札幌公明

議会報告Assembry report

2021/02/25 令和3年第1回定例議会

令和3年第1回定例議会2021/02/25

代表質問わたなべ泰行議員(南区)

札幌市議会本会議において公明党議員会を代表して わたなべ泰行 議員が代表質問を行いました。
以下、質問とそれに対する答弁の要旨を紹介します。

目次Contents

1市長の政治姿勢について

質問

(1)コロナ禍における今後の対策について

①市長から市民への発信力

新型コロナウイルス感染症については、これまでの感染事例や感染傾向などから、ウイルスの特性が徐々に判明してきており、「マスクの着用」「手指消毒の徹底」「身体的距離の確保」などの感染防止対策をしっかり講ずることで、感染リスクは大きく低減できることがわかっています。

しかし、これまで3度の感染拡大の「波」が到来し、そのたびに、外出自粛や休業要請等の強い措置を行わざるを得ない事態になるなど、社会経済活動と感染防止の両立実現には、残念ながら至っておりません。

こういった状況下にあって、不安を抱える市民の方が多くいる一方、対策が講じられてから1年が経過し、いわゆる「コロナ慣れ」のため、感染予防の意識が低下している方も一定程度、存在します。特に、り患しても軽症で終わることが多い若者の認識は、総じて、高齢者や基礎疾患を有する方とのそれとは大きな隔たりがあると言われています。

感染防止のため、また流行の波を極力小さく、低く抑えるためには、行政と市民とが一丸となって対策に取り組む必要がありますが、そのためにも、市民に対する感染予防対策の徹底に関する情報発信は極めて重要であります。

札幌市としても、その時々の感染状況に応じて、市民や事業者の方に、さまざまな媒体を使い、例えば広報さっぽろやホームページ、ツイッターやライン等のSNS、さらに地下鉄車内や駅ホーム、チカホの柱巻きでの広告展開など、広く市民の目に届くよう、さまざまな努力をして情報発信や行動変容などのお願いを行っていることは理解しております。

また、若者に伝わるよう、動画や漫画を活用した広報についても承知しており、そういった新たな手法については大変評価しております。

しかし、行政から発信される情報は「安定感」や「正確性」を重んじるあまり、内容が固く、インパクトにも乏しく、結局は、市民の皆さんの心に響かないものが多いと感じています。

より直接的に市民に情報を届けるためには、やはり「市長自らによる情報発信」が重要ではないでしょうか。市長自身が、特にこの新型コロナの問題について、市民に対する強い情報発信を行うことによって、市民にとって安心感を与え、将来に希望を持てるようになると考えます。

そこで質問ですが、今後の市長自らが行う情報発信について、どのように考えているのか、お伺いします。

②ワクチン接種における医療従事者の確保

昨年2月に新型コロナウイルスの感染者が初めて確認されてから、1年が過ぎたところです。その克服の決定打になるワクチンの開発に、これまで各国が競って取り組み、昨年12月からその接種が世界各地で開始されております。我が党としてもワクチンの開発からその確保に至るまで、全力で取組を進め、〇〇回分の接種に必要なワクチンの確保に尽力してまいりました。そして、いよいよこのワクチンの接種が医療従事者に対し2月17日から開始されたところです。

今後、段階的に高齢者や基礎疾患がある方、一般の方など接種が順次進められていきますが、我が会派としても、昨年の4定代表質問を始め、新型コロナウイルスの調査特別委員会などあらゆる機会を捉えて、安全安心でスムーズなワクチン接種の体制整備を訴えてきたところです。

そうした中、ワクチン接種の実施に当たる自治体として、確定的な情報が少なく、準備に大変ご苦労されていると伺っています。

新型コロナウイルス感染症への対応が続く中、医療の現場からは医療従事者が足りないとの声も聞こえているところであり、接種を直接的に担う医療従事者の確保は大きな課題と認識しているところ。

本市としてスムーズなワクチン接種のため、医療従事者の確保に向けて、どのような取組を検討されているか、伺います。

③高齢者への接種

今行われている医療従事者への接種は国が主体となり行っておりますが、札幌市が実施主体となりいよいよ高齢者への接種が開始されます。

高齢者への接種の成功がこの後に続く全市民へのスムーズな接種に繋がるものと考えます。この未曽有の大事業の成功を最後まで無事故で行うために、重症化リスクが高く、様々な状況にある高齢者がスムーズにワクチン接種を受けられる事が重要です。

配慮が必要な方、特に高齢者への接種に対しては、きめ細やかな体制整備が必要と思います。高齢者の中には指定された場所に行くことも難しい方や、そもそも介護度の高い自宅療養者はワクチン接種のためにどこかへ出向くこと自体が難しい方も一定数いると思います。そうした方がスムーズにワクチン接種を受けられることが重要であると考えます。

そこで質問ですが、本市として高齢者に対してのワクチン接種では医療機関、高齢者施設、自宅等、様々な方に対応すべきと考えますが、配慮している点にはどのようなことがあるのか、その対応策をお伺いいたします。

(2)令和3年度予算におけるアクションプラン事業の見直しについて

アクションプラン2019は、任期中の市長公約の実現に向けた具体的な取組を計画事業として盛り込んでおり、本市の行財政運営や予算編成の指針となるものであります。

それぞれの事業は、政策目標の達成に向けて動き始めましたが、新型コロナウイルスの感染拡大による影響から、令和2年度については、事業の中止や延期を余儀なくされているものも少なくありません。

また、感染症の長期化により経済情勢が悪化し、それに伴い個人所得の減少や、企業業績の悪化による市税収入の減少、雇用や社会保障費への波及が危惧されるなど、非常に先行きが不透明な状況の中で、感染拡大防止と社会経済活動の両立を推進していかなければなりません。

令和3年度の予算編成は、3つの考え方に基づいて編成されています。そのうちの1つに「アクションプラン2019に掲げる『まちづくりの取組』及び『行財政運営の取組』を、現下の社会情勢を踏まえながら、柔軟かつ着実に推進する」とあります。

まさしく、新型コロナウイルス感染症の影響により、アクションプラン2019は策定時から前提条件が大幅に変わっているものもあり、また、策定時にはなかった新たな行政需要など、喫緊の課題にも積極的に資源を配分していかなければならず、見直しを含めて柔軟にプランを進めていくことが必要であり、計画の目指す方向性や目標を可能な限り、市民に示していくことも大切ではないかと考えます。

そこで質問ですが、令和3年度予算において、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、アクションプランの計画事業をどのように見直したのかを伺います。

(3)第2次まちづくり戦略ビジョンについて

このたびの影響は、アクションプラン事業の見直しという短期的な対応だけではなく、ウィズコロナ・アフターコロナを含めて、今後の社会経済情勢の変化を捉えながら、中長期的にその方向性を検討していくことが必要であります。

2013年に策定された現行のまちづくり戦略ビジョンは、右肩上がりの社会構造を前提とした価値観を改め、人口減少社会の到来やグローバル化の進展など社会経済情勢の大きな変化に対応していくため、「北海道の未来を創造し、世界が憧れるまち」、そして「互いに手を携え、心豊かにつながる共生のまち」を目指すべき都市像に掲げ、まちづくりを進めてきました。

わが会派も持続可能な社会を目指すSDGsの重要性を繰り返し指摘してきた結果、SDGs未来都市やフェアトレードタウンに選定されるとともに、国際的な環境性能評価システムである「LEED(リード)」で、日本の都市で初となる最高ランクのプラチナ認証を取得し、国内外からの評価が高まりつつあります。また、障がいの有無にかかわらず、すべての市民が等しく情報を取得し、互いに意思を伝え合い、あらゆる活動に参加できるよう「障がい者コミュニケーション条例」を制定するなど一定の成果がありました。

