札幌公明

議会報告Assembry report

2023/12/06 令和5年第3回定例議会

令和5年第3回定例議会2023/12/06

代表質問よしい七海議員(豊平区)

札幌市議会本会議において公明党議員会を代表して よしい七海 議員が代表質問を行いました。
以下、質問とそれに対する答弁の要旨を紹介します。

目次Contents

  • 市長の政治姿勢について
    • 物価高騰対策について
    • 令和6年度の当初予算編成の考え方について
    • 持続可能な公共交通へ向けた地域交通の確保について
    • 今後の暑さ対策について
    • 今後の冬季オリンピック・パラリンピック招致について
    • 「(仮称)こども本の森」に係る基本合意書の締結について
    • 札幌市における宿泊税の使途の考え方について
  • 市民に寄り添う医療・福祉について
    • こどもホスピスづくり支援に向けた国との関わりについて
    • 幸齢社会を見据えた敬老パス事業の見直しについて
    • 生涯を通じた歯科口腔保健対策の推進について
    • 障がいのある方への就労支援について
    • ひきこもり支援の強化について
  • 経済・まちづくりについて
    • 災害に強いまちづくりと建設産業の担い手確保について
    • 若者の多様なライフスタイルを実現する企業誘致について
    • 札幌市多文化共生・国際交流基本方針で目指す都市像について

1市長の政治姿勢について

質問

(1)物価高騰対策について

昨今の物価高騰は、特に支出全体に占める生活費の比率が高い低所得者層ほどその影響が大きく、市民は食費の節約等により日々の生活を凌いでいる状況です。

長期に及ぶ食料品などの値上げが家計を圧迫する中、本来であれば、持続的な賃上げにより家計の所得向上を実現すべきところですが、毎月勤労統計調査における北海道の結果を見ると、2020年を100とする名目賃金の本年8月の指数は、前年同月から変わらず99.4となっており、急激な物価高に賃上げが追い付いていません。また、実質賃金の指数についても、本年8月の全国平均が95.9であるのに対して、北海道は91.4と、依然として道内経済の厳しさが伺えます。

賃上げの流れが国民に広く及ぶまでの間、市民の生活を支えるため、早急な対策が必要です。

我が会派では、これまで「所得税減税で家計を支える」「低所得世帯への迅速な給付金の支給」「燃油・光熱費補助の来春までの継続」の3つの還元策を訴えてきましたが、この度、その全てが国の経済対策に盛り込まれ、11月29日に成立した国の令和5年度補正予算において、低所得世帯への支援としての7万円の給付金のほか、自治体が実施する物価高対策の財源となる「重点支援地方交付金」の増額が決定されたところです。

札幌市においては、一連の国の動きも踏まえ、生活者支援に重点を置いた支援策を取りまとめ、本定例会に予算の提案があったことは評価をするところです。

しかし、物価高騰対策は、予算化がゴールではなく、速やかに事業に着手し、支援を行き届かせることが重要です。

可処分所得を増やし消費が十分できる環境を整えるまでの「つなぎの措置」として、国の定額減税との合わせ技で、低所得世帯をはじめ、苦しい生活を強いられている市民に対する支援について、スピード感をもって対応していただきたいと考えます。

そこで質問ですが、本定例会において提案された物価高騰対策に対し、それぞれどのようなスケジュールで取り組み、いつ市民に行き渡るのか、伺います。

(2)令和6年度の当初予算編成の考え方について

我が国の経済情勢は、これまでのコロナ禍における厳しかった3年間を乗り越え、改善しつつある状況であり、今年度4~6月期GDPは、3四半期連続のプラス成長となり、過去最高の水準となりました。

一方で、海外情勢を背景とした国際的な原材料価格の上昇等による物価高騰への対策は引き続き終わりが見えず、消費者物価は前年比4.0%を超える高水準で上昇基調が続いているなど、予断を許さない状況と言えます。

そのような中、先ほども述べましたが、国も「デフレ完全脱却のための総合経済対策」として低所得世帯への支援に加え、物価高騰の影響を受けた生活者や事業者を引き続き支援するとしています。

一方、札幌市では9月に第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン・アクションプラン2023の素案を公表しましたが、まちづくりの重要概念の一つである「ユニバーサル」、共生社会の実現にかかる取組が、我が党の目指す「絆社会」の実現に資するものであることから、我が会派からも、先の第3回定例市議会の代表質問や総務委員会において、その位置付けや考え方についてしっかり確認したところであります。

このような中で迎える令和6年度予算編成は、秋元市長3期目における最初の本格予算であり、施政方針に掲げる「誰もが安心して暮らし生涯現役として輝き続ける街」「世界都市としての魅力と活力を創造し続ける街」の実現に向けて、アクションプラン2023の素案を踏まえ具体的に取り組む第一歩でもあります。

国において進めている物価高騰対策を始め、現在、喫緊の課題への対応に柔軟に対応しながらも、共生社会の実現に資する取組を始め、重要な計画事業に対してしっかりと着手していく必要があり、難しい予算編成となることが予想されます。

そこで質問ですが、3期目となる秋元市政最初の本格予算となる令和6年度当初予算編成の考え方について伺います。

(3)持続可能な公共交通へ向けた地域交通の確保について

全国的な課題であるバス運転手不足は、札幌市においても深刻化しており、今年12月の路線バスの冬ダイヤ改正において、路線の廃止や短縮、減便、バス停の廃止が行われ、市民生活に多大な影響を与えている状況であります。

