施されております。

新たに33条ルートを活用されることにより様々なリサイクル技術を持つ事業者が参入できる間口が広がり、我が会派が常々訴えている地域産業の活性化と育成がなされることを期待いたします。

容器包装プラスチックに加え製品プラスチックの回収が今後開始されるにあたっては、市民には出しやすい回収を、再商品化事業者においては効率性と、環境負荷の低減、ニーズに沿ったリサイクルに努めながら、安定した処理をできるかが肝要と考えます。

そこで質問ですが、民間活力を生かした効果的な資源循環の実現に向けたスケジュールを早急に示すべきと考えますがいかがかお伺いします。また、再商品化事業者と連携する際に重視するポイントはどういった点なのか、併せてお伺いします。

答弁

〇製品プラスチックのリサイクルに向けては、令和5年度から一部地域においてモデル事業を行い、回収体制などの検討を行ってきたところ。

〇再商品化手法の検討についても、様々なリサイクル技術がある中で、札幌市として最適な手法を見極めるため、先行都市の調査や民間事業者との対話を進めており、それらを踏まえ、スケジュールを含めた方向性を可能な限り早期に示したい。

〇また、民間事業者との連携においては、リサイクルの手法に加え、コストや環境負荷など、多角的な評価が重要と認識しており、持続可能な資源循環につながるリサイクルを目指してまいりたい。

7こども誰でも通園制度の今後の取組について

質問

我が会派はこれまで、子育て家庭の孤立防止と全ての子どもの成育に資するため、保護者の就労の有無に関わらず未就園児のいる家庭が保育施設等の利用ができる「こども誰でも通園制度」の創設が必要である、と繰り返し提言してまいりました。

国においては、昨年6月に法改正を行い、生後6か月から2歳までの未就園児を対象に、この制度を2026年度から全国で実施することとしており、それまでの間、試行的に実施することで運用上の課題などを検証し制度設計していくとしています。

札幌市においては、昨年8月から試行的事業を開始しているところです。

この間の定例会や決算特別委員会などにおいて、我が会派からは、試行的事業を早期に実施し課題検証を進めること、利用者目線に立った子育てDXの推進などにより利便性を高めること、事業者の声を十分に聞きながら安心して利用できる制度を構築することを求めてきたところです。

昨年11月には、この通園制度の実態を把握するため、試行的事業を実施している保育施設の視察を行いました。そこでは、普段の保育に加えて、自分たちの施設が地域の親子のために貢献できている実感があるといった声があった一方、保育士の確保など運営面での課題があるといった声もいただいたところです。

札幌市としてこうした声にしっかりと向き合い、必要に応じて国に対しても意見をしながら、利用者と実施施設双方にとってよりよい制度となるよう検討を進める必要があると思います。

そこで質問ですが、こども誰でも通園制度について、今後どのように取り組まれていくのか伺います。

答弁

〇今年度の試行の結果、保護者からは子どもの成長が実感できるなど好意的反応が示される一方、事業者からは同様の評価とともに、都度入れ替わる子どもの受入への対応に苦労があるとの声もあったところ。

〇そこで来年度は、国の動きを受け、事業者に対する補助単価の引上げやオンライン予約の導入を進めるとともに、施設のさらなる確保に向けて、試行状況を丁寧に情報提供するなど、事業者の理解と協力を求めていく考え。

〇そのうえで、試行事業の検証を行い、国に対して補助制度の維持・拡充を求めるなど、令和8年度からの本格実施に向けた体制を整え、子育て家庭の孤立防止や子どもたちの健やかな成長につなげてまいる。

8札幌市における社会的養護の推進について

質問

(1)社会的養護の方々の自立に向けた支援について

現在、我が国では約42,000名の子どもたちが、様々な事情により家庭での養育が困難なため、児童養護施設や里親などいわゆる社会的養護のもとで生活しており、札幌市においても800名ほどの子どもたちがこうした養育環境のもとで生活しています。

