議会報告Assembry report
令和6年第2回定例議会2024/05/28
代表質問竹内たかよ議員(清田区)
札幌市議会本会議において公明党議員会を代表して 竹内たかよ 議員が代表質問を行いました。
以下、質問とそれに対する答弁の要旨を紹介します。
目次Contents
- 市長の政治姿勢について
- 北海道全体のSDGs推進に向けた札幌市の役割について
- 物価高騰への対応について
- GXの推進に向けた象徴的な再生可能エネルギーの取組について
- 丘珠空港におけるエアポートセールスの取組について
- バス運転手の新規人材確保について
- 若手職員がいきいきと働ける職場づくりについて
- 健やかな暮らしを支える医療・福祉施策について
- 難病患者への支援の充実について
- これからの認知症施策の在り方について
- 敬老パスの見直しについて
- 障がいのある方などへの情報提供の充実について
- 住宅セーフティネット法の改正について
- 次代を見据えたまちづくりの推進について
- 観光まちづくりプランを踏まえた観光施策について
①MICEの推進
②海外からの誘客 - 健康・医療分野における事業創出支援について
- 下水汚泥の肥料利用について
- 札幌市における木材の循環について
- 盛土規制法の円滑な施行について
- 観光まちづくりプランを踏まえた観光施策について
- 未来を担う子ども施策の推進について
- こどもホスピスづくりに対する今後の取組について
- こども誰でも通園制度の取組について
- 子どもが安心して学べる教育について
1市長の政治姿勢について
質問
(1)北海道全体のSDGs推進に向けた札幌市の役割について
わが党は、日本の高齢者人口がピークに達する2040年頃を見据え、「2040ビジョン検討委員会」を立ち上げて、新しい日本社会の構想策定に全力で取り組んでいるところですが、その中でこの度、全国の全自治体首長あてにアンケート調査を実施し、このたび調査結果が報告されました。
2040年に向けて、「自治体として存続が危うい水準」と答えた市区町村が32.5%、「医療・介護の施設や人員が不足する見通し」と答えた市区町村が50%を超えるなど、SDGsの目指す持続可能性の視点から、日本全国が深刻な状況にあると言わざるを得ません。
社会保障の持続性を高めるため、都道府県内や他市町村と連携した政策が重要と考える自治体は5割を超えており、特に人口規模が小さいほど、そのニーズが高く、他都市との連携強化が喫緊の課題となっております。
札幌市においても、人口減少・少子高齢化や脱炭素化の推進、公共交通ネットワークの維持・確保、物価高騰など、様々な課題を抱えておりますが、北海道や道内市町村と連携・協働することで、札幌市のみならず、道内市町村、ひいては北海道において、SDGsの17のゴールを達成し、「誰一人取り残さない」という理念や、持続可能な社会を実現していかなければなりません。
さらには、札幌市は、北海道が誇る豊かな自然や食などの恩恵を受けて、発展を遂げてきた街でありますので、「北海道の発展なくして、札幌の発展はない」という考えのもと、北海道全体の発展に貢献すべき責務があると考えます。
(2)物価高騰への対応について
物価高騰が収まらない中、その影響は市民生活や事業経営全般に及んでおります。
わが会派は、昨年11月「物価高騰と経済再生に向けた緊急要望」を行い、低所得世帯向け給付金の迅速な支給や、国の交付金を活用した市民生活や事業者への支援を要望いたしました。
札幌市はこれを受け、低所得世帯向け給付金を2月から支給開始のほか、子育て世帯への支援として学校給食費の負担軽減や、幅広い世帯への支援としてプレミアム付き商品券について予算化したことを評価するところです。
給付金の支給も進み、給食費負担も据え置かれ、先日プレミアム付き商品券の申し込みも行われました。
各種イベントも通常通り開催され、観光客もかなり回復してきており、良い流れになりつつありますが、その一方で、介護施設や障がい者施設、子ども食堂など福祉分野の事業者に目を転じると、利用者の所得状況や生活状況などへの配慮から、食費などへの価格転嫁が難しく非常に厳しいとの声が届いております。
利益を追求する通常の事業者とは異なる側面もあることから、福祉的な配慮により価格転嫁が困難な事業者に対する支援を検討すべきではないでしょうか。
(3)GXの推進に向けた象徴的な再生可能エネルギーの取組について
昨年6月に、GX産業の集積と金融機能の強化集積を目指すTeamSapporo-Hokkaidoを設立して以降、これまでの市役所の常識では考えられないようなスピード感で取り組んできたと認識しており、我が会派としてもこの取組を応援する立場として、本会議や委員会の場において質問をしてきたところです。
特に、スピード感を持って取り組んできたが故に、この取組の意義が市民に十分に伝わっているのか、市民が置き去りになっていないか、そんな視点から本年2月の第1回定例会においても市民周知について質問をさせていただきました。
市長からは、「市民向けフォーラム等の開催を通じ、脱炭素化に向けた世界の潮流や、再生可能エネルギーの普及と経済成長の両立を目指すチーム札幌北海道の取組の周知を進め、市民の認知度向上、理解促進につなげる」との答弁があり、今年度の取組に期待を寄せているところです。
一方、この周知の効果を上げるためには、そもそも北海道・札幌市がGXを強力に推し進めているまちであるということをブランディングしていく必要があります。
北海道全体という意味では、洋上風力が象徴的な再生可能エネルギーの取組になっていくと考えられますが、市民理解を促進させるためには、札幌市においても、市民が実感できるような象徴的な再生可能エネルギーの取組が必要ではないかと考えます。
(4)丘珠空港におけるエアポートセールスの取組について
本年1月31日にトキエア㈱が丘珠空港に新規就航し、丘珠空港の定期便として12路線目、道外路線としては6路線目となる丘珠=新潟線が就航しました。
