札幌公明

議会報告Assembry report

2021/09/28 令和3年第3回定例議会

令和3年第3回定例議会2021/09/28

代表質問前川たかし議員(白石区)

札幌市議会本会議において公明党議員会を代表して 前川たかし 議員が代表質問を行いました。
以下、質問とそれに対する答弁の要旨を紹介します。

目次Contents

1市長の政治姿勢について

質問

(1)令和2年度決算を踏まえた来年度予算編成の方向性について

アクションプラン2019は、市長公約の実現に向けた具体的な取組を計画事業として盛り込み、札幌市の行財政運営や予算編成の指針となるものであり、令和2年度予算は政策目標達成のためのスタートダッシュ予算として編成されました。

しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年度に予定していた事業の中には、予算編成時の想定と実態が乖離し、実施方法の見直しが必要となったものや、予算執行ができなかった事業や経費があると思われます。

札幌市議会では、昨年の第2回定例会において、議会費を減額補正し、新型コロナウイルス札幌ささえあい基金に積み立て、発熱外来の体制整備の補助金などに活用されたと聞いています。

令和3年度予算では、感染症の影響を踏まえ、アクションプラン2019に掲げる取組を柔軟かつ着実に推進するとともに、感染症から市民を守り、新たな日常への転換を進めていく取組に重点的に資源を配分しており、こうした取組には一定の評価をしています。

アクションプラン2019で掲げた政策目標は着実に実行していく必要がありますが、新型コロナウイルス感染症の収束の見通しは依然として立ってはおらず、今年度の事業執行は不透明な状況にあります。

議会審議を経て可決成立した予算は、市民と約束したものであり、コロナ禍にあっても単純な執行減とせずに、政策目標の実現に向けて事業の見直しや再構築を行い、その成果を市民に還元していくことが重要と考えます。

加えて、計画の目指す方向性やその目標を市民にわかりやすく示していくことが重要であり、そのためには予算編成においても札幌市の考えがメッセージとして市民に伝わっていくことが大切だと感じています。

来年度予算は、秋元市長2期目最後の本格予算であり、アクションプラン2019の計画期間の最終年度という、大変重要な予算となります。

そこで質問ですが、アクションプラン2019の最終年度である来年度の予算編成について、どのように臨まれるのか、基本的な方向性について伺います。

(2)今後のコロナ禍における医療提供体制について

①第5波に向けた医療提供体制の整備

札幌市における新型コロナウイルス感染症との闘いは、2020年2月の第1波に始まり、その後、医療機関や高齢者施設などでの大規模クラスターが発生し、患者が急増、一時は受入れ病床が逼迫するなど、緊迫した局面を何度も迎えてきました。

先の第4波では、5月5日に「札幌市医療非常事態宣言」を発出するに至るなど、病床がひっ迫、危機的な状況となり、医療現場の負荷はかなり大きなものでありました。

変異株の影響による患者の急増で入院患者が過去最多となり、入院を待つ間に最悪の事態も発生するのではないかと危惧される状況であったと聞いています。

第4波という大きな波を乗り越え、幅広い経験をすることで、様々な課題を明らかにし、次の感染拡大に備えて把握した課題を点検しつつ、この第5波に向けた取組を進めてきたと思います。

そこで質問ですが、第4波にどう対応し、第5波に向けてどのような医療提供体制を整備してきたのか、市長の認識を伺います。

②今後の医療提供体制の構築

また、現在、従来よりも感染しやすい可能性のある変異株などが世界各地で報告されています。今後、流行するウイルスは、こうした変異株に置き換わっていく可能性も指摘されており、変異株への懸念は増しているところです。

さらに、秋冬のインフルエンザの同時流行による感染爆発を予想、指摘する専門家もいます。

そのため、次なる感染拡大に備えた医療提供体制は、今後の変異株などへの懸念も踏まえつつ、着実に整える必要があると思います。

そこで質問ですが、今後予想される次なる波への備えとして、しっかりと医療提供体制を構築すべきと思いますが、市長の見解を伺います。

(3)感染症に強い札幌構築について

新型コロナウイルスの世界的流行は、現代社会がこれまで経験したことのない脅威であり、このウイルスを直接標的とした治療薬がないことから、その対応は、どの都市においても、目前の状況に応じたアクション、いわゆる対処療法にならざるを得なかったと考えます。

一方で、今回の経験をしっかりと踏まえ、もし将来、同じような感染症が発生した場合には、事態を抑え、制御していくことが必要です。つまりは、感染者数を抑え、医療崩壊の恐れを起こさない、人々の動きを調整しながら経済を止めないという対応が必要となります。

これまで、札幌市は、3年前の北海道胆振東部地震や、今回の新型コロナウイルスの感染拡大のような難局に対処してきており、札幌だからこそ、市民・企業・行政などの様々な主体が高い意識を持って、国内外からも高い評価を得られるような、安全・安心なまちの構築に取り組むことができると考えます。

現在、札幌市は次期まちづくり戦略ビジョンの策定に向け、有識者等から構成される審議会において議論を行っています。現在の戦略ビジョンでは、安全・安心分野において、「地域防災力が高く災害に強いまちにします」を基本目標の一つに掲げていますが、次期の戦略ビジョンにおいては、今回得た知識と経験を踏まえ、感染症に強いという視点に、速やかに回復していくといった観点を加えた、高い目標を掲げるべきと考えます。

そこで質問ですが、感染症に強い札幌構築に向け、次期の戦略ビジョンでは、安全・安心なまちづくりをどのように進めていく必要があると考えるか、市長の見解を伺います。

(4)MaaSを活用した取組について

これまでも我が会派からは、市民の足として極めて重要な役割を持つ路線バスについて、変化する社会情勢への対応やまちづくりの観点から、様々な政策を提言してきました。

現在、路線バスが抱える課題としては、利用者の減少による赤字路線の増加のほか、バス運転手不足の深刻化が挙げられ、将来的には、これらを起因としたバス路線の統廃合など、バスサービス水準の低下が懸念されます。

路線バスの運転には、大型二種免許を保持する必要がありますが、警察庁の運転免許統計によると、北海道における令和2年時点の大型二種免許保持者は約10万人となっており、これは10年前から約2万5千人、率にして約20%も減少しています。

しかも、この年齢構成を確認すると、20代と30代を合わせてもわずか3%程度しかなく、50代以上が実に80%以上を占めている状況から、今後はバス運転手の定年退職などに伴う欠員補充も困難となることが予想されるため、速やかに対策を講じる必要があると考えます。