しかし、今後札幌市は少子高齢化がさらに進み、2040年代には高齢者人口がピークを迎えるとともに、生産年齢人口が100万人を切ることが見込まれています。『縦割り』や『支え手』『受け手』という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が『我が事』として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて『丸ごと』つながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく『地域共生社会』を目指していく必要があります。

また、地球規模の大きな目標である2050年の脱炭素社会の実現を、気候変動等の影響により激甚化・頻発化する自然災害に対応しながら進めることで、国際都市を超え世界都市として、誰もが憧れを抱くような地位を築き上げることにつながり、目指すべき都市像の実現にも近づけるのではないかと考えます。

そこで質問ですが、第2次まちづくり戦略ビジョンの策定では、これらの課題に対し、どのようなことを重要と考え、検討を進めていくのか、基本的な考え方を伺います。

(4)デジタル社会の形成に向けた取組について

①デジタル推進担当局長が率いる新組織の取組方針

新型コロナウイルス感染症の拡大は、我が国のデジタル化の遅れを鮮明に顕在化し、単なるデジタル化の推進ではなく、「新たな日常」への原動力として、制度や組織、働き方、生活様式のあり方などを、デジタル化に合わせて根本から変革していく「デジタル・トランスフォーメーション」、いわゆるDXの必要性が叫ばれるようになっています。

昨年末には、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」が閣議決定され、(仮称)デジタル庁の設置をはじめとする国の具体的な方向性が示されました。

我が会派は、こうした国内の動きを捉え、昨年の第4回定例会において、DXの強力な推進のために、札幌市にデジタル局を設立すべきと強く要望し、このほど、4月から、総務局内にデジタル推進担当局長を設置するとともに、スマートシティ推進部を新設するとの方針が示されました。

これは、我が会派が求めた組織体制の構築に一定程度応えたものと受け止めますが、内容を見ると、マイナンバーなどに関連する既存の組織をいくつか組み合わせて若干の人員増を行ったものであり、課題の大きさに鑑みると、頼りない体制にも見えるものです。

また、我が会派としては、札幌の稼ぐ力をデジタルで磨き上げるという視点も重要だと認識しています。アフターコロナも見据えた攻めの姿勢として、例えば、札幌の基幹産業である観光業をデジタルの力により盛り上げていくなど、目標とするデジタル社会の絵姿に、デジタルの幅広い可能性に挑戦する視点を加えてほしいと考えます。

とはいえ、感染症対応を最優先とし、多くの人員を割かなければならない今の札幌市の状況において、相応の規模を伴って新たに局を立ち上げるのが難しいのは理解するところです。

国においても、昨年9月、政府にデジタル改革担当大臣を置き、情報通信技術政策とマイナンバー制度を兼任し、実務を執り行いながら、デジタル庁創設の検討を進めています。

札幌市においても、まずはデジタル推進担当局長が、情報システムやマイナンバー制度を所管し、実務を執り行いながら、デジタル政策の道筋をこれから整理していくものと見受けます。DXのスピードを上げるため、組織を「小さく産んで大きく育てる」という国の方針に合致するところです。

そこで質問ですが、デジタル・トランスフォーメーションの推進という、これまでにない大きな課題に対し、デジタル推進担当局長率いる新組織が、まずは自ら着手する取組は何か、また、他部局を巻き込んだ広範な取組をどのように進めていくのかを伺います。

②新組織によるマイナンバーカードの普及拡大、活用促進

公平・公正な社会の実現や、行政の効率化、国民の利便性の向上を目的として、平成28年から運用されているマイナンバー制度は、その導入の趣旨に鑑みて、デジタル社会の基本を形づくるものであると言えます。

とりわけ、市民生活の質を向上させる鍵を握るのは、各種手続き等への効果的な活用が見込まれるマイナンバーカードであります。身分証明書としての利用はもちろん、ICチップに格納される電子証明書によりオンライン上の本人認証を可能とし、民間事業者を含めたさまざまなサービスに活用できます。

しかしながら、マイナンバーカードは、5年が経過してもなお、国民生活に浸透しているとは言い難い状況が続いています。その理由として、大多数の市民が魅力を感じるまでの利便性をカード自体が提供できていないことも要因の一つでしょう。

一方、カードの交付率が低いままでは、これを使ってサービスを展開しようにも、そのための環境投資等に二の足を踏むことは十分考えられます。

こうした状況を踏まえ、国は令和4年度末までに、国民の大多数にカードが行き渡ることを目標とし、デジタル庁がマイナンバー全般の企画立案を一元的に担う体制を構築し、カードの普及を強力に推進することとしました。

札幌市においては、マイナンバーカードを所管することになるデジタル推進担当局長率いる新組織の動きが注目されるところであり、今後は、デジタル庁の動向を敏感に捉えながら、自治体版マイナポイントなど、市民がマイナンバーカードを当たり前のように普段使いし、さまざまな暮らしの利便性が向上する社会をつくり上げていく必要があります。

そこで質問ですが、札幌市のデジタル社会の形成に不可欠なマイナンバーカードの普及拡大、活用促進に対し、4月に設置される新組織がどのような役割を果たしていくのかを伺います。

(5)市内企業の振興につながる脱炭素社会への取組について

近年、国内においても深刻な自然災害が相次いて発生しており、地球温暖化への対策は国を挙げて取り組むべき喫緊の課題であります。そのため「環境の党」である我が党は、徹底した省エネと再生可能エネルギーの主力電源化に向けた取組をはじめとする地球温暖化対策を着実に推進するとともに、技術、社会経済システムとライフスタイルを含めた非連続なイノベーションによって、環境と成長の好循環を実現し、2050年の脱炭素社会に向けて取り組んでおります。

世界では、コロナ禍の中、再生可能エネルギーなどへ積極的に投資が行われており、2020年12月には、みずほフィナンシャルグループのアセットマネジメントOneや、フランスのアクサ・インベストメント・マネージャーズなど、世界の資産運用会社の大手30社が2050年までに資金運用先の温室効果ガス排出量実質ゼロを目指す「ネットゼロ・アセットマネジャーズ・イニシアチブ」という投資家グループを共同で立ち上げました。

これにより、世界中の金融界に「温室効果ガス排出ゼロ」を目指す動きが広がり、企業に対して、脱炭素への働き掛けが一層と強まるのではないかという期待が膨らんでおります。

また、アメリカのバイデン新大統領は、2050年に二酸化炭素排出量を実質ゼロ、100%クリーンなエネルギー社会を達成すると公約しており、就任早々、パリ協定への復帰に加え、温室効果ガスの主要排出国を集めた気候サミットを4月22日に開催する意向を表明し、アメリカが世界の脱炭素社会をリードする姿勢を見せております。

日本では、菅政権が掲げる「2050年カーボンニュートラル」への挑戦を、経済と環境の好循環につなげるための産業政策として、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を昨年12月25日に策定しております。

今回のグリーン成長戦略では、成長が期待される産業14分野において高い目標を掲げた上で、現状の課題と今後の取組を明記し、グリーンイノベーション基金やカーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設、イノベーションにつながる規制改革など、あらゆる政策を盛り込んだ実行計画となっております。

また、二酸化炭素の排出量が最も多い鉄鋼業の最大手である日本製鉄が2050年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする方針を打ち出すなど、日本の企業も動きだしております。

一方、札幌市では、2050年のゼロカーボンシティの実現を目指し、札幌市気候変動対策行動計画を策定中であり、計画の中で、市内電力消費量に占める再生可能エネルギーの割合を2030年に50%にするという一段と高い目標を掲げております。

そこで質問ですが、札幌市は再生可能エネルギーの導入促進のために、これまでも学校などの市有施設への太陽光発電設備の率先導入のほか、市民向けに戸建住宅への太陽光発電設備の設置補助などに取り組んでいますが、今後は、経済振興と脱炭素を両立させる、いわゆるグリーンリカバリーの観点から、民間事業者のビジネス展開につながるような仕組みを取り入れることによって、さらなる導入拡大を図ることが重要と考えますが、その見解を伺います。