昨年もFDAの丘珠=名古屋線、HACの丘珠=中標津線、丘珠=秋田線と新規就航が相次ぎ、昨年度の丘珠空港の旅客数は43万人を超え、現空港ビルが開業して以来最高の人数となりました。
しかし、札幌市が策定した「丘珠空港の将来像」で掲げる、道外路線の10路線程度への拡充、旅客数100万人にはまだ道半ばと言えます。
以前、丘珠空港からチャーター便で北九州空港へ行った際に、北九州空港の発着案内板の丘珠空港という文字を見た方々が、丘珠と読めないどころか、中国や韓国の空港だろうと話しているのを見かけました。
札幌市が実施している丘珠空港のプロモーションにおいても、道外の方には丘珠空港がどこの空港なのかあまり認識されていない状況と聞いており、空港としてまさに致命的とも言え全国的な認知度向上が急がれます。
他の空港では、例えば道内空港では、たんちょう釧路空港、道外においては、高知龍馬空港など現地ゆかりの愛称をつけたり、また就航地に空港広告を展開するなど、空港独自の施策により認知度向上、利用者増に積極的に取り組んでおり、丘珠空港においても、より戦略的なマーケティング、プロモーションによるエアポートセールスを加速する必要があります。
(5)バス運転手の新規人材確保について
人口減少社会の中、どの産業においても人材確保が大きな課題となっています。
北海道内の大型2種免許保有者数は平成30年度末で約10万9千人(108,621人)でしたが、令和5年度末で約9万4千人(94,176人)と5年で87%に減少しており、生産年齢人口の減少傾向を踏まえると、現在全国で生じているバス運転手不足は、将来にわたって私たちの生活に直結する社会問題であると考えます。
札幌市内においても、バス運転手不足により、路線の減便・廃止が進む中、国内外からの観光客需要も戻ってきていることで、一部路線では、日常的に利用している市民が満車で乗れない状況も出始めています。これまでは臨時便対応でフォローできていたものが、そうした人員の余裕すらなくなってきていることが見えてきています。
バス運転手の確保については、これまでは、ともすれば大型2種免許を保有する即戦力となる限られた人材を奪い合う構図でもあったと推察します。
今後、他業界への流出が落ち着いたとしても、高齢化が進み、毎年一定数の定年退職者が生じる状況下では、新たな人材を確保し、免許取得を含め育成していかなくては、危機的な状況を迎えるのは明らかです。
各バス事業者において、これまでも様々な採用活動を行っていると思いますが、札幌市が関わり、これまでとは異なる層に対してアプローチを行い、すそ野を広げる必要があると考えます。
(6)若手職員がいきいきと働ける職場づくりについて
我が会派はこれまでも、人口減少による社会課題の深刻化を危惧し、産業構造の転換を通じた地域経済の強化や生産性の向上、子育て施策の強化などこれからの世代を大切にするための取組を訴えてきました。
昨今、行政組織を取り巻く環境は更に厳しさを増しており、市職員の受験者数は低下傾向にあり、若手職員の離職者数も増加してきていると承知しています。
今後ますます、人口減少と雇用の流動化が見込まれる中、行政の組織力を維持するためには、組織の中でいかに人を大切にし、人を育てていくか、またその育て方ということが重要になると考えます。
一方で、近年、若者の価値観や行動も変化する中、旧来の上司から部下へという一方通行な組織風土のままでは、若手職員と良い関係性を作り、組織に定着させることが難しくなると考えます。
オープンでフラットな組織風土を作るため、例えば民間企業ではリバースメンタリングという、部下が上司に対して助言を行うようなコミュニケーションを活性化する取組を導入した事例もあります。
行政が抱える仕事は課題が複雑で難しい事柄が多いが、難しい仕事だからこそ、職員同士がコミュニケーションを深めることが大切であり、若手職員の声に耳を傾ける姿勢を大切にするなど組織の意識改革を図ることで、若手職員のモチベーションは高まり、職員の定着にもつながり、ひいてはこれからも強い組織を作っていけることにつながるものと考えます。
答弁
(1)北海道全体のSDGs推進に向けた札幌市の役割について
〇SDGsが掲げる「誰一人取り残さない」という理念や、持続可能な社会を実現するためには、自治体が単独で取り組むだけではなく、自治体間でそれぞれの強みを生かし、連携し合うことが重要。
〇特に、札幌市は北海道の発展と一体の関係にあることから、充実した都市機能を生かし、北海道の産業・観光の魅力や再生可能エネルギーのポテンシャルを引き出すなど、北海道を牽引する役割を担っていく必要があるものと認識。
〇「第2期さっぽろ連携中枢都市圏ビジョン」においても、SDGsの視点を反映させており、今後も北海道や道内市町村との連携により、行政サービスの効率化や関係人口の創出、GX推進等に積極的に取り組み、道内全体のSDGs推進に貢献してまいる。
(2)物価高騰への対応について
〇物価の上昇局面においては、原材料価格や従業員の生活コストの上昇などを含め、価格に転嫁することによって賃金の上昇につながり、影響が緩和されていくべきものだが、急激な物価上昇の場合には、価格転嫁や賃金上昇が追い付かない場合があり、これまでも様々な対策を通じ対応してきたところ。
〇今後も、福祉施設などの事業者が取り残されることのないよう、国や北海道とも連携を緊密にしながら、事業者の置かれている状況について、引き続き実態の把握に努めてまいりたい。
〇併せて、物価高騰は全国的な課題であることから、国に対し、事業者の実情を踏まえた支援を求めてまいりたい。
(3)GXの推進に向けた象徴的な再生可能エネルギーの取組について
〇TeamSapporo-Hokkaidoでは、8つのGXプロジェクトを掲げており、水素や洋上風力発電、蓄電池など、再生可能エネルギーの創出や活用につながる事業を推進しているところ。
