議会報告Assembry report
令和4年第3回定例議会2022/09/29
代表質問竹内たかよ議員(清田区)
札幌市議会本会議において公明党議員会を代表して 竹内たかよ 議員が代表質問を行いました。
以下、質問とそれに対する答弁の要旨を紹介します。
目次Contents
- 市長の政治姿勢について
- 令和3年度決算を踏まえた今後の財政運営について
- 新型コロナウイルス感染症対策に係る保健所業務の方向性について
- 原油価格・物価高騰対策について
- 脱炭素社会と循環経済(サーキュラーエコノミー)の達成に向けたプラスチック資源循環の取組について
- 札幌市冬のみちづくりプラン2018の後期実行プログラムについて
- 今後の観光振興におけるリピーター獲得のための取組について
- 中島公園の今後の在り方について
- 若い世代の転入(移住)促進策について
- 町内会への支援について
- まちづくり政策について
- 災害に強いまちづくりについて
- 丘珠空港の利便性向上へ向けた歩み出しについて
- MaaSを見据えたこれからの交通施策としてのデマンド交通導入について
- 地域交流拠点清田のまちづくりについて
- スポーツ施策について
- オリンピック・パラリンピック招致を契機としたSDGsの推進について
- アーバンスポーツの振興とスケートボードの環境整備について
- 医療・福祉施策について
- 市民に寄り添ったがん対策の推進について
- 障がい福祉サービスにおける人材確保と定着について
- ひきこもり支援事業の推進について
- 子ども施策について
- 子ども施策を推進するための組織体制の強化について
- 児童虐待防止対策の取組について
- 子どもの人間尊重の意識を育む取組について
1市長の政治姿勢について
質問
(1)令和3年度決算を踏まえた今後の財政運営について
令和3年度予算は、「札幌市まちづくり戦略ビジョン・アクションプラン2019」に掲げる政策目標の実現に向け、現下の社会情勢を踏まえながら柔軟かつ着実にまちづくりを推進するとともに、新型コロナウイルス感染症対策や、ウイズ・コロナ時代における新たな日常への対応などに重点的に資源を配分する予算として編成されました。
ただ実際には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の波に対応した、機動的な対策を講じるための補正予算について、時機を逃さず計上してきた一方で、予算化された計画事業の中には、実施手法の見直しを余儀なくされた事業や、執行自体が困難となった事業もあったと思料いたします。
本来、アクションプラン2019に掲げた政策目標は、その実現に向けて着実に取り組んでいく必要がありますが、感染症の影響により、事業執行が不透明な状況にあったことはやむを得ず、また感染症への対応を機動的に行ってきた本市の姿勢については、一定の評価をするものであります。
しかし、中長期的な視点で考えれば、直近の課題への対応を踏まえながらも、政策目標として掲げてきたアクションプラン2019の取組をどのように進めてきたのか、市民に対する説明責任が、市政運営を担う立場としてあるものと考えます。
また、令和3年度の決算状況が明らかになった今、政策目標の実現に向けた振り返りを行うことで、今後の事業の再構築や見直しを図り、予算案の議会審議などを通じて目に見える形で市民に対して示していく必要があると考えます。
更に、今年度に入ってからは、国際経済情勢の変化により、エネルギーや原材料等の価格の高騰等の影響が顕在化してきたことから、原油価格・物価高騰等への対策も補正予算を計上しながら取り組んでいる状況にあります。
今後は、これまで以上に喫緊の課題への対応と、アクションプラン2019をはじめ議会審議の中で示してきた政策事業の推進との間で、バランスに意を用いた柔軟な対応が必要であり、それを可能とする財政運営が求められているところです。
(2)新型コロナウイルス感染症対策に係る保健所業務の方向性について
新型コロナウイルス感染症はオミクロン株の流行により、本年1月からの第6波、7月からの第7波とこれまでをはるかに上回り、医療機関のみならず、保健所の業務も逼迫しておりました。
札幌市は第6波の期間に、療養判定サイト、陽性者登録センター、陽性者サポートセンターの立ち上げなど、他の都市と比べ早い段階からオミクロン株の特性を踏まえた対応を行い、第7波の急激な感染拡大に生かすことができたと考えます。
しかし、第7波の感染拡大のスピードは想定を上回り過去最大であったため、必ずしも全てが順調ではなく、課題もありました。
抗原検査キットが入手できず判定に時間を要した方、スマートフォンの操作が不得手で陽性者登録センターにアクセスできず、保健所への連絡や療養開始に日数を要してしまったこと、また、宿泊療養施設への入所や自宅療養セットの配送にも、日数を要したと認識しております。
そんな中、国は保健所を含む医療現場の逼迫状況に対し、8月下旬からの緊急避難的な対応を打ち出すとともに、9月26日からの全国一律の全数届出の見直しを実施することとしました。
これにより、医師が保健所に提出する発生届の対象者は、「65歳以上の者」「入院を要する者」「妊婦」「重症化リスクがありかつコロナ治療薬の投与が必要な者等」の4つの要件に当てはまる方のみとし、該当しない方については、自宅療養中の相談窓口として開設された健康フォローアップセンターで、相談に応じる体制がとられました。
これにより保健所は、重症化リスクが高い方への対応に注力していく仕組みを推進しているものと捉えることができ、国が掲げる「Withコロナに向けた新たな段階」として必要な過程と思われます。
しかしながら、第7波の事例で触れたように、保健所に連絡が繋がらず、不安を抱える方は65歳以上に限らず若い方でも状況が悪化する可能性もあるため、発生届が出ない患者に対しても保健所の対応は重要であると考えます。
(3)原油価格・物価高騰対策について
令和4年4月26日、国は、コロナ禍で原油価格の高騰や物価上昇の影響を受けている生活者や事業者の負担を緩和するため、「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」を策定するとともに、地方創生臨時交付金に「コロナ禍における原油価格・物価高騰対応分」という新たな枠を創設しました。
我が会派は5月19日、学校給食費等の負担軽減、子育て世帯への給付金の支給、公共料金の負担軽減、バス・タクシーなどの地域公共交通の経営支援を含め、9項目にわたる緊急要望を市に提出いたしました。
この動きを受け、市では、子育て世帯への臨時特別給付金の支給、水道料金の減額、タクシー事業者支援など、物価高騰の影響を受ける市民や事業者に対して迅速に対応してきたところであり一定の評価をいたします。
一方、原油・原材料価格の高騰等により、食料品などの値上げの動きは年内続くという予測もあり、国においても、ガソリン価格抑制のための補助金制度の延長、輸入小麦の政府売り渡し価格の据え置きなど、新たな対策を打ち出したところです。
札幌市においても、市民生活と市内事業者を両輪で下支えし、地域経済の循環を促すような、即効性のある様々な取組を切れ目なく実行していく必要があると考えます。
(4)脱炭素社会と循環経済(サーキューラーエコノミー)の達成に向けたプラスチック資源循環の取組について
大量生産・大量消費といった一方通行型の経済社会活動は天然資源の枯渇、生物多様性の破壊、そして地球温暖化といった環境問題に密接に関係しております。
現在、世界の潮流はこのような経済社会活動から脱却し、持続可能に資源を利用する「循環経済(サーキュラーエコノミー)」への移行を目指しております。
これは、従来の3Rの取組に加え、資源を有効活用しながら、サービス等を通じて付加価値を生みだし、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物や二酸化炭素の発生抑止等を目指すものであり、脱炭素社会を目指す上で新たなビジネスモデルとなる可能性を秘めております。
特に石油などの化石燃料資源から作られるプラスチック類は、私たちの生活に幅広く浸透した必要不可欠な素材であるため、化石燃料資源の使用を単純にゼロにするのではなく、燃料以外の用途に限定し、持続可能な資源循環の社会へ移行することが重要です。
