札幌公明

議会報告Assembry report

2023/02/21 令和5年第1回定例議会

令和5年第1回定例議会2023/02/21

代表質問国安まさのり議員(北区)

札幌市議会本会議において公明党議員会を代表して 国安まさのり 議員が代表質問を行いました。
以下、質問とそれに対する答弁の要旨を紹介します。

目次Contents

1市長の政治姿勢について

質問

(1)市政2期目の成果とその発信について

市長は、就任後の定例市議会の施政方針において、札幌の街が、次の100年も魅力と活力を創造し続ける街であることを目指して、引き続き、「誰もが安心して暮らし生涯現役として輝き続ける街」と「世界都市としての魅力と活力を創造し続ける街」という、2つの心豊かで明るい「未来のさっぽろ」の姿を描いていくことを表明されました。

そして、それを実現していく計画である「まちづくり戦略ビジョン・アクションプラン2019」におきまして、市民の多様な暮らしを支える取組に力点を置くとともに、我が会派が様々な機会で訴えきた国連の持続可能な開発目標であるSDGsの視点を反映させ、「誰一人取り残さない」社会の実現を目指す取組を進めてこられました。

特に、我が党が政策の柱に掲げる「子育て・教育」、「福祉」に関しては、保育定員の拡大や保育人材確保などの待機児童対策、子ども医療費の助成対象の拡大を始めとする子育てにおける経済的負担の軽減、少人数学級の対象拡大や英語教育の推進に係る体制強化、タブレット端末の導入による教育活動の充実のほか、地域包括ケア体制の拡充やバリアフリー化の推進、医療的ケアを必要とする児童等への支援など、福祉の充実を推進してこられました。

市政2期目は、新型コロナウイルス感染症から市民の命と生活を守ることを最優先に対応するとともに、計画に掲げた事業を状況に応じて再構築しながら着実に進めて来られたことにつきましては一定の評価をするところであります。

一方で、事業の再構築に当たっては、迅速な対応が求められていたとは言え、市民も交えてより丁寧な議論を行う余地があったのではないか、とも考えるところであります。

今後、人口減少・少子高齢化に加え、社会経済情勢が大きく変動する不安定な時代にあっても、持続可能なまちを目指すためには、これまでの取組結果をしっかりと検証するとともに、その検証結果や札幌市が目指すビジョンを市民に対して示し、各種計画策定や予算編成において、強いメッセージを込めることにより、方向性や目標をわかりやすく伝え、市民とともにまちづくりを進めていくことが重要であると考えます。

そこで質問ですが、市政2期目の実績について、どのように認識しているのか、また、どのように市民に対して共有・発信していこうとしているのか、お伺いします。

(2)共生社会の実現に向けた取組の組織横断的な推進について

2030年を目標とする国連のSDGsには「包摂的かつ持続的な経済成長」がうたわれており、札幌市においても、2018年に「SDGs未来都市」に選定されるなど、SDGsの推進に向けた取組を進めてきておりますが、2040年代には高齢者が4割を占めるなど、人口構造の変化が予想される中で、今後は、このような変化を積極的に生かしながら、持続的にまちを成長させていくことが必要であります。

私たち公明党は、少子化が加速し、高齢者人口がピークを迎える「2040年問題」の課題解決に向け、新たな構想として「(仮称)安心と希望の『絆社会』2040ビジョン」を2023年度中に策定すべく、昨年12月に「ビジョン検討委員会」を立ち上げました。

「絆社会」とは、皆が互いの個性を尊重し合い、支え合うことで人々の結び付きを強める社会のことであり、その構築により、性別や年齢、障がいの有無などにかかわらず、誰もが、それぞれの能力や特性に応じて力を発揮しながら働くことができる「包摂的な社会」をめざすものであります。

このような中、先の第3回定例会で、今後10年のまちづくりの基本的な指針である「第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン」の「ビジョン編」を議決したところであり、SDGsの理念や包摂の視点を踏まえ、今後のまちづくりにおける重要概念の一つとして「ユニバーサル(共生)」を位置付け、「誰もが互いにその個性や能力を認め合い、多様性が強みとなる社会を実現」していくことを掲げたことは、一定の評価をするところであります。

また、現在は、北海道・札幌2030オリンピック・パラリンピック冬季競技大会の招致に係る積極的な機運醸成は休止しているところではありますが、大会の招致、開催は、第2次戦略ビジョンが目指す「共生社会」の実現を加速させる絶好の機会であり、招致に向けて議論をする、そのプロセスに大きな意義があると考えております。

我が会派は、かねてより「共生社会の実現」に向けて、ハード・ソフト両面から、市民の実感につながるようなバリアフリーの取組を進めていくべきと強く要望してまいりました。

例えば、地下鉄駅へのエレベーターの設置や、出入口からタクシーやバス乗り場までにつながる歩道のバリアフリー化、ノンステップバスの導入拡大、障がいのある方などへの心のバリアフリーの取組などを、それぞれ縦割りに実施するのではなく、一体的、かつ面的に推進していくことが重要であり、モデル地区を設定するなど、市が目指すべきバリアフリーが進んだまちの姿を市民に示しながら進めていくことが重要であると考えます。

このような中で、ハード・ソフト両面における様々なバリアフリー施策を部局横断的に推進するため、総合調整を担う組織として、来年度、まちづくり政策局にユニバーサル推進室を新設すると報告を受け、大いに期待をするところであります。