社会的養護の子どもたちは、原則18歳になると施設や里親のもとから巣立って行くこととなりますが、実際には、就職や進学をした後も困りごとや不安を抱えることはあり、とりわけ自身の家庭による支援が得られにくい社会的養護経験者の方々は、悩みを一人で抱え込んでしまう例も少なくありません。

国が令和2年度に実施した児童養護施設や里親等への措置が解除された方々に対する実態調査によると、社会的養護経験者の方々は、巣立ちの後も「生活費や学費のこと」、「将来のこと」、「仕事や人間関係のこと」など、様々な悩みや心配ごとを抱えているという結果があげられています。

加えて、「施設や里親の皆さんに自立する際に温かく送り出してもらったにも関わらず、仕事や学校を辞めてしまったとはいえない。」「施設ではもう別の子どもが生活しているので、今になって再び施設に迷惑をかけるわけにはいかない。」といった声も聞こえています。

これらの背景を受け、国は令和4年の児童福祉法改正において、社会的養護経験者等の孤立を防ぎ、必要な支援に適切につなぐため、当事者間の相互交流の場や情報の提供、関係機関との連絡調整等を行う「社会的養護自立支援拠点事業」を創設するなど、社会的養護の方々の自立を支援する制度拡充を図ったところです。

札幌市においても毎年50名ほどの児童が就職や進学等により施設等を退所していると伺っておりますが、退所が近づいてきた際や、退所した後も一人で悩みを抱えないようにしっかり支えられる体制強化が大変重要であると考えます。

そこで質問ですが、社会的養護の方々の自立に向けて、今後どのような支援に取り組んでいくのか伺います。

(2)里親制度の推進について

親元で暮らすことができない子どもにとって、里親委託や養子縁組が優先されるべきであることは、平成元年に国連で採択された「子どもの権利条約」にも明記されており、家庭養育の重要性は以前から世界的に認識されていました。

その一方、我が国の里親制度に対する取組は欧米主要国と比べて進みが遅く、施設養護を中心とする状況が長く続いてきました。

こうした背景を踏まえ、平成28年の児童福祉法改正により「家庭養育優先の原則」が示されたことで、我が国の社会的養護は大きな転機を迎え、乳児院や児童養護施設においては、できる限り家庭的環境の確保に取り組むべく、施設の小規模化や分散化が求められるとともに、全国的に里親養育を推進する取組が広がってまいりました。

札幌市においても、包括的な里親支援を行うフォスタリング機関を設置して様々な支援を行った結果、里親に委託される子どもの割合は令和2年度から令和5年度までの間で約30%から40%近くまで上昇しており、令和3年度の全国平均23.5%と比べても高い割合にあります。

我が会派としても、これまで議会において里親制度の重要性について訴えており、札幌市の取組については一定の評価をしておりますが、里親を必要とする子どもは未だ多いものと考えられます。

そのような中、令和4年の児童福祉法改正により、従来のフォスタリング機関を、「里親支援センター」として新たに児童福祉施設に位置付けることが可能となるなど、都道府県、政令指定都市及び児童相談所設置市においては、里親制度の更なる推進が求められているところです。

そこで質問ですが、札幌市として、今後の里親制度の推進にどのように取り組む考えか伺います。

答弁

(1)社会的養護の方々の自立に向けた支援について

〇社会的養護のもとにある子どもたちや、社会的養護経験者の方々が、一度自立した後に何らかの壁にぶつかっても孤立をせず、寄り添い支えられる環境は大変重要であると認識。

〇札幌市では法改正を受け、令和6年度から施設等で生活する子どもに対し、円滑な自立に結びつくよう退所に係る一律の年齢要件を弾力化し、一人一人の状況に合わせて支援を実施しているところ。

〇これに加え令和7年度からは、退所者が困難を抱えた際の新たな拠り所として、包括的な相談支援を行う社会的養護自立支援拠点を1カ所開設し、再び社会に踏み出せるよう支援の強化を図ってまいる。