バス交通を取り巻く事業環境は、現在の運転手不足が加速する懸念もある中、新型コロナウイルス感染症の影響などにより大きく悪化しているほか、ライフスタイルの変化や人口減少による長期的な利用者減も想定され、今後もバス路線のサービス水準が維持されるのかどうか、不透明な状況と言わざるを得ません。

このような緊迫した現状を踏まえ、先日11月10日、我が会派は秋元市長に対して「持続可能な公共交通ネットワーク構築に向けた緊急要望」を提出し、7項目にわたる政策提言を行いました。具体的には、バス減廃便による影響調査の実施をはじめ、バス運転手の確保と定着に向けた支援策、デマンド交通など代替交通の円滑導入を支えるコーディネーター制度の創設、MaaSの導入、交通体系の基軸となる地下鉄延伸などを要望し、市長からは、「交通空白地帯をつくらないよう、スピード感をもって取り組む」とのことでありました。バスネットワークに依存する豊平区南部から清田区地域については、市民の足を守るという観点から、公共交通機能を強化する必要があり、地下鉄延伸についての検討を早急に開始すべきであると指摘しておきます。

これまでも我が会派は、バス路線の減廃便をカバーする代替交通として、デマンド交通の導入を繰り返し主張し、現在は実証運行が実施されているところです。

今後は、運転手不足によるバス路線の減便等を踏まえ、市内各地域の特性に合った移動手段の導入に取り組むべきであり、これを円滑に進めるためには、地域と様々な民間事業者との連携を含めてサポートするコーディネート機能を持つ必要があると考えます。

そこで質問ですが、市民の足を守る持続可能な公共交通ネットワークの構築に向けて、各地域の特性に合った交通の確保に当たってどのような考えで臨んでいくのか伺います。

(4)今後の暑さ対策について

この夏の猛暑は、過去最高気温となる36.3度を記録するなど、熱中症による救急搬送の急増や、一部の学校で臨時休校措置が取られたことをはじめ、市民生活に多大な影響を及ぼしました。

本年8月、我が会派では、秋元市長に対する緊急要望として、災害ともいえる暑さに頻繁に見舞われる近年の状況を踏まえ、これまでの認識を大きく変えて命に関わる問題と捉え直し、夏の暑さ対策を強化するよう求めました。

その結果、まちづくり戦略ビジョン・アクションプラン2023において、市長は、子どもたちが安全・安心に学ぶ環境を確保するため、全ての市立学校の普通教室等に冷房設備を設置するという大きな決断を下されたところであり、それ自体は一定の評価をいたします。

一方、アクションプラン2023では、生涯現役で学び、自分らしく活躍できる社会の実現を目指すため「ウェルネス」にも重点的に取り組むこととしています。現在、高齢者等の生活の場である福祉施設や地域住民の活動拠点であるコミュニティ施設においても、エアコンが設置されていない施設がありますが、今回の計画では事業化されておらず、市民の健康や地域活動への影響が危惧されます。

札幌市では、こうした気候変動などへの対策として、長期的な視点で再生可能エネルギーへの転換などの取組に重点を置いており、それ自体は重要なことですが、近年の猛暑のような、市民の生命や健康に影響を及ぼしかねない目の前の状況を、もっと重視すべきではないでしょうか。

社会の変化が加速する今日においては、計画策定時に具体化していない事柄であっても、社会情勢やニーズの変化に対して迅速かつ柔軟に対応していくと伺っており、今後進めていく暑さ対策の方向性を市民に示した上で、具体の取組を進めていく必要があると考えます。

そこで質問ですが、市長は、近年の猛暑を踏まえた今後の暑さ対策について、どのように考えているのか伺います。また、公共施設等への冷房設置について、どう対応していくのか、併せて伺います。

(5)今後の冬季オリンピック・パラリンピック招致について

オリンピック・パラリンピックは、世界最大のスポーツイベントであり、札幌市としても、スポーツを通じたまちづくりの起爆剤として大きな期待を持ちつつ、足かけ約9年にわたり招致活動を進めてきたところです。

その過程では、2017年の冬季アジア大会、東京2020大会のマラソン、競歩、サッカーなど、様々な国際大会が開催され、札幌市の魅力や競技運営能力の高さを示すきっかけになったほか、再開発等のまちのリニューアルも進むなど、大会はまさにまちづくりのマイルストーンともなってきました。

しかしながら、11月29日のIOC総会で2030大会と2034大会の開催地が事実上内定したこと、更には2038大会についてスイスと優先的に対話を進めるとされたことを受け、大会開催の可能性は遠い将来のものとなってしまいましたが、オリンピック・パラリンピックが本来持つ、スポーツを通じた相互理解の推進等、共生社会の実現やまちづくり全般を加速させる価値や力は、今後もゆるぎないものと考えます。

また、札幌市が今後もオリンピック・パラリンピックを招致するのかしないのか、様々な報道がある中、市民も混乱している状況であり、正しい情報を伝えるためにも、招致に係る態度を明確にすることが求められているところです。