そこで質問ですが、共生社会の実現に向け、市民が肌で感じることができる取組を組織横断的に進めていくべきと考えますが、市長の見解を伺います。

(3)令和5年度予算における物価高騰対策について

令和5年度の一般会計当初予算は、骨格予算ではありながら、第2次まちづくり戦略ビジョンの実現に資する事業に取り組むとともに、物価高騰対策や感染症対策などの喫緊の課題にも対応するため、総額1兆1,922億円を計上し、過去最大の予算規模となっております。

令和4年度を振り返りますと、新型コロナウイルス感染症への対応はもとより、長引く物価高騰に対応するため、国の施策に速やかに連動した対策に加え、札幌市の実情を踏まえた本市独自の取組として、子育て世帯に対する臨時特別給付の対象拡大や、国の住民税非課税世帯に対する給付への上乗せ給付をはじめ、水道基本料金の減額、学校・保育施設、高齢・障がい者施設等への食材費支援、中小企業等に対する新たな融資制度の創設・拡充など、市民生活や事業者への支援に切れ目なく対応してこられました。このことについては、コロナ禍等における物価高騰から市民生活を守る緊急要望を市長に対し行ってきたわが会派として、一定の評価をしているところであります。

一方で、令和4年12月の札幌市における消費者物価指数の総合は、105.3と右肩上がりの状況が続き、また、日銀が1月16日に発表した令和4年12月の国内企業物価指数でも、前年同月比で10.2%上昇し、22か月連続で前年を上回る状況にあるなど、物価高騰は長期化の様相を呈しており、この状況が長引けば、札幌市の経済や市民生活への影響はより一層悪化するものと危惧するところであります。

そのため、わが会派では、昨年12月に、新型コロナウイルス感染拡大の防止と物価高騰への対応、さらにはこうした状況下における社会経済活動の両立施策について、令和5年度予算に反映するよう強く要望したところであり、過去最大規模の予算となったのは、こうした施策を積極的に取り入れたものと受け止めております。

そこで質問ですが、令和5年度予算において、市長は物価高騰対策にどのように取り組もうと考えているのか伺います。

答弁

(1)市政2期目の成果とその発信について

〇新型コロナウイルス感染症など新たな課題に対応しながら、計画に掲げた取組を着実に進めることにより、街の経済力を高めて生み出した財源等を、福祉や暮らしの充実に還元し、さらなる街の活性化につなげる好循環の基礎を形成することができたと認識。

〇今後は、物価高騰対策や感染症対策など目下の課題への対応を切れ目なく実施していくとともに、これまで実施してきた取組の成果が継続して発揮されるよう、実績の検証も並行して進め、次期中期実施計画の策定に生かしてまいりたい。

〇また、市民や事業者に札幌市の取組を理解・共感していただくため、取組の成果に加え、目標や政策など今後のまちづくりの考え方について、これまで以上に分かりやすい情報発信に努め、一丸となって魅力的な札幌の街を築き上げてまいりたい。

(2)共生社会の実現に向けた取組の組織横断的な推進について

〇現在検討中の第2次戦略ビジョンの戦略編において、横断的に取り組む施策としてユニバーサル(共生)プロジェクトを位置付け、共生社会の実現に向けた道筋や目指すべきまちの姿を示していく考え。

〇加えて、来年度、多岐に渡るユニバーサル関連施策の全体を俯瞰して総合的な調整を担う新たな組織を設置し、ハードのみならず、ソフト面の施策も一体的に推進していく基本的な指針として「(仮称)ユニバーサルビジョン」の策定を検討しているところ。

〇これらに基づき、利用頻度の高い市有施設などのさらなるバリアフリー化や都心地下ネットワークのエレベーターなどの案内サインの充実のほか、企業と連携し、車いすで移動できる経路情報を発信するアプリや様々な交通機関において必要となる介助を一括して手配できる仕組みを検討するなど、市民に実感いただける取組を組織横断的に推進してまいる。

(3)令和5年度予算における物価高騰対策について

〇令和5年度予算は、いわゆる骨格予算としながらも、国の経済対策と呼応した16か月予算とし、喫緊の課題である物価高騰対策については、特に意を用いて編成したところ。

〇まず、市民生活への支援として、妊娠・出産寄り添い給付金の支給のほか、パートナーシップ排雪の地域負担額の据え置きや、国民健康保険料の増額の抑制など、家計の負担軽減を図る。

〇また、「札幌プレミアム商品券」を発行することで、物価高騰の影響を受けている市民生活を支援するとともに、地域経済の活性化につなげる。

〇事業者への支援としては、売上の減少等に対応する融資制度や、新分野進出、業態・業種転換といった事業再構築に対する支援を継続していく。

〇引き続き物価高騰等の動向を見据え、国による電気・ガス料金や燃料油価格等の負担軽減策の継続・拡充や、地方自治体の独自施策に対する財源確保について国への要望を行いつつ、物価高騰対策にしっかりと取り組んでまいりたい。

2防災・減災対策について

質問

(1)一時滞在施設の確保について

我が会派では、令和4年第3回定例市議会の代表質問において、国の「国土強靭化基本法」を受けた「札幌市強靭化計画」の見直しについて、近年の大規模災害等も踏まえて適時見直すことの必要性を訴え、計画を効果的にするにはリスクシナリオを設定することが重要であるなどの答弁をいただいたところであります。その札幌市強靭化計画のリスクシナリオにもある、ソフト面として冬季も含めた帰宅困難者の発生を想定した「一時滞在施設の確保」及び、ハード面としての「大規模盛土造成地の対策」について質問します。

昨年は、3月に福島県沖で震度6強、6月に石川県能登地方で震度6弱の地震が発生し、北海道内においても8月に宗谷地方北部を震源とした震度5弱・5強の地震が続けざまに起きるなど、大規模な地震が相次いで発生しました。