(6)札幌市平和都市宣言の取組について

札幌市は、平成4年3月30日に平和都市宣言を行い、核兵器の廃絶と世界平和の実現を目指す「核兵器廃絶平和都市」であることも宣言しました。

宣言当時、日本を取り巻く国際社会は、東西ドイツの統一、ソビエト連邦の崩壊、東欧諸国の社会体制の流動化等、大きな変化を続け、平和な世界を築くための協調と共存への新たな歩みが生まれる一方で、地域紛争や民族対立などが多数発生していました。こうした中、札幌市においては、平成3年12月11日に「平和都市宣言を求める決議」が市議会の全会一致で議決され、この決議を市民の総意と受けとめ、翌年3月に札幌市長が議場において平和都市宣言を行い、この宣言の理念に基づき、核兵器の恐ろしさや戦争の悲惨さ、平和の尊さを広く市民に普及啓発するため、パネル展の開催や平和訪問団の派遣等の取組を進めてきました。

近年の国際社会においては、核兵器禁止条約が平成29年7月に国連で採択され、このたびのコロナ禍においても、この条約が今年1月22日に発効されました。核保有国の理解が得られないままであり、条約の制定に至った経緯と課題はありますが、大局的観点から、我が国は条約を評価しており、今後、締約国会合へのオブザーバー参加の早期表明など、核廃絶への橋渡し役を担っていく必要があるものと考えます。

また、新型コロナウイルスの拡大により、これまで当たり前であった日常が大きく変化し、先行きの見えない不安や不自由を感じる日々が続くことで、平和の原点である人と人とのつながりや支え合いが、さらに重要視されるようになってきました。

この世界の難局を乗り越えるべく、平和の大切さについて改めて考えるとともに、子どもたちの笑顔が輝く未来のため、「人類がひとしく平和のうちに暮らせる世界の実現」という札幌市平和都市宣言の理念を引き継いでいくことが大切だと痛感するところです。

札幌市はSDGs未来都市やフェアトレードタウンの認定を受けており、今後も、平和の祭典である東京2020オリンピック・パラリンピックの札幌開催や、2030年の冬季オリンピック・パラリンピック招致を控えるなど、国際的に注目を集める世界都市であります。

いよいよ令和4年は、札幌市平和都市宣言から30周年を迎えることから、これを契機として、宣言の理念や平和の大切さについて次世代へ継承していくため、コロナ禍だからこそ、また日本で感染が先んじ、逆風を受けてきた札幌市だからこそ、しっかりと情報発信していくことが必要であると考えます。

そこで質問ですが、30周年という節目を迎えるに当たり、宣言に掲げる理念の実現に向けて、市長は今後どのような考え方で取り組んでいくのかを伺います。

答弁

(1)コロナ禍における今後の対策について

〇1点目の市長から市民への発信力について

効果的な感染症対策の実施には、市民の皆さんに対策を正しく知っていただくとともに、ご協力いただける環境をつくっていくことが必要であり、そのためにも情報発信の強化は重要。

〇私自ら情報発信することは、市民の皆さんの関心を集め、理解と協力を得るための有効な手段の1つと認識しており、これまでも記者会見や対策本部会議での市民への呼びかけのほか、新聞のインタビュー記事での発信、テレビ番組への出演など、積極的な情報発信に努めてきたところ。

〇今後も、日々刻々と変化する状況を見極めながら、感染症対策の実効性を向上させられるよう、自らの発信も含めメディアの活用など情報発信の更なる強化に、取り組んでまいりたい。

〇2点目のワクチン接種における医療従事者の確保について

高齢者の接種については、日頃から受診している医療機関で接種していただくことを基本としつつ、医療機関以外の会場も必要だと考えているところ。

〇しかし、医療機関以外の新たな会場を設けることになると、医療機関や医療従事者にさらなる負担をお願いしなければならない。

〇そのため、看護師などの資格を有しながらも、現在、医療の現場でお仕事をされていないような方々に協力いただくことも検討してまいりたい。

〇3点目の高齢者への接種について

今回の新型コロナウイルスに係るワクチン接種については、その接種目的に照らし、できるだけ多くの方に接種していただくことが重要。

〇まずは、高齢者の移動に配慮し、少しでも多くの医療機関に接種協力を求めるほか、医療機関以外の会場については、足を運んでいただきやすい便利な場所を確保してまいりたい。

〇また、入院中や高齢者施設に入所中、自宅療養中など、接種場所まで出向くことが困難な方については、施設内での接種など、その方の状況に応じた接種方法を検討してまいりたい。

〇いずれにしても、接種を希望する高齢者の方々が安心して接種することができるよう、努めてまいりたい。

(2)令和3年度予算におけるアクションプラン事業の見直しについて

〇現下においても、まちづくりの「目指すべき都市像」はこれまでと変わらないと認識している一方で、地域経済・市民生活の変化に対応するため、アクションプランの取組の見直しを図ったところ。

〇例えば、感染症の影響により一時的な減退が見込まれる観光分野では、ワーケーションの推進やハイブリッド会議開催の支援といった、事業ターゲットの見直しにより、早期の回復・維持を図る。

〇また、「新たな日常」に即した成長の可能性を有する産業振興分野では、テレワークの導入支援やコワーキングスペース等の整備促進など、感染症対策とデジタル・トランスフォーメーションの推進に向けた手法への見直しにより、更なる向上を目指す。

〇今後も、計画事業の見直しや新たな事業の実施などといった、アクションプランの柔軟な推進により、社会経済情勢の変化と複雑多様化する地域課題に的確に対応してまいりたい。

(3)第2次まちづくり戦略ビジョンについて

〇今後の中長期的なまちづくりにおいては、少子高齢化の進行に伴う人口構造の変化を踏まえるとともに、地球規模で深刻化している温暖化や感染症・自然災害などの課題に対し、戦略的に取り組んでいくことが重要と認識。

〇少子高齢化を見据えては、これまでの支える側と支えられる側の一方向の関係性を超えて、双方向で支え合うという視点が、これまで以上に必要と考えている。

〇また、地球規模での課題に関しては、都市の強靭化を図りながら、再生可能エネルギーへの転換などで環境負荷を低減し、世界に誇れる環境都市として、持続可能な脱炭素社会を目指していく必要があると考えるところ。

〇こうした課題を市民と広く共有しながら、共生社会やSDGsの実現を目指し、第2次まちづくり戦略ビジョンの検討を進めてまいりたい。

(4)デジタル社会の形成に向けた取組について

〇1点目のデジタル推進担当局長が率いる新組織の取組方針について

「デジタル・トランスフォーメーション」の推進に向けて、誰もが安心して利便性を実感し、真に市民生活の質の向上につながるデジタル改革の実現を掲げたところ。

〇そこで、新組織では、市民生活の利便性向上に直結するマイナンバーカードの普及・活用の促進や、行政手続の改善につながる情報システムの標準化・共通化への対応、先端技術を活用した快適なまちづくりを追求するスマートシティ関連事業などを推進する。

〇加えて、業務改善に係る取組や、市内企業のデジタル化促進などの取組についても、新組織がけん引役となり、全庁を挙げて一体的に取り組んでいく。

〇こうした組織体制のあり方については、官民のデジタル化の動向を踏まえながら、今後も適時適切に見直していく所存。

〇2点目の新組織によるマイナンバーカードの普及拡大・活用促進に向けて

今般設置する新組織ではまず、夜間や土日にカード取得手続ができるマイナンバーカードセンターを開設するほか、臨時の申請受付会場を市内各所に設けるなど、市民がカードを取得しやすい環境の整備に取り組んでいく。

