札幌公明

議会報告Assembry report

2023/06/20 令和5年第2回定例議会

令和5年第2回定例議会2023/06/20

代表質問前川たかし議員(白石区)

札幌市議会本会議において公明党議員会を代表して 前川たかし 議員が代表質問を行いました。
以下、質問とそれに対する答弁の要旨を紹介します。

目次Contents

  • 市長の政治姿勢について
    • 世界平和への貢献に向けた思いについて
    • 現下の社会情勢を踏まえた補正予算における市長の考えについて
    • 新たなステージの行政改革の取組について
    • 日本版CDC(国立健康危機管理研究機構)と連携した今後の感染症危機に備えた体制づくりについて
    • 防災DXについて
    • 官民連携のまちづくりの推進について
    • 札幌市のヒグマ対策について
    • 婚活支援事業の取組について
    • ユニバーサル施策の推進について
  • G7環境大臣会合・GX推進法成立を経ての今後の施策の推進について
    • 脱炭素型ライフスタイルへの転換を促すための取組について
    • 脱炭素社会の実現に向けた下水道の取組について
  • 経済施策について
    • ラピダス次世代半導体プロジェクトを踏まえた札幌市の体制について
    • 丘珠空港における路線就航の効果と認知度向上について
    • 持続可能なデマンド交通の仕組みづくりについて
    • 将来を見据えたシニア層の労働力を生かす新たな取組について
    • 札幌版DMOの設立について
  • 今後の認知症施策について
  • 誰一人取り残されない教育について

1市長の政治姿勢について

質問

(1)世界平和への貢献に向けた思いについて

先月開催されたG7サミットは、国際秩序の根幹を揺るがすロシアによるウクライナ侵攻に直面した歴史的な転換点にある中、G7サミットとしては初めてとなる、核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンが発出されるという非常に画期的なものでありました。

G7サミットの開催地について、わが党は以前から、日本は唯一の戦争被爆国として具体的に行動する責務があり、核兵器による被害に関する知見やデータを被爆の実相として世界に発信し、核兵器の使用を阻止すべきであるとして、被爆地である広島で開催するよう、政府へ提言してまいりました。

その広島での開催が実現された本サミットにおいて、G7首脳が原爆資料館を視察して被爆者の声を直接聞き、さらに原爆慰霊碑前で献花して記念撮影に臨んだことは、象徴的な場面であり、かつ歴史的な出来事であったと認識しております。

世界で唯一の戦争被爆国である日本で、過去の悲惨な出来事が風化されることなく、後世に引き継がれた被爆の実相を、広島に集った各国の首脳に実感してもらい、平和への決意が共有されたことは、「核兵器のない世界」に向けた全世界の人々への大きなメッセージとなったものと思います。

そして、ウクライナをはじめ、今まさに世界で繰り広げられている武力による対立が平和的に解決してほしいと願い、一人ひとりに何ができるかを世界中の人々が考えるきっかけになったのではないでしょうか。

平和都市を掲げる札幌市としても、今回のG7サミットを平和への取組を高める機会と捉えて、過去に起こった悲惨な出来事だけでなく、現在も戦争で苦しんでいる人が世界に数多く存在している事実を受け止め、市民が平和について思いを巡らせ、平和を願う意識が醸成されるよう、積極的に取り組んでいくべきであると考えます。

そこで質問ですが、札幌市として世界平和に向けてどのように貢献しようとしているのか、市長の思いをお聞かせください。

(2)現下の社会情勢を踏まえた補正予算における市長の考えについて

昨今の不安定な世界情勢を背景とするエネルギー価格や、食料品価格等の高騰の長期化は、市民生活や経済に深刻な影響を及ぼしております。

こうした中、本年3月、我が会派は物価高騰対策にかかる追加策の検討を求める要望書を、秋元市長あてに提出いたしました。

その中では、国からの地方創生臨時交付金の、「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援交付金」積み増し分について、柔軟な活用を求めるとともに、生活困窮者等への支援、高齢者施設・障がい者福祉施設への物価・光熱水費高騰対策など、さまざまな追加策の検討を求めたところです。

これに対しては、1臨補正で低所得者対策などをはじめとする対策が議決されたところであり、その早急な対応については我が会派としても一定の評価をするところであります。

しかしながら、今月から電力使用料金が値上げとなり、その値上げ幅は20%余りに及ぶなど、依然として市民生活を取り巻く環境は厳しいものがあります。

一方で、5月8日より、新型コロナウイルス感染症における感染症法上の位置づけが、「5類」に引き下げられたことにより、外出等の行動制限などが一定程度緩和され、同月17日には、本市の初夏のイベントの一つである、「さっぽろライラックまつり」が4年ぶり通常規模での開催となるなど、賑わいを取り戻し始めております。

こうした状況は、コロナ禍において、動きを止めてきた市民生活や経済活動の活性化を期待させるものであり、時代の転換期において、このたび提案された補正予算は、秋元市長の3期目スタートを切るにあたり大変重要な予算となります。

ついてはこの機をとらえ、例えば、すでに実施した公共施設の無料化や、現在取り組んでいるプレミアム商品券事業のように、市民生活の充実や、ひいては経済の活性化に直結するような、積極的な需要喚起策を打ち出すべきと考えます。

そこで質問ですが、現下の社会情勢を踏まえ、この度の補正予算にどのような思いで取り組んでいくのか、市長の考えを伺います。

(3)新たなステージの行政改革の取組について

我が会派では、これまで一貫して大胆な業務の効率化、野心的な行政改革の必要性について訴えてまいりました。特に、秋元市長が2期目に入ってからは、我が会派としても、全庁の業務量調査の実施や、ノンコアな業務を集約して民間活用を行う行政事務センターの設置の必要性を主張してきたところであります。市もこれに応え、地道ながらも着実な行政改革を進められてきたと認識しております。

この度、市長の3期目を迎えられ、山積する行政課題も大変多いことから、一層のギアを入れて、市長のリーダーシップのもと行政改革を進めていく必要があると考えます。私は、そのためのベースとなる考え方が、市民が実感する行政改革、つまり、「市民起点」の行政改革の重要性と考えております。

市長も市民に寄り添った行政運営に意を尽くされていることは、私もよく承知しておりますが、一方で、多数の施策や事業がある中、市の意図する趣旨が、市民に十分に伝わり切っていない面もあるのではないかと思います。行政側の都合ではなく、市民サービスを提供される立場、常に市民の立ち位置に身を置いて、顧客志向、市民起点により、業務の在り方を見つめなおし、改善に努めることが必要と考えます。一見、泥臭くはありますが、市民に信頼される市役所となるには、これが一番の近道ではないでしょうか。