(2)里親制度の推進について

〇特定の大人との愛着を形成し、生活習慣を獲得することができる家庭生活は、子どもが心身ともに健やかに成長するための重要な基盤であり、将来自らが家庭を築く際のモデルにもなり得ると認識。

〇そのため、社会的養護のもとで生活する子どもも家庭と同様の環境で養育されるよう、里親の開拓や育成、子どもを預かった後の里親からの相談対応などに取り組んできたところ。

〇令和7年度には、法に基づく里親支援センターを1か所設置し、長期的な視点で里親との信頼関係を構築しながら専門性を積み重ね、里親のもとで暮らす子どもが安心して育まれる社会を目指してまいる。

9にぎわいと需要の創出による「ていねプール」の再整備について

質問

ていねプールは老朽化が進み、存廃の判断が必要となっています。

昨年の第3回定例会では、自由民主党の和田議員の質問に対し「市民意見や他都市の事例など踏まえ、検討する」との答弁がありました。

札幌市は今年度を含め2か年にわたり、プール利用者と、全市民を対象に、アンケート調査を実施しました。

寄せられた声としては、①子どもが安心して遊べる場所は必要、②通年利用できる施設にして欲しい、③魅力的な施設があればさらに幅広い世代が利用するのでは等の意見があり、利用者のみならず、市全体でも、高いニーズがあると判断できる意見が多く寄せられました。

また、昨年度、我が会派では、多世代が1年中活用できるプールエリアへの再整備を、民間活力の導入で行っている4つの自治体を調査しましたが、共通して言えることは、通年でのにぎわいを創出するべく、再整備の計画を立てていることです。屋外プールだけであれば夏の2か月程度の利用であり、残りの期間は閑散となります。そこで民間の収益施設を併設するなどして、にぎわいを作り出そうとしていました。

また、行政の役割として、屋外プールの再整備に加え、①公園エリアの充実を図ることとした静岡市(大浜公園プール)、②絵本の世界観をモチーフにした広場の設置により、県内随一の100万人以上の集客施設とした越前市のほか、③通年での賑わい創出と、併設される民間投資による施設が資本回収しやすいよう、屋外から屋内プールに再整備した事例がありました。

プール施設存続の検討過程では、大きな反対の意見は出なかった一方で、どのように1年を通したにぎわいを創出するか、官民連携での再整備に手を挙げる民間業者はいるのか、というのが共通の課題でありました。

また、興味深い事例として越前市では、学校プールの老朽化対策として、市内17校全てのプール授業を、再整備した屋内プールで受け入れるという工夫がなされていました。

札幌市においても老朽化によりプールの大規模修繕などが必要な学校について、原則市民プールや民間プールなどの他施設を利用する形へ移行するとの方針が示されているところです。

ていねプールの昨シーズンの利用者数は、夏休みが1週間伸びたこともあり、老朽化した施設であっても104,288名と13年ぶりに10万人を超えました。施設が新しく綺麗であり、人気アトラクションの設置があれば、利用者を一層引き付けることが可能と思われます。

水面積やプールエリアをコンパクト化し、再整備費と水道光熱費の低減を図ることや、波のプールを再整備せず、代わりにバケツアトラクションや幼児用プールの整備、地元ゆかりの絵本作家に協力いただき、学べる遊具広場を開設するといった様々な工夫は、行政が主体となれば可能と考えます。

そこで質問ですが、ていねプールは、札幌市が必要な施設と判断した上で、にぎわいと需要の創出に資する再整備を行うべきと考えますがいかがかお伺いします。

答弁

〇ていねプールは、昭和57年7月の開設以降、子どもや子育て世代を中心に利用され、昨シーズンは来場者が10万人を超えるなど、多くの市民に愛されている貴重な施設だと認識。

〇一方で、開設から43年近くが経過し、施設全体の老朽化が進む中、再整備には多額の事業費がかかると想定されること、稼働期間が夏季に限定されることが大きな課題と捉えている。