〇札幌市の地域的な特徴を踏まえると、冬期間の熱供給に必要なエネルギーを再生可能エネルギーに転換していく必要があり、水素は有力な選択肢であると考えられる。
〇今後は、GXの象徴的な事業の一つとして、水素の利活用を促進し、熱利用に加え、水素車両の普及を目指すほか、水素ステーションの設置に合わせ、水素活用の啓発を目的とした集客施設を整備するなど、水素社会への変化を市民が実感できる取組を進めてまいる。
(4)丘珠空港におけるエアポートセールスの取組について
〇これまでのプロモーション活動を通じて、丘珠空港の認知度は、道外でやや低いと考えており、更なる誘客のためには、札幌市内に立地する丘珠空港の利便性を効果的にPRしていくことが重要と認識。
〇今後は、就航地の自治体や航空会社との連携を強化することにより、就航地の方々が目にしやすいメディアや広告媒体を活用するなど、地域特性を踏まえながら、路線誘致の基礎となる認知度向上に取り組んでまいりたい。
〇また、丘珠空港の滑走路延伸が国の事業化となるタイミングを見据えて、空港名の認知度向上に関する検討や、航空会社に対して小型ジェット旅客機の通年運航を前提とした路線誘致に取り組んでまいりたい。
※エアポートセールス:路線誘致
(5)バス運転手の新規人材確保について
〇バス運転手の確保に向けては、中途退職を減らすとともに、若年層などの新規採用を増やすことが重要であり、これにはバス運転手の待遇改善のみならず、効果的な採用活動を行うことが必要。
〇また、採用活動はバス事業者が行うものだが、運転手不足の影響の大きさに鑑み、札幌市としても各社の取組を支援することに加えて、バス事業者と連携して札幌市が主体的に取り組むことも必要。
〇このため、札幌市では、今年度、職業としてのバス運転手の魅力を発信する広報事業などを行う考えであり、バス運転手の人材確保に資する取組となるよう、しっかりと進めてまいりたい。
(6)若手職員がいきいきと働ける職場づくりについて
〇少子高齢化により生産年齢人口が減少していく中で、職員を定着させ大切に育てていくことは組織を維持していく上で大変重要なことであり、本年3月に策定した「札幌市人材マネジメント方針」にもそのような考えを反映したところ。
〇また、昨年度実施したエンゲージメント調査では、係長職以下の職員のスコアが低く、特に若手職員が組織に対して満足感を得られていないことが分かったことから、若手職員に目を向けた組織改善の取組みが必要と考えている。
〇そのため、各職場の調査結果に基づいて組織改善を後押しする仕組みや、職員の主体的なキャリア実現を支援する仕組みなど、若手職員がやりがいを感じ、よりいきいきと働ける環境づくりを進めてまいりたい。
2健やかな暮らしを支える医療・福祉施策について
質問
(1)難病患者への支援の充実について
平成27年に「難病の患者に対する医療等に関する法律」いわゆる難病法が施行され、難病患者への医療費の助成のほか、安心して暮らしを続けていくための相談支援を実施しているところです。
札幌市の難病患者の数ですが、国が指定する341疾病の医療費助成の対象となっている方は、令和6年4月時点で約2万4千人となっており、これは、市の人口の1.2%であります。ただしこれは、難病にかかっている方のうち、症状が重い人など、医療費助成の対象となっている方の数であり、いわゆる軽症の方も含めると、より多くの方々が難病を抱え生活していることになります。
国においては、今年4月から難病患者であることを証明する「登録者証」の発行事業を創設し、併せて、難病の研究や新薬開発などに活用するデータベースに登録する対象を、重症者だけでなく軽症者までひろげ支援の充実を図っているところです。
難病患者への支援は、医療面で支える病院を始め、相談支援センタ-や患者当事者の会など、それぞれの立場で行われていますが、札幌市はその核となって関係機関とネットワークを構築し、難病患者や家族に寄り添った支援に結び付けることが重要です。
なかでも、難病患者への就労面での支援については、難病の中には完治はしないものの、適切な治療や自己管理を続けることで、普通の生活ができる疾患がある一方、日単位や年単位で症状が変わる疾患もあるなど、難病患者が持つ固有の事情に十分配慮した支援が必要であります。
(2)これからの認知症施策の在り方について
「人生100年時代」といわれる中、札幌市においても認知症高齢者が増加しており、わが会派としてもこれまで、保健医療、介護、介護者支援など様々な切り口から認知症施策の推進を後押ししてまいりました。そうした中、本年4月、新たに設置された「札幌市認知症疾患医療センター」を会派として視察させていただき、改めて、かりつけ医等との連携の重要性を実感するとともに、認知症医療体制の充実強化に期待を寄せたところです。
また、認知症になっても自分らしく暮らせるまちづくりの拠点である「福岡市認知症フレンドリーセンター」を視察し、認知症の方自らがセンター内で役割を担い活躍されているとともに、相談や交流の場として、さらには情報発信についても、先進的な取り組みが展開されており、いきいきと活躍する認知症の方々を市民や企業が理解する場にもなっておりました。さらに、福岡市では「見つめる」「話しかけ」「優しく触れる」といったコミュニケーションを重視する「ユマニチュード」というケア技法の普及にも取り組み、市民の体験の場では、こうした講座をはじめ、AR(拡張現実)といった認知症の方の視覚を疑似体験し理解を深めるといった新たな手法も導入しておりました。
このたび、清田区でも秋のイベントにおいて、認知症への理解を目的に、VR(仮想現実)を活用した体験の場を提供し、子どもや若い世代をはじめ多くの市民への普及啓発を進めていくと聞いておりますが、こうした先進的な取り組みが、市内全域に展開されることを期待しているところです。