先日我が会派で、川崎の民間工場に行き、廃プラスチックを分子レベルまで分解し高付加価値の機能性材料に再生させるなど、世界的に注目されているケミカルリサイクル技術を視察して参りましたが、このように一部では実用化が進んでおります。
脱炭素社会と循環経済の両立には、プラスチック資源循環の取組がとりわけ重要であり、国においても「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の施行や「バイオプラスチック導入ロードマップ」の策定などの取組が進められておりますが、札幌市を含めた全国の自治体においては、リサイクルできないプラスチックは、最終的に燃焼されているのが現状です。
2050年カーボンニュートラルを目指す札幌市としては、脱炭素と循環経済を両立する資源循環の推進に向けて積極的に取組を進めていくべきと考えます。
(5)札幌市冬のみちづくりプラン2018の後期実行プログラムについて
毎年、札幌市が実施している市民意識調査では、力を入れて欲しい施策や事業として「除雪に関すること」が12年連続トップであり、雪対策への市民の関心は非常に高い状況にあります。
特に昨年度は、24時間降雪量の気象台観測記録を2度更新し、特異な気象状況が市民生活に多大な影響が及んだことから、冬の暮らしを支える市の雪対策に市民の関心が一層高まっています。
これまで札幌市は、1991年に雪対策の基本計画である「雪さっぽろ21計画」を策定して以来、社会環境の変化に応じて、新たな計画を策定してきており、2018年には10か年計画である「札幌市冬のみちづくりプラン2018」を策定するとともに、その具体的な実施内容や目標を5か年計画「冬みちプラン2018実行プログラム」に示し、様々な視点で進捗を図ってきました。
こうした取組により、約5年間の中で、市長も公約で掲げていた除雪機械の1人乗り化や新たな雪処理施設の増強など、除排雪作業の効率化・省力化につなげる一方で、冬のルールとマナーの向上、さらには砂まき活動の推進など、市民や企業の協力を得ながら取組を進め実績を残してきたことは評価するところです。
そうした中、今年度は当プランの計画期間が折り返しを迎え、来年度以降の冬に向け後期の実行プログラムの策定が予定されていると伺っています。
ついては市民から信頼される雪対策を目指し、これまでの取組を十分に検証し、柔軟に見直すもの、強化すべきもの、さらに新たに取り入れること等を適切に見極め、後期実行プログラムを整理する必要があると考えます。
また、今後は、少子高齢化の一層の進行、将来的な除雪従事者の減少や、除排雪作業の効率化・省力化に資する先進技術の目覚ましい発展など、社会情勢や環境が刻々と変化することが見込まれます。
(6)今後の観光振興におけるリピーター獲得のための取組について
新型コロナウイルスについては、いまだ収束の見通しがつかない状況にありますが、今年の夏は、3年ぶりに行動制限がない中、お盆期間における航空機の予約もコロナ前の8割に戻るなど帰省客や観光客が増加し、感染拡大の防止と社会経済活動の両立に向けた動きが見られたところであります。
また、水際対策の緩和により、今月7日からは、1日当たりの入国者数の上限が2万人から5万人に引き上げられるとともに、添乗員なしのパッケージツアーでの入国も可能となったところですが、来月以降できるだけ早く、入国者数の上限が撤廃され、個人旅行も認められる方向で調整が進められるなど、訪日外国人観光客の更なる拡大が期待されているところです。
国内の観光関連事業者は、新型コロナウイルスの影響による観光需要の低迷によって、長きにわたり厳しい状況に置かれているところであり、観光需要の回復に伴い、今後、全国各地における観光客の取り込み競争は激しくなることが想定されます。
改めて言うまでもなく、観光は札幌にとって経済成長をけん引する極めて重要な産業であり、人口減少期においても観光による経済波及効果を維持・拡大していくためには、一時的な観光客誘致競争だけではなく、長期的な視点に立ち、将来にわたって旅行者を惹きつける取組も重要と考えます。
そのためには、地域に眠る観光資源を発掘し、札幌でしか味わえない新たなコンテンツとして磨き上げていく仕組が必要ではないでしょうか。
さらに、それを発信していく上では、一定のエリアを対象として関連するコンテンツをまとめて、その地域に根差す歴史や文化的なエピソードなども交えていくことで、エリアの魅力に厚みが生まれ、ブランド化にも繋げていくことも可能と考えます。
(7)中島公園の今後の在り方について
中島公園は、その成り立ちから、豊平川から分岐した貴重な水資源や藻岩山への眺望などの優れた景観を大切に守りつつ、人々の賑わいや憩いの場となるよう、時代の要請に即した使い方をしてきた公園です。
我が国の公園制度は明治6年の太政官布達がはじまりとされていますが、中島公園は、この制度に基づき設置された札幌市初の公園に位置付けられております。
はじめは競馬場などの行楽施設を有した中島遊園地として整備され、戦後の復興時には硬式野球場を建設してスポーツ振興策に寄与したほか、公立としては全国初の児童館をこの地に開館するなど、この公園からたくさんの文化が誕生していった経緯があります。
さらに、平成7年から着工した中島公園の再整備においては、音楽専用ホールKITARAを建設し、札幌の歴史や文化と水と緑が融合する公園として、その魅力を高めてきたところです。
しかし、平成の公園再整備から24年が経過し、人々が集う都心部の公園については、ライフスタイルの多様化などに伴う快適性の高い環境整備が求められており、新たな中島公園の魅力をどう創出していくべきか、課題も感じます。
最近では、公園の隣接敷地に新MICE施設の設置に向けた協議のほか、公園内に札幌博物館建設の動きが出てきており、中島公園のより一層の賑わい創出に期待を寄せています。
そこで、我が会派では、中島公園に求められる魅力とは何かを考えるため、今年の1月に中島公園の一層の賑わい創出に向けた調査報告書をとりまとめました。これにより、今日の都市公園は、地域の特性やニーズを踏まえた公園整備に加えて、民間事業者との連携により、柔軟な発想に基づく事業運営を進める事例が全国的に増えていることが分かりました。
都心に近接し、集客力も見込める中島公園については、豊かなみどりと優れた景観をこれからも大切にしていく一方、公園の特性や時代のニーズに即した魅力的な使い方についても積極的に研究を進め、市民、来街者ともに楽しめる場となるよう、今後の中島公園の在り方について、時機を逸することなく検討するべきと考えます。
(8)若い世代の転入(移住)促進策について
昨今、我が国全体で少子化の影響による人口減少が加速しております。市外からの転入による社会増に支えられ、わずかながら人口増が続いてきた札幌市も、昨年の人口動態調査の結果では、ついに人口減少に転じました。
生まれてくる人と亡くなる人の差を表す自然増減に関しては、既に2009年からマイナスを示しておりましたが、少子高齢化の進展により、昨年は実に1万人近いマイナスになったところです。一人の女性が産む子供の数に相当する合計特殊出生率は1.09という全国平均を下回る低さであり、今後も人口回復のきざしは見られません。
こうした状況を背景に、札幌市では、さっぽろ未来創生プランにおいて、「質の高い雇用創出と魅力的な都市づくり」と「結婚・出産・子育てを支える環境づくり」の2つの基本目標を掲げ、人口減少の緩和に取り組んできたところですが、目覚ましい成果が得られていないのが実態であります。
このままでは、人口減少と少子高齢化のダブルパンチで、街の若々しさが失われ、活力を維持できないことが危惧されます。無論、これは札幌市だけの問題ではありませんので、今後は、都市間における人口の奪い合い、特に若い世代の獲得競争が激化するのではないかとも考えます。
そこで、我が会派としては、札幌市としても移住政策に本腰をあげるべきと提案したいと考えております。空き家や空地が目立ち始めている郊外地など、モデルとなるエリアを決めて、「さっぽろの田舎暮らし」をテーマに、札幌への移住がブームになるような仕掛けをしてはいかがでしょうか。