民間企業を例にとると、この顧客志向というのは当然のことであります。もっとも重要な経営課題に、顧客満足度の最大化を挙げている企業も多くあるように、これらの企業は、顧客との対話を大切にしながら、ニーズを深堀りし、顧客が抱く疑問や不満などのデータを分析のうえ、製品改良、新規事業開拓に繋げるなど、経営品質の向上に努めております。

官・民の違いはありますが、行政においても、この顧客という言葉を市民に置き換え、市民の声に耳を傾け、徹底して、市民が有している不安や課題は何かを把握、分析して、それを業務フローの改善や、事業そのものの見直しに繋げていくという考え方が必要であります。

ややもすると、行政改革の取組は、市役所内部の事務改善をメインに、目先の効果を求める「やっているフリの行政改革」に終始してしまうのではないか、と懸念しております。人口減少や災害対応など、目まぐるしく情勢が変化し、国難とも言うべき状況を目前にし、未来予想図が描けないこのご時世においては、時間がかかっても良いので、結果を出すことにこだわりを持って、とことん市民の課題解決に向き合い、それを市の仕事に反映していくことが重要であり、今こそ市民起点に立った課題解決型の行政改革を行うことが必要と考えます。

そこで質問ですが、3期目を迎え、市長はこれまでの行政改革をどのように評価し、新たなステージの行政改革として、どのような考えで取り組んでいかれるのか伺います。

(4)日本版CDC(国立健康危機管理研究機構)と連携した今後の感染症危機に備えた体制づくりについて

本年5月8日より新型コロナウイルス感染症が5類感染症へと移行し、様々な場面において日常を取り戻す動きが加速してきています。

一方で、日本国内では、2022年7月に初めてエムポックス旧名サル痘の感染が確認されて以来、依然として報告が続いており、また、2023年5月に再び麻疹の感染を探知するなど、新型コロナウイルス感染症以外の感染症への対応も継続を要する状況にあります。

こうした状況の中、国においては、今後のさまざまな感染症対策に備えるため、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、国立健康危機管理研究機構、所謂「日本版CDC」を設立する新法がこの5月31日に成立いたしました。

「日本版CDC」では、これまで両機関がそれぞれ担っていた「感染症の情報分析、研究、検査」、「国内外の人材の育成・派遣」、「病院の総合診療機能、臨床研究推進の機能」等について、一体的に対応することとし、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症の疫学調査から臨床研究までを総合的に実施し、科学的知見を提供できる体制の強化を図ることとしています。

「日本版CDC」については、我が会派でも令和2年第4回定例会代表質問において、新たな感染症の発生を想定した研究機関の設立を国に対し積極的に働きかけていくべきであることを提起したところであり、「日本版CDC」の設立が実現する本法案可決は大変喜ばしく思っております。

今回の新型コロナウイルス感染症の流行下においては、さまざまな場面において感染症の専門家が果たした役割は大きく、今後、札幌市の感染症対策では「日本版CDC」との連携が非常に重要なものになると考えております。

そこで質問ですが、札幌市の今後の感染症危機に備えた体制作りにおいて、国立健康危機管理研究機構「日本版CDC」との連携についてどのように考えるか伺います。

(5)防災DXについて

近年、自然災害が甚大化・頻発化する傾向にある一方、人口減少や少子高齢化により、災害対応の担い手となる民間事業者や災害対応を行う行政職員は減少しております。

そのような中、平成30年9月に発生した北海道胆振東部地震では、早期の復旧・復興を目指し、地域と一体となって取組を進めてきたことなど、札幌市の災害対応や防災事業については、一定の評価をしているところです。

しかしながら、胆振東部地震で経験したブラックアウトや一昨年の豪雪、昨今のコロナウイルス感染症の感染拡大など、災害が市民生活に与える影響は非常に大きいものがあります。

市民の安全・安心の確保に向け、災害に強いまちづくりを進めていく上で、これまでの防災・減災業務体制を続けて行くだけでは不十分ではないかと考えます。

このような状況下、我が会派ではこれまで、AIなどの最新技術を防災分野に活用することについて言及してまいりました。

災害が甚大化・頻発化・複合化し、災害対応を担う行政職員や事業者が減少していく中で、迅速で効率的な対応を行うためには、デジタルの力を最大限活用する「防災DX」の考え方を取り入れていく必要があると考えます。

この「防災DX」については、内閣府やデジタル庁が中心となり、民間事業者も協力して行政とともに推進していく枠組みとなる「防災DX官民共創協議会」が昨年12月に立ち上がるなど、事業を進めていく環境が整いつつあるところです。

また、防災DXにより災害から速やかに復旧できる力、いわゆる災害レジリエンスを高めることは、市民のみならず、安全・安心で魅力ある札幌を対外的にアピールすることに繋がるものであり、重要な施策であると言えるのではないでしょうか。

そこで質問ですが、昨今の状況を踏まえ、デジタルの力を活用した防災DXについて、札幌市の考えと今後の取組について伺います。

(6)官民連携のまちづくりの推進について

現在策定している第2次まちづくり戦略ビジョン戦略編では、今後の札幌市の行財政運営の方針として、民間の発想の行政運営への反映や多様な主体との連携・協働体制の構築に取り組んでいくこととしています。

これは、PFIや指定管理者制度など従前の官民連携手法とは異なる、新たな官民連携の形を目指すものであると認識しております。

また、秋元市長が今年4月の選挙で掲げた公約には、民間からのアイデアを一元的に受け付ける窓口の設置等、これまで以上に民間の知見や技術、発想を活用した官民連携のまちづくりを進めていく考えを示されております。

わが会派としても、人口減少社会の中で様々な分野における地域の課題解決を実現していくために、多様な主体が保有する強みを最大限生かした取組を加速させていくという姿勢には非常に期待しているところです。

一方で、営利活動を行っている民間企業等は、利益を上げなければ事業の継続ができないものであり、地域課題を解決することが先に立ち過ぎると、民間に過度な負担を強いるような連携になってしまいかねません。

このため、民間、行政双方にメリットがあり、市民の暮らしがより豊かになる効果的で新しい官民連携を実現してもらいたいと考えております。

そこで質問ですが、札幌市が目指す官民連携のまちづくりに対する市長の考えと今後の具体的な取組について伺います。

(7)札幌市のヒグマ対策について

ここ最近、ヒグマ出没に関する報道が多くなっており、朱鞠内湖では釣り人がヒグマに襲われて亡くなるという大変痛ましい事故が起きました。

札幌市でも、今年は早い時期からヒグマが出没し、4月21日には南区でヒグマ1頭を捕獲、その後も西区で親子熊が目撃されるなど、出没情報は後を絶たず、そうした地域では子どもの通学や外で遊ばせることへの不安の声が会派にも寄せられているところです。