また、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震や南海トラフ地震、首都直下型地震などは今後30年の間に発生の可能性が高いとされており、いつどこで災害が起きてもおかしくない状況となっております。大規模な災害に備え、市民や観光客に安全・安心を提供する環境づくりを行うためには、「札幌市強靭化計画」にあるとおり、避難場所機能の強化に取り組むことが重要であると考えます。

一方、令和3年8月公表の第4次地震被害想定では、直下型地震として最大震度7が想定されており、特に大型商業施設や都市機能が集中している札幌都心部においては、公共交通機関の運休等により帰宅困難者が多数発生することが想定されております。

昨年10月には外国人の入国制限が大幅に緩和され、中華圏の春節などを契機として外国人観光客の受入れが進んでおります。多くの外国人観光客が訪れるさっぽろ雪まつりといった大規模なイベントが開催されているタイミングで地震が起きた場合には、公共交通機関等の運休やライフラインの停止、交通渋滞などによる混乱が想定されます。

札幌市では、大規模な地震が発生した場合における観光客などの滞在者の安全確保のため、平成26年3月に札幌駅・大通駅周辺地区都市再生安全確保計画を策定されました。この安全確保計画では、発災時の帰宅困難者のうち、観光客などの災害時に滞在場所を確保できず屋外への滞留を余儀なくされた方、いわゆる行き場のない屋外滞留者のための一時滞在施設の確保や発災時の情報提供等について定めております。

特に、冬季は、札幌の厳しい寒さの中、屋外での長時間の滞留は困難であることから、観光客に安心して札幌に来てもらうためにも、一時滞在施設の確保は重要であると考えます。

そこで質問ですが、札幌市では、災害時の帰宅困難者の発生を想定して、一時滞在施設の確保について現在どのように取り組んでいるのか、また、冬季の対策等、今後はどのようにしていくのか併せて伺います。

(2)大規模盛土造成地の防災対策について

札幌市において公共施設や宅地に大規模な被害が発生した平成30年の北海道胆振東部地震から4年以上が経過しました。

被災した道路、公園や宅地もすっかり復旧されておりますが、全道が一斉に停電となったブラックアウトや地震による大きな被害があったことが市民の記憶から薄れていってしまうのではないかと懸念するところであります。

いつ発生するかわからない災害に備え、都市としての災害対応力を高めていくためには、普段から防災・減災対策及び周知・啓発に関する取組を継続的に着実に実行していくことが重要であると認識しております。

国は激甚化・頻発化する気象災害、切迫する大規模地震に対応すべく「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」の中で令和7年度までに重点的・集中的に取り組む対策を定めております。

札幌市においては大規模盛土造成地における地震の被害が顕著であったことから、現在進めている地震時における盛土の安定性に関する調査の計画的な推進、及び必要な対策の実施について我が会派としては注目しているところであります。

札幌市では令和2年度から市内183か所の大規模盛土造成地について、地震時の安定性を確認する予備調査を実施してきておりますが、今年度でその調査が完了し、どの盛土から優先的に調査を行うかが評価され、詳細に調査すべき盛土が一定数抽出されると認識しております。

「盛土された造成地はもれなく大地震で崩れてしまうのではないか」といった過度な不安や誤解を解消するためにも、各盛土の調査の優先度が整理され公表されることは市民にとって有益と考えますが、一方で、優先度が低い盛土が地震時に災害の恐れがないと言い切れないことも事実であり、単に調査結果が整理されたということで防災対策が完結するわけではありません。

各盛土に対して優先度に応じて、引き続き行政として防災・減災の面でフォローアップを続けていくことが、ひいては市民の防災意識の向上につながっていくものと考えております。

詳細調査については、一部すでに先行して実施している地区があると承知しておりますが、対象となった盛土の区域の住民に対しては、調査実施前に対象となった理由や、調査の目的・内容について丁寧に説明した上で実施していると聞いております。

一方、この先行事例の内容を見ると、対象盛土の件数によっては、全ての調査完了まで数年を要することも予想され、「その前に大きな地震が来たらどうしたらいいのか」と不安に思う住民も少なくないのではないかと思います。

そこで質問ですが、これまでの調査で整理された各盛土の優先度評価を踏まえ、今後これをどのように活用して、大規模盛土造成地の継続的な防災対策を進めていくのか、また、市民の防災意識の向上に生かしていくのか、併せて伺います。

答弁

(1)一時滞在施設の確保について

〇札幌市においては、雪まつり開催中の休日に大規模な地震が発生した場合、行き場のない屋外滞留者が最大46,000人発生すると想定し、一時滞在施設の確保を進めている。

〇これまで、「札幌駅前通地下歩行空間」や「札幌市民交流プラザ」等17か所を指定しており、さらに、これから建設される民間施設10か所を追加で確保したところ。

〇このうち13か所は、停電時でも暖房等が使用できる機能を備えており、今後もこのような施設を指定する等、更なる一時滞在施設の増強に努めてまいる。

(2)大規模盛土造成地の防災対策について

〇札幌市における大規模盛土造成地183か所のうち、災害の恐れがない11か所を除く172か所の盛土については、盛土の安定性に影響を及ぼす地下水位の観測や盛土の変化について、継続的に経過観察を実施する。

〇このうち、現時点で詳細調査が必要と判断した35か所の盛土については、令和5年度より優先度の高いものから本格的に着手し、早期の全件完了に努めてまいりたい。

〇併せて、現状における各盛土の評価結果について、その概要を「大規模盛土造成地マップ」により公表するとともに、詳細調査の新たな情報も加えながら、説明会などを通じて市民との情報共有を図っていく。