仕事の手配や住宅確保、子育てに関する支援など、他の自治体に負けない手厚いインセンティブを用意し、移住者には移住者目線で札幌暮らしの利点を全国に発信してもらい、さらなる移住者を集めてくる好循環が生まれると理想的であります。
令和3年第4回定例会の代表質問では、我が会派のくまがい議員より、「少子化の進行、人口減少が進展する札幌市における実効性の高い取組の必要性」について質問し、「大学や企業、近隣自治体との連携強化や幅広い層へのアプローチを進める」との答弁があったところです。
(9)町内会への支援について
町内会は、ごみステーションや街路灯の管理、環境美化や防災・防犯に関する取組をはじめ、高齢者・子どもの見守りや冬季の除排雪など、私たちの身近な暮らしを快適にする様々な活動を行っており、私たちの生活は、これまで長きにわたって、そういった町内会の方々の活動に支えられ、安全で安心な暮らしやすい地域コミュニティが維持されてきております。
一方で、それを取り巻く社会全般の状況においては、少子高齢化の進行や世帯構成の変化、共同住宅の増加などによる居住形態の変化のほか、生活様式や個人の価値観の多様化など様々な変化が生じており、それに伴って多くの町内会では、加入率の低下や役員の高齢化、担い手不足などの問題が生じているところです。
このような背景を踏まえ、札幌市では秋元市長1期目の公約として、町内会の意義や重要性について、町内会、地域住民、事業者、市が共に認識するため、町内会条例を制定するとして議論がスタートしました。しかし、平成30年当時の前回は、条例の検討に当たって当事者である町内会の意見を聴いていないことや、議会での議論が全く不十分であったことなどにより、1期目での条例制定を見送った経緯があります。
そして今回提出された条例案は、当時の反省を生かし、地域の意見を聴いてその声を反映してきたことや、地域の声を直接聞いている議会との議論をしっかり行ってきたこと、そしてパブリックコメントの声も反映して仕上がっていると捉えております。
また、「札幌市未来へつなぐ町内会ささえあい条例」という名称については、「地域の町内会の活動を将来にわたって地域住民、事業者及び市が一体となって支え、より豊かで明るく暮らしやすいまちを未来の世代に継承していく」という思いが込められたものと認識しております。
町内会の維持及び活動の活性化に関する市の施策を条例で明記することにより、札幌市が、将来にわたって町内会を支援し、地域の負担軽減といった期待に応えていくことが重要です。
現在検討を進めている町内会支援策の中でも、地域からの要望が多いごみの課題については、我が会派は、6月の財政市民委員会において、共同住宅への専用ごみステーション設置のルールの見直しを訴えるとともに、今年度から上限額を引き上げた管理器材の購入費用の助成に対する要望をしてきたところです。
これまでも、ごみステーションの課題の解決にあたっては町内会が大きな役割を果たしてきておりますが、地域の課題解決に向けては、市と地域との連携は不可欠であり、更にこの町内会の活動を進めていただくためには、市は、原則、全ての共同住宅に専用ごみステーションを設置する旨のルールの明確化が必要であると考えております。
答弁
(1)令和3年度決算を踏まえた今後の財政運営について
〇アクションプラン2019については、コロナ禍を踏まえた計画事業の再構築や追加補強を行いながら、プランに掲げた政策目標の実現に向けて着実かつ柔軟に取り組んできたところ。
〇また、感染状況に応じた対策を機動的に実施してきたほか、今年度に入ってからも原油価格・物価高騰等の影響を受ける市民や事業者に対し、切れ目のない支援に取り組んできたところ。
〇こうした中にあっても、令和3年度決算は、歳入の増や中期財政フレームに基づく歳出の効率的な執行などにより、財政調整基金残高を一定程度確保するとともに、全会計の市債残高の減少についても達成することができた。
〇引き続き、都市基盤の再整備や子ども・子育て支援など、未来への投資に積極的に資源配分するとともに、財政基盤の強化や、社会経済情勢の変化に対応した事業の見直しと再構築に取り組み、メリハリのある健全な財政運営を堅持していく。
(2)新型コロナウイルス感染症対策に係る保健所業務の方向性について
〇今般の全数届出や療養のあり方の見直しは、届出対象外となった若年軽症者等に対する必要な支援は継続しつつ、重症化リスクの高い高齢者等をより確実に守るために、保健医療体制の重点化を進めるものと認識。
〇保健所としては、国に先駆けて設置した陽性者サポートセンターなども活用し、引き続き、医療の必要な方に迅速に対応してまいりたい。
(3)原油価格・物価高騰対策について
〇これまでの支援策の検討に当たっては、可能な限り幅広い対象に支援が行き届き、早急に対応が可能であることを重視してきた。
〇現在進めている水道料金減額等の支援策は、国や北海道の取組の対象外となる世帯等にも対象を広げつつ、迅速に支援を行うものであり、物価高騰で苦しむ市民等の負担軽減には一定の効果があると認識。
〇年末に向けては、長引く物価高騰等の影響を特に大きく受ける低所得世帯への支援として、国が行う給付への独自の上乗せや生活困窮者への相談支援を速やかに実施することを検討。
〇加えて、価格への反映が難しく、提供する食事の質の維持に困難を抱えている介護保険施設・障害福祉サービス事業所、子ども食堂等への支援も実施したい考え。
〇これらの取組を速やかに実施できるよう、今定例会において、追加となる補正予算案を提案したい。
(4)脱炭素社会と循環経済(サーキュラーエコノミー)の達成に向けたプラスチック資源循環の取組について
〇ご質問のプラスチックの資源循環を力強く推進するためには、脱炭素を社会全体が取り組むべき問題として捉え、資源消費と廃棄物発生を限りなくゼロにする循環経済を市民と事業者が一体となって進めていくことが必要不可欠であると認識。
〇現在、札幌市では、ペットボトルや容器包装プラスチックの分別収集などのリサイクルに加え、廃棄物の発生抑制となるリデュース、リユースにも力を入れ、3R(スリーアール)の取組を進めているところ。
〇今後は、例えば、植物由来のバイオマスプラスチックなどが広く利用されるよう、事業者と積極的な連携を図るとともに、市民にも広く協力を呼びかけるなど、脱炭素と循環経済に力点を置いた施策を進め、その気運醸成に鋭意取り組んでまいりたい。
(5)札幌市冬のみちづくりプラン2018の後期実行プログラムについて
〇これまで、札幌市冬のみちづくりプラン2018に基づき、除雪従事者の労働環境の改善や作業の効率化、雪対策における市民力の結集など、雪対策を取り巻く課題に対応する取組を鋭意進めてきたところ。
〇今後も、建設業の労働力や先進技術の動向調査のほか、少子高齢化の進行や極端な大雪と少雪などによる市民意識の変化について、事業者や市民へのアンケートを通して的確に捉え、適切に対応していくことが必要であると認識。
〇そのため、後期の実行プログラムでは、これらの動向を踏まえ、生活道路の除排雪の在り方の検討や、ICT活用による更なる効率化・省力化のほか、大雪に備えたテレワーク導入の働きかけといった市民・企業との連携強化などに取り組んでまいりたい。
(6)今後の観光振興におけるリピーター獲得のための取組について
〇国内人口が低迷する中では、札幌の経済成長を支える観光が果たす役割は大きく、多くの観光客に、これまでとは異なる魅力を感じていただき、リピーターになっていただくための取組が重要と認識。
〇そのため、今年度から、宿泊事業者や旅行事業者等の幅広い観光関連事業者に参加いただき、都心部をススキノや創成川イーストなどの7つのエリアに分け、そのエリア内にある、地元に住む人だからこそ知っている魅力を発掘する取組をスタートした。
〇現在、参加者は、机上での検討だけではなく、都心部のまち歩きを行いながら、新たな観光コンテンツの発掘を進め、それらを組み合わせたモデルコースの開発に前向きに取り組んでいるところ。
〇今後もこの取組を継続することによって、何度訪れても新たな魅力や体験を提供できる環境を整備し、より多くの方に、また来たいと思っていただける観光地づくりを目指してまいりたい。
(7)中島公園の今後の在り方について