国ではこうした課題の解消の一つとして、「官民ITS構想・ロードマップ2020」を掲げ、将来的な自動運転のほか、タクシー配車・相乗りやデマンド型乗合バスなど、MaaSを含めたAIやIoTを活用した新たなモビリティサービスの展開をうたっています。

これらは、利用者の利便性向上、地方都市での交通課題の解消や、高齢者を含めた移動弱者問題の解決、地域の活性化など、大きなポテンシャルを有しますが、本格的な社会実装はまだこれからであり、官民が連携して新たな取組に挑戦する地域の動きを後押ししていくことが重要となります。

例えば、大阪市では地域版MaaSの取組として、乗車日時や乗降場所を指定して利用者のニーズに応じて運行するオンデマンドバスの社会実験を一部の地域で始めています。

この社会実験では、利用者は電話やスマートフォン用アプリによって配車予約を行いますが、アプリ上では、事前に鉄道や路線バスへの乗換検索や運賃決済なども可能な取組となっています。

様々な課題に対応し、公共交通を維持していくためには、MaaSなど新たなモビリティサービスについて、市民の理解を得ていくことが必要となることから、札幌でも大阪のような社会実験について検討する必要があると考えます。

そこで質問ですが、国が目指す持続可能な地域公共交通の実現に向け、MaaSを活用した取組について、札幌市の考えを伺います。

答弁

(1)令和2年度決算を踏まえた来年度予算編成の方向性について

〇アクションプラン2019に掲げる政策目標は、コロナ禍においても普遍的な意義を有することから、今後も達成に向けて着実に取り組んでいく必要があると認識。

〇こうした認識のもと、アクションプラン2019に掲げた取組については、感染症による社会経済情勢の変化に的確に対応しながら、必要となる追加・補強を積極的に行っていく。

〇また、感染症対策はもとより、ポストコロナにおける社会経済活動の回復・発展に向けた事業に重点的に取り組むことで、新たな成長を市民に実感していただける予算としてまいりたい。

(2)今後のコロナ禍における医療提供体制について

〇1点目の第5波に向けた医療提供体制の整備について

第4波では、すぐに入院できず自宅待機となる患者が多く発生したため、患者が入院するまでの間、酸素投与などの医療を提供する入院待機ステーションを整備するとともに、市内医療機関に対し、感染症法に基づく協力要請などを行い、多くの医療機関の協力を得て病床の拡充を図った。

〇一方、第5波では、第4波の経験から、病床の確保に加え、患者の重症度に応じた医療を提供することとし、自宅療養中の軽症者に対しては、電話診療や往診などの体制を強化した。

〇また、中等症以上の患者に対しては、速やかな入院受入を図るとともに、妊婦や透析患者など特別な配慮が必要な患者への対応や、抗体カクテル療法の活用など重症化を防ぐ取組も実施した。

〇2点目の今後の医療提供体制の構築について

次なる波に備えるため、第5波までに整備した医療提供体制を活かしつつ、コロナ医療と一般医療の両立を図ることが重要と認識。

〇引き続き、感染状況に応じ、入院受入だけでなく、入院待機ステーションの活用により、夜間の入院受入の負担軽減を図るとともに、自宅療養者への対応などもあわせて、必要な医療を提供できる体制を構築するため、医師会や医療機関等と緊密に連携しながら取り組んでまいりたい。

(3)感染症に強い札幌構築について

〇現在策定を進めている次期の戦略ビジョンでは、自然災害のみならず、感染症を含めた危機への防災・減災体制が整うとともに、有事の際でも迅速に対応し回復への道筋をつけることが重要と認識。

〇このため、医療機関や企業とあらかじめ連携体制を整え、有事の際には、官民の資源を活用し、医療等の必要な支援を確実に行っていくことが必要。

〇また、ICT技術等を使い、ワクチン接種等の各種手続きの迅速化を図るととともに、平常時を含めて「非接触」の社会経済活動を可能にするなど、感染症のまん延リスクを低減させ、生活や経済への影響を最小化させることが必要と考える。

(4)MaaSを活用した取組について

〇MaaSをはじめとしたICTの活用により、目的地にスムーズに移動できるシームレスな環境を実現していくことは、公共交通の利便性向上として効果的な取組であると認識。

〇公共交通の乗継経路や運賃の情報提供は、既にえきバスナビにおいて行っているほか、車両を小型化しデマンドバスを導入する際に、車両購入費の一部を支援する制度の運用を開始したところ。

〇デマンドバス導入やインターネットを活用した予約体制の構築などについては、バス路線の利用状況や他都市の事例を踏まえ、バス事業者と連携しながら、より効果的な手法を検討してまいりたい。

2気候変動と激甚化する災害対策について

質問

(1)脱炭素型ライフスタイルへの転換を促すための取組について

国連の気候変動に関する政府間パネル、いわゆるIPCCは、先月9日、人間の活動が地球温暖化につながったことは「疑う余地がない」と断定し、世界の脱炭素化の気運は急速に高まっています。

これに先駆けて、日本政府は、昨年10月、「2050年のカーボンニュートラル」を宣言し、本年4月には、我が国の温室効果ガス排出量を2030年までに2013年比で46%削減、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けていくという力強い方針を国内外へ表明し、5月には改正地球温暖化対策推進法が成立しました。

こうした動きを機に、GXいわゆる「グリーン・トランス・フォーメーション」という、脱炭素社会の実現に向けた新たな考え方が注目され始めています。

「グリーン・トランス・フォーメーション」とは、例えば、水素など温室効果ガスを排出しないグリーンエネルギーに関する最先端技術を駆使しながら、産業構造、金融、社会インフラといった、社会経済システム全体を脱炭素型へとつくり替え、それを同時に経済成長へとつなげていくものであり、産業革命、IT革命に次ぐ世界的な社会変革となると言われています。

さらに一般消費者についても、衣食住や移動に伴うエネルギー消費など温室効果ガス排出量の6割は家庭関連が占めているため、GXはライフスタイルそのものの転換を求めており、そのような時代に突入したことを示しています。

そうした流れの中、本年6月に「国・地方脱炭素実現会議」は、2050年に向けた国と地方の取組をまとめた「地域脱炭素ロードマップ」において、脱炭素を実現するための基盤的施策の一つとして、国民に自発的な脱炭素型の行動を促し、ライフスタイルの変革を目指す考えを示しました。