先般、全国初のユマニチュードインストラクターである北星大学の大島寿美子教授からもご教示いただきましたが、誰もが我が事として認知症を理解し、地域で支える取組を進めることが急務と考えます。
(3)敬老パスの見直しについて
敬老パスについては、昨年度、市として市民の健康寿命延伸を目指した敬老健康パスへと見直す素案が提案されましたが、様々な市民意見を踏まえ、経過措置の検討を行うことが示されました。
しかし、一部の市民からは、依然として、敬老パスと健康増進策との関連が不明だとし、市の施策立案の意図が分からないとの声が我が党にも寄せられております。
敬老パスの在り方については、高齢者を中心に存続を求める声ももちろんありますが、財源面の現状や将来的な見通しを踏まえ、しっかりと制度の在り方を議論すべきとの声や、現状制度の見直しを検討すべきといった声もあります。ついては、そうした声にも耳を傾けていくことは当然、必要と考えます。
一方、今後の少子高齢化社会をより良い社会にしていくためには、人々の身体的、社会的、精神的健康の増進が極めて重要であります。札幌市民の健康寿命は全国平均を下回っており、この現状を放置すれば、市民のなかで健康格差が拡がることが懸念されるだけでなく、医療や介護の負担の増加や、必要な人材確保に対応していくことも困難となります。
さらに、高齢者のデジタル技術の活用が急激に拡大してはいるものの、依然、不慣れな高齢者も多いのが現状である。
様々な課題はありますが、将来に向け持続可能な社会を目指し、健康寿命の延伸に向けた検討を行っているという、最も重要な点が充分に市民に伝わっていないと考えます。
(4)障がいのある方などへの情報提供の充実について
障がいのある方の情報の取得利用等に係る施策を総合的に推進する「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」が2022年に施行され、札幌市においては、まちづくりの重要概念の一つに「ユニバーサル」を位置づけ、日常生活など様々な場面での障壁(バリア)を解消し、他者とつながる共生社会の実現を目指しているところです。
本年4月には改正障害者差別解消法が施行し、事業者による障がいのある方への合理的配慮の提供が法的義務化され、官民を挙げての共生社会の実現に向けた取組がますます加速するものと思われます。
こうした共生社会を実現していくためには、障がいの有無によって分け隔てられることなく情報が取得できる環境が必要です。我が会派は、視覚障がいのある方の障がい特性を踏まえ、文字情報を音声化するアプリを開発したNPO法人関係者と意見交換する機会をいただき、近年では災害リスク情報なども音声で聞くことができる機能を追加したと伺ったところです。
このように、今後も進展していく情報技術の活用は有用ではないかと感じたところですが、福岡市においては、プライバシー情報を記載した通知などで既に音声読み上げに対応しているとも聞いており、こうした他都市の先行事例に習い、札幌市の各種通知や刊行物でも積極的に取り入れていくべきと考えます。
また、札幌の障がい者団体の方などからは、「障害福祉サービスについて、情報に辿りつくことができない。」といった声も聞かれ、さらには、国内で自然災害が多発する中、障がいがある方などから自然災害などに関する情報提供に配慮を求める声もあり、札幌市における障がいのある方などへの情報提供は、未だ端緒に就いたところでありますが、行政が率先して情報提供の充実に取り組むなど模範を示していく必要があるものと考えます。
(5)住宅セーフティネット法の改正について
低額所得者、高齢者、障がい者など住まいの確保に課題を抱える、いわゆる「住宅確保要配慮者」に対する居住支援の取組は、全国的にその重要性がますます高まっており、今回の法改正に至ったものと認識しております。
先日の新聞報道(24年5月6日道新朝刊)では、民間機関の全国調査の結果として、「大家の約4割が、高齢者の入居を拒否」との記事があり、今後、ますます高齢化が進む札幌市においても同様に、居住支援の取組は重要と考え、わが会派も、これまで議会において一貫して取り上げてまいりました。
その結果、札幌市は令和2年に住宅セーフティネット法に基づく「居住支援協議会」を立ち上げ、その相談窓口である「みな住まいる札幌」においては、数多くの相談対応を行っておりますが、さらに様々な状況にある方が適切な住まい探しができるよう我が党が指摘した結果、「居住支援法人ガイドブック」を作成していただき、賃貸住宅の円滑な入居の支援に取り組んでおります。
この度の「住宅セーフティネット法」の改正法案は、現在、国会にて審議されており、閣議決定された内容によると、住宅確保要配慮者が滞らずに入居できる賃貸住宅の市場環境を整備するべく、入居時はもとより、入居中や退去時に必要な支援をより手厚くする制度改正となっております。
改正法が施行された際には速やかに対応できるよう、今から準備を進めることが肝要と考えます。
答弁
(1)難病患者への支援の充実について
〇札幌市では、平成30年度から医療、福祉、雇用等の関係者で構成する協議会を設け、難病患者の支援に向けた課題について協議しているほか、難病相談支援センターを設置し、患者やご家族からの生活や就労等の相談に応じているところ。
〇難病は数多くの疾病があり、病状も人によって様々であるため、支援にあたっては、国の施策を踏まえ、難病患者それぞれが抱えている事情を十分に理解しながら進めることが重要と認識。
〇とりわけ就労相談では、ハローワーク等の関係機関と連携した支援を続けるほか、新たに事業所向けに難病への理解促進や制度説明に関する講演会を開催し、難病患者の就労に繋げるための支援を充実させてまいりたい。
(2)これからの認知症施策の在り方について
〇認知症になっても自分らしく地域で暮らし続けられるよう、活躍の場や生きがいづくりに取り組むなど認知症の方の視点に立った施策を推進することが重要と認識