昨年8月、わが会派は札幌市に対し「身近な生活環境に生息する野生動物との共生にあたっての取り組み推進を求める要望書」を提出しました。

その中で、札幌市が「市民のみどり豊かな暮らしの質と都市部における生物多様性の向上に貢献する一方、都市を取り囲む緑豊かな自然がヒグマなど様々な野生生物の好適な生息地になっており、今後、市は人口の減少や、耕作放棄地の増加、郊外住宅地の空き地問題、さらには、高齢化に伴う地域活動の停滞などからも、身近な鳥獣に対する札幌市としての取組推進を図る必要がある」と提言したところです。

その後、札幌市は、これまでの計画を大幅に見直し、今年3月に市民の安全・安心を確保するために目指す姿や施策の方向性等をまとめた「さっぽろヒグマ基本計画2023」を策定し、その基本目標として「侵入抑制策の推進」「適切なヒグマ出没対応」「市民の意識醸成」の3点を掲げ、出没に当たっては必要に応じて市内部の関係部署からなるヒグマ対策委員会において協議し、警察等関係機関とともに対策を講じていると認識しています。

1990年の春グマ駆除制度廃止以降、札幌市を含む北海道全体でヒグマの個体数が増えていることから、ヒグマの侵入抑制策をより充実させ、地域の実情に合わせた取組を継続的・戦略的に実施していかなくてはなりません。

このため、本計画を進めるに当たっては、ヒグマの専門家はもとより、様々な視点から議論する新たな会議体が必要と考えます。

そこで質問ですが、本計画に基づく侵入抑制策を今後どのように推進していくのか伺います。

(8)婚活支援事業の取組について

国では、本年4月にこども家庭庁を創設するとともに、現在、こども・子育て政策の強化となる「次元の異なる少子化対策」の具体化に向けて、「こども未来戦略会議」において議論を進めております。

今月、厚生労働省が公表した人口動態統計で令和4年の全国の合計特殊出生率は1.26となり、昭和22年の統計開始以来、過去最低となりました。一方、札幌市の令和3年の合計特殊出生率は1.08と全国の政令指定都市の中でも最低水準となっており、出生数の減少傾向が続いております。

こうした、少子化の最大の要因の一つとして未婚化があると言われる中にあって、これまでの国の対策は、仕事と子育ての両立支援などを柱とした既婚者を対象としたものが中心となっており、若者らの結婚を後押しする施策は乏しかった状況にあると考えます。

そこで、昨年4定の代表質問において、我が会派のわたなべ議員から、既に多くの自治体で、結婚への支援を積極的に行っていることに触れ、札幌市においても早急に婚活事業に取り組むべきと質したところ、町田副市長からは、AIを活用したマッチングシステムの導入やオンラインによる伴走型相談支援などによる婚活支援体制づくりに鋭意取り組んでいく旨の前向きな答弁があったところです。

これらの事業の検討にあたっては、婚活事業を実施する運営体制の準備に一定の時間を要することは十分理解できますが、世の中の少子化問題は想定を超える早いペースで進行していることからも、早々に事業を開始すべきと考えます。

そこで質問ですが、これらの経緯を踏まえ、早急に婚活支援事業を実施するべきと考えますが、検討状況を含めた市長のお考えを伺います。

(9)ユニバーサル施策の推進について

①オリンピック・パラリンピックを契機とした招致による共生社会の推進

北海道・札幌2030オリンピック・パラリンピック冬季競技大会の招致については、昨年3月、札幌市議会として2030大会の招致に関して決議し、その後は国内の機運醸成に向け取り組んできたところであります。

しかし、東京2020大会における収賄・談合による一連の事案により、オリンピック・パラリンピックのイメージが著しく損なわれ、それにより開催の意義や効果が十分浸透しないまま、多くの市民が大会の招致について不安や不信感を抱いていることが課題と思慮しております。

このような課題を払しょくするべく、先月、ガバナンス体制の在り方等を検討する「大会運営見直し案に関する検討委員会」が設置されましたが、これを着実に進めた上で、2030大会を契機に札幌の街がどのように変わっていくのか、効果をしっかりとお示しいただき、効果的に発信することが重要と考えます。

一連の事案により負のイメージが先行している東京2020大会ではありますが、開催により多くのレガシーが残されているところであり、例えば、国際パラリンピック委員会(IPC)から承認を受けた「アクセシビリティ・ガイドライン」が作成され、競技会場や公共交通機関を中心に、整備水準の高いバリアフリー化が進んだことが広く認知されております。

また、パラリンピックを通して、都民の「こころのバリアフリー」に対する理解が進むなど、ハード・ソフト両面でバリアフリーの取組が加速したところです。

このような状況を受け、わが会派としては、東京2020大会のレガシーを私たちのまち札幌で引き継ぎ、障がいの有無や性別などにかかわらず、誰もが互いに人格と個人を尊重し合い、理解し合いながら共に暮らす共生社会の推進に向けた取組を進めていただきたいと考えます。

そこで質問ですが、オリンピック・パラリンピック招致を目指す札幌市として、大会を契機に、バリアフリーを始めとする共生社会の推進に向けた取組をどのように進めようと考えているか伺います。

②共生社会の実現に向けたユニバーサル関係施策の推進

わが会派では、少子化が加速し、高齢者人口がピークを迎える「2040年問題」の課題解決に向け、「皆が互いの個性を尊重し合い、支え合うことで人々の結び付きを強める社会」を意味する「絆社会」の構築により、性別や年齢、障がいの有無などにかかわらず、誰もが、それぞれの能力や特性に応じて力を発揮しながら働くことができる「包摂的な社会」を目指しております。

この方向性は札幌市においても同様であると捉えており、令和4年10月に策定した「第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン」のビジョン編においては、まちづくりの重要概念の一つに「ユニバーサル(共生)」を設定した上で、「誰もが互いにその個性や能力を認め合い、多様性が強みとなる社会を実現」していくことが掲げられております。

また、現在策定中である同ビジョンの戦略編においても、分野横断的に取り組む施策として「ユニバーサル(共生)プロジェクト」を位置付ける予定であるなど、今後は庁内一丸となって共生社会の実現に向けた取組を進めていくものと認識しております。

こうした中で、わが会派では、令和5年の第1回定例市議会の代表質問において、共生社会の実現に向けた取組を組織横断的に進めていくべきであると提言し、札幌市からは、ユニバーサル関係施策の全体を俯瞰し、総合的な調整を担う新たな組織の設置等について答弁があったところです。