そのため、札幌市においても、より多くの市民に、例えば、照明器具をLEDへ、古くなった家電製品を省エネ家電へ、ガソリン車を次世代自動車へ、家庭で使う電気を再生可能エネルギー比率の高い電力メニューへと切り替えるなど、温室効果ガスの排出削減につながる様々な環境配慮行動に取り組んでもらうことが必要であり、従来の普及啓発にとどまらず、新たな視点や手法による働きかけが求められると考えます。

我が党では、国民の行動変容を促す有効な手法の一つとして、脱炭素化に貢献する商品の購入といった、温室効果ガス削減につながる行動に対してポイントを付与する、「グリーンライフポイント」制度の創設を政府へ提言し、22年度予算の概算要求に計上されています。

こうした動きは、地域経済の活性化が期待でき、コロナ禍からの経済再生に向けた取組としても有効と考えます。

そこで質問ですが、札幌市では、2050年のゼロカーボン都市の実現に向けた市民の脱炭素型ライフスタイルへの転換についてどのように取り組んでいくのか、また、有効な手法の一つであると考えられるポイント制度の活用についてどのように考えるのかを伺います。

(2)今後の水害対策について

近年、局地的に激しい雨が同じ場所で長時間にわたり集中して降り続く線状降水帯による被害が全国各地で発生しています。かつては10年に1度の確率と言われていたものも、現在はその発生頻度が高まっており、専門家によっては5年周期に発生するとの予測もされています。

そうした中、道内でも8月4日のゲリラ豪雨により、わずか10分で20㎜、時間雨量に換算して120㎜の激しい雨が降るなど、各地で多くの被害が発生しました。特に京極町は、1時間におよそ100㎜の大雨に見舞われ、記録的短時間大雨情報を発表したほか、北広島市では、道路が川のようになって車のヘッドライト付近まで水位が上がり、マンションの駐車場は斜面が崩れ、車1台が巻き込まれる被害となりました。

札幌市内においても局地的な雷雨が発生し、清田区では数カ所の道路が冠水して一時的に封鎖となり、中には宅地まで水位が上がったため知人宅に避難した方もおられました。

こうしたゲリラ豪雨による災害が、いまや全国、どの地域でも起こり得る状況にある中、気象庁は豪雨災害の一因とされる線状降水帯の形成を確認した際に発表する「顕著な大雨に関する気象情報」の運用を6月17日からスタートしたところです。

この情報は、警戒レベル相当情報を補足するものであり、警戒レベル4相当以上の状況で発表することになっています。線状降水帯は、今後、危機意識を高めてもらうキーワードとしての活用が見込まれています。

また、気象庁は、来年から発生半日前の予測発表を始める方針であり、23年3月までの実証研究の成果も取り込み、2030年にはより高い確率での予測を目指すとしています。

札幌市としても、近年、線状降水帯が全国各地に大規模な災害をもたらしている点を踏まえ、国や道と連携して流域治水対策を着実に進めることはもちろん、いざという時のために内水氾濫が予想される場所などの情報収集を進め、こうした予報に対する事前の注意喚起や、情報発信、日頃からの備えを、より啓発していく必要があると考えます。

特に、線状降水帯の発生等による局所的な水害については、ハザードマップなどを事前に準備しておくことで、未然に防止できる被害もあると思われます。

そこで質問ですが、水害が局所化、激甚化する中、札幌市は身近で起こる局所的な水害に関する情報などを含め、あらためて市民に対して災害に備えるための情報を発信し、地域防災力の向上を図る必要があると考えますが、札幌市の考え方を伺います。

答弁

(1)脱炭素型ライフスタイルへの転換を促すための取組について

〇札幌市内においては、温室効果ガス排出量の約4割が家庭からの排出分であることから、ゼロカーボン都市の実現のために、市民の皆様一人一人の温室効果ガス排出削減につながる行動の積み重ねが極めて重要と認識。

〇このため、特に、若い世代に向けて、ウェブ上のバナー広告を活用して脱炭素型ライフスタイルへの転換を促す情報を発信するなど、様々な機会を捉えて、市民に広く積極的に働きかけていくこととしている。

〇また、ポイント制度の活用については、スマートフォンアプリを使って、例えば、エコイベントへの参加など市民の環境配慮行動に対して買物に利用できるポイントを付与するといった、市民の自発的行動を後押しするような取組を官民連携のもと検討してまいりたい。

(2)今後の水害対策について

〇札幌市内においても局所的な豪雨による内水氾濫が発生しており、あらためて水害に関する情報発信や、日ごろの備えの啓発は大変重要であると認識。

〇これまで、札幌市では、気象庁による防災気象情報や河川管理者による水位情報を「さっぽろ防災ポータル」や防災アプリ「そなえ」などにより、市民に適時、提供してきたところ。

〇また、現在、内水氾濫と洪水の情報を一つのハザードマップで確認できるように「札幌市浸水ハザードマップ」の策定に取り組んでおり、今年度末の公表を予定しているところ。

〇今後は、防災情報の適時の発信に加え、新たに公表するハザードマップ等を用いて、水害に対する日ごろの備えの啓発に取り組むことで、より一層、地域防災力の向上に努めてまいりたい。

3デジタル・トランスフォーメーションによる施策の高度化について

質問

(1)推進体制と組織の活性化について

①推進体制・組織体制

本年9月1日に、デジタル社会形成基本法が施行されました。この法律は、国際競争力の強化や市民の利便性向上、急速な少子高齢化やその他の課題を解決する上で、デジタル社会の形成が極めて重要であることを踏まえ、全ての市民がデジタル技術の恵沢を享受できるよう、基本理念や基本方針を定めたものになります。

この法律で掲げるデジタル改革に対し、国を挙げて取り組んでいくため、法の施行日と同じ9月1日、デジタル庁が設置されたのは記憶に新しいところです。デジタル庁は、デジタル社会の形成に関する事務の迅速かつ重点的な遂行を図るため、他省庁に対する勧告権など強力な総合調整機能を持ちます。

国が、デジタル庁にこのような強力な権限を与えたことは、大きな意味があると私は考えます。およそデジタル改革は、最後までやり遂げないと意味がありません。例えば、入口から出口まで一貫してデジタルで処理が完結する状態、異なるシステム間のデータがしっかりと連携され、人の手を介さずに処理が行われる状態までやり遂げなければ、中途半端で非効率、不便な仕組みからは脱却できません。