そこで質問ですが、2038年以降のオリンピック・パラリンピック冬季競技大会の招致について、どのようにお考えか伺います。

(6)「(仮称)こども本の森」に係る基本合意書の締結について

昨年12月、札幌市と北海道大学は、相互に協力・発展しながら、地域課題や社会課題の解決に寄与していくことを目的として包括連携協定を締結し、今月で1年を迎えます。

近年、ますます多様化、複雑化する地域課題や社会課題に対しては、行政だけで解決することが難しくなってきており、北大が有する知見や人材と札幌市のまちづくりが連携して諸課題の解決に向けて取り組んでいくことは、札幌の魅力や活力を維持・向上させる上で、大変重要な意味を持つものと考えます。

そうした中、去る11月7日、北大、安藤忠雄建築研究所及び札幌市の三者で、北大構内に建設が予定されている「(仮称)こども本の森」に係る基本合意書が締結されました。

「こども本の森」は、世界的な建築家である安藤忠雄氏が、子どもの本を読む機会を増やすために設計・建築し、施設を自治体に寄附して運営される子ども向けの図書施設で、これまで大阪市、岩手県遠野市、神戸市で設置されているほか、熊本県、松山市でも開館が予定されております。

札幌では、北大が安藤忠雄建築研究所から建物の寄付を受けて所有・管理を行い、札幌市が新たな図書館として運営に参画すると伺っており、大学構内に整備される点が、先行事例と大きく異なる特徴と認識しております。

本事業は、札幌市と北大の包括連携協定に資する取組であるとともに、札幌市の図書館サービスの更なる充実をもたらすものであり、子どもの読書活動を積極的に推進してきた我が会派としては、非常に意義のあることと考え、この事業が充実したものとなるようしっかり臨んでいただきたいと期待をしているところです。

そこで質問ですが、「(仮称)こども本の森」に係る基本合意書の締結に当たっての市長の思いと、どのような施設を目指すのか市長の考えを伺います。

(7)札幌市における宿泊税の使途の考え方について

札幌市では、2019年から宿泊税の導入について検討を始め、新型コロナの影響で一時中断していたものの、今年度に入って社会経済活動が急速に回復する中で、検討のスピードが上がっていると感じております。

新たな税制度を導入するに当たっては、「その目的」「税収の見込み」「使途」の3点が極めて重要であり、これらの点を十分に検討すべきと考えます。

中でも特に「目的」が重要ですが、札幌市では、観光振興のレベルアップを目的とした法定外目的税として宿泊税の導入を目指しており、先日11月8日に開催した市内の観光関連団体や宿泊関連団体への説明会では、札幌の観光振興をしっかりと進めるという目的のために宿泊税を導入したいとした上で、税収の見込み額27.5億円とともに、これを活用する具体的な使途を示しました。

札幌市のこうした考え方に対して、事業者からは、「こういう使途であれば賛成という声が地域の中でも上がっている」といった声があった一方、「宿泊者に課税の意図を説明できるよう、使途をより詳細に示して欲しい」などの声も出ていたようであります。

総体として一定のご理解を得ており、宿泊税の導入に向けた大きな一歩を踏み出したものと考えておりますが、使途については、さらなる深堀りを行い、より具体的なものを示していくことが必要と感じております。

そこで質問ですが、札幌市が案として示している宿泊税の使途の考え方について改めて伺うとともに、使途のさらなる具体化をどのように進めていくのか、市長の考えを伺います。

答弁

(1)物価高騰対策について

〇今回補正予算に計上した物価高騰対策は、幅広い市民生活を守るための支援に主眼を置いたものであり、その支援がいつ市民に届くかは非常に重要と認識している。

〇低所得世帯への給付金については、今年度実施している給付金の対象者情報などを生かし、議決いただいた後速やかに準備に着手し、来年2月中の支給開始を目指し準備を進める。

〇学校給食費については、令和3年度から据え置いている家庭の負担を、公費により、来年度も同水準を維持する。

〇プレミアム付き商品券の発行については、今年度実施した際の課題整理や他都市事例の調査を踏まえ、次の実施に向けた制度設計を今年度中に行い、出来る限り早い時期に利用いただけるよう、準備を進めてまいる。

〇市民に一日でも早く必要な支援を届けられるよう、しっかりと取り組んでまいりたい。

(2)令和6年度の当初予算編成の考え方について

〇令和6年度の当初予算は、施政方針に掲げる「誰もが安心して暮らし生涯現役として輝き続ける街」及び「世界都市としての魅力と活力を創造し続ける街」の実現に向け、アクションプラン2023に基づく編成を行っていく。

〇具体的には、アクションプランがスタートした後の最初の本格的な予算となることから、当初予算は特に重要なものと考えており、中期財政フレームを踏まえつつ、プランに掲げた政策的事業に対し必要な資源を重点的に配分していく。

〇加えて、物価高騰対策にも引き続き取り組むなど、今後も喫緊の対応が求められる課題については、当初予算のほか補正予算などにおいても機動的に対応してまいる。

(3)持続可能な公共交通へ向けた地域交通の確保について

〇深刻化する運転手不足を背景にバス路線の再編が今後も進むことによって、交通利便性が著しく低下する地域の生活交通をどのように確保していくかは、重要な行政課題であると認識。

〇こうした地域の生活交通の確保に向けては、一定の基準に基づき札幌市が代替手段を検討するほか、よりきめ細かな交通については、地域の実情をよく知る地域住民が主体となった取組も有効な手段の一つになり得る。

〇一方で、こうした地域の取組では検討体制の確立や運営収支の確保が課題となるため、検討初期から市職員や専門家が伴走するとともに、運営面も支援する仕組みを確立し、地域において検討しやすい環境を整えてまいりたい。