〇また、ポイント事業や健康保険証利用をはじめとするカードの活用促進にあたっては、デジタルに不慣れな市民を丁寧にサポートするほか、活用メリットの発信を強化することで、カード取得者をさらに増やしていく好循環を生み出してまいりたい。

〇このように、カードの普及から活用までを一元的に取り扱う新組織が、その特色を存分に活かした施策を自ら展開するとともに、全庁の司令塔となって多様な活用を促し、マイナンバーカードを軸とした利便性の高いデジタル社会を形成していく役割を果たしてまいる。

(5)市内企業の振興につながる脱炭素社会への取組について

〇脱炭素社会の実現に向けては、再生可能エネルギーの普及は欠かすことのできない重要な施策の一つと捉え、これまで市有施設への太陽光発電設備の設置や市民への補助を通じて導入拡大を図ってきたところ。

〇今後は、これらの取組に加え、新たな手法による再生可能エネルギーの導入促進を図り、市内企業の振興につながる脱炭素社会への取組を進めていくことも重要と認識。

〇そこで、市民が初期費用を負担することなく太陽光発電や蓄電池を設置できるよう、リース事業者に対する補助を新たに行うほか、民間事業者が市有施設の屋根等に太陽光発電を設置する屋根貸し事業を進めてまいりたい。

(6)「札幌市平和都市宣言」の取組について

〇終戦後75年が経過する中、戦争や被爆の記憶が風化することのないよう、平和への思いを次の世代に伝え続けていくことが大切と認識。

〇これまで、小中学生が広島・長崎・沖縄を訪問し、地元の学生等とも交流を図りながら、そこで学んだことや感じたことを発表する場を設けてきたところであり、30周年記念事業の中でも、特に若い世代に対し、平和について考える機会を作ってまいりたい。

〇また、SDGsの理念である「誰一人取り残さない」多様性と包摂性のある社会は、戦争のない平和な社会につながるものと認識しており、「札幌市平和都市宣言」に掲げる「人類が平和のうちに暮らせる世界の実現」に向けて、今後も取り組んでまいりたい。

2経済・雇用施策について

質問

(1)今後の観光振興施策について

①観光関連事業者との連携

昨年の冬に始まった新型コロナウイルスの感染拡大は、2月から3月の第一波、4月から5月の第二波を経て、夏場に一旦の収束を見せたものの、昨年10月から三度、感染が拡大しました。11月7日には、北海道知事が集中対策期間を宣言しましたが、感染拡大は思うようには収まらず、集中対策期間は4度にわたり延長され、現在まで続いているところです。

この間、国においても、感染リスクをできるだけ低減するために「GoToトラベルキャンペーン」の停止措置を行ってきましたが、札幌市においては、大阪市と共に全国よりも1か月早く停止措置を受けており、12月28日から現在まで続く全国一斉の停止措置を含めると、約4か月もの長期にわたり観光客の大幅な減少が続いていることになります。

実際に、市内ホテルの業界団体がとりまとめた平均客室稼働率では、昨年11月以降急激に低下しており、今年1月には10%台という極めて低い水準に落ち込んでいるとのことで、札幌に観光客がほとんど来ていない実態が表わされており、ひいては市内の観光関連事業者の経営状況の悪化も深刻であることを示しております。

日本有数の観光都市である札幌においては、観光産業は重要な位置付けにあり、今後できるだけ速やかに観光需要を回復させることが期待されているところですが、一方で、コロナ禍を経験した観光客のニーズには大きな変化が現れると想定され、これまで以上に観光客の動態に関する分析力を培いながら、行政と観光関連事業者が一丸となって観光客の誘致に取り組んでいくことが重要であると感じています。

我が会派では、昨年10月にDMOの先進地である飛騨・高山観光コンベンション協会の取組を視察してきました。この組織では1970年から観光統計の取得を開始しており、地元の運輸事業者や観光施設の運営事業者、宿泊事業者など多様な主体と連携して観光客の動向を把握し、マーケティングに基づいた誘客戦略を展開しているとのことであり、大変参考になる事例でありました。

札幌市においても、中長期的には、こうしたDMOを全市的な規模で組織化し、専門性を持った人材を専任で配置したうえで、事業者や観光客の視点を強く意識しながら誘客の取組を進めるべきであると思われますが、まずは、現在のコロナ禍からの回復を目指し、観光協会や宿泊事業者・観光施設運営事業者などといった観光関連事業者と行政とが、観光客の誘致に関する戦略を共に考え、一丸となって取り組んでいくことが大切ではないかと考えております。

そこで質問ですが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う観光関連事業者の支援や、感染収束時の本格的な観光客誘致の取組に備え、観光関連事業者との連携をより促進すべきと考えますが、その連携の在り方について市の見解を伺います。

②観光イベントの今後

この1年間、新型コロナウイルスの感染状況により、本市におけるイベントも様々な影響を受けてきたところです。

YOSAKOIソーラン祭りやライラックまつり、ミュンヘンクリスマス市のように開催を中止したもの、大通ミニビアガーデンのように規模を縮小したもの、オータムフェストや現在行われている雪まつりのようにオンライン形式により開催したものなど、それぞれのイベントの特性や感染状況に合わせて判断をしてきたものと理解しています。

新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の状況によって、図らずともイベントの開催内容を変更せざる得なくなったわけですが、視点を変えてみると、これまでの歴史や伝統の重みから、なかなか見直しをすることができなかったイベントについて、より魅力アップするためのきっかけになったのではないでしょうか。今年度の取組の中でも、ホワイトイルミネーションのように開催期間を延長したものや、観光施設の無料化キャンペーンなど、コロナ禍だからこそ、工夫を凝らしながら札幌観光の魅力を高めた取組も見られたところです。

本市における観光イベントは、札幌の四季折々の風物詩として、市民生活に潤いを与えるとともに、国内外からの誘客を通じて大きな経済効果をもたらし、大変重要なものであると考えております。来年度についても、新型コロナウイルスの感染状況を見極めながら、イベント開催の可否やその内容を検討していく状況は続くものと思われますが、そうした中で、感染リスクを過度に恐れて萎縮するのではなく、このピンチをチャンスに変え、むしろコロナ前よりもバージョンアップさせるくらいの意気込みをもって取り組んでいただきたいと考えます。

市が前向きな姿勢を見せていくことは、コロナの影響が長期にわたり、疲弊する市民や企業に希望の光を届けることになるだけでなく、形式を変えたイベントの展開により、新たな観光客の開拓にも繋がっていきます。

そこで質問ですが、今後の観光イベントについて、どのように取り組んでいくのか考えを伺います。

(2)離職者や非正規労働者等への就職支援について

全国的なコロナウイルス感染症の拡大に歯止めがかからず、首都圏・関西圏を中心とする2回目の緊急事態宣言が発令されており、再度の経済的な打撃がもたらされております。

民間シンクタンクによると、緊急事態宣言が2か月間続いた場合、GDP(国内総生産)の年率で1%に相当する5兆8,000億円の損失が生じ、この影響で失業者が22万9,000人増加するといった試算もある。

現在の雇用情勢については、政府の柔軟な対応による雇用調整助成金の特例措置等によって、急激な悪化を免れてきています。この助成金は、本年1月までで、既に2兆7,000億円を支給しており、感染症の影響を受けた企業にとっては、従業員の雇用維持をしていくための大きな支援となっています。

しかし、厚生労働省の発表では、感染症拡大に関連する解雇や雇止めによる離職が、見込みも含めて全国で8万7,000人、北海道においても3,400人を超えている状況にあります。札幌市においても、感染症拡大の影響が長引くことにより、宿泊や飲食業を中心とした雇用情勢の悪化が懸念されるところです。