この度、令和5年度からまちづくり政策局にユニバーサル推進室が設置されたところでありますが、ユニバーサル関係施策は、ハード面でのバリアフリー化の促進を始め、心のバリアフリーの推進など、広い範囲に及ぶものであり、施策の展開に当たっては、全体を俯瞰して総合調整を担うユニバーサル推進室の役割は、非常に大きいものと考えております。

そこで質問ですが、今後はユニバーサル推進室のリーダーシップの下、共生社会の実現に向けたユニバーサル関係施策が大きく進むことに期待しているところでありますが、具体的にどのように施策を進めていくつもりなのか伺います。

答弁

(1)世界平和への貢献に向けた思いについて

〇被爆地である広島でのG7サミットにおいて、初めて核軍縮に関する声明が出されたことは、核兵器廃絶と世界平和の実現に向け、大きな意義があったものと認識。

〇そして改めて、「全世界の市民と相携えて世界平和の実現を望む」という、札幌市平和都市宣言の言葉を深く胸に刻んだところ。

〇今後も、文化やスポーツなどの様々な場面を通じて海外との交流を深め、世界の人々と平和への思いを共有し、次の100年に向け、平和の尊さを伝える取組を、市民とともにしっかりと進めてまいる。

(2)現下の社会情勢を踏まえた補正予算における市長の考えについて

〇この度の補正予算では、第2次まちづくり戦略ビジョンの実現に資するもの、特に、コロナ禍で落ち込んだ経済の活性化や、脱炭素社会の実現に向けた取組などを重点的に計上。

〇市民生活の充実に向けては、省エネ家電等転換キャンペーン事業により家電等の買い替え需要を促進していくことで、一般家庭における脱炭素化の推進と、省エネによる市民負担の軽減を図っていく。

〇同様に、事業者向けには、製造業省エネ・カーボンニュートラル促進支援事業を実施し、中小事業者の設備更新による脱炭素化を加速するとともに、事業者負担の軽減に取り組んでまいる。

〇また、地域経済の基盤強化に向けてスタートアップ企業や商店街への支援などに取り組むほか、多様な観光客の受入環境を整備する宿泊施設への支援などにより、観光需要の回復に対応していく。

〇今後も、物価高騰をはじめとする社会経済情勢を注視のうえ、時機を捉えた効果的な施策を講じてまいりたい。

(3)新たなステージの行政改革の取組について

〇市長就任以来、行政事務センターの設置により、職員が市民サービスの向上に注力できる環境を整備してきたほか、全区役所における総合案内やおくやみ窓口の設置、行政手続きのオンライン化の推進など、市民の視点に立った行政改革の取組を進めてきたところ。

〇一方、複雑多様化する行政課題に対応するには、これまで以上に、市民一人ひとりの状況に耳を傾け、市民の課題に共感し、迅速・的確に対応することが不可欠と認識。

〇これまでも、組織間連携や協働の精神の重要性について、私自身、職員へのメッセージを発信してきたところであるが、今後さらに、自らの組織の枠にとらわれず、市民視点に立って考え、行動する職員の育成を進めてまいる。

〇併せて、官民協働の視点により、市民・企業等と対話をし、その声を反映する仕組み作りを進めるなど、市民目線により課題解決を図る行政運営を一層進めていく考え。

(4)日本版CDC(国立健康危機管理研究機構)と連携した今後の感染症危機に備えた体制づくりについて

〇今後の感染症流行への備えについては、流行初期には原因となる病原体が不明であったり、また北海道や札幌が発生源となることも想定し、対応することが重要と認識。

〇今回の新型コロナウイルス感染症対策等においては、国立感染症研究所から、専門家の派遣を受けるなど密に連携してきたところ。

〇今後は、平時から日本版CDCと言われる機構と連携し、市内の感染症発生動向の中から異変を早期に探知するほか、衛生研究所の検査能力向上を図るなど、感染症危機に備えた体制づくりを進めてまいりたい。

(5)防災DXについて

〇災害時に市民の安全・安心を確保するには、被害の最小化と早期の復旧が不可欠であり、最新のデジタル技術を活用した防災・減災対応の最適化・迅速化が重要であると認識。

〇現在、気象情報や被害情報などの収集に留まらず、人流や交通量などのビッグデータと統合してリスクを予測することで、先手の対応を可能とする防災DXについて検討しているところ。

〇また、防災DX官民共創協議会には札幌市も参画しており、自治体が抱える課題の解決やデータ連携の枠組みなどについて、実証にも積極的に関わることで、実効性の高い取組を実現してまいりたい。

(6)官民連携のまちづくりの推進について

〇札幌市が複雑高度化する地域課題や行政課題の解決に向けて、行政と民間が連携し、互いの知見や技術、ネットワーク等を持ち寄り、新たな価値を共に創出する、先進的な官民連携を目指す考え。

〇まずは、第2次戦略ビジョンに掲げる「スマート」に係る取組を加速させるため、デジタル技術やスタートアップに関する連携体制を早急に構築し、先端技術を活用した実証などを積極的に展開してまいる。

〇加えて、官民連携に係る指針の策定や民間提案を一元的に受け付ける窓口の設置を通じ、官民協働による取組を効果的かつ迅速に実施する“開かれた市役所”を実現し、多様な主体と連携した活力あるまちづくりを推進してまいる。

(7)札幌市のヒグマ対策について

〇ヒグマの個体数が増加している状況下においては、地域の実情に合わせたヒグマの侵入抑制策を持続的・戦略的に実施していくことが大変重要であり、そのためにはヒグマの専門的な知識だけでなく、様々な視点からヒグマ対策について議論することが必要と認識。

〇このため、今後、ヒグマの専門家のほか、教育関係や農林業関係など各分野で活動されている方々を加えた協議体を立ち上げます。

〇この協議体において、侵入抑制策をはじめ、札幌市のヒグマ対策の取組内容を評価し、適宜見直しを図ることで、より安全・安心な暮らしを目指してまいりたい。

(8)婚活支援事業の取組について

〇少子化の傾向を反転させるラストチャンスと言われる今、若者の結婚を後押しし、理想とするライフプランの実現に向けて取り組んでいくことが喫緊の課題と認識。

〇これまで、先進事例の収支構造などを研究し、会員からの登録料を財源として自立的に運営できる持続可能な結婚支援体制の構築について、検討してきたところ。

〇現在、国費活用を含め、自走化に至るまでの段階的な展開を検討しており、事業化に向け、スピード感をもって取り組んでまいりたい。

(9)ユニバーサル施策の推進について

〇1点目のオリンピック・パラリンピック招致による共生社会の推進について

オリンピック・パラリンピックは、単なるスポーツ大会ではなく、大会の招致・開催を契機に札幌のまちが抱える様々な課題について、解決に向けた取組を加速させる原動力となるものと認識。