〇中島公園は、都心部の豊かなみどりと優れた景観を有し、新たな文化や賑わいを育んできた貴重な空間であり、これからも、この公園が持つ魅力をより一層高めていくことは重要。
〇その実現に向けては、今後の公園に求められる機能や、他の関連事業との連携を含め、中島公園に相応しい在り方について速やかに検討を進めてまいりたい。
〇また、民間資本との連携について、中島公園は多くの人が集まりやすい立地にあり、そのポテンシャルを生かし、民間資本と連携した公園運営を図ることは、有効な手法の一つになりうると認識。
〇今後、中島公園の在り方を考えていくにあたっては、全国の官民連携事例を参考にしながら、パークPFI制度など幅広な視点で検討してまいりたい。
(8)若い世代の転入(移住)促進策について
〇人口減少緩和策において、若い世代の獲得と定着は、大きな課題と認識。
〇札幌市では、20代の道外転出超過が続いており、なかでも大学・大学院における新規学卒者の4割が道外に就職している状況。
〇こうした状況から、首都圏で移住フェアを開催するなど、多様な人材の確保に向けた移住促進策を進めてきたことに加え、より若い世代の定着を図るため、今後の人口減少緩和策の重点の一つに、大学との連携を位置付ける考え。
〇具体的には、大学間で連携して行う、道外からの学生の呼び込みや、教育を通じたまちづくり活動への参画、卒業後の定着の促進といった、学生への切れ目のないアプローチに、市も協働して取り組むことを考えている。
〇さらに、このような大学が行う社会課題の解決に資する取組に対して、ふるさと納税を活用して支援することで、関係人口の創出も図るなど、定住人口の獲得のみならず、幅広い視点での方策を検討してまいりたい。
(9)町内会への支援について
〇町内会が将来にわたって持続可能であるためには、町内会への加入促進や負担軽減が不可欠であると考えており、条例施行を契機とする支援策の実施に向けて、これまで以上にしっかりと取り組みたいと考えているところ。
〇また、町内会活動の中でも、ごみステーションの管理については、町内会との意見交換会等やパブリックコメントにおいて、特に多くの声が寄せられており、改めて重要な地域課題の一つと認識。
〇このため、共同住宅への専用ごみステーション設置の促進などの課題解決に向け、関係要綱の改定等によりルールを明確にするほか、ごみパト隊等の日常的な活動を通じて町内会と地域課題を共有しながら、町内会に寄り添った支援をより力強く行ってまいりたい。
2まちづくり政策について
質問
(1)災害に強いまちづくりについて
①札幌市次期強靭化計画の見直し
札幌市は、地震・台風などの自然災害リスクが低く、首都圏との同時被災の可能性が極めて低い環境にあることを強みとして、企業立地の促進などを進めてきました。
しかし、近年の災害は激甚化・頻発化しており、昨年度は札幌管区気象台の観測において、24時間降雪量が統計を取り始めてから最多となる60cmを記録するなど過去に類を見ない大雪に見舞われ、除排雪作業が追い付かず、道路交通網が麻痺するなど、市民生活に大きな影響を及ぼしました。
また、今年8月15日からの道内における豪雨では、人的被害は確認されなかったものの、国道や高速道路の通行止め、鉄道の運休、河川の溢水(いっすい)などが発生し、復旧に多大な時間を要したことは記憶に新しいところです。
大規模な自然災害は、いつでも・どこでも起こり得るものであり、札幌市においても自然災害のリスクが低いなどとは言えず、ひとたび発生すれば取り返しのつかない大きな被害を生むものであることをしっかりと認識し、大切な人や私たちの街を守るための備えを進めていかなければならないと考えております。
国では、大規模自然災害等に備えるため、事前防災・減災と迅速な復旧・復興に資する施策を総合的・計画的に実施し、強靱な国づくり・地域づくりを推進するために、「国土強靭化基本法」を制定し、それに基づく「国土強靭化計画」を策定しております。
また、国土強靭化基本法では、地方公共団体は国の定めた国土強靭化基本計画と調和した地域計画を定めることができるとされており、国と地方が一体となって強靱化の取組を推進していくことが重要とされています。
これを受けて、札幌市では本市の地域特性、自然災害に対する脆弱性を踏まえた施策を総合的・計画的に進めるために「札幌市強靭化計画」を策定していますが、この計画は、近年の大規模自然災害等も踏まえて適時に見直すことが必要ではないかと考えます。
②市民の防災意識向上に向けた取組
近年、日本各地で大雨による被害や大きな地震が毎年のように発生しております。温暖化などの気候変動から、北海道においても観測史上初という大雨が記録されたり、宗谷地方では震度5強の地震が起きたばかりです。
そのような中、札幌市で主催する「防災教育セミナー」へ参加し、東日本大震災で自ら被災し、大津波から避難した経験者の話を聞くことができました。
当事者の方の話は、深く心に届き、災害に備える思いを自分事のように考える機会となり、改めて防災教育の重要性を実感したところであります。
近年の頻発する自然災害はもちろんのこと、今般の新型コロナウイルス感染症拡大、今冬の大雪など、私たちにとって万が一を想定した備えをすることは、いざという時に必ず助けになるものと考えます。
一方で、北海道胆振東部地震から4年、東日本大震災からも11年が経過し、市民の防災に対する意識は薄れているのではないかと危惧します。
そのような中、市民一人ひとりの心に届き、行動に移す、一歩前に出る、自分事として常日頃から防災に取り組んでいく意識を持つよう、啓発を進めていくことが非常に重要なことと考えます。
(2)丘珠空港の利便性向上へ向けた歩み出しについて
札幌市は本年6月6日の総合交通政策調査特別委員会において「丘珠空港の将来像(案)」を公表し、8月8日から9月30日までパブリックコメントを行っております。
また、9月1日からは、この将来像に特に関わりが深い丘珠空港周辺の9つの連合町内会区域を対象とした意見交換会を行い、さらに札幌駅前通地下歩行空間や北区・東区の商業施設、コミュニティ施設では市民を対象としたオープンハウス型意見交換会を行うなど、市民への説明が進んできたものと認識しております。
丘珠空港は、防衛省と国土交通省が管理する共用空港であり、ビジネスや観光に加えて、災害時の応援受援の拠点を担う防災機能や、道内で医療に従事、また通院される方々の利用、医療ジェットの運用といった医療機能を支える重要な役割を担っております。
札幌市民はもとより、北海道民の安全・安心な暮らしや命を守るという観点から、この機能をより一層果たしていくためには、将来像(案)に示されている路線の維持、拡充は重要な取組と考えます。
一方で、路線の維持には、より多くの方に丘珠空港を利用していただく必要があり、高齢者を含め誰もが利用しやすい空港を目指すには、特に空港へのアクセスは重要であります。例えば、利便性向上の観点から、最寄りの公共交通機関である地下鉄栄町駅の更なる運用検討を深めることが課題と考えます。
丘珠空港は国管理の空港であることは理解しておりますが、今後も、多くの市民・道民に活用され続けるためには、将来像の実現までに、空港の機能強化として、アクセスの充実など市として早期に取り組める課題があるのではないかと考えます。
(3)MaaSを見据えたこれからの交通施策としてのデマンド交通導入について
国では、人口減少やコロナ禍の影響で一層厳しい状況である地域交通を、持続可能な形で「リ・デザイン」するための方策について検討を進めており、先日、中間とりまとめとして有識者検討会の提言を発表しました。
提言では、「地域交通を単純に延命するだけでは全国各地で明るい未来を展望することは困難であり、国として推進している技術や投資も取り込んで、地域交通をより良くしていくという視点が重要である」とされており、自動運転やMaaSなどデジタル技術を実装する「交通DX(ディーエックス)」などの必要性についても述べられています。
私もMaaSの推進が、利用者の利便性向上や高齢者を含めた移動弱者問題の解決に繋がる、生活交通の維持を図っていく上で有効な施策になり得ると考えておりこれまで幾度も取り上げてまいりました。
現在、札幌市では、市内の生活交通では初めてとなるデマンド交通の実証実験を手稲区で行うべく、準備を進めていると聞いております。