(4)今後の暑さ対策について

〇この夏の猛暑を始めとする近年の気象状況を考慮すると、市民の健康を守るための暑さ対策は喫緊の課題であり、その対応を進めていかなければならないものと認識。

〇現在策定中の「札幌市強靱化計画の改定案」においても、猛暑を新たな社会情勢の変化として捉え、計画に反映させているところ。

〇公共施設等への冷房設置については、学校施設への整備を先行して決めたところであるが、その他の施設についても、今後の対応を検討するに当たり、現状や課題を把握するための調査に着手した。

〇今後は、これらの調査結果を踏まえ、対象とする施設や整備スケジュールなど、公共施設等への冷房設置に関する方針を取りまとめてまいりたい。

(5)今後の冬季オリンピック・パラリンピック招致について

〇IOCは将来のオリンピック・パラリンピック冬季競技大会について、気候変動の影響により、開催可能な地域が減少することを考慮し、競技の分散開催や持ち回り開催等の検討を継続しており、大会の在り方が大きく変化することも予想されるところ。

〇また、社会経済情勢が急激に変化する中、少なくとも15年以上先の札幌市がどのような課題を抱え、その解決に向けたまちづくりに対し、大会の開催がどのような効果を発揮するのか見通せない状況であることから、立ち止まって考える必要があるものと認識。

〇今後、オリンピック・パラリンピックとどのように向き合っていくかについては、早期に関係者と協議し、その方向性を明確にしたいと考えている。

(6)「(仮称)こども本の森」に係る基本合意書の締結について

〇このたびの北海道大学、安藤忠雄建築研究所及び札幌市の基本合意は、未来を担う子どもたちにとって大変意義深いものであり、札幌市と北大で締結した包括連携協定の成果の一つと認識。

〇(仮称)こども本の森は、安藤氏が提供する素晴らしい建築空間の中で、子どもたちが本に親しみ、広い世界や将来の夢に思いを巡らせる、学びと成長の場となるもの。

〇北大という立地特性を生かし、本のみならず、大学の「知」に触れることができる、他に類を見ない「知の空間」として、札幌や北海道の子どもたちにプラスになるものと大いに期待を寄せている。

〇運営に携わっていく札幌市としては、北大との連携を深めながら、地域、日本、そして世界に貢献できる人材の育成に資する施設を目指してまいりたい。

(7)札幌市における宿泊税の使途の考え方について

〇宿泊税の使途としては、例えば、段差の解消や大型コインロッカーの配置といった移動環境の整備、わかりやすい観光案内表示の充実など、より快適に過ごせるための受入環境の整備を中心に、納税者となる来訪者に御納得いただけることを重視してお示ししたところ。

〇加えて、より魅力的な観光地であるための観光資源の魅力向上や、持続可能な観光地であり続けるための、宿泊業をはじめとした観光業界における人材育成やデジタル技術を活用した省力化、SDGsへの配慮などにも活用したいと考えている。

〇今後は、宿泊税の導入に向けた関連業界の皆様への説明の場などを通じて、丁寧な意見交換を行い、ニーズの把握に努めながら、使途のさらなる具体化を進めてまいりたい。

2市民に寄り添う医療・福祉について

質問

(1)こどもホスピスづくり支援に向けた国との関わりについて

昨年の第2回定例市議会において触れたとおり、我が党は、2021年マニフェストで、小児がんや難病など命を脅かす病気等を患う子どもとその家族を支えるため、安全・快適な子どもの学びや遊び、子ども同士や、家族の交流の場所となる「こどもホスピス」の設置を全国各地で目指すことを掲げ、党として様々な取組を進めてまいりました。

日本では、こどもホスピスという制度がなく、子どもや家族への支援は医療、介護、福祉、教育の制度のはざまに落ちており、イギリスのような、寄付文化の発達した国とは状況が異なり、小児がん患者などを地域で支える仕組みがないと言われております。

そのような中、道内では、「北海道こどもホスピスプロジェクト」という民間団体が、札幌市内に仮施設をつくるなど積極的に活動を展開しております。また、先日は我が会派で、新潟市の大学と連携した「ドナルド・マクドナルド・ハウス新潟」を視察いたしましたが、いずれも資金の壁が共通の課題となっております。

また、行政の窓口設置などを求める声も多く、昨年11月には、こどもホスピスの整備や運営の支援について検討を行う「『こどもホスピス』を応援する議員連盟」が、自民、公明の両党により発足されました。現在、公明党の竹谷とし子参議院議員が事務局長となり、こどもホスピスに関する政策を研究、議論し、全国各地の取組の支援強化に向けて活動しています。

さらに、今年の4月、子ども家庭庁の成育局成育環境課にこどもホスピスの窓口が設置されるなど、着実に活動の成果を上げてきたところです。

札幌市においても、秋元市長は公約で、「病気を抱える子どもたちが家族や友人と安心して過ごすことのできる居場所(こどもホスピス)づくりに取り組む民間団体等の活動を支援する」ことを掲げております。そのため、我が会派としても期待を寄せ、支援を加速させていくため、札幌市の民間の活動支援にあたっては、国を巻き込んでいくという発想が必要だと考えているところです。