〇このような取組を続けていくことで、市民が盛土造成地への理解を深め、日ごろから自らの宅地の安全に目を配るなど、宅地防災への意識向上につながるよう、働きかけてまいりたい。

3総合的な子ども政策の推進について

質問

(1)ヤングケアラー支援に向けた取組について

これまで我が党は、2006年に「少子化社会トータルプラン」を策定し、そこに掲げた福祉・子育て施策を着実に進めてまいりました。

しかしながら、コロナ禍の影響もあって、想定以上に急速に少子高齢化が進む中、核家族化や地域のつながりの希薄化など、子どもやその家族を取り巻く環境は益々深刻化しております。これらの課題を克服していくためには、希望する誰もが安心して子どもを産み育てられる社会を構築する必要があります。

こうした社会の実現に向けて、我が党は、昨年11月に新たに「子育て応援トータルプラン」を策定しました。このプランは、子どもの幸せを最優先する社会を実現するとともに、少子化・人口減少という大きな社会構造の変化に立ち向かい乗り越えるため、結婚、妊娠・出産から子どもが若者となるまでのライフステージや年齢等に応じた具体的な支援策を幅広くトータルに示したものであります。

子どもが若者となり、その若者が結婚し、母親が妊娠・出産し、その子どもがまた若者となって新たな家庭を築き、次の世代にバトンをつなぐという、命のリレーに寄り添いながら、子ども・子育て世帯の各ライフステージにおいて、当事者を主体とした伴走型支援を切れ目なく行政が提供することが、少子高齢化という未曽有の事態に立ち向かうために大変重要なことであると考えます。

このプランにおいては、多様な子ども・子育て家庭への支援として、ヤングケアラーへの支援施策を総合的に推進することも示しております。

ヤングケアラーは、家族のお世話にやりがいを感じていることもある一方で、年齢や成熟度に合わない重すぎる責任や作業、精神的な苦しさなどの過度な負担が続いた場合には、心身の不健康や学習面の遅れ、就労への影響など、子ども自身の未来や健全な成長に影響を及ぼす可能性があると言われております。

ケア対象者の状況や、ケア内容、要する時間やきつさなど、ヤングケアラーがおかれている状況は様々ですが、本人や家族に支援が必要であることの自覚がない場合や、自分からサポートを求めずに悩みを抱え込む場合には、問題が発覚せず潜在化する特徴があります。

また、ヤングケアラーに係る問題は、家族が抱える様々な課題が関係し合い、複合化しやすいという特徴もあります。

そこで質問ですが、このようなヤングケアラーの特徴を踏まえ、どのように支援に取り組んでいくのか伺います。

(2)子育てに関する相談対応や情報提供の強化について

子どもに関する取組と政策を日本社会の真ん中に据える「こどもまんなか社会」の実現に向けた新たな司令塔として、令和5年4月に「こども家庭庁」が創設されます。こども家庭庁では、子どもを取り巻くあらゆる環境を視野に入れながら、子どもと子育て家庭の福祉の増進の他、子育て家庭に対する支援や子どもの権利保障等の後押しを行うことになります。

こども家庭庁の創設に向けた、「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針」では、産前産後から子育て期を通じ、支援の切れ目や狭間が生じない、継続的な支援を提供できる体制の構築を進めることが示されています。

また、支援を望む子どもや家庭が相談支援に関する必要な情報を得られるよう、SNSを活用したプッシュ型の情報発信や、子どもや子育て当事者にとって分かりやすい広報の充実強化等を進めることとされております。

札幌市では、育児に関する不安や負担感の軽減を図り、安心して子育てができるよう、平成18年から各区に保育・子育て支援センター「ちあふる」が整備されてきており、親子が集まり交流できる子育てサロンを常設している他、子育てや子どもの成長・発達等の相談対応や、各種支援につながる情報提供が行われております。

しかしながら、札幌市が令和3年12月から令和4年1月にかけて、市内在住の0歳から5歳のお子さんがいる世帯15,000世帯を対象に実施した「子育てに関する市民アンケート調査」では、「ちあふるを知っているか」という問いに対し、「知っている」と答えたのは約6割という結果が出ています。

地域において相談に応じることのできる施設や支援の体制が充実しても、子育て家庭に認知されていなければ、必要な支援を届けることはできません。

今後、こども家庭庁の創設を踏まえ、札幌市でもさらなる子育て支援に取り組む必要がありますが、子育ての孤立化を防ぎ、家事・育児に不安や負担を抱える、未就園児も含めた子育て家庭を支援にしっかりとつなげるために、適切な相談対応と情報提供がますます重要になると考えます。

そこで質問ですが、これまで子育て相談や情報提供についてどのように取り組んできたのか、また、今後どのように強化するのか、伺います。

(3)児童相談体制の強化について

本年1月19日に厚生労働省が公表した令和3年度「福祉行政報告例」によりますと、全国の児童相談所における児童虐待相談の対応件数は207,660件に上り、過去最多となった令和2年度の件数をさらに更新したところであります。

国においては、令和4年12月に「新たな児童虐待防止対策体制総合強化プラン」の概要を公表し、令和6年度末までに、全国で児童福祉司を1,060人程度増員することとしております。

併せて、虐待等により心に傷を負った子どもへのカウンセリング等の充実を図るため、児童心理司についても、令和8年度までに全国で950人程度増員することとしており、札幌市としても、国の動きを踏まえながら、令和7年度中の第二児童相談所の開設も見据えて、より一層の体制強化を図っていくことが重要であると考えます。

