札幌公明

議会報告Assembry report

2022/12/07 令和4年第4回定例議会

令和4年第4回定例議会2022/12/07

代表質問わたなべ泰行議員(南区)

札幌市議会本会議において公明党議員会を代表して わたなべ泰行 議員が代表質問を行いました。
以下、質問とそれに対する答弁の要旨を紹介します。

目次Contents

  • 市長の政治姿勢について
    • 令和5年度の骨格予算の考え方について
    • 北海道総合開発計画の推進について
    • 国土強靭化に資する道路整備の推進について
    • 障がい者スポーツの振興について
  • 札幌市の経済振興について
    • AI等の先端分野における産業人材の育成と確保について
    • 今後のインバウンド誘致施策について
    • 丘珠空港の周辺地域との調和と共生について
  • 市民の暮らしと健康を支える施策について
    • 第2次戦略ビジョンの実現に向けた若者との協働について
    • 今後の婚活支援事業の取組について
    • ケアラー支援の推進について
    • 高齢社会を豊かにする「聞こえ」の支援について
    • 今後のがん患者への支援について
  • 若者・女性・子育て支援について
    • HPVワクチン定期接種の今後に向けての動きについて
    • 予期せぬ妊娠に対する相談窓口の周知について
    • 妊娠・子育て家庭への伴走型相談支援と経済支援の一体的実施について

1市長の政治姿勢について

質問

(1)令和5年度の骨格予算の考え方について

秋元市政2期目では、施政方針において「誰もが安心して暮らし生涯現役として輝き続ける街」、「世界都市としての魅力と活力を創造し続ける街」の2つの未来のさっぽろの姿を掲げるとともに、その実現に向けた中期実施計画であるアクションプラン2019において、9つの政策目標を掲げ、まちづくりを進めてきました。

この間、新型コロナウイルス感染症が発生したことにより、計画で当初想定していたような実施が難しくなった事業も一部で見られたものの、コロナ禍を踏まえた事業の再構築や追加補強を行いながら、政策目標の実現に向けて着実かつ柔軟に取り組んできたことは、一定の評価をするところです。

一方で、コロナ禍によって、特に観光や産業振興面では、政策効果を十分に発揮できず、道半ばとの思いが市長にあるものと思慮いたします。

市制施行100周年を迎えた札幌市は、人口減少、少子高齢化の中で、次の100年に向けた新たなまちの礎づくりを進めていく必要があり、脱炭素や共生社会の実現、都市のリニューアル、子育て支援、デジタル化の推進など、持続可能なまちや地球環境の実現に向け、取り組むべき課題が山積しております。

そこで、こうした課題への対応として、2030年冬季オリンピック・パラリンピックを一つの契機として、市民・企業・行政の力を結集して、課題解決に向けた取組を進め、それを具体化する取組が、第2次まちづくり戦略ビジョン、次期中期実施計画に盛り込まれることと思いますが、今後4年間の取組をいかに着実に進めていくかが重要であります。

我が会派としては、特に未来を担う若者の声を拾い上げ、市政に反映していくことが、今後一層重要になってくるものと考えます。

令和5年度は、第2次まちづくり戦略ビジョン<ビジョン編>策定後、初めての予算編成となるスタートダッシュにあたる年であり、骨格予算であっても、秋元市政2期目の中でも道半ばとなった継続事業や第2次まちづくり戦略ビジョン<ビジョン編>に込められた今後のまちづくりの基礎となる方針が、これまで市政を担ってきた秋元市長の強いメッセージとして、しっかりと市民に伝わるような予算とすべきであります。

そこで質問ですが、第2次まちづくり戦略ビジョン<ビジョン編>策定後初となる、令和5年度の骨格予算の考え方について伺います。

(2)北海道総合開発計画の推進について

北海道は豊富な資源や広大な国土を有しており、国全体の安定と発展に寄与することを目的として、明治2年の開拓使設置以降、計画的に開発が進められてきました。

特に北海道開発法の制定後は、昭和26年に「北海道総合開発計画」を策定し、国の経済の復興や食料の増産、人口や産業の適正配置など、その時々の国の課題の解決に寄与することを目的に積極的な開発を行ってきました。

現計画は、平成28年に閣議決定された第8期計画となっており、北海道の強みである「食」と「観光」を担う場を「生産空間」と位置付け、「生産空間」の維持・発展のための交通ネットワークの整備や農林水産業のイノベーションの推進などが掲げられております。

現在、第9期計画策定に向けて検討するための部会が立ち上げられ、新計画策定に向けた議論では、「食」「観光」とともに「脱炭素化」を目標に位置付け、検討が進められていると認識しております。

北海道の人口の4割近くを抱え、北海道の中心都市としての役割を担う札幌市としては、この計画の推進に向け、積極的に取組を進めていかなければならないと考えます。

そこで質問ですが、札幌市からは吉岡副市長が当部会の委員となっているところですが、札幌市はどのようにしてこの新たな北海道総合開発計画の推進に貢献していく考えか伺います。

(3)国土強靭化に資する道路整備の推進について

近年、気候変動の影響等により、線状降水帯による豪雨や記録的大雨が相次ぐなど、激甚化・頻発化する自然災害や、大規模地震の発生が危惧されております。

札幌市においては平成30年9月の胆振東部地震が記憶に新しいところですが、全国的には、令和元年東日本台風や、令和2年7月の熊本県の球磨川一帯の豪雨、令和3年7月の静岡県熱海市豪雨など、毎年のように大規模災害が発生しており、今年に入っても、3月の福島県沖地震や台風14号・15号などにより、尊い人命が失われ、重要インフラの機能に支障をきたす甚大な自然災害が起きています。