そこで質問ですが、こどもホスピスづくりの支援に向けて、札幌市は国との関わりについてどのようにお考えか、お伺いします。

(2)幸齢社会を見据えた敬老パス事業の見直しについて

人は誰でも歳を重ねていくにつれて、身体的な健康が徐々に低下していきますが、人とのつながりや生きがいを通して、社会的・精神的な満足感を高めることで、総合的な健康を維持、向上させ、そのことが主観的健康観を高め、幸せに齢を重ねる「幸齢社会」の実現にも寄与していくと考えられます。

わが党では先月16日、「地域共生社会を支える高齢者活躍推進PT」が、高齢者一人一人の社会参加活動のニーズを掘り起こし、地域で必要とされる役割を担ってもらう取組の充実などを政府に申し入れました。

高齢者の中には、要介護認定を受けている方など外出が難しい方もおりますが、その中でも出来ることや、やりたいことを続けられるよう後押しし、人や社会とのつながりを通して支え合うことで、主観的健康観を維持・向上していくことが大切と考えます。

一方、過去に実施した敬老パスの利用実態調査では、敬老パスを利用していない方の理由として、「身体的事情から利用できないため」との回答が最も多い結果でした。加齢とともに外出が難しくなる方が増えることはやむを得ないとしても、これまでの敬老パスでは、そうした方への健康づくりや社会参加の後押しが難しかった面があると言えます。

今回の素案では、これまでの敬老パスをより良い制度にするとのことですが、身体的事情から活動が難しい方々を切り捨てることなく、できること、やりたいことを後押しし、少しでも自身の人生を充実させられるよう、健やかで幸せな生活である「健幸」を感じられる仕組みを整えていく必要があると考えます。

そこで質問ですが、要介護認定を受けた方など活動が難しくなった方々は、これまで敬老パスを使えなかったかもしれませんが、敬老健康パス制度においてどのように対応していく考えか伺います。

(3)生涯を通じた歯科口腔保健対策の推進について

札幌市は第2次まちづくり戦略ビジョンにおいて「ウェルネス(健康)」を重要概念のひとつに掲げておりますが、特に歯や口腔の健康は全身の健康にも影響することから、昨年度の第2回定例市議会において、3会派より札幌市歯科口腔保健推進条例の制定を提案し、本年1月1日に施行されたところです。

国においても、今年6月16日付で閣議決定された骨太の方針において、国民皆歯科健診に向けた取組の推進について明記される等、生涯を通じた歯科健診のための議論が進められております。

公的な歯科健診については、学校歯科健診後の19歳から、歯周疾患検診の対象年齢となる40歳までは、公的な歯科健診が全くない空白期間となっており、この間の歯科健診の充実に今後、取り組んでいくべきではないでしょうか。

また、乳幼児や学齢期では、むし歯は減少傾向にあるものの、一人で多くのむし歯を持つ子どもがいる状態であり、令和4年度に札幌歯科医師会が実施した調査では、約4割の小学校に10歯以上のむし歯を有するいわゆる口腔崩壊の子どもがいることが報告されています。さらに、所得が少ない家庭ほどむし歯が多いとの調査報告もあるなど、家庭環境の違いが子どものむし歯に影響を与えており、こうした環境の違いによる健康格差の縮小は、大変大きな課題であると考えています。

むし歯予防は第一義には家庭の責任と思いますが、今後も、子どもたちに対し適切な歯科保健対策が講じられなければ、家庭環境に恵まれない一部の子供たちは、生涯にわたり歯と口腔の健康で不利益を被る恐れがあります。

先日、我が会派は、北九州市におけるフッ化物洗口事業を視察してまいりました。北九州市では3年間のモデル事業を経て、今年度から全ての小学校において、子供たちをひとりも口腔崩壊に至らせないことを目的に、フッ化物洗口事業を開始しておりました。北九州市の子供たちのむし歯は、現在、政令指定都市で最下位ですが、フッ化物洗口により大幅に改善すれば、数年後にはワースト2の札幌市が最下位になってしまうことも危惧されます。

札幌市においても、家庭環境に恵まれない子供たちであっても、誰一人取り残すことなく、むし歯の多発による口腔崩壊に至らせないために、条例に明記された科学的根拠に基づくフッ化物応用の充実に取り組んでいく必要があるのではないでしょうか。

そこで質問ですが、条例の目的である市民の健康寿命延伸に向けて、生涯を通じた歯科健診についてどのように認識し、推進していくつもりか、また、乳幼児期、学齢期については健康格差の縮小に向け、フッ化物洗口を進めていくべきと考えるが、どのように取り組むのか伺います。

(4)障がいのある方への就労支援について

札幌市では、「第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン」において、まちづくりの重要概念の一つに「ユニバーサル(共生)」を位置づけ、誰もが互いにその個性や能力を認め合い、多様性が強みとなる社会の実現を目指しております。

現在、我が党では、新たな構想として、性別や年齢、障がいの有無などにかかわらず、誰もがそれぞれの能力や特性に応じて力を発揮しながら働くことができる包摂的な社会を目指す、『(仮称)安心と希望の「絆社会」2040ビジョン』の検討を進めているところです。

民間企業においても、さまざまな背景や価値観をもつ人たちが共に働くことにより組織を活性化させ、新たな商品開発やサービスの提供などイノベーションを生み出し、価値創造につなげる「ダイバーシティ」とともに、多様な人材が活躍できる環境を整え、個々の能力を最大限に生かす「インクルージョン」の推進に取り組む企業が増加しております。