〇共生社会の推進については、整備水準が向上した東京2020大会のレガシーを参考にし、利用者目線で移動環境や建物等のバリアフリー化を進めるとともに、心のバリアフリーの浸透に向けたパラアスリートとの交流など、ハード・ソフト両面からバリアフリーの取組を進める。

〇また、このようなバリアフリーの取組に留まらず、ジェンダー平等の推進や多様性への理解促進など、共生社会の実現に向けて庁内一丸となることはもとより、企業・市民とともに取組を進めることにより、誰もが暮らしやすいまちづくりを加速してまいりたい。

〇2点目の共生社会の実現に向けたユニバーサル関係施策の推進について

共生社会の実現に向け、ユニバーサル関係施策については、第2次まちづくり戦略ビジョンの終期である2031年度を見据えつつ、早期かつ確実に遂行していく必要があるものと認識。

〇そこで今後は、私を本部長とする「(仮称)ユニバーサル推進本部」を立ち上げ、ユニバーサル推進室が事務局として総合調整を担いながら、全庁的な取組の推進に直ちに着手していく考え。

〇この推進本部の体制の下、市有建築物及び民間建築物のバリアフリー化や心のバリアフリーの浸透に向けた取組を始めとした関係施策について、より具体的な展開プログラムを策定するなど、共生社会の実現に向け札幌市が抱える課題にしっかりと向き合い、多様な関係施策を相互に連携させながら今後更に加速させてまいる所存。

2G7環境大臣会合・GX推進法成立を経ての今後の施策の推進について

質問

(1)脱炭素型ライフスタイルへの転換に向けた取組について

我が党は、これまで「環境の党」として気候変動対策の推進に取り組んできたところであり、2050年までにCO2などの温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルの目標を盛り込んだ「改正地球温暖化対策推進法」を2022年に施行させ、「脱炭素社会」の実現を法的に位置付けました。

国は「脱炭素社会」に向け、産業競争力の強化及び経済成長を同時に実現するため、本年5月に「GX(グリーントランスフォーメーション)推進法」を制定しました。そして、脱炭素化に投資を促す「GX経済移行債」の発行や財源に「カーボンプライシング」の導入を盛り込み、脱炭素化に取り組むインセンティブが働くよう明確化しました。

そのような中、札幌市では、本年4月に「G7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合」が開催され、脱炭素に対する取組を世界に発信し、イベントの開催などを通じて市民に対しても広く啓発活動を実施しました。

本市におけるCO2排出量の多くは家庭から排出され、全体の約4割を占めております。脱炭素社会の実現に向けては、特にエネルギー源として使用する灯油を再生可能エネルギー由来のクリーンエネルギーに変換していくことが必要不可欠であり、ライフスタイルの転換など、市民への普及促進は重要であることから、我が会派では令和3年第3回定例会において、この問題について取り上げたところです。

本市がこれまで実施してきた断熱性能に優れたゼロエネルギー住宅の推進や省エネ家電購入補助などの取組は、寒冷地で生活する市民にとって、脱炭素型ライフスタイルへの転換のきっかけになると考えます。

そこで質問ですが、脱炭素社会の実現に向けたライフスタイルの転換に向けて、札幌の地域特性を踏まえ、どのような観点で取り組んでいく考えか伺います。

(2)脱炭素社会の実現に向けた下水道の取組について

先日、札幌で開催されたG7気候・エネルギー・環境大臣会合においては、脱炭素化にむけて、全ての分野、レベルでの緊急かつ強化された行動を求めるとしております。

札幌市全体の排出量を見てみますと、事業者等の排出量は全体の約6割を占めておりますが、札幌市役所は、そのうち約1割を排出する市内最大級の事業者です。このため、2050年のゼロカーボン達成に向けて、市役所のあらゆる分野で、排出量の削減に率先して取り組む姿を、市民・事業者へ示していくことが重要だと考えます。

これまで実施してきた市有施設への太陽光パネルの設置や、昨年10月から始まった市役所本庁舎での再エネ100%電力の利用開始は評価できる取組ですが、まだ多くの分野で脱炭素化の取組を加速させていかなければならない状況と考えます。

札幌市気候変動対策行動計画によると、市役所の温室効果ガス排出量の用途別構成比は、上下水道・交通・道路等が34.7%であり、インフラ部門の排出が多くを占めています。その中でも、生物を利用した水処理に大量のエネルギーを使用する下水道の排出量は、札幌市役所全体の約2割に上っています。

これまで下水道は、大雨による浸水被害からまちを守り、水環境の保全など快適な都市生活を支える重要な役割を果たしながら、絶えず消費するエネルギーの削減に向けて、施設の省エネに取り組んできました。また、下水熱を活用した雪対策施設など、下水熱や汚泥を資源として捉えた取組も積極的に行い、脱炭素地域の形成に貢献してきたことは、大きな意義があると考えておりますが、大規模な排出事業者として、今後も排出量の削減に率先して取り組む必要があると考えます。

そこで質問ですが、札幌市の目指すゼロカーボン達成に向けて、下水道事業では、今後、どのように取り組んでいく考えか伺います。

答弁

(1)脱炭素型ライフスタイルへの転換を促すための取組について

〇積雪寒冷地である札幌市は、暖房使用によるCO2排出量が多いという課題があり、住宅の断熱性能向上に加え、市内に広く普及している灯油式暖房のエネルギー源をCO2排出量の少ない電気やガスに転換する「熱源転換」が重要な観点である。

〇そこで、熱源転換に係る費用の一部補助や、エネルギー事業者等と連携した、電気やガス式の暖房機器の効果を体感できるイベントなど、各種取組を実施しているところ。

〇G7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合の開催で、脱炭素社会の実現に向けた機運が高まっているこの機会を生かし、熱源転換を始めとした、市民の脱炭素型ライフスタイルへの転換を一層促進してまいりたい。

(2)脱炭素社会の実現に向けた下水道の取組について

〇下水道事業では、これまで省エネ設備の導入や、下水汚泥の焼却熱を利用した蒸気発電の導入等に取り組むことで2016年度から約20%の温室効果ガスを削減してきたところ。

〇今後の更なる削減に向けては、老朽化する施設の再構築の時期を見据え、先進技術を計画的に導入することにより、大きな削減効果が期待できることから、中長期的な方向性を定める(仮称)札幌市下水道事業脱炭素構想を、今年度、策定する予定。

〇構想では、人口減少に応じた施設の統廃合や、処理方式の抜本的な見直しによる削減のほか、雪処理施設への下水熱の供給など下水道の資源を活用した他分野との連携も盛り込み、脱炭素社会の実現に向けた取組を進めていく考え。