札幌市では、令和2年度に策定した第3次児童相談体制強化プランに基づき、児童福祉司を計画的に増員してきており、現在全庁を挙げて育成にも力を入れていることは高く評価しているところです。

そうした体制強化の一環として、我が会派では、児童相談所を中心に、各区の家庭児童相談室及び母子保健担当がタイムリーに児童の相談状況を共有できる「子育てデータ管理プラットフォーム」の構築を強く求めてきたところであり、令和3年7月にはシステムの運用が始まり、庁内に虐待予防のための情報ネットワーク基盤を確立できたものと認識しています。

このシステムを効果的に活用するには、組織体制をしっかりと整え、情報を的確に捉える職員の育成が重要であると考えます。

そこで質問ですが、国の虐待防止に向けた新たな動きも見据えて、児童相談体制の強化に向けた人材の確保と育成について、今後どのように取り組んでいくのか伺います。

答弁

(1)ヤングケアラー支援に向けた取組について

〇潜在化・複合化するヤングケアラーへの支援にあたっては、周囲の気づきと関係部局や機関の連携が重要であることから、組織横断的な取組指針となるガイドラインを今年1月に策定したところ。

〇今後、このガイドラインを活用し、グループワークにより関係者間の相互連携などを学ぶ実践的な研修を継続実施するとともに、社会全体の気づきを促すために認知度向上にも取り組んでいく考え。

〇誰ひとり取り残されることなく、豊かに子どもが成長していけるよう、学校、介護・福祉、医療機関、地域を含め社会全体でヤングケアラー支援を進めてまいりたい。

(2)子育てに関する相談対応や情報提供の強化について

〇札幌市では、各区のこそだてインフォメーションや令和5年4月に10区目の開設となる「ちあふる」のほか、NPO等と連携した家庭訪問型支援の導入などにより、重層的な相談対応を行ってきた。

〇また、多岐にわたる子育て情報を一元化するため、子育て情報サイトとアプリを導入し、子育て家庭がいつでも情報にアクセスできる環境を整備して情報提供の充実に取り組んできた。

〇今後も、不安や孤立感を抱える子育て家庭に寄り添い、訪問型の相談対応を強化するとともに、AIなど新たな技術を活用し、より伝わりやすい仕組みを構築して効果的な情報提供を行ってまいりたい。

(3)児童相談体制の強化について

〇札幌市内で年間2千件を超える児童虐待に対応するため、この3年間で29名の児童福祉司を増員し、専任の医師や弁護士などを配置して効果的な連携ができる体制整備に努めてきたところ。

〇令和5年度は児童心理司を10名増員し、子どもの心理的なケアをより充実させるとともに、一時保護中の子どもの意見や思いを弁護士が丁寧に聞き取り伝える仕組みを導入する考え。

〇今後も、子どもの権利を擁護し、家庭全体を支援しながら虐待を未然防止できるよう、より高度な専門性を持つ職員の育成を図りながら、さらなる相談体制の強化に取り組んでまいりたい。

4困難な問題を抱える女性への支援について

質問

(1)第5次男女共同参画さっぽろプランにおける位置付けと今後の方向性について

近年、女性をめぐる課題は、DV被害、性暴力・性犯罪被害、家庭関係破綻や生活困窮など複雑化、多様化、複合化してきた中で、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機として、こうした課題がより浮き彫りとなりました。

一方、我が国における婦人保護事業は、売春を行うおそれのある女性の「補導処分」や「保護更生」を目的とした昭和31年制定の「売春防止法」を法的根拠としておりましたが、66年間一度も抜本的な見直しがされておらず、制度と実態の乖離が指摘されておりました。

こうしたことから我が党は、様々な困難を抱える女性への支援について、女性の人権や福祉に重点を置いた法整備を平成10年から提唱し、平成28年には婦人保護事業の抜本的見直しを盛り込んだ提言書を政府に提出してまいりました。その実現に向けて粘り強く民間団体や各党とも連携し協議を重ね、令和4年5月に超党派での議員立法により「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」、いわゆる「困難女性支援法」が成立したところであります。

この法律では、「女性の福祉の増進」や「人権の尊重・擁護」といった視点を明確に規定し、現在は令和6年4月の施行に向けて、国において困難な問題を抱える女性への支援のための施策に関する基本的な方針を策定しているところであります。

札幌市は、全人口のうち約53%が女性であり、政令指定都市の中で最も女性の割合が高い市となっております。

市内には、DV被害から逃れるため札幌市に転入した方、居場所のない若年女性の方、子育ての悩みを1人で抱えるひとり親の方々をはじめ、困難や不安を抱える女性が多くいると考えられます。

特に、コロナ禍による収入減や外出自粛などで社会的不安が増大し、孤独・孤立を抱える女性の問題の深刻化が懸念される中、札幌市の女性の自殺者数も令和元年以降増加傾向にあります。

こうした中、札幌市では現在、令和5年度からの5年計画として第5次男女共同参画さっぽろプランを策定中ですが、この中で「困難や不安を抱える女性への支援」を基本的方向として新たに掲げていることは、我が会派としても高く評価するものであります。

そこで質問ですが、困難女性支援法への対応を第5次男女共同参画さっぽろプランに位置付けたことについて、札幌市の認識と今後の方向性を伺います。

(2)困難を抱える若年女性支援について

令和3年度に各相談機関に寄せられた、配偶者等からの暴力被害や性暴力被害に関する相談は、令和2年度と比べ増加していると聞いております。これらは、コロナ禍での生活不安やストレス、外出自粛により在宅時間が増えたことなども理由の一つと推察され、被害を受けている方たちが、早期に適切な支援につながり、女性に対するあらゆる暴力が根絶されることを願ってやみません。