このように、近年は、障がいのある方の雇用・就労環境は大きく変化してきており、障害者雇用率の引き上げなどもあり、働く障がい者は着実に増えてきております。

また、重度の障がいがある方が在宅でロボットを遠隔操作しカフェで接客するなど、民間企業が持つ技術やノウハウなどを最大限に生かし、障がいのある方にとって働きやすい環境整備とともに、働き方の多様化も進んできております。

さらには、人手不足が深刻な農業などの第一次産業では、農福連携をはじめ、札幌都心部にワイン製造など地域の特産品づくりに障がいのある方が携わることが計画されるなど、障がいのある方が持つ能力や特性が注目され、雇用の場は着実に広がりを見せております。

我が会派では、これまで、こうした社会の実現を具体的に進めていくために、障がいのある方が能力に応じて働き続けられるよう、職場定着支援を行う札幌市独自のジョブサポーター制度の創設など、働く障がいのある方の雇用・就労環境の向上に向け提言等してきました。

札幌市では、現在、「さっぽろ障がい者プラン2024」の策定を進めておりますが、障がいのある方の雇用環境が大きく変化している中、今後は、デジタル技術を活用した働き方や多様な就労ニーズに、これまで以上に対応していく必要があると考えます。

そこで質問ですが、障がいのある方もない方も共に働く共生社会の実現のため、障がいのある方への就労支援について、札幌市として今後どのような考えで取り組んでいくのか伺います。

(5)ひきこもり支援の強化について

今年公表された内閣府の調査によると、全国でひきこもり状態にある人は、15~64歳の推計で146万人いるとされており、また、札幌市が平成30年度に行った調査でも、潜在的なひきこもり状態にある人は市内に約2万人いると推計されておりこうした方々の中には、相談にすらつながっていない方もいるものと想像いたします。

ひきこもりの理由は、学校や職場での悩みや、いじめ、パワハラなど様々であり、どこにも相談できず、周囲から孤立し、親の介護サービス利用をきっかけに、自治体職員や関係機関の職員が自宅を訪問し、初めて気づくケースもあると聞いております。

高齢の親が中年になったひきこもりの子を支える8050問題は、さらに進み9060へと深刻化していくことも予想されます。

札幌市においては、「ひきこもり地域支援センター」での相談支援と、ひきこもりの当事者団体が、家庭以外での当事者・家族同士が懇談等をする居場所「よりどころ」を中核として支援を展開し、一定の成果をあげているものと考えます。

特に「よりどころ」については、当時者団体に運営を委託しており、ひきこもりからの回復者が「ピアサポーター」として当事者や家族の支援にあたっており、自身のひきこもっていた時の気持ちや、社会参加しようと考えたきっかけ、当時者にしかわからない困難性などを踏まえた、より当時者や家族に寄り添った支援を行っております。

一方、過日、視察を行った佐賀県では、人口規模は札幌市の約半分の90万人であるものの、NPO法人のスチューデント・サポート・フェイスが中心となって、分野横断的な支援を行うための重層的なネットワークを構築し、困難事例に対するアウトリーチを用いた多面的アプローチにより効果的な支援を提供しておりました。

同法人の代表によると、孤立化・深刻化しているケースは従来型のカウンセリングのみの対応では解決が難しいことや、多職種連携による複数分野の専門職によるチーム対応と関係性を重視したマッチングが重要として、その組織体制を整えており、さらに次の段階としてシステムによる情報連携の準備を進めておりました。

今後、札幌市においては、これまでの「当事者団体」の役割、活動に対し、より光を当てながら、「当事者」による支援の輪を拡げていくとともに、ひきこもり支援の関係機関の情報共有と連携を進め、地域の社会資源を活用した支援を行うための重層的なネットワークを構築していくべきと考えます。

そこで質問ですが、札幌市において、今後どのような方向性で、ひきこもり支援を行おうと考えているのか伺います。

答弁

(1)こどもホスピスづくり支援に向けた国との関わりについて

〇国では、こどもホスピスを全国に普及させるため、今年度中に初の実態調査を実施し、課題を把握した上で、必要な支援を検討することとしていると承知している。

〇そうした中、子ども家庭庁に新設されたこどもホスピス専門官と、事務レベルで11月に面談をした際、こどもホスピスづくりを社会全体で応援する必要性を訴えたところ。

〇今後、病気を抱える子どもとその家族の願いがかなうよう、継続して民間団体等と協議しながら、今、何が課題となっているかを国に伝え、制度的バックアップが得られるよう働きかけてまいりたい。

(2)幸齢社会を見据えた敬老パス事業の見直しについて

〇健康の概念は、身体的なものに限らず、社会的、精神的な健康を含めた総合的なものとされている。

〇そのため、誰もが自分らしく暮らす中で「できること」や「やりたいこと」を続け、家族や地域社会との関わりを通して、幸せを感じられる環境を整えていくことが必要。

〇活動が困難になった方についても、代わりとなるポイントの提供や利用先の工夫などによって、事業に参加できるよう配慮してまいりたい。

(3)生涯を通じた歯科口腔保健対策の推進について

〇生涯にわたる歯と口腔の健康づくりは、豊かな食生活など市民の生活の質と密接に関わっていることに加え、近年、健康寿命との関連も指摘されており、極めて重要な取組である。

〇このため、今後、法改正が予定されている国による国民皆歯科健診に向けた取組を踏まえ、若い世代を含め子供から高齢者に至る生涯を通じた歯科健診の充実に取り組んでまいる。