これまでのデジタル改革は、掛け声は威勢が良いものの、最後までやり遂げることができませんでした。これは、全体を俯瞰し、エンドトゥエンドと呼ばれる最初から最後まで一貫してデジタルで物事が進んでいく流れをデザインし、全体最適を実現する組織や仕組みがなかったからだと考えます。

札幌市のデジタル改革も、今度こそ、デジタルの真価を実感できるところまでやり遂げていただきたい。市民の生活の質を各段に向上させ、街の稼ぐチカラを拡大する攻めのデジタル改革、そのための人やカネの投資は惜しむべきではないし、完結した暁には、その投資を大きく取り戻せるものと考えています。

このような強い信念のもと、取組をやり遂げるためには、国と同様、強力な推進体制・組織体制が必要です。

そこで質問ですが、札幌市においては、現在、デジタル・トランスフォーメーションに関する全体方針をとりまとめしているところですが、推進体制及び組織体制については、どのような方針であるのか、現時点の見解を伺います。

②デジタル技術を活用した市職員の働き方と組織の活性化

国では、昨年12月に公表したデジタルガバメント実行計画の中で、ペーパーレス化やテレワークの推進など、デジタル技術を最大限活用して公務の高い生産性を実現する新しい働き方、いわゆる、デジタル・ワークスタイルの実現のための環境整備が必要であると示しています。

例えば、コロナ禍の以前には、ほとんど想定できなかったテレワークは、今や、人流抑制といった点のみならず、外勤時などのすきま時間を活用した生産性のある仕事の実現、さらには育児や介護を抱える職員個々のライフスタイルに応じた働き方の実現という多くの意義があることが自明になったことから、市が率先して実施し、定着させていくことが必要です。

一方、デジタル技術の進展は、ともすれば、組織と組織、あるいは組織内での上司と部下、同僚間のコミュニケーションの希薄化を生むのではないかとの指摘もあります。例えば、テレワークにより業務の進捗が見えづらくなるといった意見もありますが、私は逆に、これまで想像しえなかった新たなアイデアや、組織内での活発なコミュニケーションを生み出す可能性を持っていると考えます。

その具体的ヒントとなるのが、「リバース・メンタリング」制度であります。これは、35歳の若さで台湾のデジタル担当大臣に就任した、オードリー・タン氏が実践したことで注目を集めたものです。従前の上司・部下の指導関係とは逆に、若手職員がデジタル分野に関して上司の相談役・メンターになるというものであり、我が国でも、徐々に先進的な企業などで取り入れられてきています。

具体的には、若手職員がデジタルツールの使い方や最新のICT動向を上司に教えるというものですが、互いに知識や経験が共有できるだけでなく、若手職員が持つ新しい感覚や発想を上司側が積極的に取り入れることで、フラットなコミュニケーションが生まれ、若い職員の力が組織的なイノベーションを引き起こし、組織自体の活性化などにもつながることが期待されます。

また、札幌市が行革分野で連携協定を締結する神戸市では、令和元年にはビジネスチャットを職員間のコミュニケーションツールとして導入しています。これは、LINEのグループ機能のように、短いメッセージで相手に用件を伝えたり、複数のメンバー間で情報共有や議論が行えたりするものですが、このツールの利用により、会議に依存してスピード感に欠けた部署間の連携を促進し、立場や場所を選ばずいつでも議論や意思決定ができるようにもなり、業務効率が大幅に改善されているとのことです。

このように、市の仕事の進め方を大きく変える切り札となるデジタル技術を積極的に取り入れることが極めて有効であると考えますが、デジタル技術の活用により、職員の働き方やコミュニケーションをどのように変え、組織を活性化させていくのか、市長の考えを伺います。

(2)AIを活用する先駆的な取組について

①防災・減災へのAI活用

近年、地震や大雨による災害が多発しているとともに、その被害も甚大化しており、3年前の北海道胆振東部地震では清田区里塚地区の液状化に伴う被害、2か月前には、静岡県熱海市伊豆山で土石流が発生した被害などが記憶に新しいところです。

一方、これまで経験したことのない大きな災害に突然見舞われた被災者は、自身の置かれている状況を把握し、身に迫る危険を適切に評価し、正しい行動につなげることが極めて困難です。このように人間の力が限界に達した時こそ、AIのようなデジタルの力によって打開策を見出していくことが重要であると考えます。

そこで質問ですが、北海道胆振東部地震の経験も踏まえ、防災・減災の取組へのAI技術の活用について、札幌市の考えを伺います。

②野生動物から市民生活を守るためのAI活用

野生動物、特にヒグマについては、ここ数年、市街地や住宅街に出没する事案が増えてきており、ヒグマの出没を抑制するような対策を行うとともに、ひとたび出没した際には迅速な対応が必要です。

現在は、市民からの通報をもとに、現地調査を行ってヒグマの情報をホームページなどで公開するとともに、関係機関への周知を図っていると認識していますが、市民の安全・安心を守るためには、よりタイムラグのない注意喚起を行うなど、人の手による作業の限界を超えた対応が必要と考えます。

そこで質問ですが、ヒグマから市民生活を守るため、AI技術を活用していくことが有用と考えますが、札幌市の認識を伺います。

③婚活事業へのAI技術の活用

新型コロナウイルス感染症の影響で、外出自粛や人との交流を控えることが長期化し、札幌市の若者の出会いの場が失われているという状況が続いています。

令和2年の札幌市の婚姻届出数は9,823件と1万件を割り込んでおり、婚姻件数の減少は、そのまま出生数の減少につながるので、少子化は一層加速していくものと危惧されます。

先進的な自治体では、結婚事業にAIを活用したマッチングシステムを導入したことで、利用登録者が増え、さらに成婚数も増加するなど、具体的な成果を出しているとも聞いています。

そこで質問ですが、札幌市においても、出会いや結婚を希望する若者を支援するため、いわゆる婚活事業にAI技術の活用を検討していく必要があると考えますが、どのように認識しているのか伺います。

答弁

(1)推進体制と組織の活性化について

〇1点目の推進体制・組織体制について

札幌市におけるデジタル・トランスフォーメーションは、官民の手続きがスマートフォンひとつで即座に完了するような、新たな市民サービスの実現や飛躍的な業務変革を目指すもの。

〇このため、従前のような部局ごとのシステム開発ではなく、システム間のデータ連携や外部クラウドサービスの活用なども見据えた、官民連携によるデジタル活用を実現していく必要がある。