〇そのため、今後は、認知症の方や家族と、研修を受けた認知症サポーターが、当事者の希望やニーズに応じた社会参加などができるよう、共に活動する場づくりを積極的に進めてまいる。
〇加えて、市民が実際に認知症の方の話を聞いたり、感覚を疑似体験できる講座の開催などにより、一層の市民理解の促進を図ってまいりたい。
(3)敬老パスの見直しについて
〇少子高齢化に伴う社会保障費や高齢者関連予算の増加、人材不足などの課題を抱える中、持続可能な社会に向けて、市民の健康寿命を延ばすことが重要な取組のひとつであると認識。
〇敬老健康パス制度は、高齢者が健康増進や介護予防、社会参加に取り組める環境を整えるだけでなく、バスや地下鉄の利用が難しい方でもJR・タクシーなどを利用できる仕組みとすることで、これまで以上に多くの市民の社会参加に繋げることを目指している。
〇また、デジタル技術を活用して、日々の活動を「見える化」し、楽しく自然に健康寿命を延ばしていくことに加え、得られたデータを健康施策に活用するなど、新たな取組への展開も期待される。
〇このような政策意義と敬老パスが抱える持続可能性の課題を市民に対して丁寧に説明するとともに、普及促進策として、活動に使えるポイントをあらかじめ付与するなど、より多くの方に利用される仕組みを検討してまいりたい。
(4)障がいのある方などへの情報提供の充実について
〇障がいのある方などの日常生活や社会参加において、個々の状況を踏まえた情報提供は欠くことができないものであり、札幌市では、誰もが読みやすいフォントや色覚に配慮したユニバーサルデザインを推進するとともに、音声読み上げ可能なホームページとするなど、障がいなどに配慮した市政情報の発信を進めてきたところ。
〇近年全国的に災害が頻発する中、防災や災害に関する情報提供の充実も重要であり、今後はこうした情報を含め、まずは庁内を挙げて、進展著しい情報通信技術の活用を積極的に図っていく考え。
〇また現在、障がい特性に配慮した情報提供事例などを共有し、民間事業者の理解促進に努めており、今後も連携協力して、情報面における社会的障壁の除去を推進し、あらゆる場面における情報の取得及び利用が容易になるよう、情報アクセシビリティの向上に取り組んでまいる。
(5)住宅セーフティネット法の改正について
〇今般の住宅セーフティネット法の改正案は、居住支援法人の業務に入居者が亡くなった際に室内に残された家財等の処理が追加されるなど、賃貸住宅の大家の不安解消につながる制度が創設されており、住宅確保要配慮者の円滑な入居に資すると期待されるところ。
〇改正法が施行された際に、着実に制度を運用していくため、まずは、居住支援に関し、連携して取り組んでいる北海道とともに、法改正に伴う制度の運用等に関する情報収集に努めてまいる。
〇また、新たな制度の担い手となる居住支援法人や不動産業者の役割がより一層重要になると認識。
〇そのため、収集した情報については、札幌市居住支援協議会はもとより、道内の居住支援法人が集う部会や、不動産業者との意見交換会などの機会を通じて共有を図ることで、新たな制度の理解を促すなど、制度が円滑に活用されるよう取り組んでまいりたい。
3次代を見据えたまちづくりの推進について
質問
(1)観光まちづくりプランを踏まえた観光施策について
①MICEの推進
我が会派では、人口減少という厳しい局面に入った札幌市を持続たらしめるために、外貨の獲得策を成長戦略として位置付け、世界中から選ばれるような国際競争力の高い都市になることが必要であるとあらゆる機会と通して主張を重ねてきました。
そうした中、札幌市は本年3月に観光の側面から外貨獲得の重要な戦略となる「第2次札幌市観光まちづくりプラン」を策定し、その横断的な視点において量から質への転換を掲げ、成果指標として2032年の総観光消費額を1兆円と定めたところです。
同プランでは、施策と具体的な取組の方向性の一つとしてMICEの推進を位置付け、地域への経済波及効果や学術・産業の発展等の社会的効果の創出を促進することとしています。
国においても、「新時代のインバウンド拡大アクションプラン」の中で、MICEを重要施策とし、国際的な人的交流を伴う取組の深化を図る方策が示されています。
具体的にはビジネス分野におけるグローバルな事業展開を行う企業等による会議や、教育・研究分野の国際学会開催への支援、また、文化芸術分野における文化財の活用促進などの施策が位置付けられています。
このようにMICEは多様な分野において経済活性化に資する高いポテンシャルを持っており、今後、札幌の成長戦略の重要な柱として、総観光消費額1兆円の達成を目指し、さらなる取組の強化を図るべきと考えます。
そこで、質問ですが、MICE誘致の都市間競争が激化していくなかで、どのように札幌の競争力を高めていくのか伺います。
②海外からの誘客
2032年度の総観光消費額1兆円という目標達成に向けては、MICEの誘致に加え、観光客の一層の誘客、特に経済効果が高い海外からの誘客への注力は必須であると考えますが、一方で、これまでのように単に観光客数の増加を求めるだけではなく、オーバーツーリズムによる観光のマイナス面の影響や、世界的な環境、サスティナビリティへの関心の高まりなどにも対応した施策が必要であると考えます。
(2)健康・医療分野における事業創出支援について
札幌市は、医療を軸とした産業集積の形成を目指す「MeCCS構想」を打ち出した札幌商工会議所などとともに、札幌医科大学の再生医療や北海道大学のがんゲノム医療などの最先端医療を軸とし、IT、食、観光などを組み合わせた新しい産業集積の形成を目指してきました。
その取組の一つとして本年3月に開催されたMeCCSフォーラムに私も参加してまいりましたが、寝たきり状態などの重い後遺症に苦しむ脊髄損傷の患者さんを数多く救ってきた札幌医科大学の再生医療が、その他の神経疾患治療においても、その応用研究が進められていることを知り、今後の可能性に大きな期待を寄せているところです。