〇また、フッ化物応用の推進については、歯科口腔保健推進条例において市の責務とされたことを踏まえ、保護者や関係職員への丁寧な説明を行いながら、フッ化物洗口の普及に取組むこととし、子供たちの健康格差縮小を目指してまいる。

(4)障がいのある方への就労支援について

〇これまで札幌市では、ジョブサポーターを配置する市内4か所の障がい者就業・生活相談支援事業所を中心に、様々な障がい特性に配慮した、きめ細やかな就労支援に取り組んできたところ。

〇こうした中、デジタル社会の急速な進展とともに、来年4月からは障害者雇用率の引き上げや短時間労働者が算定対象に加わることから、現在、障がい者を雇用する民間企業や札幌商工会議所、NPO法人等の協力を得て、市内企業の雇用実態調査を進めている。

〇今後、この実態調査結果を踏まえ、障がいのある方の能力向上やデジタル技術を活用した働きやすい環境整備を進め、就労機会の拡大と新たな雇用の創出に取り組んでまいりたい。

(5)ひきこもり支援の強化について

〇ひきこもり支援については、複雑な課題を含むケースが多く、解決まで時間がかかることから、行政はもとより、ひきこもり経験者などの当事者団体や、幅広い関係機関とのつながりや支え合いの関係を強めていくことが重要であると認識。

〇このため、今年度、ひきこもり支援を行う複数の団体と、支援の実情や課題に関する意見交換を行い、さまざまな団体同士が情報を共有し、連携して支援に取り組んでいくことの必要性をあらためて確認し合ったところ。

〇今後、ひきこもり地域支援センターの相談体制やピアサポーターによる支援の充実を図ることに加えて、地域包括支援センターや若者支援総合センターなど、関係機関の連携をこれまで以上に進める取組を検討し、重層的な支援体制の構築を目指していきたいと考えている。

3経済・まちづくりについて

質問

(1)災害に強いまちづくりと建設産業の担い手確保について

今年7月28日、新しい国土強靱化基本計画の変更が閣議決定されました。

この変更では、新たに災害に対する国全体の強靱性を向上させるためには、「発災そのものを抑制する」「たとえ発災してもその被害を小さくする」などといった観点から施策を展開していくことが重要であることが示されました。

過去を振り返ると、我が国は、その国土の地理的・地形的・気象的な特性ゆえに、数多くの災害に繰り返しさいなまれてきました。そしてその都度、多くの尊い人命を失い、莫大な経済的・社会的・文化的損失を被り続けてきたところです。

本市においても、平成30年に発生した北海道胆振東部地震では、市内で観測史上最大となる震度6弱を記録し、死者3名のほか、地盤の液状化等により多くの物的被害が発生するなど、市民の生命や財産を脅かす甚大な被害がありました。

また、全国に目を向けると、令和2年7月豪雨では、総降水量が長野県や高知県の多い所で2,000ミリを超えるなど記録的な大雨となり、この影響により河川の氾濫・浸水害・土砂災害等が発生し、多くの死者、行方不明者が出ました。

このような大規模災害では、その都度、長期間かけて復旧復興を図る、という「事後対策」を繰り返しておりますが、これらの被害を教訓とし、特に札幌市強靱化計画においては、「発災そのものを抑制する」「たとえ発災してもその被害を小さくする」という考えが重要であると考えます。

そのためにも、平時から道路や河川、上下水道といった重要なインフラの機能強化を図っていくことが必要であり、これらの整備を計画的に進めていくためには建設産業の協力が必要不可欠です。

しかし、建設産業は高齢者の割合が高い産業構造となっており、特に、道内の建設業就業者のうち将来担い手となる15~29歳の構成比は1割弱と、全国と比べても低い水準にあり、将来的に高齢者の大量離職も見込まれることから、迅速な対策を講じる必要があると考えます。

そこで質問ですが、今年度中の改定を目指して検討を進めている札幌市強靭化計画に「発災そのものを抑制する」「たとえ発災してもその被害を小さくする」という考えをどのように反映させるのか伺います。

また、将来的に建設産業従事者の不足が予想される中で、どのように担い手を確保していくのか併せて伺います。

(2)若者の多様なライフスタイルを実現する企業誘致について

近年、新型コロナウイルス感染症を機にテレワークやオンライン会議が浸透したことで、場所を選ばずに働くことができるようになり、東京から地方へ住まいを移す人が増えました。

また、企業においても本社機能を地方に移転する動きがみられ、北海道では、お茶の販売で人気のルピシアが令和2年7月に本社を東京都渋谷区からニセコ町に移転し、大きな話題となりました。

しかし、今年5月の新型コロナウイルス感染症の5類移行後、こうした「脱首都圏」の関心は鈍化してきており、再び東京一極集中が加速する可能性があるとも言われています。

札幌市では従来から、人材の豊富さなどを強みとして企業誘致に取り組んできましたが、更なる企業誘致を進めていくためには、誘致ターゲットとなる産業を再定義し、こうした産業にとって訴求力のある札幌の強みをアピールしながら誘致活動を行っていくことが重要と考えます。

先日、札幌に立地するゲーム関連企業の経営者とお話させていただく機会がありましたが、「都市と自然が融合する札幌のような環境で暮らし働くことがクリエイティブな発想に繋がっていく」とお話されていました。私もこれからの社会を支えていく若者にとって、札幌が魅力的な環境になると感じています。