デマンド交通が郊外部における地域交通のひとつとして定着することは、移動手段の選択肢が増え、シームレスな移動環境の整備MaaSの推進にも大きく寄与するものであると考えられ大いに期待しているところです。
この実証実験の運行区域内にある富丘地区は、急傾斜地が多く、地域の高齢化が進むなかで、バス停までの坂道の上り下りは利用者にとって大きな負担となっています。
また、現在はバス便数も少ないことから、買い物や通院などをバスのダイヤに合わせて済ませなければいけない状況となっており、利便性が低いことが外出意欲の低下にも影響するのではないかと懸念しています。
今回の実証実験により、地域住民の移動ニーズを適切に反映した、住民にとって利用しやすいデマンド交通が構築されることで、こういった地域課題が解決されることとなれば、将来的には全市的な波及やMaaSの導入など、新たな交通施策へと展開していけるのではないかと考えております。
(4)地域交流拠点清田のまちづくりについて
①清田区民センターの移転
平成28年に策定した「第2次札幌市都市計画マスタープラン」では、市内17箇所に位置付けている地域交流拠点のうち先行的に取り組む拠点として、「新さっぽろ」・「真駒内」・「篠路」・「清田」の4か所を掲げております。
このうち、軌道系公共交通機関が整備されていない「清田」については、その拠点性を高めるため、短期的には公共交通サービスの利便性向上に努めるとともに、将来的には拠点機能向上のための効果的な取組を進めることとしております。
拠点機能向上に向けては、ソフト的な取組として、平成10年度から毎年開催されている「清田ふれあい区民まつり」に加えて、平成29年度から、清田区ゆかりのアーティストがパフォーマンスを披露する「きよフェス」など様々なイベントを開催してきました。
一方でハード面については、他の地域交流拠点と比較し、都市機能誘導区域内における商業・業務機能の集積度合いも低い状況にありますが、築30年未満の比較的新しい建築物の割合が高く、拠点機能の形成には一定の時間がかかると考えております。
公共施設の配置に目を向けると、清田区民センターが区役所から約800mも離れており、各種窓口や教室などの身近なサービスが1か所で受けられない不便を区民に強いているほか、区役所周辺の交流人口を削ぐ要因ともなっております。
このような状況を区民も大きな課題と捉えており、今年4月には、きよたまちづくり区民会議が市長に対して、区民センターの区役所周辺への早期移転を要望しております。
私としても、10区の中で清田区だけが、区民センターと区役所が離れていることから、この状況を1日でも早く解消するため、できるだけ早く区民センターを区役所周辺へ移転させるべきと考えております。
②地域交流拠点の恒常的なにぎわいや交流の創出
仮に区民センターが移転するとしても、どんなに早くても数年はかかると思われるため、にぎわいを創出するための取組を続けていくことも重要です。
札幌市では、昨年度と今年度で、恒常的なにぎわいづくりに向けて、区民を対象としたアンケートやワークショップを実施し、そこで得られた意見を基に実証実験を行っているところです。
今年度は複数回の実証実験が予定されており、第一弾として、先日、清田区役所となりの市民交流広場において、キッチンカーの出店や、地元農家によるマルシェが開催されました。
私も実際に現地に赴き様子を伺ったところ、一定の賑わいを見せており、ソフト的な事業展開の重要性も再認識したところです。
今後も、区民の方々が主体となって計画する、清田の歴史や自然といった大切な資源を知り・学び・楽しく体験するまち歩きなどを実施予定と聞いています。
このような区民の意見を取り入れた実証実験は、ぜひとも積極的に取り組んでいただきたいと思いますが、単なる一過性のイベントで終わらせるのではなく、今後に繋げていくことが重要であると考えます。
③地下鉄東豊線の清田方面への延伸
9月21日、今年も地下鉄東豊線建設促進期成会連合会から地下鉄延伸の要望書が市長に手交されました。要望書には、地域交流拠点清田に地下鉄駅を造って欲しい、清田のまちづくりに絶対不可欠である、という区民の願いが込められております。
また、今年の清田ふれあい区民まつりの開会式では、秋元市長が「地下鉄延伸を含めた交通整備について住民の人と一緒に考えていきたい」と発言され、地元は地下鉄延伸への期待を高めております。
しかし、このように地元の悲願である地下鉄延伸ですが、市長公約において、冬季オリンピック・パラリンピック招致に合わせて、札幌ドーム周辺の土地利用の在り方を検討し、地下鉄清田方面延伸の可能性を検証するとしているもののいまだ開始されていない状況であり、現状は、地元が期待しているものとは大きく異なるものであります。
答弁
(1)災害に強いまちづくりについて
〇1点目の札幌市次期強靱化計画の見直しについて
この計画は、真に「災害に強いまちづくり」を推進していくため、様々な自然災害を想定し、それらに対する脆弱性を分析・評価したうえで、必要な対策を設定するもの。
〇現行計画は、平成30年9月に発生した「北海道胆振東部地震」などを踏まえ、令和元年に5か年計画として改定したものであり、今年度から次の改定に着手したところ。
〇改定に当たっては、ご指摘のあった市内・道内での大雨や大雪、道外における大規模な土砂災害の発生事例など、災害の更なる激甚化・頻発化も想定し、必要な対策を検討してまいりたい。
〇2点目の市民の防災意識向上に向けた取組について
防災意識を希薄化させないためには、災害はいつでも身近で起こり得ると、市民が実感できる取組を続けていくことが重要。
〇今年度のセミナーでは、災害を自分事として感じられるよう、東日本大震災の被災者が実体験や生き抜くことへの想いを参加者に語りかける試みを新たに実施した。
〇参加者からは非常に大きな反響があったところであり、今後も、このような心に響く手法を用いて普及啓発の強化に努め、市民一人一人の防災意識を高めてまいりたい。
(2)丘珠空港の利便性向上へ向けた歩み出しについて
〇丘珠空港の利便性向上策としては、道内外の路線の拡充やターミナル機能の強化、空港へのアクセス充実等を想定しているところ。
〇これらに取り組むことにより、ビジネスや観光も含めた交流人口の増加が見込めるほか、医療従事や通院等、市民・道民の利便性向上が図られると考える。
〇今後については、現在行っている地域住民との意見交換やパブリックコメントでの意見等も参考に、国や道などの関係機関や航空会社と連携し、可能な限り早期に実現できるよう検討を進めてまいりたい。
(3)MaaSを見据えたこれからの交通施策としてのデマンド交通導入について
〇本実証実験では、札幌市の生活交通として初となるデマンド交通について、MaaSの要素である予約や利用のしやすさ、AIによる効果などを検証し、今後の持続可能な公共交通ネットワーク構築に向けた検討を行う考え。
〇デマンド交通は、運行時間内であれば希望する時間に乗車可能で、事前に設定された乗降ポイント間を自由に移動できるため、利便性が向上し、外出機会の増加に繋がるものと期待しているところ。
〇本年11月からの実験期間中には、乗降データの分析や、利用者アンケートなどにより、地域の実情に合わせた運行の見直しを行い、身近な公共交通として、地域に定着することを目指したい。
(4)地域交流拠点清田について
〇1点目の清田区民センターの移転について
区役所と区民センターが離れている配置上の課題はかねてから認識していたところであるが、要望書を受け、区民センターの早期移転に対する区民の強い希望を実感しているところ。
〇区民センターの区役所周辺への移転は、区民の利便性が高まるのはもちろんのこと、区役所周辺における交流人口が増加し、都市機能集積のきっかけともなりうるため、できるだけ早期に移転させたいと考えている。
〇2点目の地域交流拠点の恒常的なにぎわいや交流の創出について
清田区では、これまでも区民の方々を中心とした活動が進められてきたが、恒常的なにぎわいの創出には、さらなる多様な参画の機会や場を広げていくことが重要であり、今年度行っている実証実験を踏まえて、区民の方々と検討を深めてまいりたい。
〇また、実証実験などを通じて、恒常的なにぎわい創出に効果的な機能を見極め、今後の拠点づくりに生かしてまいりたい。