また、札幌市では、健康・医療分野の産業振興をこれまで進めており、その成果として、大学の最先端研究を基にした大学発ベンチャー企業の創出や、研究周辺への企業の参入など、産業集積が少しずつ進んでいるものと認識しております。
健康・医療分野については、こうした最先端医療研究の実用化や周辺産業の活性化が引き続き期待される一方で、近年、国では、高齢化社会の進展を見据え、人々が健康で活力のある生活を送れる「生涯現役社会」の構築を目指し、健康管理や予防をはじめ、疾患の早期発見といったヘルスケア産業の振興にも力を入れているところです。
特に、市民の健康増進・健康寿命延伸という社会的課題には、我が会派としても大変注目しているところであり、札幌市においては、まちづくりの柱でもあるウェルネス推進の取組と健康・医療分野の産業振興を両輪として取り組むことが重要と考えております。
(3)下水汚泥の肥料利用について
昨今、国際紛争や原料産出国の輸出規制などで、肥料の原料価格が高騰し、我が国の農業は大きな影響を受けております。
こうした中、国は食料安全保障に向けた取組の強化は喫緊かつ最も重要な課題としております。
かつて札幌市では、下水汚泥を原料とした肥料、いわゆるコンポストを製造し、販売するなどの事業を行っておりました。
循環型社会の構築に向け、時代を先取りした事業であると感じておりましたが、需要の減少や臭気対策、施設更新に係るコストの増加などの課題により、平成25年に事業が廃止に至ったことについては、やむを得なかったものと理解いたします。
しかしながら、事業の廃止から10年以上が経過し、社会情勢は大きく変化しております。
このような状況の中、国から自治体に対し「下水汚泥の処理は、肥料として最大限の利用を行うよう」にとの通知が出され、我が会派としても今年の予算特別委員会にて取り上げました。
また、政令指定都市における下水汚泥の肥料利用の状況を調査するため、福岡市のリンの回収や、静岡市の肥料利用についての視察も行いました。
静岡市においては、札幌市が行っていたような自治体が自ら肥料を製造する手法ではなく、肥料製造事業者へ下水汚泥の一部を提供する手法をとっておりました。
こういった手法であれば、自治体において施設の更新や維持管理などのコストの軽減が図られるため、参考にすべき事例ではないかと考えます。
(4)札幌市における木材の循環について
持続可能な林業に欠かせない木材の利用促進については、これまでも代表質問等を通じて我が会派が訴えてきたところであり、市長からも「地域材活用を促進することで、北海道の林業、木材産業の振興に寄与していくことが重要である」と答弁いただいているところです。
そのような中で札幌市の実態に目を向けますと、市域の6割以上を占める森林からは、間伐などの整備によって札幌市の木材すなわち市産材が産出されており、また、公園の樹木や街路樹からは剪定作業で切り取った枝などの資源も生じています。
例えば、清田区にある市有林(いちゆうりん)の白旗山都市環境林は、散策やスキーなどのレクリエーションを楽しむことができる市民の憩いの場でありながら、木材を産出している資源豊かな森林でもあります。
近年は、本市において、森林環境譲与税を活用した整備を進めており、令和4年度まで年間1,000立方メートルほどだった木材生産量は、今年度は6,000立方メートルを超えると伺っています。
戦略ビジョンに掲げる「まちづくりの基本目標」の一つである「身近なみどりを守り、育て、自然とともに暮らすまち」を実現するためには、今後、道産木材の活用にとどまらず、このような市内で産出されている木材にも注目し、市内の木材を地域内で循環させる取組を進めるべきと考えます。
取組の一つとして、資源の循環を進めるために、木材における地産地消を市民に広く周知することはいかがでしょうか。
特に将来を担う子どもたちに、森林の大切さや木材の地産地消について、しっかりと伝えていくべきと考えます。
(5)盛土規制法の円滑な施行について
平成30年の胆振東部地震において、清田区の里塚地区などの盛土造成地に大きな被害が発生しました。
我が会派では盛土の防災対策に対して着目し、継続的に質問を続けてきたところです。
札幌市では、大規模盛土造成地の変動予測調査について、胆振東部地震で得た知見を反映した札幌独自の予備調査を実施したうえでマップを公表し、現在は住民への説明のうえ詳細な調査を進めています。
このように市民への情報提供を行いながら、防災・減災への取組を進めてきたことについては、我が会派としても高く評価をしているところです。
一方、令和3年7月、静岡県熱海市では、大雨に伴って建設残土などを捨てた盛土の崩落により大規模な土石流災害が発生し、貴重な人命が失われました。
これまで盛土対策は宅地を中心としたものでありましたが、土砂の一時堆積のような盛土への対応も十分に進めなければならないと我々も認識をあらたにしたところです。
国は、熱海の災害などを踏まえ、令和5年5月に「宅地造成等規制法」を「宅地造成及び特定盛土等規制法」、通称「盛土規制法」に改正しました。
盛土規制法では、法施行から2年以内、つまり令和7年5月までに、新たな規制区域の指定を行わなければならないと定められています。
現在は市内の傾斜地を規制しているとのことですが、盛土規制法の改正主旨を踏まえ、危険な盛土から市民を守るために、広めに区域を指定することが必要と考えます。
また、法の円滑な施行にあたっては、規制範囲の拡大により許可が必要な工事が増えるなど、少なからず市民や企業に対し影響が生じることから、規制範囲や内容等を十分に周知し、理解・協力を得ることが重要ではないかと考えます。
答弁
(1)観光まちづくりプランを踏まえた観光施策について
〇1点目のMICEの推進について
国際会議等のMICEの開催は、高い経済効果を生み出すとともに、国際的な都市ブランドの向上等が期待できるところ。