一方で、求人企業に目を向けると、慢性的な人手不足から、介護や警備、建設といった企業では、現在でも積極的に人材を受け入れようとしています。これらの職種への就職は、安定した雇用に結び付きやすい一方、求職者にとっては、これまで経験したことがない職種への就職、いわゆるキャリア転換ともなるため、この決断には大きな不安が伴うと思われます。

このため、求職者に対しては、様々な職種に興味が持てるよう、また、未経験の仕事に対する不安が払拭できるよう、行政が後押ししていくべきだと考えます。

加えて、勤務シフトが減少し、その生計を維持するために勤務日の合間に転職活動を行うなど、求職者の置かれた状況は様々でもあるため、今後の雇用に不安を抱く誰もが就職支援を受けられる柔軟な体制を構築していくことが重要です。

本市では、これまで「さっぽろ給付金付き再就職支援事業」等の支援を行ってきましたが、コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、離職者等への支援をより一層強化していくべきだと考えます。

そこで質問ですが、札幌市では、感染症の影響を受けた離職者や非正規労働者等に対して、今後、どのような就職支援を実施していくのかを伺います。

答弁

(1)今後の観光振興施策について

〇1点目の観光関連事業者との連携について

観光は、宿泊や飲食、運輸など幅広い業種にまたがる消費活動を促し、地域経済を活性化させる産業であることから、行政と様々な事業者が密接に連携して誘客などの取組を進めていくことが大変重要であると認識。

〇これまでも、各観光協会を始め、幅広い観光関連事業者と協議を行いながら、プロモーションやイベントなどに取り組んできており、さらにはコロナ下でも感染対策や誘客促進策などを共に進めてきた。

〇今後もウィズコロナの状況の下で、大きな打撃を受けた観光産業の下支えや、顧客ニーズの変化を的確に捉えた観光施策について、観光関連事業者と連携を十分に図りながら進めていく考え。

〇また、地域の様々な関係者を巻き込んで行う観光地域づくりの推進組織となるDMOについては、観光施策を進める上での一つの有効な手法になると考えており、今後、更に調査・研究を深めていきたい。

〇2点目の観光イベントの今後について

札幌市の観光イベントは、国内外から多くの観光客をひきつけ、大きな経済効果をもたらす重要な財産であることから、感染収束後においても継続的に展開できるよう、今年度はオンライン形式や規模縮小など、感染状況に応じた工夫をしながら維持に努めてきた。

〇中でもオンライン雪まつりについては、初日のホームページの閲覧数が約20万件となったほか、姉妹都市のミュンヘン市のホームページに取り上げられるなど、そのブランド力を再認識したところ。

〇来年度のイベントについては、通常開催を前提とした予算案を計上したところであり、感染状況にはよるものの、オンラインでの発信の工夫や感染対策の徹底などにより、ウィズコロナ下でも多くの方に魅力を感じていただけるようなものにしていきたい。

(2)離職者や非正規労働者等への就職支援について

〇市内の雇用情勢については、国の雇用調整助成金等の効果により、一定程度雇用が維持されているものの、コロナ禍の影響により、「サービス業」や「宿泊、飲食業」といった分野の求人数が大幅に減少するなど、雇用のミスマッチが続いている状況にあると認識。

〇こうした状況においては、離職者等が未経験の職種へ就職する際の不安や迷いを解消することが重要であり、本年度から実施している「給付金付き再就職支援事業」では、職場実習や職業訓練などを通じて、早期に就職できるよう支援してきたところ。

〇今後については、当該事業に夜間コースを新設して幅広い離職者等が参加できるようにするほか、就職準備金の対象を、現在の介護職からその他の人手不足職種にも広げるなど、より多くの方々が安定した就労を実現できるよう、引き続き取り組んでまいりたい。

3文化芸術・スポーツ支援について

質問

(1)文化芸術活動への支援について

新型コロナウイルスの収束が見通せない中でも、人々が生き生きと暮らし、生活に潤いや豊かさをもたらすためには、感染症拡大防止の徹底と文化芸術活動への支援を同時に取り組んでいくことが不可欠であると考えます。

札幌市では、昨年の第3回定例市議会において補正予算が組まれ、公共施設及び民間施設のうち一定の要件を満たす施設の使用料を補助する文化芸術活動再開支援事業が開始されています。

この事業は、公演等の主催者の施設利用料負担の軽減につながるとともに、公演等が開催されることで市民に文化芸術活動の鑑賞機会も提供され、大変有意義なものであると言えます。

新型コロナウイルスの感染拡大については、今年に入って首都圏等を対象に再度、緊急事態宣言が発令されるなど、厳しい状況が続いている一方で、札幌においてもワクチン接種が、今月下旬からは医療従事者向けに、4月からは高齢者向けにそれぞれ開始される見込みとなっています。

このため、市民や事業者の皆さんによる感染防止に向けた日々の努力の積み重ねと、さらにはワクチン接種の開始により、新型コロナウイルスの感染は、収束に向けた希望が見い出せる状況となってきております。

これからは、感染収束への期待が広がり、公演等の主催者もイベントの実施に向けた意欲がこれまでよりも上向いていくことが想定されます。しかしその一方で、これまでの公演の中止や延期、入場者数の減少等に伴い、主催者の経営体力は著しく消耗しており、このままでは、市民は公演等に足を向けやすくなるものの、主催者側の体力が維持できずに、公演等が実施できなくなる恐れがあるとも思われます。

そこで質問ですが、公演等の主催者の負担軽減策が必要であると考えますが、市の見解を伺います。

(2)障がい者スポーツセンターについて

この1年間、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、様々なスポーツイベントの中止が相次いでおりましたが、ここにきて、感染対策の徹底や観客数の制限の下、プロスポーツの興行が開催されるなど、私たちの生活に徐々にスポーツを楽しむ機会が戻ってきております。

しかしながら、パラスポーツについては、感染時における選手の重症化リスクへの不安から、大会の中止や無観客開催がなおも続いており、コロナ前のような盛り上がりに戻るまでには、まだ時間が掛かりそうな状況と言えます。

こうしたことから、一刻も早く新型コロナウイルスが収束し、再びパラアスリートが大観衆の中で躍動する日が来ることを願うとともに、障がいのある方がその姿に勇気を得て、存分にスポーツ活動を行えるよう、今の段階から様々な準備を進めていく必要があると考えます。

障がいのある方のスポーツ環境といえば、まちづくり戦略ビジョンアクションプラン2019において、「障がい者スポーツセンター検討調査事業」が掲げられています。

その事業では、「冬季オリンピック・パラリンピックの招致を見据え、障がい者スポーツの普及振興や競技力向上のため、障がい者スポーツの活動拠点の整備に向けた検討調査を進める」と記されており、本定例会に上程された令和3年度予算案において、いよいよその検討調査が盛り込まれたことから、かねてより障がい者スポーツ振興の必要性を主張してきた我が会派としても、大きな関心を寄せているところです。

私はこれまで、道外のいくつかの障がい者スポーツセンターを訪問し、実際に見学してきましたが、広い体育館やプールなどで仲間と競技技術を磨く利用者の姿だけでなく、それを熱心に指導するコーチやサポートをするボランティアの姿が印象的であり、強く胸を打たれたものでした。

本市にもこのような施設があれば、障がいのある方の競技力向上に繋がり、また、彼らが大会などで活躍することにより、障がいの有無に関わらず、全ての方に障がい者スポーツへの関心を持ってもらえるものと考えます。

そして、その施設がスポーツに取り組む障がいのある方とそれを支援しようとする方を繋ぐ役割を担うことができれば、共生社会の実現に資するものになるのではないでしょうか。

今回の検討調査は、そうした施設づくりに向けた大きな第1歩となりますことから、障がい当事者にとってどのような施設を整備することが最適なのかについて、現状と課題を踏まえ、あらゆる角度から検討していただきたいと強く願っております。