しかし、女性たちの困難はコロナ禍以前より続いており、夫や交際相手からのDV被害や性暴力の他にも、成人してからも続く親や兄弟からの身体的・心理的虐待、ストーカー被害、失業に伴う経済的困窮や住居の喪失、予期しない妊娠、中絶など多岐にわたります。

これらの困難は、日常生活に深刻な影響を及ぼすにもかかわらず、プライベートなことは他人に相談しづらいことや、公的な相談窓口の認知度の低さ等により、制度の網の目からこぼれ落ち、地域や社会から孤立している女性達は少なくないと思われます。

実際、令和元年6月に2歳女児が暴行により衰弱死した事案を受けて札幌市が実施した、高校生から20代前半の若年期の女性を対象とした調査でも、例えば、「親にお金を搾取される生活から逃げたい。」ですとか「モラハラやDVを受けても誰にも相談できず辛かった。」といったものや、「ずっとお金で苦労していて死んでしまいたくなる。」といった切実な声が寄せられました。

一方、公的な相談窓口の認知度は軒並み低かったことから、重大な人権侵害や人間関係の悩みを抱えながらも誰にも相談できずにいる若年女性が一定数おり、支援の手が届いていないという実態が明らかとなりました。

さらに、近年都市部では、JKビジネスやパパ活と呼ばれる援助交際の他にも、交縁女子といった売春の新しい名称で、自らの性を商品として金銭的対価を受ける若年女性達が話題となっております。彼女たちには「遊ぶ金が欲しいのだろう」とか「自己責任だ」といった世間からの厳しい声がありますが、なぜ彼女たちが、暴力や性搾取等の危険を冒しながらもそのような選択をしてしまうのかを深堀りし、その背景にある困難を「福祉や人権の問題」と捉え、支えていこうという視点は、全国的にまだまだ薄いと言わざるを得ません。

困難を抱え、性を搾取される環境に置かれた女性に非があるような印象を与える旧来の売春防止法を改め、新たに様々な困難な問題を抱える女性への支援が法制化されたことを受けて、今まで、制度の隙間に落ちながらも自ら助けを求めることなく、誰にも相談できずにいた若年期の女性達が、安全な場所で、安心できる人間関係の中で希望を取り戻し、力強く生きていけるよう必要な支援につながる手助けをしていくことは重要な行政課題であります。

そこで質問ですが、札幌市では困難を抱えた女性を対象とした支援事業を実施しているところですが、困難女性支援法の成立を踏まえての、札幌市における今後の若年期の女性支援に対する考え方について伺います。

答弁

(1)第5次男女共同参画さっぽろプランにおける位置付けと今後の方向性について

〇男女共同参画社会を実現する上で、様々な困難に直面することが多い女性が安心し、自立して暮らせるよう支援していくことは、非常に重要な課題の一つと認識。

〇そのため、困難な問題を抱える女性への支援に取り組むことを明確に打ち出すべきと考え、第5次プランの基本的な方向性の一つに位置付けたところ。

〇今後は、困難な問題を抱える女性が、それぞれの意思が尊重され、心身の状況等に応じた適切な支援を受けられるよう、現在、国が策定中の基本方針を踏まえ、民間団体や関係部局と連携を図りながら、積極的に取り組んでまいりたい。

(2)困難を抱える若年女性支援について

〇札幌市では、令和元年に起きた2歳女児死亡事案を教訓とし、法の制定前から、若年女性が抱える困難を福祉や人権の問題と捉え、関係機関やNPOと協働で、相談支援に取り組んできたところ。

〇今後、困難を抱える若年女性の早期発見、相談、心身の健康回復や自立に向けた援助等を、切れ目なく提供できる体制づくりに取り組み、より支援の実効性を高めていかなければならないと考える。

〇これからも、「困難女性支援法」の基本理念である「女性の福祉の増進」、「人権の擁護」、「男女平等の実現」を旨として、一人ひとりに寄り添った支援に取り組む所存。

5札幌観光の推進体制について

質問

(1)ポストコロナにおける観光マーケティングの重要性について

昨年10月から水際対策が大幅に緩和され、全国的にインバウンドが戻りつつあり、今後、日本国内におけるインバウンドの誘客競争の激化が予想されるところであります。

ポストコロナ期において、こうした都市間競争に勝ち抜き、長引くコロナの影響により大きく落ち込んだ観光需要をV字回復させていくためには、様々な観光データの分析に基づいた戦略を構築し、その戦略に基づいたプロモーションや観光コンテンツの造成などの施策を実施していく「観光マーケティング」がますます重要になると考えます。

他都市の例を見ますと、神戸市のDMOである一般社団法人神戸観光局では、データ収集・分析に係る専門人材を登用し、効果的なマーケティングを行っております。

具体的には、マーケティングに係る専門人材が、国や県、競合他都市などの各種観光統計情報や、海外市場の動向、OTAサイトからの予約情報、神戸観光局の管理施設の来館者情報や公式ホームページのアクセス数などの膨大なデータを分析し、その分析結果を分かりやすく可視化した「マンスリーレポート」を配信し、神戸の観光市場の動向をタイムリーに伝えることで観光事業者のマーケティング支援を行っております。

また、こうした各種データに基づくマーケティングを実施の上で、観光市場における具体的なターゲットを定めた戦略を策定し、それに基づく各種プロモーションを行っていると聞いております。