〇今月上旬に札幌で開催されたASEANTA総会では、観光庁の事業を活用し、Kitaraや豊平館をレセプション会場として、札幌交響楽団による演奏や北海道の花と食によるおもてなしを行い、参加者から高い評価をいただいた。
〇このように札幌ならではの資源をさらに磨き上げ、訴求力の高いコンテンツを開発しその魅力を広く発信するほか、札幌が強みを持つ学術分野と関連する国際会議等を重点的に誘致しながら、MICE都市としてのブランドを高めてまいりたい。
〇加えて、新MICE施設の整備検討を始めとする施設機能の強化を図り、今後も世界からMICEの開催地として選んでもらえるよう取組を推進してまいりたい。
〇2点目の海外からの誘客について
観光まちづくりプランに掲げる目標を達成するためには、特に観光消費額が高い海外からの誘客などに力を入れつつ、併せて地域や環境などに配慮した施策を推進していくことが重要と認識。
〇そのため、現在、アドベンチャーツーリズムの推進やスノーリゾートとしてのブランド化など付加価値の高いコンテンツの充実に加え、新市場の開拓やマーケティングによる戦略的な誘致などに取り組んでいる。
〇同時に、オーバーツーリズムの対応やバリアフリー化の推進、環境負荷の低減など、観光客が快適に滞在することができ、また、市民生活の豊かさの向上にもつながる受入環境の整備などの取組も進めているところ。
〇今後も経済効果が高い海外からの誘客などの戦略的な取組と、市民と観光客にとって快適な受入環境の整備をバランス良く推進することにより、持続可能な観光の実現を着実に進めてまいりたい。
(2)健康・医療分野における事業創出支援について
〇札幌市には学術機関が集積し、最先端医療に関する研究環境が整っているという優位性を背景に、本年3月策定の第2次札幌市産業振興ビジョンでも、引き続き同分野を産業振興の重点に位置づけた。
〇札幌市は、学術機関の優れた研究の開発支援等に以前から取り組んできており、バイオ医薬品や化粧品素材等に係る事業化に寄与してきたところ。
〇同分野の研究開発は、事業化までに多くの時間と費用を要するものの、ファンドの組成など成長段階に応じた財政支援や伴走支援により、一定の成果が期待できることから、今後も積極的な支援を行うことで、さらなる事業創出につながる可能性があると認識。
〇また、ヘルスケア分野については、超高齢化社会を背景に市場拡大が見込まれることから、関係機関と連携を深め、市内企業の事業創出が今後一層促進されるよう各種支援に取り組んでまいる。
(3)下水汚泥の肥料利用について
〇現在、札幌市では、下水汚泥を焼却し、その灰を全てセメント原料などに活用しているが、今般の社会情勢を踏まえると、肥料の安定供給のために、汚泥の利用を進めることは重要と認識。
〇このため、他都市の事例の収集に加え、昨年10月からは、汚泥成分の安全性の確認として、季節ごとに、ひ素や水銀等の重金属の含有濃度の分析などを始めたところ。
〇今後は、その結果を踏まえた上で、汚泥の一部を肥料製造事業者へ提供するなど、肥料利用について検討を進めていく。
(4)札幌市における木材の循環について
〇持続可能な林業を目指す上で、札幌市内で産出される木材を市内で循環させていくことは重要と認識。
〇このため、森林や木材利用について親子で楽しみながら学ぶことができるデジタル絵本を作成するなど、市民への普及啓発に取り組んできたところ。
〇今後も、市内における木材の循環を進めていくために、身近な公共施設に市産材を用いるほか、他都市の取組事例も参考にしながら、効果的な取組について検討してまいりたい。
(5)盛土規制法の円滑な施行について
〇今回の法改正の趣旨は盛土等を行う土地の用途やその目的にかかわらず、危険な盛土等を全国一律に規制することが目的。
〇規制区域については、土砂災害から市民の生命や財産を守り、安全安心に暮らせるまちの実現にむけ、改正法の趣旨にあわせ隙間なく規制できるよう区域を検討しているところ。
〇秋ごろには規制区域案を公表し、規制内容や範囲について混乱が生じることがないよう業界団体や市民に丁寧に説明・周知を行い、来年4月に規制区域を指定できるよう進めてまいりたい。
4未来を担う子ども施策の推進について
質問
(1)こどもホスピスづくりに対する今後の取組について
一昨年、昨年と我が会派の代表質問で触れましたが、我が党は2021年マニフェストで全国各地の「こどもホスピス」設置を掲げ、様々な取組を進めております。
本年3月「『こどもホスピス』を応援する議員連盟」の事務局長、竹谷とし子参議院議員が予算委員会で、命を脅かす病気と闘う子どもたちや家族を支える「こどもホスピス」には多様な形があり、ニーズや課題に沿う支援の後押しを求め、総理からはこどもや家族の安心な環境充実を進める答弁があり、ようやく国政レベルでも動き始めたことを感じました。
先般、「横浜こどもホスピスうみとそらのおうち」と千葉県の「レスパイトハウスやまぼうし」を会派視察し、子どもや家族を地域で支えるコミュニティ型の横浜は、市民はもちろん、県や近隣の県からの利用が多く、家族の休息の場としての福祉型の千葉は、市民の利用が多いなど、その特徴も様々で、こどもホスピスの多様な形を多くの方に知ってもらい、みんなで一緒に支えることが大事と実感しました。
道内では、「NPO法人北海道こどもホスピスプロジェクト」が仮施設くまさんちを市内で運営しながら、本施設設立に向け寄付集めに奔走しているほか、寄り添う家族への支援に力を入れる民間団体もあり、明確な定義がないからこそ、こどもホスピスには無限の可能性があると考えております。
その中、秋元市長が「こどもホスピスづくりに取り組む民間団体等への活動を支援する」と公約で掲げ、「こどもホスピスづくり活動支援事業」をアクションプラン2023に位置づけたことは、現在進行形で奮闘する民間団体等や病気の子どもたちと家族の励みとなり、今後の取組に期待をしております。また、北海道では今年度の重点政策として「こどもホスピス等支援事業」を挙げ、周知や支援活動普及のシンポジウム等が予定されていると聞いております。