〇そこで、積極的に外部人材も活用し、専門知識と推進力を備えたプロジェクト推進体制と、この体制を機動的に動かす庁内組織の構築を検討しているところ。

〇2点目のデジタル技術を活用した市職員の働き方と組織の活性化について

今後は、限られた経営資源を最大限に生かし、より高い生産性を産み出す働き方の実現に向けて、場所や時間にとらわれず仕事ができる、働きやすい環境の整備を進めることが必要と認識。

〇また、複雑化する行政課題にスピーディに対応していくためには、部局や階層など組織の壁を超えてコミュニケーションを図ることが極めて重要であり、職員間での情報共有や議論をさらに促していく必要があると考える。

〇これらの課題解決に向け、今後、テレワーク環境の更なる充実を図るほか、職員間のコミュニケーションを活性化するツールを拡充するなど、デジタル技術を積極的に活用することで、組織の活性化に取り組んでまいりたい。

(2)AIを活用する先駆的な取組について

〇1点目の防災・減災へのAI活用について

災害において、最優先すべきことは、人々の安全確保であり、中でも、いかに早く効率的に避難できるかは重要であると認識。

〇このため、住民が確実に避難できるよう、避難所までの被災状況の把握や安全なルートへの誘導など、AI技術の活用の可能性を模索してまいりたい。

〇2点目の野生動物から市民生活を守るためのAI活用について

札幌市ではこれまで、ヒグマの市街地への出没をいち早く察知するため、侵入経路になるような地点に送信機能付きの自動撮影カメラを取り付けるなどの対応を行ってきたところ。

〇ヒグマ対策へのデジタル技術の活用は、迅速かつ正確な情報の収集により、市民への速やかな注意喚起等の実現に寄与するものと期待。

〇今後は、カメラを増設するとともに、顔認証システムを応用した個体識別手法などの最先端のAI技術の活用を検討するなど、市民のより一層の安全や安心の確保に努めてまいる。

〇3点目の婚活事業へのAI技術の活用について

本市の婚姻届出数が減少し、出生数の一層の減少が見込まれることに関しては、将来の札幌市の経済活動を支える、生産年齢人口の減少にもつながる大きな課題であると認識。

〇そのため、出会いや結婚など、若い世代にとって理想のライフプランを実現するための支援の在り方について、他の自治体でのAIを活用した取組など、より効果的な手法を視野に入れ、検討していく。

4「稼ぐチカラ」を磨く取組について

質問

(1)今後の札幌経済の成長について

今年7月に札幌市が公表した平成30年度札幌市民経済計算によると、札幌市の実質市内総生産はリーマンショックの影響により平成20年度に落ち込んだものの、以降は増加を続け、平成30年度はリーマンショック前の平成19年度を超える約6兆8500億円となっています。

一方、平成30年度の札幌市における人口1人当たり市民所得は約280万円であり、全国の人口1人当たり国民所得約320万円を大きく下回っている状況です。

このことから、新型コロナウイルスの感染拡大期の前までは、札幌市はリーマンショックから順調に経済を回復しつつも、人口規模に見合った稼ぐチカラが不足しているものと考えております。

加えて、新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年度の実質国内総生産の伸び率は前年度比で4.4%減少し、戦後最大の減少幅となったことから、経済は再び大きな影響を受けております。

こうした状況を踏まえ、新型コロナウイルス感染症をいち早く収束させ、乗り越えていくことが最優先課題ではありますが、同時に、ポストコロナを見据え、札幌市が今後人口減少局面になっても持続的な経済発展を続けていけるよう、強い産業構造への転換と競争力の向上が不可欠であるものと考えております。

そこで質問ですが、今後の札幌経済の成長についての札幌市の考えを伺います。

(2)民間提案を取り入れた行政資産の有効活用について

市内部を見渡したとき、「稼ぐチカラ」として真っ先に思い浮かぶのが、市が有する行政資産自体を有効活用するという視点です。この点について市では、市有資産を広告媒体として活用し、民間事業者の広告を掲載することにより、新たな財源を確保することを目的に「広告事業」を展開しているほか、去る8月には、百合が原公園、厚別山本公園を対象に、民間活力による公園の魅力向上に向け、いわゆる「Park-PFI(パークPFI)」の導入に向けたサウンディング調査を開始したところです。

また、交通局では駅構内の施設等を有効活用するエキナカ事業によって、利用客の利便性向上を図るなど、市では、個々の必要性に応じて、貴重な内部資源である行政資産の有効活用を図る取組が進められていますが、例えば、区役所や病院、観光施設など市民が滞留し、有効活用できそうな資産は他にも多く見受けられることから、私は一度、全庁的な観点で、あらゆる市の事業、施設について、稼ぐチカラがどこに潜んでいるかを総点検してみることが必要ではないかと感じています。

例えば、川崎市では、「資産マネジメント実施方針」を策定していますが、その中で、土地、建物、消耗品、印刷などの財産の種類ごとに、有効活用の取組事例をまとめた、「有効活用カタログ」というものを作成しています。このカタログは、駐車場用地の貸付やコンビニ設置場所の使用許可などの「貸付事業」、ネーミングライツやラッピングバス、申請用紙への広告掲載といった「広告事業」、さらには道路や河川敷など「公共空間の有効活用」について、歳入面や市民サービスなどの効果のほか、導入、運用の手続きに係る手法や庁内の役割分担が端的にまとめられたものとして活用されているとのことです。

また、私は、以前東京メトロの取組を視察してきたのですが、東京メトロでは、資産活用のアイデアを公募したところ、施設だけでなく周辺のまちづくりに及ぶ素晴らしいアイデアが多数寄せられたとのことでした。市の資産活用についても、思い切って民間提案を受けることが重要と感じるところです。

このように、資産を有効活用するという視点を全庁的に取り入れることは、財政的な効果のみならず、市の様々な施策の推進や課題解決にも貢献すると考えます。

しかしながら、どうしてもこのような視点というのは、職員一人一人のコスト意識の違いや、各局の置かれた状況によって温度差があり、ノウハウや知見にも大きな差があると思われます。