〇今後は、従来の公設公営手法に捉われず、民間資金の活用や、民間のノウハウを活かした新たな賑わいの創出など、様々な方策を検討し、どのような対応や手法が適切か見極めてまいりたい。

10学校教育を通じたウェルビーイングの向上について

質問

「ウェルビーイング」には、直訳すると「幸福」や「健康」という意味が含まれていますが、短期的な幸福のみならず、身体的・精神的・社会的に良い状態にあることをいい、生きがいや人生の意義などの将来にわたる持続的な幸福を含むものであり、教育においても世界的に注目されている考え方です。

教育の本来の目的は学力習得のもっとその先にある長い人生をいかに幸福で充実したものにするかであり、子どもたち自身の必要な心理的、認知的、社会的、身体的な潜在能力、すなわち「生きる力」を養うことにほかなりません。そのことからも教育は子どもたちの幸福のためにあると考えます。

令和5年6月に閣議決定された、国の第4期教育振興基本計画においても、「持続可能な社会の創り手の育成」とともに「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」がコンセプトに掲げられており、国全体で、教育の視点からもウェルビーイングの理念の実現を目指しています。

国や地域によって、それぞれの文化的価値につながるウェルビーイングがあることから、国の計画の中では、日本の特徴・良さを生かし、「調和と協調」に基づくウェルビーイングを、教育を通じて向上させていくことが示されております。

我が国においては、人とのつながりや社会貢献意識などの協調的な要素は比較的高い傾向がみられるものの、自己肯定感や自己実現などには課題があるといわれております。

具体的には、「子どもが学ぶ意義を十分に見いだせず、主体的に学びに向かうことができていない」「コロナ禍を経て、実体験の格差が生じたりしている」などの指摘もあります。

こういった課題を踏まえ、先般、我が会派は、佐賀県の中学校の「学び合い授業」を視察してきました。教師が大勢の子どもを相手に指導を行う一斉指導ではなく、教師が子どもたちの幸せを願い、一人も見捨てないという願いから、「すべての子どもたちの可能性を引き出す能力開発、個別最適な学びと協働的学びの実現」を目指しているという各教科の授業を実際に参観して参りました。

学び合いの授業では、友達同士でお互いに声をかけあう姿や、事前に予習をして積極的に教える様子、わからないことを友達に闊達に聞く姿がどの教室でも見られました。

互いに学び合いながら、教える子どもは理解が深まり、またいろいろな考え方に出会いながら学習を進めていく中で、友達や仲間の力をうまく借りながら、多様な人と折り合いをつけるなど、これから生きていく上で必要な力を身につけることを大事にしていると肌身で感じたところです。そして主体的、協働的な学びがウェルビーイングの向上につながると実感し、そうした学びの重要性をあらためて認識いたしました。

そこで質問ですが、札幌市として、学校教育を通じてウェルビーイングの向上についてどのように取り組んでいくのか、教育長のお考えを伺います。

答弁

〇ウェルビーイングの向上を図るためには、子どもの自己肯定感や協働性を高め、自らの人生を豊かにし、社会に貢献しようとする意識を醸成することが重要と認識。

〇札幌市では、改定した教育振興基本計画においても、「自立した札幌人」を目指す人間像に掲げ、人間尊重の教育を全ての学校教育の基盤に据え、子どもが自分や他者のよさや可能性を認め合いながら、持続可能な社会の創り手となる教育を推進してきた。

〇各学校においては、子どもが自ら課題をもち、仲間と協働して解決していく課題探究的な学習とともに、よりよい集団や学校づくりに向けて考え、実践する活動等を通じて、社会生活において活用できる経験を積み重ねることを大切にしているところ。

〇今後は、家庭や地域と一体となって子どもの育ちを支えるコミュニティ・スクールの仕組みも活用しながら、子どもが多様な人と関わり合う場の一層の充実を図り、幸せや生きがいを感じられる社会の形成に主体的に参画する力を育んでまいる。