(2)こども誰でも通園制度の取組について
我が会派はこれまで、子育て家庭の孤立防止と全ての子どもの成育に資するため、就労の有無に関わらず未就園児のいる家庭でも保育施設等の利用ができる「こども誰でも通園制度」の創設が必要である、と繰り返し提言してまいりました。
先の第1回定例会では、わが会派から、この通園制度の実施に向けては、「潜在的待機児童解消や保育士確保等の課題整理をするとともに、持続可能な制度とするために早急な検討が必要」であると求めたところです。
その答弁において、「札幌市では、国の募集に応じ、令和6年度中に認可保育所など数か所での試行的事業の実施を予定しており、現在、事業の実施内容や事業者の募集方法などを検討しているところ」との説明がありました。
現在、国においては、「こども誰でも通園制度」を2025年度から子ども・子育て支援法に位置づけ、2026年度から全国で実施する給付制度とする関連法案を、国会において審議中です。
既に他都市では試行的事業の事業者募集などの取組を始めているところがあります。札幌市においては、去る4月30日に、試行的事業に係る事業者向けの説明会を開催した状況であると伺っております。
試行的事業の目的の一つは、課題を検証しつつ、必要があれば国に対しても制度の改善を求めるところにあると思いますが、そのためにもできるだけ早い時期からの試行的事業の開始が求められていると考えます。
加えて、先の第1回定例会において、わが会派は、利用者目線に立った子育てDXの推進を求めました。この新たな通園制度においても、子育て家庭が利用しやすい仕組みを検討すべきと考えます。
(3)子どもが安心して学べる教育について
昨今、子どもたちを取り巻く環境は複雑化しており、不登校やいじめの数が最多となるなど大きな社会問題となっています。
こうした中、子どもの不調や心の小さなSOSを察知し、早期に寄り添い支援につなげることは、問題の長期化、深刻化を未然に防ぐために重要と捉え、我が会派では一人1台端末を活用した子どもの声を聴くための健康観察アプリの早期導入を提言し、今年度より導入されることは評価しています。
さらに、我が会派ではこれまで「人間尊重の教育」の推進に関連する質疑を議会の場で重ねてきたところです。先の第1回定例会では、「人間尊重の教育を進める中で子どもの思いや願いを受け止め、安心感や自己肯定感の醸成につなげる」との答弁があり、3月に改定された第2期札幌市教育振興基本計画では、誰もが安心して学びに向かうことができる支援を施策に位置づけています。
このように、子どもの声を聞き、丁寧に関わるということは全ての子どもが安心して自分の良さを発揮しながら学ぶための基本となるもので不登校をはじめ、いじめの問題等についても同様に対応の基本となるものと考えます。
今年の4月、札幌市いじめの防止等のための基本的な方針が改訂され、令和3年のいじめにより起こった悲しい事案を深く反省し、新たな施策を実施しようとしていますが、いじめを早期に把握することにつながるのか、重大な案件とならずに済むのかなど、本当の成果はこれから問われることになります。
今回、教育振興基本計画や新たないじめの方針が改定されたばかりでこのような時期に教育長が替わることで施策が滞ったり、対応が遅くならないか心配するところです。
答弁
(1)こどもホスピスづくりに対する今後の取組について
〇札幌市民はもちろん、道内各地でこどもホスピスの開設を心待ちにしている子どもたちのためにも、北海道全体をも視野に入れた支援の輪を拡大していく必要があると考えている。
〇そこで、今月初めに北海道における小児がんの現状やこどもホスピスの必要性を参加者と一緒に考える、民間団体主催の講演会に、北海道とともに名義後援し、登壇者としても職員が参加したところ。
〇今後も、命を脅かす病気と共に生きる子どもたちが希望を叶えられる居場所の実現に向けて、北海道と連携を密にしながら、一人でも多くの理解や共感を得られるような後押しをしていきたい。
(2)こども誰でも通園制度の取組について
〇これまで、保育施設等関係者や子育て家庭の御意見をお聞きしながら、試行的事業の内容の検討を行い、この度、市内10か所程度の保育施設等で実施することとして、事業者の募集を開始したところ。
〇今後、実施施設を確定したうえで、7月には、生後6か月から2歳までの未就園児がいる御家庭の利用登録を行い、8月には実際に通園を開始していただく予定。
〇この試行的事業を通して利用者や事業者の声を十分に聞きながら、子育て家庭が安心して利用できる制度の構築に向けて課題を検証し、令和8年度の本格実施に向け、丁寧に準備を進めてまいりたい。
(3)子どもが安心して学べる教育について
〇いじめは絶対に許されないものであり、心身の健全な成長に大きな影響を与えるものであることから、いじめに向かわない態度や互いを思いやる豊かな心を育むなど、いじめが起きないように努めることが重要。
〇しかしながら、「いじめはどの子どもにも、どの学校でも起こり得るものである」ことから、いじめが起きた場合には、見逃したり、深刻化させたりしないために、組織的な対応を進めることも必要。
〇このため、教育委員会としては、新たに改定した札幌市いじめの防止等のための基本的な方針に基づき、早い段階から学校と一体となり、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなども加えて、チーム学校として対応できるよう取組を進めているところ。
〇私は教育長として、新たな方針に掲げたこれらの取組を各学校において速やかに実行していくとともに、組織に方針が定着するよう取り組んでまいる。
〇また、学校・家庭・地域に加え、子ども未来局などの市長部局等とも連携を密にとりながら、いじめ防止に取り組み、改めて、子ども一人ひとりの心に寄り添い、子どもが安心して学べる教育の充実を図ってまいる。