往々にして、民間事業者は関係する局へ提案に行っても、こういった課題は、部局にまたがる横断的な課題がほとんどであり、その場合、責任の所在があいまいで、全体最適より部分最適が優先され、効果的な解決策を打ち出せないという結果になるのが通例であります。それを打破するには、市長のリーダーシップのもと、庁内の有効活用が可能となる資源を総点検するとともに、民間の提案を真摯に受け止め、現状と課題を把握し、必要となる規制を乗り越えていくという強い意識を職員に徹底していくことが、何より必要であると考えます。

そこで質問ですが、将来に渡る安定した市政運営のためには、札幌市自らが稼ぐチカラを持つという視点により、民間提案を効果的に取り入れ、行政資産のさらなる有効活用を図ることが必要ではないかと考えますが、市長の考えを伺います。

(3)観光振興策について

①コロナ禍を契機とした今後の観光戦略

先日公表された昨年度の来札観光客数は、新型コロナウイルス感染症の拡大による旅行需要の停滞や緊急事態宣言の発令に伴う往来自粛要請などの影響で、1969年の調査開始以来で最少の約570万5千人となり、前年度比62.6%減と大幅な落ち込みとなりました。

外国人宿泊者数にいたっては、前年度比99.5%減の1万1千人となるなど、インバウンド需要は完全に消滅しており、まさに観光業界は未曽有の危機的状況にあります。

この状況は、今年度に入ってからも改善することはなく、札幌市にも緊急事態宣言が二度にわたって発令されるなど、観光需要の回復の目途がなかなか立たない中、宿泊施設を始めとした観光関連事業者の経営は極めて厳しい状況に置かれています。

しかしながら、このような危機的状況であるからこそ、それを少しでも打破しようと創意工夫により新たな取組が生まれ、札幌観光の可能性に気付く機会になったとも言えるのではないでしょうか。

例えば、オンライン開催となったさっぽろ雪まつりでは、雪像制作過程や過去の雪まつりの映像などを世界に向けて配信するとともに、札幌の雪に関連する写真を募集した「さっぽろ雪フォトまつり」など様々な企画を実施した結果、札幌の姉妹都市であるミュンヘン市のホームページで紹介されるなど、これまで札幌にあまり関心を持っていなかった国や地域の方々にも、札幌の魅力を発信することができたと思います。

また、サッポロ夏割や市有施設の無料化などの事業を市民が多く利用したと伺っており、市民が改めて札幌の魅力を発見する機会になるとともに、域内循環の促進による市内経済の活性化にもつながったのではないかと考えます。

このように、コロナ禍だからこそ得られた気づきを生かし、既成概念にとらわれることなく、これまでにない視点や発想をもって、新たな観光戦略を描いていくことが、アフターコロナの札幌観光の復興に向けて極めて重要であります。

そこで質問ですが、コロナ禍で得た気づきや経験を、今後の札幌観光にどのように生かしていくのかを伺います。

②観光施策の推進体制の強化

新型コロナワクチン接種が始まり、4か月が経ちました。このワクチン接種は12歳以上の全市民180万人が対象で、希望する方への接種を終えるゴールを11月としています。いよいよ年末年始の時期には、人の流れや経済活動が動き出すのではと期待している市民は多いかと思います。

こうした状況の中、会派として、旅行代理店や旅館ホテルの団体、観光バス会社、観光客をターゲットにしたイベントを制作している会社など、札幌の観光に関わる方々と意見交換をいたしました。

意見を伺った多くの皆様は「ワクチン接種が進み、以前のようにビジネスができる日を夢見て、今は新たな発想で様々な企画を立てることに挑戦している」とおっしゃっており、新型コロナウイルス感染症の影響で本当に、大きな打撃を受けている中、必死に生き残りの道を模索していました。

この札幌の観光業界がV字回復していくためには、本市も必死になって支援をしていかなければなりません。そのためには札幌市も従来の考え方や枠組みにとらわれることなく、新たな発想による大胆な取組を、スピード感をもって展開する必要があります。

札幌市の観光施策は、これまでも「日本新三大夜景都市の認定」や「雪まつりにプロジェクションマッピングの導入」「ホワイトイルミネーションのリニューアル」など、時代を見据えた観光施策を展開し、観光地としての人気を維持してきました。

しかし、一方では、さっぽろ夏祭り(大通ビアガーデン)や雪まつりの時は観光客が来札してくれますが、本市の課題である閑散期の集客、滞在型観光や夜間観光などの施策についてはコロナ禍前もあまり進んでないように思いました。これでは従来の観光イベントを時代に合わせて少しずつ改善しているだけで、本市の観光施策は消極的で受け身だと言われることがあり、これまでの従来の考え方では、観光業界からはV字回復に向けた期待も薄くなるのではと考えます。

この状況を打破するためには、専門人材の登用等により外部の意見を積極的に取り入れ、民間の経営感覚に基づき、観光で地域が稼げる仕組みを作り出すことを目指して、マーケティングや広告など観光産業に関わるエキスパート、専門家集団による戦略的な取組が必要と考えます。

このような考え方は、かねてから我が会派が注目し、第1回定例市議会の代表質問でも提言しており、観光振興の司令塔になる、観光まちづくり法人、いわゆるDMOの目的や機能にも通じるところであり、札幌においても観光施策の推進体制の強化に向けた検討を加速させる必要があります。

そこで質問ですが、札幌観光のコロナ禍からの早期復興を目指した推進体制の在り方について、どのように考えているのかを伺います。

答弁

(1)今後の札幌経済の成長について

〇今後予想される人口減少期の札幌経済が発展を続けるためには、更なる生産性の向上が不可欠。

〇このためには、札幌経済をけん引してきた観光や食分野を中心とする市内産業が、国内外から新たな需要を獲得することは勿論のこと、豊富な資源を生かした商品・サービスの高付加価値化が必要。

〇加えて、今後成長が期待されるITやバイオ産業が、国内外から人材や投資を呼び込みながら、発展を遂げていくことが重要。

〇こうした考えのもと、新型コロナウイルス感染症の影響を乗り越えることを最優先課題としつつ、持続的な経済発展を目指すための産業振興策に取り組んでまいりたい。

(2)民間提案を取り入れた行政資産の有効活用について

〇行政が保有する資産を有効に活用し、積極的に収入を確保することは、安定的な市政運営を支え、必要な行政サービスを持続的に提供するために、重要な取組であると認識。

〇このため、これまでも札幌市では、広告事業の実施や公共施設の整備・運営におけるPPP/PFI制度の導入など、民間活力を積極的に取り入れてきたほか、行政目的での利用が見込めない土地の売却、貸付など公有財産の活用にも取り組んできたところ。