3経済施策について

質問

(1)ラピダス次世代半導体プロジェクトを踏まえた札幌市の体制について

今年2月、千歳市に半導体工場を建設することを表明したラピダス社に対し、国も3,000億円を超える支援を表明するなど、官民を挙げた次世代半導体の国産化に向けた動きが本格化しております。

同社が量産を目指すのは、回路線幅2ナノメートルの半導体ですが、ラピダス社は水平分業のファウンドリとは違い半導体の設計、前工程、後工程を一気通貫で請負、顧客のニーズに応じたロジック半導体を社名の通り素早く完成させることで、さまざまな分野においてイノベーションをもたらすことを目指しており、私は開拓精神みなぎる広大な北海道こそ、そうした革新的な技術が生まれる大地であると確信しております。

まずは、試作ラインの稼働と2020年代後半の量産化が難題ですが、あわせてラピダスプロジェクトが成功を収めるためには、関連産業の集積等を進めるとともに、スタートアップ企業による斬新なサービスの提供と、マーケットの開拓が不可欠であります。また技術者や研究員のほか数千人規模の雇用が創出されると見込まれているなど、ラピダス社の進出は北海道全域に好影響を及ぼすものであり、札幌市をはじめとして各市町村においてもそれぞれに積極的に関わっていく必要があるものと考えます。

また今月8日、わが党の半導体基盤強化PTは、政府に対し緊急提言を行いました。大要として、半導体の大規模な生産拠点の立地は、様々な効果が期待される一方で、幅広い課題の解消は、地域の独力では困難なため、地方自治体、産・学、関係省庁も一体となって対応する必要があり、このため、政治が全体を俯瞰しながら先導すべきと前置きしたたうえで、地域における人材育成等については、将来を見据え、裾野拡大にも資するSTEM(スティーム)教育の促進や、新たな付加価値を生み出すDXやイノベーションの促進を、そして中長期的に対応すべき事項として、立地投資による中小等の関連企業・地域経済への波及と人材育成の好循環が自律的に三位一体で起きるエコシステムの確立などを提言したところであります。

そこで質問ですが、ラピダス社の進出による札幌市への影響の認識と、企業や人材を引き寄せる効果的な発信や、他市町村と綿密な連携の必要性を踏まえ、今後どのような体制で取り組んでいくのか伺います。

(2)丘珠空港における路線就航の効果と認知度向上について

本年3月26日に、株式会社フジドリームエアラインズが、丘珠空港の定期便として9路線目、道外路線としては4路線目となる丘珠=小牧線を新規就航させました。

この就航によって、「自動車関連産業」や「ものづくり産業」などが盛んな名古屋圏と、「食関連産業」や「観光産業」が盛んな札幌圏が結ばれ、新たなビジネス創出や、互いに大都市圏であることを背景に観光需要が期待されるところであります。

今般、防衛省と国土交通省が管理する共用空港である丘珠空港において、運航ダイヤを始めとした様々な調整を必要とする中で、新規路線の開設に至ったことは、関係者の御尽力の賜物であると認識しております。

札幌丘珠空港と名古屋小牧空港はいずれも都市の中心部に近い空港であることから、丘珠=小牧線の新規就航は、両都市間の往来の活発化に寄与し、コロナ禍で落ち込んだ交流人口の復活に資するものと期待しております。

実際の利用例としても、日帰りで札幌・北海道の観光を楽しんだ方、地元の中部圏に帰省した方など、定期便の利点を生かした新たな需要の兆しが見られ、搭乗率も70%を超える上々の滑り出しであったと報道されております。

このように、新規路線の就航によって、都市圏を結ぶ移動手段が増えることは、人々の利便性の向上だけではなく、それぞれの就航地でのビジネス・観光といった経済活動などを牽引するものであります。

今後の路線就航の増加については、昨年、札幌市が策定した「丘珠空港の将来像」においても想定されているところであり、現状よりも離発着回数が増えることとなります。

路線の拡大はあくまでも航空機騒音の環境基準内で行われるものであり、そのことをきちんと説明していくことはもちろんでありますが、新たな路線の就航が札幌市・北海道にもたらす利便性や経済効果などについてもしっかり情報発信し、多くの方にその意義を理解していただくことも重要と考えます。

そこで質問ですが、丘珠空港における路線就航について、その効果をしっかり情報発信していく必要があると考えますが、札幌市のお考えを伺います。

また、路線の維持には、空港自体の認知度も向上させ、利用促進を図る必要があります。全国の地方空港では、例えば、空港限定のお土産やグルメスポットを設けたり、出雲縁結び空港や高知龍馬空港など愛称によって注目を高めたりと、多様な展開が図られております。

丘珠空港においても、札幌市民だけではなく、道内、また道外を問わず、より多くの方に丘珠空港を認知していただき、利用を促進して路線の維持・拡大を図り、札幌・北海道の活力向上を図っていく必要があります。

そこで質問ですが、丘珠空港の認知度について、現状、札幌市はどのように認識しているのか、また、認知度向上に取り組むべきと考えますが、いかがか伺います。

(3)持続可能なデマンド交通の仕組みづくりについて

地域公共交通は、人口減少やマイカー利用の普及、ライフスタイルの変化等による長期的な利用者の落ち込みにより、大変厳しい状況に置かれています。加えて、新型コロナの影響により、一気に10年以上時間が進んだとの見方があるほど深刻な状況にあります。

市内のバス路線を見ても、運転手不足の深刻化も相まって、路線の減便や廃止が行われております。私の元にも地域から不便になったという声が寄せられており、市民生活への影響を実感しているところです。

こうした状況を踏まえ、国では、4月に成立した改正地域公共交通活性化再生法において、各自治体が利便性や持続可能性の高い地域公共交通ネットワークへと再構築を進める重要な視点の一つとして、自治体、交通事業者と、地域の多様な関係者との連携と協働を示しています。

地域公共交通は、市民生活を支えるインフラであり、まちづくりにも直結するものであり、札幌の価値や魅力を高めるためにも持続可能性が求められます。

そうした考えのもと、我が会派では、デマンド交通を地域公共交通、とりわけ、郊外部における交通手段の一つとして、大いに期待し、これまでも議会で取り上げてきたところです。

その結果、手稲区で市内初となる実証実験が昨年11月から開始され、2例目となる実験も南区で予定していると聞いています。

デマンド交通は、ワゴン車など小型車両で運行可能なため、大型二種免許の保持が必要なく、運転手確保策として期待する一方で、持続可能性という点では課題があります。

AI予約管理システムや電話予約受付オペレーターの配置など、路線バスにはないコストもかさみ、全国的にも、交通事業者の経営努力のみでは持続困難な事業と認識しています。