そこで質問ですが、障がいのある方のスポーツ環境について現在どのような課題があると認識しているか伺います。また、障がい者スポーツセンターの在り方について、どのように検討を進めていくか、現時点でのお考えを併せて伺います。

答弁

(1)文化芸術活動への支援について

〇昨年11月から、文化芸術活動の再開を後押しするため、公共施設及び民間施設のうち一定の要件を満たす施設の利用料の一部を補助する「札幌市文化芸術活動再開支援事業」を実施してきたところ。

〇しかしながら、市内では昨年11月から新型コロナウイルスの感染が再拡大し、今年に入って国内でも緊急事態宣言が発令された地域もあることから、文化芸術団体等が公演活動等を行いにくい状況が続いていると認識。

〇こうしたコロナ禍にあっても、文化芸術の灯を絶やさないようにするため、今年度の予算を繰越明許し、多くの文化芸術関係者に対し、この事業のより積極的なPRを行い、来年度も引き続き、文化芸術活動の再開を支援してまいりたい。

(2)障がい者スポーツセンターについて

〇障がいの有無に関わらず誰もがスポーツを楽しめる環境を整えることは、心のバリアフリーを推進する上でも重要であり、これまで障がい者スポーツ専用の学校開放や様々な競技体験会を実施してきたところ。

〇一方、障がいのある方がスポーツ活動を継続するために必要な指導者や支援者が不足しているほか、競技者の専門的な練習環境も十分ではなく、障がい者スポーツのさらなる振興のためには、裾野拡大から競技力向上までを一貫して支える中核的な機能が必要と認識。

〇障がい者スポーツセンターについては、先進事例の調査を行うほか、障がいのある方や競技関係者等の意見を聞くなど多角的な見地から検討を進め、札幌から世界に羽ばたくアスリートの輩出を目指してまいりたい。

4幸齢者社会のまちづくりについて

質問

(1)「エイジ・フレンドリー・シティ」の取組について

はじめに、WHO(世界保健機関)が提唱している、世界的な高齢化・都市化・都市の高齢化に対応する、高齢者に優しいまちづくりを目指す「エイジ・フレンドリー・シティ」の取組について質問します。

WHOでは、2007年に『グローバル・エイジ・フレンドリー・シティ・ガイド』を作成して、自治体や地域が取り組むべき「社会参加」「地域社会の支援と保健サービス」など8つのトピックスを示しました。

2010年には、「エイジ・フレンドリー・シティ」に取り組む都市間の連携を図ることを目的として、「エイジ・フレンドリー・シティーズ・アンド・コミュニティーズ・グローバル・ネットワーク(GNAFCC)」を立ち上げ、参加都市による国際会議が、2011年9月にアイルランドのダブリンで、2013年9月にはカナダのケベックで開催されました。その後も活動を広げて、HPでは、現在44か国・1,114の都市と地域が参加して、2億6,200万の市民が網羅されているとのことです。

日本国内では、既に秋田市、宝塚市、神奈川県内の22市町が参加しており、行動計画を策定して、高齢者に優しい地域づくりの充実や各都市との情報連携に取り組んでいるところです。

本市においても、少子高齢化に対応するため、まちづくり戦略ビジョンや高齢者支援計画に基づき、高齢者の社会参加支援や地域包括ケア体制の深化・推進など、幅広く効果的な支援を行っているところですが、今後、さらなる高齢化が進展する中で、このような世界的な取組を活用して、様々な高齢者施策を進めていくことは、とても有意義であると考えます。

そこで質問ですが、本市と同じく高齢者に優しいまちづくりを目指す「エイジ・フレンドリー・シティ」の取組について、市ではどのように考えるかを伺います。

(2)職場環境に悩む介護職への支援について

2025年には38万人の介護人材が不足するとも言われており、今後も介護サービスの増加に対応していくためには、介護に携わる人材の確保や育成、定着が極めて重要となります。このコロナ禍において、介護従事者の皆さんは医療従事者と同じくエッセンシャルワーカーとして必死に現場対応に当たっていただいており、その献身には改めて感謝する次第です。

公益財団法人介護労働安定センターが発表した令和元年度の介護労働実態調査結果によれば、北海道内における介護関連職種の離職率は15.6%で、5年前と比較すると2.9ポイント改善している一方、従業者の不足感を訴える事業所は61.4%に上り、不足感は5年前と同程度に高止まりしており、介護現場の人材不足が数字上からも浮かび上がっております。

離職の理由としては、給与等の処遇面や職場の人間関係が上位を占める一方、3年未満で離職する方が実に66.1%に上っており、専門技術を習得し、効果的に働けるようになる前に辞めてしまう方が多くいることと思われます。

こうした現状に対して、介護労働者が安定して働き続けることができるよう、国または自治体が積極的に支援していくことは重要な課題であると言えます。

給与面については、平成21年度から6回にわたる介護報酬改定等により大きく改善されてきているところですが、専門的な内容や職場の人間関係という行政の介入が難しい部分への支援については、これまでスポットが当たらなかったのが実情です。

こうした中、東京都では電話相談窓口を設置し、年間を通して介護職の相談に応じる取組を開始しており、政令市の一つ仙台市では、業界団体と協働して令和元年度から年間で1週間程度、「実務経験が豊富な専門家による介護現場で働く方のための電話相談窓口」を試行的に開設しているところです。

介護労働者が日々働く中で抱える人間関係や専門的・技術的な業務上の悩みは、忙しい職場環境ではなかなか相談できないケースもあり、個人だけでは解消できないことも多いと思われます。専門的なことはもちろん、気軽に相談できる窓口を設置することにより、現に働いている人はもとより、これから介護業界への就職を考えている人にも、安心感を与えることができるとともに、離職率の改善にも寄与するものと考えます。

そこで質問ですが、札幌市でもこうした相談窓口の設置などで、人間関係や専門的・技術的な悩みが多い介護職を積極的に支援していくべきと考えますが、その見解を伺います。

答弁

(1)「エイジ・フレンドリー・シティ」の取組について

〇世界的に進行する高齢化に対応するための「エイジ・フレンドリー・シティ」の取組みは、高齢者にやさしい街づくりを目指すうえで有効なものと認識。

〇札幌市でも、まちづくり戦略ビジョンや高齢者支援計画などに基づいて、福祉の視点のみではなく、総合交通、バリアフリー、雇用など様々な視点で高齢者施策を進めており、「エイジ・フレンドリー・シティ」に合致する取組を実施しているところ。

(2)職場環境に悩む介護職への支援について

〇札幌市では、職場における人間関係の構築に必要となるコミュニケーションなどにスポットを当てた介護職向け研修を令和3年度から実施する予定。

〇介護職が安心して働き続けることのできる職場環境を整備することは、人材の定着につながることから、関係団体とも協議し、相談窓口も含め、必要な支援について引き続き検討してまいりたい。

5生きがいと支え合いの施策推進について

質問

(1)かけがえのないいのちを守る自殺対策について

先月、厚生労働省と警察庁は、2020年の全国の自殺者数の速報値を公表しました。この速報値によると、昨年の7月以降、全国の自殺者数は前年に比べて増加に転じ、昨年1年間の自殺者数は前年の20,169人より750人増の20,919人と3.7%の増加となり、年間の自殺者数が前年を上回るのは、リーマンショック後の2009年以来のことであり、我が会派はこの状況を大変危惧しているところであります。

その傾向として、自殺者数は男性が前年比1%の減少に対して、女性は14.5%の増加となっております。厚生労働大臣の指定法人いのち支える自殺対策推進センターによると、女性の自殺の背景には、経済・生活問題や勤務問題、家庭内暴力被害、育児の悩み、介護疲れや精神疾患など、様々な問題が潜んでおり、長引く新型コロナウイルス感染症の影響に加え、これらの問題が女性の自殺者数の増加に影響しているのではないかと分析しています。