〇今後は、さらなる行政資産の有効活用のため、職員のコスト意識を高めるとともに、全庁横断的に、資産の現状や活用事例等を把握したうえで、民間企業が提案しやすい環境づくりについても検討してまいりたい。

(3)観光振興策について

〇1点目のコロナ禍を契機とした今後の観光戦略について

〇これまで札幌市では、コロナ禍により深刻な影響を受けている観光関連事業者と対話を重ねながら、主に市民・道民に向けた市内宿泊や周遊を促す取組に加え、イベントのオンライン開催など、ターゲットや手法を工夫しながら可能な限りの観光振興策を実施してきた。

〇これらの取組により、事業者の下支えに寄与したほか、市民・道民の札幌観光へのニーズや雪まつり等のイベントが国内外から大きく支持されていることを再認識したところ。

〇今後も、市民自らが市内観光を楽しみ、それを国内外から多くの観光客を引き付ける魅力づくりにつなげ、工夫した情報発信を行いながら、社会経済情勢の変化にも強い観光都市を目指してまいりたい。

〇2点目の観光施策の推進体制の強化について

〇観光は、地域の歴史や文化などに触れながら、宿泊や飲食などの消費を促し地域経済を活性化させるものであるため、民間事業者と連携して進めることが重要であり、これまでも誘客などの取組を協力して進めてきた。

〇とりわけ、冬場の閑散期対策や観光消費の拡大といった課題に、より効果的に取り組むためには、マーケティングに基づき民間のノウハウを活用して戦略的に施策を推進することが求められると考える。

〇こうしたことから、現在策定中のスノーリゾートシティSAPPORO推進戦略では、スノーリゾート推進に向けた組織体制について様々な事業者を巻き込み、DMO化を含めて検討することとしたところ。

〇今後とも、様々な形で民間事業者や観光関係団体との協力体制を強化しながら、落ち込んでいる札幌観光の早期の回復に向けた取組を進めたい。

5SDGs未来都市としての取組について

質問

(1)共生社会の実現に向けたD&I、DEIに基づくまちづくり(成長戦略)について

SDGsは、2015年9月の国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標です。17のゴールと169のターゲットのある、社会・経済・環境の3側面に及ぶ広範な目標ですが、全体の理念は「誰一人取り残さない」というものです。

これに関しては、国外だけでなく、国内の企業や自治体においても、D&Iと呼ばれる「ダイバーシティ(多様性)」と「インクルージョン(包摂)」の推進を経営戦略などに掲げ、専門の組織を立ち上げて取り組んでいるのも目にします。

具体的には、年齢、性別、障害、国籍、文化などの違いを受け入れて、新しい視点や価値を生み出すことを目指すものであります。

さらに、グーグル、アマゾンなどの世界的な大企業では、D&IにEquity「エクイティ(公平性)」を追加したDEIを経営の重要課題に設定していると聞きます。ここでのエクイティは、情報や機会へのアクセスについて、全ての人に対して公平な扱いを保証することを意味します。

このような誰もが活躍できる環境や機会を提供していく社会を形成していくことが、共生社会の実現、そしてSDGsの達成、さらには都市の持続的な成長に向けて不可欠であると考えます。

そこで質問ですが、ダイバーシティ、エクイティやインクルージョンは、今後のまちづくりにおいて重要な視点と考えるが、市の認識と、次期戦略ビジョンにおける位置付けについて伺います。

(2)フェアトレードについて

フェアトレードは、貧困や飢餓の根絶、環境保護といった地球規模の課題の解決に寄与するSDGs未来都市札幌としての国際協力であり、また、市民がSDGsに取り組むための入口として、最も身近にできる国際貢献であることから、我が会派は、フェアトレードの取組の重要性とその理念の普及・啓発について、これまで繰り返して訴えてきました。

札幌市においては、市民有志が組織した「フェアトレードタウンさっぽろ戦略会議」を中心に、多くの市民が積極的に活動した結果、令和元年6月に、日本で5番目のフェアトレードタウンに認定されました。

市役所も啓発リーフレットを作成したほか、小学生高学年向けの環境副読本にフェアトレードの取組を掲載するなど、フェアトレードの普及・啓発において、市民と行政とが一体となって取り組む好事例があります。

フェアトレードタウン認定を契機として、市民にさらなる浸透をさせていく時期に、残念ながらコロナ禍の影響を受けています。具体的には、昨年はフェアトレードタウン認定1周年を記念したチカホでのイベントが中止となり、例年のフェアトレードフェスタは今年も大通公園での開催を中止せざるを得なくなりました。

この厳しい状況にあって、札幌市は、令和4年6月にフェアトレードタウン認定の更新を迎えます。我が会派は、SDGs未来都市として、市民が主体となるフェアトレードの取組をより一層と盛り上げていく必要があると考えます。また、SDGsの目標達成となる2030年に向けて、冬季オリンピック招致も含めて、世界都市札幌として引き続きフェアトレードタウンとして認定されることが極めて重要になります。

フェアトレードタウン認定の更新に当たって、クリアしなければいけない基準があり、この基準を満たすには、より多くの市民にフェアトレードを知ってもらうことが不可欠です。コロナ禍にあって、市民に対する啓発活動が制限される中、札幌市がフェアトレードの理念を支持している、それを市民に伝えることが、認定の更新に向けた強い推進力になると考えます。

そこで質問ですが、秋元市長は、2018年11月にフェアトレードの理念を支持すると表明されましたが、フェアトレードタウン認定の更新を迎えるに当たり、改めて札幌市の認識と今後の取組の方向性について伺います。

答弁

(1)共生社会の実現に向けたD&I・DEIに基づくまちづくり(成長戦略)について

〇今後のまちづくりにおいては、すべての人が差別や排除を受けず、また障壁や困難を感じることなく、社会の一員として相互に尊重し支え合っていくことが重要と認識。

〇次期の戦略ビジョンでは、この考えをまちづくりの各分野に共通する重要概念の一つ、「ユニバーサル(共生)」として位置づけ、この実現に資する施策を検討していく考え。

(2)フェアトレードについて

〇フェアトレードは、私たち一人ひとりが主体的に取り組める国際協力であり、SDGsの目標達成に幅広く寄与するものであると認識。

〇本市においては市民団体が熱心に活動し、それが、札幌市のフェアトレードタウン認定につながったことは大変誇らしいこと。

〇今後も引き続き市民団体と啓発活動を進めるほか、企業とも連携し、多くの市民がフェアトレード商品に触れる機会を増やすことで、さらなる理念の普及に努めてまいりたい。

6つながり支え合う地域社会の構築について

質問

コロナ禍は社会の活動を鈍化させ、弱い立場の人ほど大きな打撃を受けています。また、少子高齢化の進行や、家族構造の変化、地域のつながりの希薄化などにより、福祉のニーズが一層複雑化、多様化しています。