今後は、こうした事例も参考にしながら、観光マーケティングを強化していくべきと考えます。

そこで質問ですが、ポストコロナにおける観光マーケティングの重要性について認識を伺います。

(2)今後の推進体制の強化に向けた考え方について

札幌市においても、人口減少局面を迎え、市内消費の減少が懸念される中にあっては、外貨が獲得できる観光の重要性はさらに高まっております。

こうした中、来年度には、G7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合やアドベンチャートラベル・ワールドサミットの開催があるほか、今後、北海道新幹線の札幌延伸といった動きと連動した都市部の再開発も加速し、札幌が国内外から注目されております。

これらの機会を最大限に生かすためには、先ほど指摘した観光マーケティングに基づきながら、地域一体となった観光振興を進めていくべきでありますが、現在の体制は、短期間で異動する札幌市の職員が中心となり、各種戦略の構築や事業の企画運営等を担っているため、マネジメント人材・マーケティング等の専門人材の確保や、関係団体とのネットワークの構築に課題があるなど、十分な推進体制を築くことができていないのではないかと考えております。

こうした課題に対応していくため、札幌市では、現在、次期札幌市観光まちづくりプランの策定に向けて設置した、有識者や観光関連団体の代表者からなる検討委員会の中で、観光地域づくり法人、いわゆるDMOの設立も含めた推進体制の強化についての検討を行っていると伺っております。

札幌観光の推進体制を強化し、より一体的・戦略的な観光施策を実施することで、観光により観光関連事業者を始めとした多くの事業者が稼ぐことができる環境を提供していくことが必要であると考えます。

そこで質問ですが、今後の推進体制の強化に向けた考え方について伺います。

答弁

(1)ポストコロナにおける観光マーケティングの重要性について

〇コロナ禍を契機に観光客のニーズや旅行スタイルが多様化するなか、観光市場の動向を的確に捉え、適切な施策を実施するマーケティングの重要性がさらに高まるものと認識。

〇札幌市においては、これまで観光客の入込数や満足度などの基礎的な統計データの分析に基づき、国内外の各市場のニーズに合わせたプロモーションを適宜実施してきたところ。

〇今後は、即時性のある多様なデータの取得や、専門的知見に基づく分析から導かれた観光戦略の立案、戦略に基づく地域一体での効果的な観光施策の実施など、観光マーケティングをさらに高度化する仕組みについて検討を進めてまいりたい。

(2)今後の推進体制の強化に向けた考え方について

〇観光は、地域経済全体に高い経済効果をもたらす、札幌の経済成長をけん引する重要な産業であり、人口減少局面においても持続的に観光を発展させるためには、多様な関係者と連携しながら観光地域づくりを実践していく体制が必要であると認識。

〇札幌観光の推進体制の強化については、今後10年の観光振興の方向性を定める次期観光まちづくりプラン検討委員会の中でも、現在、ご議論をいただいているところ。

〇今後は、検討委員会での議論の結果も踏まえ、北海道新幹線の札幌延伸やハイグレードホテルの建設など、これから本市に訪れる様々な機会の最大限の活用や、今後激化が予想される都市間競争への対応ができるよう、DMOの設立も含めた推進体制の強化に向け、すみやかに本格的な検討に着手してまいりたい。

6脱炭素社会の実現に向けた木質バイオマスの積極的な活用について

質問

昨今の「気候危機」とも言われている気候変動問題に対応するため、国際社会においては、パリ協定に基づき、温室効果ガスの排出量を最大限減らすべく加速的に取組を進めているところであります。

我が国においても、2050年までにカーボンニュートラル、すなわち脱炭素社会の実現を目指すことを宣言し、国内における脱炭素のモデル地域である「脱炭素先行地域」の創出や、国と地域で取り組む対策をまとめた「地域脱炭素ロードマップ」の策定、「地球温暖化対策計画」の改定を行い、あらゆる分野で、できる限りの取組を進めております。

一方、札幌市においても、「環境首都SAPP‿RO」を掲げ、2050年までに市域から排出される温室効果ガスを実質ゼロにする「ゼロカーボンシティ」を目指すことを宣言し、2030年に温室効果ガス排出量を2016年比で半減するという極めて高い目標を掲げた「札幌市気候変動対策行動計画」を令和3年に策定するなど、危機感を持って取組を進めており、昨年11月には、先に述べた「脱炭素先行地域」にも選定されたところであります。

脱炭素を進めるには、官民が一体となって、徹底した省エネや再生可能エネルギーの導入を拡大していくことが必要であります。再生可能エネルギーについては、太陽光や風力などが先行して進んでおりますが、いずれも気象条件に左右されるなど安定したエネルギー供給に課題があります。

太陽光や風力以外の再生可能エネルギーとしては、木質バイオマスがあり、現在、札幌市では、建設廃材や道路、公園などから発生する剪定枝を、市の再資源化施設でチップやRDFに加工し、市内の熱供給の燃料として利用しています。

私は、この木質バイオマスに可能性を感じ、千葉市の民間事業者が行っている再資源化施設を視察してまいりました。この施設は、家庭系の枝葉草や造園業の剪定枝をチップ燃料に再資源化するもので、チップ化するだけにとどまらず、選別や乾燥を行うことにより高品質の燃料に生まれ変わっておりました。

札幌市でも、再資源化の取組が行われているものの、輸送コストの問題から剪定枝などの一部が焼却されており、また、札幌市の再資源化施設も老朽化が進んでいるとのことなので、このような民間事業者の取組は参考になるのではないかと思います。

そのほかの民間の取組として、石狩市や苫小牧市において、木質バイオマス発電施設の設置が進んでおりますが、電力は本市の温室効果ガス排出量の5割と最も多くの割合を占めることから、発電に木質バイオマスが活用されれば、温室効果ガスの削減にも大きく寄与するものと考えております。