札幌市においても、新型コロナウイルス感染症の拡大により、昨年2月28日の北海道知事による緊急事態宣言以降、これまで当たり前だったことが当たり前でなくなり、市民の社会生活環境は大きく変化しました。この変化によって生じる大きなストレスは、心身にも大きな影響を与え、メンタルヘルスの不調を訴える人が増加し、中にはうつ病等の精神疾患を発症し、最悪の場合、自殺につながるケースもあります。

長引くコロナ禍においては、弱い立場に置かれている女性を始め、自宅で長時間過ごすことを強いられる人などに対して、メンタルヘルスの推進と悩み事の解決を図るため、心のケアに関する啓発や相談の取組など、効果的な自殺対策の取組が急務であると考えます。

自殺に至る心理としては、様々な悩みが原因で心理的に追い詰められ、自殺という選択肢しか考えられない状態に陥ってしまう過程と考えられています。失業、倒産、多重債務、長時間労働等の社会的要因については、制度や慣例の見直しや相談支援体制の整備等により解決が一定程度は可能ですが、これらの支援や相談等に確実に結び付けるためには、日頃から自分の周りにいるかもしれない自殺を考えている人の存在にいち早く気づき、声を掛け、話を聞き、思いに寄り添い、必要に応じて専門家につなぐ役割を果たすゲートキーパーの存在が重要になります。

自殺に追い込まれることは誰にでも起こり得る危機であり、一部の人だけの問題ではありません。孤立しがちな世の中に加え、このコロナ禍で孤立する市民が増えているであろう現状において、命や暮らしの危機に陥った場合には、誰かに援助を求めることについての市民理解と、身近で実践的な役割を果たすゲートキーパーの人材養成が極めて重要と考えます。

そこで質問ですが、コロナ禍の影響が続く状況において、札幌市の自殺の現状について、どのように認識しているのか、また、自殺対策において重要な役割を果たすゲートキーパーの養成について、今後、どのように取り組んでいくのかを伺います。

(2)ひきこもり支援策について

①ひきこもり支援策の更なる充実

これまで我が会派では、札幌市に対して、ひきこもり支援の充実・強化を求めてきており、札幌市ひきこもり地域支援センターが開設されて5年半が経ちます。

今日、ひきこもりになる背景は、失業・退職・いじめ・障がい・疾病・家族関係など、様々な要因が絡まり、複合的課題を抱える当事者やその家族のニーズは多様化し、ひきこもり期間の長期化・高齢化は進み、いわゆる8050問題の中では、高齢の親とともに社会的に孤立するケースも顕在化し、深刻な社会問題となってきました。本市においても、ひきこもりに関する相談件数は増加を続け、令和元年度は前年度の約1.7倍の2,494件に達しています。

一方で、本市が以前行った実態調査では、潜在的なひきこもり状態にある人は約2万人いると推計されており、相談につながっていない可能性も考えられ、その背景には、地域支援センターまでの地理的アクセスも要因の一つと懸念され、相談の利便性を高めるため、今後も市民が利用しやすい環境づくりが喫緊の課題であると考えます。

本市では、平成30年に、多くの当事者が必要とする、同じ悩みを持つ人が集まる場となる集団型支援拠点「よりどころ」を開始しました。

当事者の中には、極度の自己否定の状態にあるため、世間の目を避け、家族とのやりとりに強い回避や激しい反発を示し、また将来に無気力となる実存的な危機をも抱き、ひきこもりからの脱却には大きな困難を強いられます。

「よりどころ」は、当事者がこのような実存的な危機を感じさせず、また来たいと思うような居場所づくりに努めており、利用者から高い評価を得ております。現在、この「よりどころ」は当事者の会と家族の会をそれぞれ月2回開催していますが、開催回数の増加や常設化を求める声も多く、当事者やその家族に対する居場所づくりの更なる充実が求められております。

また、第3回定例市議会の決算特別委員会において、我が会派が質問でも触れましたが、本市ではコロナ禍の中、支援継続のためのZoomを使用したオンライン会を開催し、そこでは「気楽に参加できた」「移動時間の制約がなかった」等のメリットが認められ、写真や動画の活用により参加者間の交流促進にもつながるなど、今後のひきこもり支援の可能性がある取組であると評価しています。

そこで質問ですが、ひきこもり支援策の更なる充実に向け、今後どのように取り組んでいくのかを伺います。

②ひきこもり支援体制の構築

ひきこもりに対する必要な支援を展開するためには、労働、雇用、経済、教育、障がい福祉、生活保護、精神科医療など、様々な分野における関係施策の充実や、担い手として支援に当たる関係者の連携が不可欠です。

連携を促進するためには、保健、医療、福祉、労働などの力を集結させる中心的な役割を担い、当事者や家族の目線を大事にした利用しやすい窓口を備えた専門部署の設置が必要であると考えます。

既に神奈川県大和市では「こもりびと支援窓口」という名前で、複合的な課題に包括的に対応する専門窓口を設けて先駆的な取組を進めています。

そこで質問ですが、札幌市においても、当事者やその家族が抱える様々な課題とニーズへ対応していくため、支援体制を構築していく必要があると考えますが、今後どのように進めていくのかを伺います。

答弁

(1)かけがえのないいのちを守る自殺対策について

〇コロナ禍においては、感染症への不安や外出自粛等により、メンタルヘルスの不調をきたす市民が増え、自殺リスクが高まる恐れもあることと認識。

〇札幌市における令和2年の自殺者数は300人を超え、依然、尊い市民の命が失われており、悩みや不安を抱えた市民に対して支援の手を差し伸べることが重要。

〇札幌市自殺総合対策行動計画2019において、悩みを抱え、孤立している市民が示す自殺の危険のサインに気づき、適切な支援を行うゲートキーパーの養成を重点的に進めているところ。

〇引き続き、市民に対するゲートキーパーの役割について普及啓発を強化するとともに、保健・医療・福祉などの専門職に対するゲートキーパーの養成を着実に進め、市民一人ひとりが支え合い、誰も自殺に追い込まれることのないまちづくりを推進してまいる。

(2)ひきこもり支援策について

〇1点目のひきこもり支援策の更なる充実について

札幌市ひきこもり地域支援センターでは、来所・メール相談のほか、出張相談会の開催や自宅訪問など、相談者に寄り添った対応を行っている。

〇一方で集団型支援拠点「よりどころ」については、令和3年度から当事者の会と家族の会の開催を、それぞれ月2回から4回に拡充する予定。

〇引き続き、相談者が相談しやすい環境づくりに努めるとともに、当事者やその家族がより安心できる居場所づくりについて、利用状況や取組効果を検証しながら、充実を図ってまいる。

〇2点目のひきこもり支援体制の構築について

ひきこもり状態にある当事者やその家族が置かれている状況は複雑で、抱える課題も多様化していることから、様々な分野の関係者が連携して包括的に支援を進めることは重要と認識。

〇今後も当事者やその家族の状態や意向等に即した効果的な支援体制を構築していくため、若者支援総合センターやハローワーク等の関係機関との連携を強化するとともに、他都市の事例等も参考にしながら、ひきこもり支援体制の充実に努めてまいる。

6子育て支援施策について

質問

(1)コロナ禍における母子保健について

2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大が世界に深刻な影響を与え、我が国においても緊急事態宣言が発出され、私たちは自粛生活を余儀なくされ、生活様式が大きく変わった激動の1年でありました。

特に、妊産婦や子育て家庭においては、不安の高まりや地域社会からの孤立といった事態が危惧されるところであり、新型コロナウイルスはすぐには収束しないことから、コロナ禍における母子支援の在り方については、しっかりと考えていく必要があります。