企業が持続的な成長を遂げていくためにウェルビーイング経営が注目される中、札幌の魅力は、従業員が最高のパフォーマンスを発揮できる環境が整っていることであり、このことを前面に打ち出して企業誘致活動を行っていくべきと考えます。

そこで質問ですが、人も企業も東京一極集中の揺り戻しが予想される中、札幌市は今後、どのような点を強みとして捉え、どのように企業の誘致を進めていくのか伺います。

(3)札幌市多文化共生・国際交流基本方針で目指す都市像について

最後に、札幌市多文化共生・国際交流基本方針で目指す都市像について伺います。

これまで我が会派は、「さっぽろ外国人相談窓口」や「札幌災害外国人支援チーム“SAFE(せーふ)”」などを議会で取り上げ、多文化共生の推進に向けた議論を重ねてきました。

外国人相談窓口での留学生の就労支援やフードバンクなどの取組、また、先の議会で示された医療通訳事業の導入など、多文化共生社会の実現に向けた札幌市のこれまでの積極的な姿勢については評価をしております。

しかし、12月1日現在17877名となった札幌市に住む外国人は、年々増加傾向にあり、多様な国籍、在留資格の方は益々増えていくと考えられます。

札幌市は、こうした方々が社会の一員として活躍し、生き生きと暮らせるまちとして、国際都市から世界都市へと大きく成長していかなければなりません。

昨年策定した「まちづくり戦略ビジョン(ビジョン編)」では、国内外から活力を呼び込み、持続可能で、多様性と包摂性のある世界都市を目指すこととしているほか、「まちづくりの重要概念」として「ユニバーサル」を掲げ、誰もが互いにその個性や能力を認め合い、多様性が強みとなる社会を実現することとしています。

そうした中、札幌市が現在策定を進めている「多文化共生・国際交流基本方針」は、今後10年間の多文化共生施策の方向性を指し示すものであり、我が会派がこれまで主張してきた多文化共生の推進をさらに力強く前に進められるよう、重要視しているところです。

加えて、この10年間という期間は、2030年までの持続可能な開発目標、SDGsの達成に向けて取組を加速させていく期間とも重なり、誰一人取り残さない社会の実現に向けて、基本方針策定の意義は非常に大きいものと認識しています。

そこで質問ですが、札幌市は多文化共生・国際交流基本方針を通じて、どのような都市を目指そうとしているのか伺います。

答弁

(1)災害に強いまちづくりと建設産業の担い手確保について

〇1点目の札幌市強靱化計画への反映について

重点方針のひとつに「社会基盤の着実な強靱化による、安全・安心な都市づくり」を掲げており、例えば水災害そのものを抑制するため、河川改修や雨水拡充管整備などを推進する考え。

〇また、発災してもその被害を最小限にするための取組として、各種インフラの耐震改修に加えて、北海道胆振東部地震の復旧対応から得られた知見を生かして、大規模盛土造成地の強靱化に向けた地盤調査等を継続し、盛土の安定性が確認できない場合は、速やかに対策工事を実施していく考え。

〇このような取組を平時から積み重ねることにより、災害に強い強靱な都市づくりを推進してまいりたい。

〇2点目の建設産業従事者の担い手確保について

市内建設企業の人手確保は、厳しい状況が続いていることから、本市では令和2年に「さっぽろ建設産業活性化プラン」を策定し、建設産業の担い手確保に取り組んでいるところ。

〇主な取組としては、建設産業のイメージアップに向けた各種現場見学会や体験イベントの実施、発注工事における週休2日の確保、企業の担い手確保等の取組を支援する助成制度などを実施している。

〇また、現在、次期プランの策定準備を進めており、令和6年度末の策定に向けて、業界の意見も聞きながら、より効果的な取組を検討するとともに、可能な取組は計画策定を待たずに進めていく考え。

(2)若者の多様なライフスタイルを実現する企業誘致について

〇これまで札幌市では人材の供給力や災害リスクの低さなどを強みとして本社機能やITコンテンツ企業を中心とした企業の誘致に取り組んできたところ。

〇今後、更なる誘致を進めるためには、高度な都市機能と豊かな自然が融合し、市民一人ひとりが充実した暮らしを実現できるという他にはない札幌の強みを前面に打ち出していくことが重要と認識。

〇最近はクリエイティブ系の企業や外国企業を中心に、心が満たされる暮らしを送ることのできる環境が自社の成長にも繋がるといった考えが広がっているところ。

〇今後はこのような経営指針を持つ企業に対して、札幌の強みを更に積極的にアピールしながら、若者にとって魅力ある企業の誘致を進めてまいりたい。

(3)札幌市多文化共生・国際交流基本方針で目指す都市像について

〇札幌が活力あるまちとして持続的に発展していくためには、多様性が強みとなる社会にしていくことが必要であり、外国人市民の存在は非常に重要と認識。

〇そのため、外国人との共生を重視する姿勢を表すものとして、「多文化共生」を中心に据えた方針を策定することとし、目指す都市像として「世界中の多様な人々とともに生きる都市さっぽろ」を掲げたところ。

〇国籍・民族・言語・文化的背景などが異なる人々が集い、多様な価値観の共存によって新たな価値が生み出され、誰もが充実した暮らしを送ることができる都市を目指してまいりたい。