デマンド交通の持続可能性を確かなものとするためには、例えば、利用する方には地域の商業施設で特典があるなど、移動手段としての付加価値を高めて、デマンド交通を地域全体に愛される存在にしていくことが重要と考えます。

そこで質問ですが、持続可能なデマンド交通の仕組みづくりについて札幌市はどのように取り組んでいく考えか伺います。

(4)将来を見据えたシニア層の労働力を生かす新たな取組について

秋元市長は、経済が活性化し社会が潤う街をつくるとし、経済界、労働界と協力して雇用環境の改善に取り組むとの政策を公約に掲げました。

これまで我が会派では、将来を見据えた労働力として高齢者雇用の取組推進を議会で何度も取り上げてきたところです。

現在、我が国の総人口は2022年10月時点で1億2,494万人、うち65歳以上の高齢者は3,623万人で、高齢化率は29.0%となっております。

そのような状況を踏まえ、内閣府の「高齢社会対策大綱」では、65歳以上の人を一律に高齢者と捉えるのはもはや現実的なものではなくなりつつあり、今後は年齢による区別をなくし、意欲や能力に応じて活躍できるエイジレス社会を目指すとしています。

2065年には総人口が8,808万人まで減少し、高齢化率は38.4%まで上昇が予測される中、厚生労働省の就業者数シミュレーションでは、経済成長と労働参加が進まない場合、2040年には1,285万人の就業者数の減少が見込まれています。

一方、経済成長と高齢者等の労働参加を順調に進めることができれば、就業者数は506万人の減少にとどまると試算されております。

こうした推計は札幌市においても当てはまり、人口減少や少子高齢化に歯止めがかからない現状を踏まえると、若年層の労働力に頼るだけでは立ち行かなくなるのは明らかです。

さらに国の調査では、65歳を超えても働きたいと希望する高齢者は回答者全体の約6割にまで達しており、そのうち、「働けるうちはいつまでも」と回答した人の割合は約2割に上り、高齢者の就労意欲は高いといえます。

2021年4月に施行された国の高年齢者雇用安定法の改正では、70歳までの就業確保措置が努力義務となり、企業側は、今後、さらに高齢者雇用について検討することが求められており、他都市においても、協議会を立ち上げて積極的に他団体と連携し、高齢者雇用の推進に取組む事例も出てきました。

そこで質問ですが、札幌市においても、働きたいと考えている高齢者の方々がますます活躍できるような新たな取組を進めるべきと考えますがいかがか伺います。

(5)札幌版DMOの設立について

我が会派は、これまで本市の観光産業のさらなる発展のため、観光戦略を立てる際に民間のノウハウや専門人材の登用を訴えてきており、先の第1回定例市議会の代表質問においては、ポストコロナにおける観光マーケティングの重要性や、今後の札幌観光の推進体制の強化について質疑を行い、DMOの設立など、体制強化に向けた検討が進められることを確認したところです。

そして、秋元市政3期目の公約として、観光地域づくり法人、いわゆるDMOを設立し、持続可能で安定的な観光・MICE産業を構築することが掲げられました。

こうした中、令和4年度に次期札幌市観光まちづくりプランの策定に向けて設置した検討委員会において、推進体制の強化について検討が行われ、先月16日に検討委員会から「観光地経営を実践する札幌版DMOを設立し、札幌の観光の推進体制の強化を図ること」、「設立に当たっては、DMOの目的、組織体制、財源、人材、市との役割分担などについて、柔軟に検討を行なうこと」との提言がありました。

本市にもようやく観光客が戻ってきているとはいえ、観光産業ではいまだ新型コロナウイルス感染症により受けた影響は大きく、一日でも早く観光関連事業者が「稼げる」環境をつくるために、観光の推進体制を強化する必要があります。

消費額の増加、観光繁閑期の平準化、インバウンドの誘客などに向けて、都市型スノーリゾートやアドベンチャートラベル、MICEの推進など「稼げる」環境を作るとともに、検討委員会からの提言をしっかりと受け止め、札幌版DMOの設立に向けた検討を早急に進めていただき、世界から選ばれ続ける持続可能な観光都市を目指してほしいと考えます。

そこで質問ですが、この提言を受け、札幌版DMOの設立に対する市長の認識について伺います。

答弁

(1)ラピダス次世代半導体プロジェクトを踏まえた札幌市の体制について

〇ラピダス社の進出により、雇用の場が増えるだけではなく、製造に従事される方のほか高度な技術者や研究者など、国内外から来る多くの方が、札幌市内にも居住することが想定される。

〇また、自然共生型の工場の建設や同社が目指すきわめて省電力で環境性能に優れた半導体の製造により、環境分野を始め関連産業に新たな投資が生まれるなど、札幌にも幅広く影響が及ぶものと認識。

〇今後速やかに、この好機を生かすための具体的な取組を検討すべく、部局横断の会議体を立ち上げ、ラピダス社や関連企業、大学、他自治体ほか関係機関等と連携を図りながら、地域経済全体の発展に向けて取り組んでまいりたい。

(2)丘珠空港における路線就航の効果と認知度向上について

〇丘珠空港における路線の就航及び拡充については、移動手段の利便性向上に加え、交流人口の増加に伴う地元への経済効果、更には災害時の代替経路を担うなど、様々な意義があるものと認識。

〇今後は、これらの意義や効果等を市民に理解していただくことが重要であることから、丘珠空港を紹介するイベントやニュースレター、市のホームページなど様々な機会を捉えて、幅広く発信してまいりたい。

〇また、丘珠空港の認知度については、道内では就航地を中心に徐々に認知が広まってきている実感はあるが、通年での運航が少ない道外ではまだ低いと認識。

〇このため、新規路線を中心に、就航先の自治体と連携して丘珠空港の周知を行うほか、今後の地域住民との協議の場などで全国の地方空港の取組を紹介し、ご意見を伺いながら、丘珠空港の魅力や認知度の向上に取り組んでまいりたい。

(3)持続可能なデマンド交通の仕組みづくりについて

〇デマンド交通は、買い物や通院など日常的な外出を支えるほか、新たな外出機会を生み出し、まちの活性化や健康増進などにも寄与する取組であり、今後の地域交通の在り方の一つとして期待。

〇一方、継続的にデマンド交通を運行するためには、地域住民の一定の利用があることに加え、運賃収入以外の収益源を確保することなどが課題になると認識。

〇今後は、地域の理解を深めるとともに、地域の事業者から利用促進のアイデアや協賛金を提供いただく仕組みをつくり、持続可能なデマンド交通の実現に向けて取り組んでまいりたい。