〇3点目の地下鉄東豊線の清田方面への延伸について
地下鉄清田方面延伸の可能性の検証にあたっては、冬季オリンピック・パラリンピック招致や、札幌ドーム周辺及び旧北海道立産業共進会場用地エリアなどの土地利用による人の流れの変化を加味する必要がある。
〇札幌ドーム周辺の土地利用の在り方については、今年1月に札幌ドーム周辺地域におけるスポーツ交流拠点基本構想を取りまとめたところであり、現在、アリーナや屋内・屋外スポーツ施設等の具体的な計画内容について検討を進めているところ。
〇このため、地下鉄清田方面延伸の可能性の検証は、札幌ドーム周辺の具体的な計画が定まった後に開始し、地下鉄東豊線の利用者数の推計などを行う考え。
3スポーツ施策について
質問
(1)オリンピック・パラリンピック招致を契機としたSDGsの推進について
冬季オリンピック・パラリンピック大会への市民理解を得るためには、大会後のまちの姿を市民と共有することが重要であります。プロモーション委員会においても、大会のキーワードとして、「SDGs」が示されており、大会準備を通じたSDGs(共生、平和、環境など)の取組推進に大いに期待しているところです。
特に、オリンピック・パラリンピックは共生社会の実現に向けた取組を加速させる絶好の機会であり、すぐにでも市民の目に見える形で取組を始めることが、将来のまちづくりにも繋がると思慮しております。
例えば、川崎市におけるパラムーブメント(商店街や地域住民を巻き込んだ取組)や有明アリーナの整備内容(車いす席、バリアフリートイレを多数整備)などを参考に取組を進めることが効果的と考えます。
また、子どもや若者世代などに対し、ボランティア等での北海道・札幌2030大会に参画を促し、パラリンピアンをはじめとした多様な方々と交流する機会を創出することも重要です。
わが会派が2015年の議会で取り上げて以降、オリパラ教育が浸透しており、教育を受けた若者世代の大会への参画が期待されるところですが、さらにスマイルサポーターズの取組とも上手く連動し、ボランティア文化の定着や活動を通じた多様性への理解促進につなげていくことも期待できます。
このように、オリンピック・パラリンピック招致を契機とした様々な取組を通じて、共生社会の実現、ひいてはSDGsの目標の達成に寄与することが重要であり、さらに、50年後、100年後を見据えたまちづくりをどのように進めるのか市民に示すことが、大会招致への理解につながるものと考えます。
(2)アーバンスポーツの振興とスケートボードの環境整備について
東京2020大会から1年が過ぎましたが、新競技として追加されたスケートボードをはじめとするアーバンスポーツは、難易度の高いパフォーマンスに挑戦することを通じて選手同士が称えあう姿が話題となり、スポーツを通じたつながりを感じ、今でも印象に残っています。
これをきっかけに、若い方を中心にアーバンスポーツの裾野が広がり、競技人口は増加しています。
また、このアーバンスポーツは自ら「する」だけではなく、東京大会で観戦したみなさんが盛り上がったように、「みる」スポーツとしての魅力も豊富です。
現在札幌市が策定中の次期まちづくり戦略ビジョンでは、基本目標である「四季を通じて誰もがスポーツを楽しめるまち」において、行政が取り組むこととして「アーバンスポーツの大会誘致・開催」が挙げられており、「みる」スポーツとして札幌市も力を入れていることが伺えます。
これについて先日、札幌市の共催により北海道初となるパルクールの全国規模の大会がサッポロファクトリーのアトリウム会場で行われました。パルクールとは、走る・跳ぶ・登るといった移動に重点を置く動作を通じて、心身を鍛えるフランス発祥のトレーニング文化であり、アーバンスポーツの一つです。
今回会場となったアトリウムは吹き抜けになっていることから、多くの観客が選手たちの迫力ある演技やお互いを称えあう姿を観戦しており、買い物や食事に来た方も足を止め、思わず競技に見入ってしまう様子がとても印象的でした。
このようにアーバンスポーツを振興することは、競技スポーツとしての一面だけでなく、みるスポーツとしての面白さがあり、今回のサッポロファクトリーがそうだったように、都市の魅力的なロケーションに競技会場を設営して行うことが出来るため、シティプロモーションとも非常に相性がよく、結果として都市の魅力を発信することに繋がるものと考えます。
そのような中、スケートボードは、小中学生や高校生といった若い層に人気がありますが、市内で滑走できる場所は多くなく、このため、やむを得ず道路や小さな公園などを使うことで、交通事故の危険が高まったり、一般の方に迷惑を掛けてしまうケースがあり、せっかくの盛り上がりに水を差すことになりかねません。
気軽に無料で楽しむことができる環境づくりが重要であり、環境整備を進めることによって、スケートボードの裾野が拡がり、ひいては将来有望なスケーターやスノーボーダーの育成に繋がるものと考えます。
答弁
(1)オリンピック・パラリンピック招致を契機としたSDGsの推進について
〇札幌市は、2018年に「SDGs未来都市」に選定されるなど、その達成に向けた取組を推進してきており、現在策定中の「第2次戦略ビジョン」では、目指すべき都市像の実現に向けて、SDGsの視点の反映が不可欠と位置付けているところ。
〇また、先に開催されたプロモーション委員会では、バリアフリーの推進や気候変動対策など、大会とSDGsの関わりについて意見交換がなされ、SDGsが大会開催意義の主要なテーマの一つとして示されたところ。
〇これらを受けて、「2030北海道・札幌オリンピック・パラリンピック冬季競技大会概要(案)」の更新作業においては、SDGsの視点を踏まえた持続可能なまちの姿を描きながら、共生社会や脱炭素社会などの実現に向けた具体的な取組の検討を進めている。
〇今後は、地域や企業の皆さまと目標を共有しながら、SDGsの目標年次である2030年に向け、官民一体となって取組を加速させることで、さらにその先の未来を見据えたまちづくりにつなげてまいりたい。
(2)アーバンスポーツの振興とスケートボードの環境整備について
〇アーバンスポーツは、音楽やファッション、アートなど若者文化が融合したものとして、従来のスポーツの枠を超えた領域に展開するものであり、それを振興することを通じ、これまであまりスポーツに興味・関心がない層にもアプローチすることができるものと認識。
〇そういった観点から、先月のパルクールプレミアカップにおいては、競技会場の選定から、大会そのものや子供向け体験会の情報発信など、市としても大会支援によるアーバンスポーツの振興に取り組んできた。
〇スケートボードの環境整備に関してはこれまで、他都市事例の調査や、愛好者団体等のヒアリングを行うとともに、ウインタースポーツのオフシーズンの練習施設として、民間の施設整備に補助金を支出している。
〇また、既存公園で試行的に専用の場所を設けるなどの取組を進めているほか、市内中心部に近い公園においても、施設整備について検討しているところ。
〇今後も厚別山本公園においてスケートボード広場の整備を行うなど、更なるアーバンスポーツ環境の充実に取り組んでまいりたい。
4医療・福祉施策について
質問
(1)市民に寄り添ったがん対策の推進について
現在、日本で「がん」は、2人に1人が罹患し、3人に1人が死亡すると言われ、札幌市でも、昭和51年以降「がん」は死因の第1位で、市民の健康と生命にとって重大な脅威となっています。
札幌市ではがん検診の整備や、普及啓発で死亡率の減少を図ってきましたが、国民生活基礎調査における本市のがん検診受診率は、国が第3期がん対策推進基本計画で掲げた50%という目標に達していません。
日本対がん協会の調査によると、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年の検診受診者はコロナ流行前より27.4%の大幅な減少となり、翌年、回復傾向が見られたもののコロナ流行前と比較すると10.3%の低下と、依然として低い水準です。
本市においてもコロナ禍の受診控えで、早期発見・早期治療の機会を逃した方が多いことが危惧され、受診率の向上への取組が急務です。