8050問題はその典型であり、幅広い悩みを抱えるひとり親家庭、ヤングケアラーの問題などは、従来の分野別の支援体制では困難となっているのが現状であります。

このような中、すべての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことができる「地域共生社会」の実現を目的とした改正社会福祉法が4月に施行され、「重層的支援体制整備事業」が創設されました。

これは、介護、障がい、子ども、生活困窮の4分野の事業に対する国の補助金を1本に束ね、対象者の属性や世代を問わず柔軟に使える「重層的支援体制整備事業交付金」とすることで、柔軟な取組を促し、包括的な支援や地域住民による地域福祉を推進するものです。

具体的には、支援機関・地域の関係者が断らず受け止め、つながり続ける支援体制の構築をコンセプトに「相談支援」「参加支援」「地域づくりに向けた支援」の3つの支援を一体的に展開することです。

「相談支援」は、すべてを受け止める相談窓口の設置のほか、複雑で複合的な内容に対応するため、関係者の協働による包括的な相談支援体制の構築や、支援機関側から積極的にアプローチするアウトリーチなどを行うものです。

「参加支援」は、社会参加に向けた支援が基本となりますが、既存の取組では対応できない狭間のニーズへ対応することも想定しています。例えば、生活困窮者の就労支援事業に、経済的に困難でない引きこもり者も対象に含めるなど、従来の制度の枠を超えたメニュー作成やマッチングを行い、受け皿を拡げ、解決の出口を示すことで、困りごとを受け止めやすくする取り組みが考えられます。

そして「地域づくりに向けた支援」は、世代や属性を超えて交流できる場の整備など、住民が互いに気に掛け、支え合う関係を充実させるための取り組みであり、かつての日本で見られた相互扶助の再構築を目指すものであります。例えば「こども食堂」を利用で考えれば、生活困窮者自立支援制度に基づく学習支援の活用や、介護予防事業と位置付けて、食堂の手伝いに来た高齢者による絵本の読み聞かせなどが想定され、そうすることで交流を深め、お互いの困りごとに気づきが生まれることで、早期の解決につながる効果も見込めるのです。

このように「重層的支援体制整備事業」の実施により、困りごとを抱えた方へ近所の人々や企業が支援の手を差し伸べ、地域だけで解決が難しい問題は行政が縦割りをなくして受け止めることで、これまでは対応困難な課題の解決が期待できます。

そこで質問ですが、複雑・複合的な課題や狭間のニーズへの対応など、従来の分野別の支援体制では対応困難な事例の解決に向け、「重層的支援体制整備事業」の実施をはじめ、地域住民の支え合いによる困りごとの解決に生かせる環境の整備や、行政の福祉サービスの縦割りをなくした包括的な支援体制の整備などを一体的に実施し、「つながり支え合う地域社会」の構築に取り組むべきと考えますが、札幌市の考えを伺います。

答弁

〇「重層的支援体制整備事業」が目指している、複雑化、複合化した福祉課題を包括的に受け止め、行政、関係団体、地域住民が一体となり支援するということについては、重要と認識。

〇そこで、まずは、区役所が中核となり、関係機関とも連携して課題を抱えた市民を支援するための、福祉行政の縦割りを超えた支援体制の構築を検討している。

〇地域住民等による支え合い活動の環境整備については、すでに、市内89か所に「地区福祉のまち推進センター」が設置されているほか、民間事業者との協定にもとづく見守り事業の推進などにより、地域福祉活動を支援してきたところ。

〇今後は、新たな支援体制と、これまでの取組の連携をより深めながら、一体的に体制整備を進めてまいりたい。

7公立夜間中学設置の波及効果について

質問

公立夜間中学については、かねてより我が党を上げて、全国的に設置促進に向けた取組を進め、我が会派においても、札幌市における学び直しの場を求める多くの方々の声に応えるため、公立夜間中学の早期設置を一貫して求めてきました。

私自身も、公立夜間中学の設置を公約に掲げ、市議会議員になった当初から、一日も早い設置がなされるよう取り組んでまいりました。

こうした中で、6月に開催された第5回臨時市議会において、札幌市学校設置条例が改正され、札幌市として正式に星友館中学校という名前で令和4年4月に公立夜間中学を設置することが決定し、非常に感慨深いものがあります。

我が党においては、「誰一人取り残さない社会の実現」を目指すSDGsの推進に取り組んでいるわけですが、この公立夜間中学は「星友館」の「星」という字のごとく、一人一人が輝き、また「友」という字のごとく、互いを尊重し、支え合いながら学ぶ学校であり、まさにこの理念を具現化するものであると認識しています。

そのような中、8月21日に開催された「札幌市公立夜間中学を学ぶシンポジウム」を私も拝見させていただきましたが、その中で公立夜間中学の設置は、その地域の学びを変える可能性があるというお話がありました。

その話を聞き、私としても「学びの原点」とも言える公立夜間中学は、「誰一人取り残さない社会の実現」という観点において、札幌市全体に良い影響を与えられる可能性があるのではないかと感じたところです。

そこで質問ですが、札幌市として、公立夜間中学の取組を札幌市の学校教育全体にどのように生かしていく考えなのかを伺います。

答弁

〇公立夜間中学は、多様な背景を持つ学齢期を過ぎた生徒に対して、義務教育の学びを保障する学校であり、その取組は、不登校や外国にルーツを持つなど、特別な配慮を必要とする子どもが増えている現状の中、札幌市の教育に新たな視点を加えるものと認識。

〇とりわけ、生徒同士はもちろんのこと、教師もともに学び合うことを通して、お互いを認め、高め合うという公立夜間中学の学びは、自己肯定感の高まりや学ぶ喜びをより実感するものであり、他の学校においても生かされるべきもの。

〇この取組の成果を、研修等を通して全ての市立学校に広げていくことはもとより、その学びを広く市民にも発信することなどを通して、子どもから大人まで、生涯にわたって学び続ける「自立した札幌人」を育成してまいる。