(4)将来を見据えたシニア層の労働力を生かす新たな取組について

〇札幌圏の企業の採用意欲が回復してきた一方で、今後も生産年齢人口の減少が見込まれ、企業の人手不足が懸念される中、就労意欲のある高齢者にご活躍いただくことは重要であると認識。

〇そこで今年度、「札幌市働き方改革・人材確保サポートセンター」を立ち上げ、中小企業に対する人材確保の支援を進めるとともに、就業サポートセンター内に、企業側から高齢者をスカウトするシニア人材バンクを新たに開設したところ。

〇今後は、これらの取組を通して、企業のニーズを的確に把握し、働きたいと考えている高齢者の能力と経験が活用されるよう、よりきめ細やかにサポートしてまいりたい。

(5)札幌版DMOの設立について

〇民間が持つ機動性や専門性を生かしながら、戦略的かつ地域一体となった観光地経営を推進していく体制として、DMOは最も有効な手法であると認識。

〇具体的には、専門的知識に基づくデータ分析、観光戦略の立案といった高度な観光マーケティングや、産学官民の連携による効果的な施策を実施するためのマネジメントが可能となる。

〇今後は、観光地域づくりの舵取り役となるDMOの設立に向けた検討を進め、札幌の基幹産業である観光業が力強く発展できる体制を整えてまいりたい。

4今後の認知症施策について

質問

我が会派ではこれまでも、認知症施策は共生社会の実現に向けて重要なものと捉え、関連する質疑を重ね、一昨年には一般社団法人北海道介護支援専門員協会とケアラー支援に関する調査書もまとめたところです。その調査では、認知症・高齢者のケアラー支援では緊急時でも安心して預かってくれる場所を6割の方が求めている事や、医療連携等の課題も浮き彫りになりました。

こうした中、国では、我が党が一貫して必要性を訴え、超党派の議員連盟で検討していた「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が成立したところですが、これは今般の認知症の増加を鑑み、尊厳を保持しつつ希望をもって暮らせる共生社会の実現を推進することを目的に、国及び地方公共団体の責務を明らかにするものであり、認知症施策の進展に期待をしているところです。

札幌市においても、市長公約で、認知症の方やサポートする方への支援の充実を掲げるとともに、第2次札幌市まちづくり戦略ビジョンにも、ユニバーサル、ウェルネスが重要概念として掲げられているところであり、基本的な方針は一致していると認識しております。

先に述べた新法の基本的施策では、地域における見守り体制の整備、本人や家族の孤立防止のための交流活動の支援等を強化が示されており、このような取組を総合的かつ計画的に推進する必要があると考えます。

国はこのような施策の一つとして、地域において把握した本人や家族の身近な支援ニーズ等と、地域のボランティアを中心とした支援者をつなぐ「チームオレンジ」の仕組づくりを進めていますが、認知症と思われる初期の段階から予防的な取組を実施することは、早期相談、早期支援の充実のために大変有効です。

こういった予防的な施策については、効果が出るまでには時間はかかりますが、「アクションプラン2023」の計画事業としてしっかりと位置づけ、計画的、重点的、継続的に取り組まなければ、認知症の方が安心して暮らせる地域の実現はかなわないのではないでしょうか。

そこで質問ですが、共生社会の実現のため、認知症施策を今後どのように強化していくのか伺います。

答弁

〇認知症施策の強化については、今後の認知症高齢者の増加を踏まえ、早急に取り組むべき課題と認識。

〇中でも、認知症の方の意思を尊重した社会参加、家族の負担軽減、地域のボランティアの参画が一体的に提供される「チームオレンジ」の体制を整備することは、認知症になっても尊厳を持って暮らし続けられる共生社会の実現に大変重要と考えている。

〇今後は、認知症施策の強化を「アクションプラン2023」や、2040年を見据えた地域包括ケア体制の基盤づくりを目指す「高齢者支援計画2024」に位置付けることを含め、計画的に取り組んでまいる。

5誰一人取り残されない教育について

質問

文部科学省が公表している直近の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果によれば、不登校児童生徒数が増加し続け、全国の小学校及び中学校で約24.5万人、高等学校と合わせると約30万に上り過去最高となりました。

こうした不登校児童生徒の増加傾向は本市も同様であり、大変憂慮すべき状況であります。

そのため、我が会派ではこれまで議会において、さまざまな理由により不登校になっても教育を受ける機会の確保を求めてきたところであり、1人1台のタブレット端末の活用等により、不登校支援の拡充が図られました。さらに今後は、メタバースの活用による不登校支援も期待するところです。

そのような中、本年3月、文部科学省はこれまでの不登校支援に関する具体策等を取りまとめ、学びの保障に向けた不登校対策、「COCOLO(ココロ)プラン」を発表し、各自治体に通知しました。

本プランでは、「不登校の児童生徒全ての学びの場を確保し、学びたいと思った時に学べる環境を整える」、「心の小さなSOSを見逃さず、チーム学校で支援する」、「学校の風土の見える化を通して、学校をみんなが安心して学べる場所にする」という3本の柱が示されております。

これまで我が会派が求めて来たように、不登校の子どもたち全てに学びの場を確保する取組を進める事はもちろんですが、「不登校になる前に気付いてあげることができたら」、との切実なお声も会派に寄せられている事からも、不登校に至る前の段階での対応に、より力を入れて行く必要性を強く感じています。

ココロプランにもありますが、子どもの心の小さなSOSを察知して見逃さず、早期に寄り添い支援に繋げることは、不登校のみならず、子どもが直面するさまざまな問題の長期化、深刻化を未然に防ぐためにも重要な視点と考えます。

そこで質問ですが、より一層早い段階から子どもの困りや悩みに寄り添い対応するなど、誰一人取り残されない教育の充実が重要と考えますが、今後、教育委員会としてどのように取り組もうと考えているのか伺います。

答弁

〇これまで、子どもの困りや悩みについては、教職員が早い段階から寄り添い、スクールカウンセラーと連携しながら不安の解消に努めるとともに、教育支援センターにおける不登校支援などにも力を入れてきた。

〇しかしながら、昨今、子どもを取り巻く生活や環境が大きく変化する中、子ども一人ひとりの困りや悩みが複雑化・多様化しており、より丁寧に向き合っていくことが重要と認識。

〇そのため、1人1台端末を活用して、子どもの心や体の日々の変化を見えるようにすることで、問題が表面化する前から、教職員が子どものサインを確実に捉え、学校全体で必要な見守りや支援を行うことができる取組を検討しているところ。

〇今後、オンラインによる学習支援を含めたICT活用の幅を広げるとともに、心理・福祉の専門家との連携を一層強めるなど、個に応じた支援の更なる充実を図り、誰一人取り残されない教育を確実に推進してまいる。