また、がんは医療技術の進歩で早期治療による生存率が高まり、治療を続けながら社会生活を送る方が増える一方、化学療法により脱毛やリンパ浮腫など外見の変化が起こる場合、人との関わりや外出を避けるなど、今まで通りの生活が送りにくいとの声もあります。
そこで、外見の変化を受けたがん患者が生活の質を維持するために支援用具や医療的マッサージ等がありますが、中でも化学療法により脱毛された方にとって、医療用ウィッグは生活の質を高め苦痛を軽減するケアとなっています。しかし医療用ウィッグは一般的に高価で健康保険や医療費控除の適用外のため、経済的負担となっていることは否めません。
「誰ひとり取り残さない」というSDGsの視点からも、がん対策は死亡率の減少を図りながら、治療により外見が変化した方への支援も大きく進めるべきと考えます。
医療用ウィッグについては購入に対する助成を行っている自治体もあり、わが会派でも先行事例の行政視察や委員会質問、予算要望等を通し、医療用ウィッグの助成について繰り返し訴えてまいりました。
(2)障がい福祉サービスにおける人材確保と定着について
私たちが、年齢を重ねても、障がいがあっても、誰もが安心して自分らしく住み慣れた地域で暮らし続けることができる社会の実現のためには、地域の住民を始めとした多様な関係者や機関が支援に参画し、つながることが必要です。
このような取組の一つとして、国は認知症の方と家族の困りごとなどの支援ニーズと地域の「認知症サポーター」を中心とした支援者をつなぐ「チームオレンジ」という地域における支援体制の仕組みづくりを求めています。
こういった地域のネットワークによる支援体制とともに大切なのが、より専門的な支援を要する方々に対する専門職による質の高い福祉サービスの提供です。
我が会派では、令和3年第4回定例会において、介護に係る人材の確保について代表質問したところですが、障がい福祉の分野においても、サービスに従事する人材の確保は喫緊の課題になっています。
障害サービス事業所の経営者からは、人手が足りない中で、利用者のために必死にサービスを継続しているという声を伺っています。また、令和元年度の札幌市の調査でも、職員の充足状況が十分であると回答している事業所は3割弱(27.6%)に過ぎず、人材確保に課題があることが分かります。
障害福祉サービスは、自宅や施設における介護のほか、就労支援や児童発達支援など幅広く、障がいのある方の尊厳を守って、自立を支えるために、人材の確保は要(かなめ)となります。
国では、公明党の後押しにより、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」において、介護・障害福祉職員を対象に、収入を3パーセント程度、月額9千円引き上げるための措置を実施することを決定し、既に今年2月から交付金の支給が始まり、10月には報酬改定が行われることになっています。
(3)ひきこもり支援事業の推進について
ひきこもりになる背景には、失業・退職・いじめ・不登校・障がい・疾病・家族関係など様々な要因があり、それらが複雑に絡まって、「ひきこもり」という状態が生じています。そして、複合的課題を抱える当事者やその家族のニーズは多様化し、ひきこもり期間の長期化や当事者・家族の高齢化も進み、深刻な社会問題となってきました。
さらには、令和2年から始まった新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、外出自粛や社会活動の休止・縮小など、市民生活に様々な影響を及ぼしました。
最近は、感染症対策と社会経済活動を両立させる「ウイズ・コロナ」への取組が進められてはいますが、それでもなお、感染を恐れ、外出できずにいる方、学校が長期間休業となったりオンライン授業になったりしたことで、家庭で過ごす時間が長くなり、生活のリズムが乱れ、体調が崩れて登校が困難になった方がいると聞きました。このように、不安やストレスを感じながら、ひきこもりの状態に移行する可能性のある方は多くいるものと思われます。
このような中、本市のひきこもり地域支援センターにおけるひきこもりに関する相談件数は、令和2年度、令和3年度ともに前年度を上回り、令和3年度は2,858件に達しています。コロナ禍では、対面での出張相談会を実施することができなかったものの、直接自宅を訪問して相談を受けるアウトリーチを増やすなど、感染対策に配慮しつつ、多くの相談を受けるための工夫をしてきたと聞いています。
また、ひきこもりの当事者やその家族など、同じ悩みを持つ人が集まる場である集団型支援拠点「よりどころ」においても同様に、オンラインによる居場所づくりを新たに実施し、コロナ禍でも支援の継続に努めてきたとのことでした。
本市が以前行った実態調査では、潜在的なひきこもり状態にある人は約2万人いると推計されており、相談につながっていない方がいるものと想像されます。
また、ひきこもりの背景を考えますと、ひきこもりに対する必要な支援を展開するためには、労働、雇用、経済、教育、障がい福祉、生活保護、精神科医療など、様々な分野における関係施策の充実や関係者の連携による支援が必要です。まずは、関係部署間に横串をさし、連携の質を上げ、さらに効果を高めていけるよう体制を強化していくことが重要であると考えます。
答弁
4医療・福祉施策について
(1)市民に寄り添ったがん対策の推進について
〇がんによる死亡率を減少させるには、生活習慣の改善による発症予防とともに検診受診率の向上が不可欠であり、これまでも胃がんのピロリ菌検査や自宅で手軽にできる子宮頸がん検査の導入等、受診しやすい環境整備に取り組んできたところ。
〇また、がん患者の多くは治療に伴う身体的苦痛や精神的苦痛のみならず、外見の変化により社会との関りにも影響を及ぼすと言われており、それらを緩和するための支援用具の重要性についても認識。
〇現在行っている市民意識調査の結果に基づき、来年度はがん患者や家族のニーズを踏まえつつ、受診率の向上やがん患者への支援の充実に向けたさらなる施策を次期がん対策推進プラン策定時に検討し、本市のがん対策を推進してまいる。
(2)障がい福祉サービスにおける人材確保と定着について
〇これまで札幌市では、事業所の職場環境を改善し、従事する方がやりがいを持って仕事を続けられるよう、管理者向け研修やキャリアパス制度の導入支援等に取り組んできた。
〇今年度には、医療系専門学校の学生に対して、障がい福祉の様々な現場で働いている方から、仕事の意義や魅力を伝えてもらい、新規就職者の増加を目指す事業に着手したところ。
〇また、次期障がい者プラン策定のための事業所へのアンケートに併せて、聞き取り調査を行い、職員の離職要因や採用に至った経緯等を含め、人材確保の実態をより詳細に把握する予定。
〇今後も、こうした調査の結果を踏まえ、従事する方が離職せず長く働き続けられる環境づくりや、より多様な人材による就職希望者の確保に取り組んでまいる。
(3)ひきこもり支援事業の推進について
〇ひきこもり状態にある方々は、若い世代から高齢者まで年齢層が幅広く、また、その原因や背景が複雑であるため、一人ひとりの状況に応じたきめ細かな支援や、様々な関係機関と連携した対応が求められていると認識。
〇そのため、今後は、ひきこもり地域支援センターの支援員の体制強化を検討するとともに、事例研究や研修等をより充実させることにより、支援員の専門性を高める取組を進めるなど、相談者に寄り添ったひきこもり支援に取り組んでまいりたい。
〇また、効果的かつ円滑な支援に向けて、福祉のみならず、教育、就労、保健医療などの各分野との連携を強化するとともに、市民にとってより身近な相談窓口である各区役所とも、これまで以上に緊密に情報交換、協力できる体制を構築してまいりたい。
5子ども施策について
質問
(1)子ども施策を推進するための組織体制の強化について
結党以来、公明党は子育て支援策を強力に前へ進めてきました。人口減少社会を見据え、2006年に「少子社会トータルプラン」を策定し、これまで、児童手当の中学生までの大幅な拡充、妊婦健診の公費助成や幼児教育・保育の無償化等を実現し、さらに来月末にはあらたに「子育て応援プラン」を策定することとしております。
我が会派としても、先の第2回定例会の代表質問で、札幌市における母子保健施策と子育て支援施策を一元化できる体制の検討が必要とし、妊娠期から切れ目のない支援を行える組織体制について提言してまいりました。