木質バイオマスは、原料があれば安定したエネルギー供給が可能となります。北海道は、豊富な森林資源があり、森林内では製材などに使えない細い間伐材や枝葉、木の根元などが残置されたままとなっており、それらを活用することで、森林資源の価値が増大され、林業経営の安定化にも資するなど、波及的な効果も期待できます。森林資源の確保に向けて、植林も含めて取り組んでいくことで、資源の循環という観点からも極めて有効な再生可能資源と言えます。

私は、これらの利点から、木質バイオマスの活用が、札幌市、ひいては、北海道における脱炭素社会実現の鍵になると確信しております。ゼロカーボンシティを目指す札幌市としては、木質バイオマスに係る高い目標を掲げるなど、長期的なビジョンを持って、計画的に取り組んでいくべきと考えます。

そこで質問ですが、脱炭素社会の実現に向けて、より積極的に木質バイオマスの活用を図っていくべきものと考えますが、札幌市の見解を伺います。

答弁

〇2050年のゼロカーボンシティの実現に向け、風や日照などの気象条件に左右されずに、安定したエネルギー供給が可能な木質バイオマスを活用していくことは、有効な手法の一つであると認識。

〇現在、札幌市では、剪定枝などを地域熱供給事業の熱源として利用しているが、一部は異物の混入や輸送の問題から清掃工場で焼却発電されており、これをより効率の高いバイオマス発電の熱源として売却することも検討しているところ。

〇また、北海道は森林資源に恵まれていることから、森林内で発生する間伐材を活用するなどにより、豊富で安定的なサプライチェーンの構築と拡充を図っていくことも効果的であると考える。

〇このため、今後は、木質バイオマスの積極的な活用について、広域的な視点や長期的な展望を持ちつつ、他自治体や民間事業者とも情報共有や連携を図り、脱炭素社会の実現に向けた取組を着実に進めてまいりたい。

7今後の教育政策について

質問

「次期札幌市教育振興基本計画について」です。

2015年に国連サミットで採択された持続可能な開発目標「SDGs」では、「誰ひとり取り残さない」社会の実現を目指し、経済、社会、環境をめぐる課題に総合的に取り組むこととして貧困や飢餓をゼロにすることやジェンダー平等の実現、気候変動への対策など、世界全体で2030年までに目指すことが示されております。

このなかで、教育は、世界の発展や持続可能な社会を形成していくために必要なものとして、教育分野にかかる目標についても明記されており、すべての人を対象として、子どもへの無償で質の高い初等・中等教育や、職業訓練などの職業的スキルを身につけるための機会の提供など、誰もが公平に教育を受けられることを目指しております。

我が会派ではこれまで、子育てと教育を政策の柱に掲げ、様々な教育施策について議会で繰り返し取り上げ、札幌の子どもたちの学びや成長のさらなる推進を図ってまいりました。

その結果、みなみの杜高等支援学校が開校されたほか、市内の多くの学校に特別支援学級が開設されたり、子どもが安心して学校生活を送ることができるよう「学びのサポーター」が各学校に配置されるなど、一人一人の学びに応じた教育が充実されてきました。

また、GIGAスクール構想の実現により1人1台端末が整備され、それぞれの子どもの理解状況や能力にあった学びを進めることや、特別な支援を必要とする子どもの学びの充実につながっているほか、コロナ禍で学校に登校できない状況でも、自宅と学校をつなぎ、子どもたちへの学びの保障が図れたものと認識しております。

オリンピック・パラリンピック教育では、スポーツを通じ障がいのある人にとってよりよい社会を実現することを理念としたパラリンピックへの理解が若い世代へ浸透していることからも、教育が子どもたちに共生社会の実現に向けての気づきや行動の変容を促す影響の大きさを再認識したところであります。

現代は、新型コロナウイルス感染症の流行や地球温暖化による異常気象、ロシアによるウクライナ侵攻といった不安定な国際情勢など、先行きが不透明な時代のなか、こうした時代だからこそ、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現に向けた教育の役割はより一層大切であります。

そのような状況の中、教育の目標や方向性を明確にし、教育施策を総合的かつ体系的に進めていく札幌市教育振興基本計画は、令和6年度からの次期計画のスタートに向け、現在、検討会議の委員を募集するなど、策定準備が進められていると聞いております。

共生社会の実現のためにも、行政や市民が一丸となって、これからの社会を創っていく人を育てていくことは大変重要であると考えます。

そこで質問ですが、次期札幌市教育振興基本計画では、将来の札幌を支える子どもたちにどのような力を育もうとしているのか伺います。

答弁

〇次期札幌市教育振興基本計画について
現行計画では、自ら疑問や課題をもち、主体的に解決する課題探究的な学習や、豊かな人間性や社会性を育む道徳教育の充実など、自ら学び、共に生きる力を培う学びを推進してきた。

〇また、国際バカロレアを活用し、国際的な視野を身に付ける学びの場である開成中等教育学校や、学び直しの機会を提供する星友館中学校の開校など、一人一人の多様なニーズに応じた教育環境の充実にも取り組んできたところ。

〇一方、将来を予測することが困難な時代の中では、子どもたちに、互いの個性や多様性を認め合い、様々な人々と協働しながら、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となる教育を推進していくことが重要と認識。

〇次期計画では、小中学校を地域コミュニティの核として、学校と地域、保護者が、目指す子ども像や理念を共有し、9年間の連続性のある学びを大切にしながら、将来のまちづくりにもつながる新たな価値を創出する力を育んでまいる。