現在、この母子支援の中核の一つとされているのが「子育て世代包括支援センター」であり、国は3月までに、全国展開するよう各自治体に求めており、本市においては各区保健センターがその役割を担うものとして位置付けられているところです。

「子育て世代包括支援センター」は、妊産婦、乳幼児の実情を把握し、妊娠期から子育て期の各種相談に応じつつ必要な支援を行う拠点となります。また、支援プランの作成、関係機関との連絡調整といった機能も求められており、我が会派はこれまで「子育て世代包括支援センター」の機能強化を繰り返し主張してきました。昨今の母子保健事業の取組の充実などは「子育て世代包括支援センター」の機能強化に寄与するものとして評価しているところです。

しかしながら、このコロナ禍においては、外出を控え、引きこもりに近い状態となっていたり、子どもと一緒にいる時間が長くなりストレスを感じていたり、テレワークで夫の在宅時間が増えて新たな家庭問題が生じたりと、妊産婦や子育て家庭には様々な影響が及んでいるものと考えます。

妊産婦や母親の中にはストレスを感じていること自体に気がつかなかったり、自ら支援を求めることを躊躇して相談できなかったりする人も存在しているものとも考えます。

我が会派に寄せられる市民の声の中にも、コロナ禍で心身に大きな影響を受けた妊産婦や母親、そして子どもたちへの母子保健に係る相談が多く、その内容も多岐にわたっているところです。

そこで質問ですが、このコロナ禍においても安心して妊娠、出産、子育てができるよう、母子保健の強化が重要と考えますが、市ではどのように考えるか、また今後どのように進めていくのかを伺います。

(2)ひとり親家庭等における養育費確保支援について

新型コロナウイルスの感染拡大が長期化する中、母または父が子育てと家計を一身に担う、ひとり親の家庭からの相談は多く、子育て家庭の中でも特に困難な状況に陥っているのではないかと危惧しております。

ひとり親家庭は平時においても困難な状況にある世帯が多く、平成28年の国民生活基礎調査において、子どもがいる現役世帯のうち、大人が一人の世帯の相対的貧困率は50.8%という結果が出るなど、特に経済面での困窮が顕著であると言えます。札幌市が児童扶養手当受給世帯に対して実施した平成29年のアンケート調査でも、困りごとの設問に対して「家計」との回答が、母子世帯で79.5%、父子世帯で74.7%にも上りました。

こうしたひとり親家庭の家計を取り巻く社会問題の一つに、養育費不払いの問題があります。

未成熟の子どもに対する養育費の支払い義務、すなわち扶養義務は、支払い義務者である親の生活に余力がなかったとしても、自分と同じ水準の生活を保障しなければならない強い義務とされています。仮に自己破産した場合であっても、養育費の支払い義務は消滅することはないと定められています。

扶養義務の履行については、母子及び父子並びに寡婦福祉法に規定されており、平成23年の民法改正では、離婚の際に夫婦が取り決める事項の一つとして、養育費の分担が明文化されました。民法改正に当たっては、衆参両院において、養育費支払い等の継続的な履行の確保に関する附帯決議がなされているところです。

我が党は、当事者の切実な声を受け止め、養育費確保の支援に向けたプロジェクトチームを発足させ、各関係団体からの要望も踏まえながら、厚生労働大臣へ直接申し入れを行うなど、これまで一貫した主張を続けてきました。

全国的にも養育費の確保を推進する機運が高まり、2月10日に国では、法務大臣の諮問機関である法制審議会に、離婚後の子の養育の在り方を中心とする家族法制の見直しが諮問されることとなりました。当面の取組として、令和3年度の国家予算案において、養育費の履行確保に資する事業への国庫補助が拡充されていることから、本市においても具体的な支援を実施すべきと考えます。

そこで質問ですが、ひとり親家庭の抱える諸課題の一つである、養育費の確保についての本市の認識と、今後どのような観点で支援するつもりかを伺います。

答弁

(1)コロナ禍における母子保健について

〇新型コロナウイルスの感染拡大で妊産婦や子育て家庭が孤立しがちな状況の中、母子健康手帳の交付や乳幼児健診などの各種事業を通じ、妊産婦や母子の実態を把握できる母子保健の役割は極めて重要と認識。

〇今後は、これまで以上に妊産婦や母子のニーズをしっかりと捉え、支援が必要な対象者を見逃さず、保健師等が積極的かつ継続的に家庭訪問をするなどきめ細やかに対応していくことが必要

〇コロナ禍にあっても、妊産婦や母子の実態把握や相談支援といった「子育て世代包括支援センター」の機能の一層の強化を図り、安心して妊娠、出産、子育てができるよう努めてまいりたい。

(2)ひとり親家庭等における養育費確保支援について

〇離婚に当たって養育費の取決めをした母子世帯は半数程度であり、継続して養育費を受け取っている割合も3割強にとどまるなど、養育費の取決めの後押しと、確実な受取りのための支援が必要と認識。

〇令和3年度予算案には、養育費取決めのための調停などに要する費用や、不払いの際に強制執行を可能とする公正証書等の作成費用、保証会社との養育費保証契約に係る保証料についての補助を新たに盛り込んだところ。

〇この取組を通じて、養育費確保のための方策について多くの方に知っていただき、必要とする方に活用いただくことで、ひとり親家庭の子どもたちの健やかな成長を支えてまいりたい。

7教育相談体制の充実について

質問

我が会派では、持続可能な開発目標、SDGsの理念に基づき、誰もが公平に良い教育を受けられるよう、適切かつ効果的な学習成果をもたらす質の高い教育、教育におけるジェンダー格差の解消、そして、全ての学習者が持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるなど、教育の充実を求めてきました。

令和3年1月に文部科学省が公表した中央教育審議会の答申においても、誰一人取り残すことのない、持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現に向けて、ツールとしてのICTを基盤としつつ、2020年代を通じて実現を目指す学校教育を「令和の日本型学校教育」と名付け、その姿が示されたところです。

このような教育の実現を目指し、GIGAスクール構想等による個別最適な学びや、小学校の少人数学級によるきめ細かな指導体制の整備など、具体的な取組が国全体で進んでいるものと考えます。

一方、不登校児童生徒や特別支援教育の対象となる児童生徒の増加など、様々な困りを抱えた子どもが増えている状況があり、子どもや保護者の困りを受け止め、確実に支援に繋げていくことが大切であると考えます。

各学校においても、子どもの困りに丁寧に対応していると思うが、教員の多忙化が叫ばれる中、学校だけでは対応が難しいこともあり、懸念されます。

そのような中、教育委員会では、令和4年度に学びの支援総合センターを開設し、教育相談体制の充実を図ると聞いており、我が会派としても大変期待しているところです。

そこで質問ですが、学びの支援総合センターにおいて、教育相談体制の充実にどのように取り組んでいくのか伺います。

答弁

〇教育委員会では、これまで行ってきた発達や障がい、不登校等の相談に加え、外国人等の日本語習得やLGBTQ、ヤングケアラーなどといった困りに対する教育相談の必要性が高まっているものと認識。

〇また、子どもの困りの背景には、家庭の状況や学校内の人間関係など複数の要因があることや、様々な困りが複雑に絡み合うこともあるため、個々の状況を多面的に捉え、支援する体制がますます重要になっている。

〇こうしたことを踏まえ、令和4年度に開設予定の「学びの支援総合センター」においては、新たに日本語や日本の学校生活に関する相談機能を加えるとともに、子どもの様々な困りにも適切に対応できるよう、相談にかかる情報の一元化に努めてまいる。

〇また、このセンターを中核として、医療や福祉などの関係機関と支援ネットワークの構築を図り、一人一人の困りに寄り添った、切れ目のない教育相談体制の充実を図ってまいる。