そのような中、本年6月、先の通常国会にて、わが党の昨年の衆院選の重点政策として掲げたこども基本法とこども家庭庁設置法が成立致しました。
こども基本法は、子どもの権利保障を初めて定めた画期的な法律です。子どもの意見の尊重や子どもの最善の利益の優先という基本理念に則り、地方公共団体は子ども施策を策定し実施する責務を有することが規定されました。
そして、令和5年4月に、子ども施策の総合的な司令塔としてこども家庭庁が発足することが正式に決定したことにより、子どもの貧困や少子化対策、ひとり親支援や児童虐待施策など、これまで複数の省庁に分散していた子ども施策が一本化されます。これにより政策立案機能が一元化され、省庁間や制度の狭間の課題や新規の政策課題が総合的な視点で力強く推進されることが期待されます。
加えて、政府は子ども関連予算の将来的な倍増を目指して意欲的な予算拡充への取組方針も表明しています。
子ども施策の具体的な実施を中心的に担うことになるのは地方自治体です。札幌市においても、子ども基本法で掲げられた基本理念を具体的施策に落とし込みながら子ども施策の力強い推進のため、子ども関係部局における必要な人員の確保と予算の増額などを含め、組織体制の強化に本気で取り組んでいく必要があると考えます。
(2)児童虐待防止対策の取組について
①子育てデータ管理プラットフォームの運用
札幌市においては、令和元年6月の2歳女児の死亡事案から、市の児童虐待の認定件数は、令和3年度は2,402件にも及び、依然として高い水準で推移しています。
これまで、児童福祉司の増員や夜間休日体制の確立、施設や里親による社会的養護の拡充等で、児童相談体制の強化に努めてきた事は我が会派としても評価していますが、一方で虐待発生を減らしていく予防的観点に基づく取組も重要と考えます。
令和元年の事案では、関係機関の情報共有が不十分であったことが指摘されました。令和2年第1回定例会のわが会派の代表質問では、虐待の兆候に係る情報が漏れなく迅速に関係部署間に共有され、一定のリスク評価まで可能となる効率的なシステムが確立されるよう、虐待に係る全ての関係部局間をICTで連携させ、情報やリスクを共有するシステムを構築すべきと強く求めました。
その後、情報連携による児童虐待の発生予防を目的に、児童相談所と区役所の家庭児童相談室、さらには区で母子保健の窓口となる健やか推進係が、それぞれで使用するシステム情報の集約化を進め、昨年7月には「情報共有」「リスク予測」「アラート通知」という3機能を中心に据えた「子育てデータ管理プラットフォーム」の運用がスタートしました。
このシステムの導入には、さいたま市や愛知県も視察に訪れるなど、全国的に注目される、先駆的なモデルケースになっていると言えます。
②オレンジリボンを活用した普及啓発の取組
児童虐待を防ぐためには、早期発見はもとより、虐待に至る前の子どもや保護者への支援が大切です。わが会派が令和元年決算特別委員会で主張した通り、行政の対応だけではおのずと限界があり、地域コミュニティを中心に虐待防止への意識を高め、社会全体で子どもを見守るべきことは重要です。
札幌市には、地域の方々に児童虐待に関する研修を受講してもらい、虐待の発見と通報、日ごろの見守り等に協力して頂く「オレンジリボン地域協力員」という制度があります。今年度も、医療機関や保育所、児童デイサービス従事者向けのほか、大学や専門学校での研修も実施し、8月末で約18,500人が登録しています。
児童虐待防止の機運向上の為、今後この地域協力員の取組の推進と、虐待防止のシンボル「オレンジリボン」そのものの市民の広い認知と、定着は重要であり、11月の児童虐待防止推進月間に向け、力強い展開が期待されるところです。
答弁
(1)子ども施策を推進するための組織体制の強化について
〇札幌市では、国に先行して、子ども未来局を平成16年度に創設し、子ども関連施策を一体的に推進してきたところ。
〇昨今、子どもや子育て世帯が抱える困難が複雑多様化しているなか、必要とされる支援を迅速かつ的確に提供するには、より協働と連携ができる組織であることが重要と考えている。
〇こうした観点から、現在、母子保健と子育て支援の連携の在り方などを議論しているところであり、国の施策も見据えながら、引き続き、組織体制の更なる強化に向けて検討してまいりたい。
(2)児童虐待防止対策の取組について
〇1点目の子育てデータ管理プラットフォームの運用について
システムの導入により、虐待防止に不可欠な組織内の情報共有が進み、複数の部局が関係する相談支援の適切な進行管理とチェック機能が向上するなど、幅広い効果が表われていると認識。
〇具体的には、第二子の妊娠届出書を区役所で受理した際に、第一子の児童相談所での援助状況をシステムで即時に把握し、家族全体を的確な支援に結び付け、虐待の発生を未然に防いだ事例もある。
〇今後は、虐待リスクの予測機能について、運用の中で事例の検証を重ねながら精度を高め、支援方針の有効な判断材料になるよう改善していくことで、虐待の未然防止に努めてまいりたい。
〇2点目のオレンジリボンを活用した普及啓発の取組について
オンラインの活用も図りながら出前講座を積極的に開催しており、一人でも多くの方に地域協力員に登録していただき、地域の中に見守りの担い手を増やしていくことが重要であると認識。
〇11月の児童虐待防止推進月間には、有識者による講演動画の公開やユーチューブへの広告掲出など、幅広い世代の市民に訴える新たな取組も展開する予定。
〇さらには、虐待防止に賛同する民間企業、団体との連携を強化し、オレンジリボンの認知度を高める新たなステッカーを街中に掲出するなど、社会全体で子どもを見守る機運を醸成してまいりたい。
6子どもの人間尊重の意識を育む取組について
質問
長期化するコロナ禍で、子どもが人とのつながりを実感することが大切であると考え、本年第1回定例会で人間尊重の教育について質問し、教育長より「札幌市学校教育の重点」の基盤として人間尊重の教育を位置付け、子どもが「自分が大切にされている」と実感できる学校づくりを進めていくとの答弁をいただきました。
早速、新年度の「札幌市学校教育の重点」を読ませていただきましたが、学ぶ力の育成や小中一貫した教育の推進など全ての重点項目が人間尊重の教育に関連付いて整理され、我が会派の主張を汲んでいただき、教育委員会の本気度が伝わってきました。
しかし、これらは基本的な考え方であり「人間尊重の教育」を具体的にどのように推進していくのか、これからの取組が重要で、今後もしっかり見届けたいと考えています。
さて、その具体的な取組に関わり教育委員会では三つの視点を掲げています。1つ目は教職員自らの人間尊重の意識の向上、2つ目は校種間の連携による連続性のある人間尊重の教育に向けた取組の推進、そして3つ目は子ども自身が自分を振り返り、人間尊重の意識の高まりに気付く手だての構築です。
どの視点も重要ですが会派として、特に子ども自身の取組に重きを置いている三つ目の視点に着目しています。
札幌市が毎年、独自で行っている子どもを対象とした「学習などについてのアンケート」の最新結果では「友達のよいところを見付けようとしている」という項目に比べ「自分にはよいところがある」という項目に肯定的な回答をした子どもの割合が低いという結果となっております。
子ども自身が人間尊重の意識を高めるには様々な取組や体験を通し、自分のよさも他者のよさも共に実感できることが大切であり、教育委員会や学校はそうした視点をもって具体的な教育を進めていくことが重要と考えます。
答弁
〇子どもが、多様な人と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、心豊かにたくましく生きていくためには、かけがえのない人間としての尊厳や個性を認め合う意識を高めることが重要であると認識。
〇このことを踏まえ、現在、全ての小中学生が1人1台端末を活用して意見を出し合いながら、一人一人を大切にすることをテーマとした全市共通の「さっぽろっ子宣言」を策定する取組を進めている。
〇今後は、子どもが、この宣言に込められた思いを共有しながら、日々の授業はもとより、学校行事などあらゆる教育活動を通して、自ら人間尊重の意識を高めていけるよう、取組をさらに充実してまいる。