そうした災害の発生に備え、国においては、生命を守り、経済・生活を支える重要インフラが、あらゆる災害に際し、機能を発揮できるよう、平成30年に「重要インフラの緊急点検」が実施され、「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」が行われてきました。

今後、南海トラフ地震や日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、首都直下地震などの大規模地震の発生が切迫していることや、高度成長期以降に集中的に整備されたインフラが今後一斉に老朽化することから、対策を加速化するため、令和3年から令和7年までの期間で15兆円規模となる「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」が行われております。

本市においても、道路整備や、上水道施設の浸水対策、学校施設や下水道施設の地震対策、社会福祉施設の非常用自家発電設備設置など、多くの分野で対策に取り組んでいると認識しています。

とりわけ道路については、人や物を運ぶ交通機能や、ライフラインの収容空間としての機能を持ち、また災害時においては、避難・救助をはじめ、物資供給等の応急活動のための防災空間としての機能を持つなど、市民の生命・財産を守り、社会の重要な機能を維持するための大きな役割を担っています。

このため、緊急輸送道路など道路ネットワークの整備や、また今後一斉に更新期を迎える道路施設の老朽化対策が重要であり、そのための予算を安定的かつ継続的に確保していく必要があると考えます。

そこで質問ですが、防災・減災、国土強靭化に資する道路整備について、今後どのように進めていくつもりか伺います。

(4)障がい者スポーツの振興について

我が会派ではこれまでも、共生社会の実現に向けて障がい者スポーツの振興は大変重要なテーマであると捉え、関連する質疑を議会の場で幾度となく重ねてきたところであります。

障がい者スポーツの振興に取り組むことは、障がいのある方の健康維持・増進が図られたり、社会参加を促進したりするほか、障がいに対する理解を深めることにつながり、共生社会の実現に大きく寄与していくことは言うまでもありません。

東京2020大会前後においては、障がい者スポーツの実施率の向上が見られたという報告があるほか、報道によれば、札幌市が招致を目指す2030大会を見据え、日本パラスポーツ協会の選手発掘・育成事業で、冬季競技を志す選手が増えており、同事業では、東京2020大会の効果で、夏季競技を含め、参加希望者が約3倍に急増とありましたが、一方で、指導者や施設不足といった課題もあり、十分な環境があるとは言えない現状にあります。

札幌市においても、障がい者にとって日常的に気軽にスポーツを実施できる施設や、障がい者がスポーツを始めるのに不可欠な指導者及び介助スタッフが慢性的に不足しているとの課題があります。

こうした中、北海道・札幌2030オリンピック・パラリンピック冬季競技大会概要案の更新版では、「大会がもたらすまちの未来」に「全ての人にやさしい共生社会の実現~2030年誰もが暮らしやすいまちに」とうたわれている中に、新たに「障がい者スポーツセンターの設置検討」が記載されたところであり、我が会派としても、札幌市の課題解決のほか、北海道・札幌2030オリンピック・パラリンピック冬季競技大会招致を契機に、障がい者スポーツの環境整備をより一層進めていく必要があると考えているところです。

北海道・札幌2030オリンピック・パラリンピック冬季競技大会を見据え、まち全体のバリアフリーを加速させるとともに、心のバリアフリーが実現した誰もが暮らしやすいまちを実現させるため、障がい者スポーツセンターの設置は、札幌市というまちを新たなステージへと押し上げていくことにつながると考えます。

そこで質問ですが、障がい者スポーツのさらなる振興に向けては、障がい者がいつでも気軽にスポーツを楽しむことができるような環境整備をより一層進めていく必要があると考えますが、市長はどのように認識しているのか伺います。

答弁

(1)令和5年度の骨格予算の考え方について

〇令和5年度予算は、令和5年4月に市議会議員及び市長の選挙が実施される予定であることを踏まえ、経常的な事務事業やアクションプラン2019に基づく事業のうち切れ目なく実施する必要があるものを中心とした骨格予算として編成。

〇加えて、第2次札幌市まちづくり戦略ビジョンのビジョン編に掲げる「まちづくりの基本目標」の実現に資する事業や、新型コロナウイルス感染症などの喫緊の課題に対応するための事業についてもしっかりと予算を計上する。

〇このように、骨格予算としつつも、第2次戦略ビジョンの実現にも資する予算とすることで、豊かな暮らしと新たな価値を創る、持続可能な世界都市・さっぽろの実現に向けて取り組んでまいる。

(2)北海道総合開発計画の推進について

〇北海道総合開発計画は北海道発展の基盤となる重要な計画であり、道内各地域の生産者や、自然、資源、エネルギーなどに支えられている札幌市として、計画の推進に向けて積極的に関わっていくことが重要である。

〇脱炭素化の観点では、道内におけるエネルギーの地産地消も見据え、エネルギーの一大消費地である札幌市として、水素モデル街区の整備や次世代自動車の導入などの推進により、ゼロカーボン北海道の実現に貢献していきたいと考えている。

〇観光の面では、北海道全体のスノーリゾートとしての価値を高めるため、道内スノーリゾートエリアと連携し、一体的なプロモーションや道内周遊を促進するなど、「スノーリゾートシティSAPPORO推進戦略」の取組を進めていく考え。

〇また、札幌市の持つ集客、消費、流通などの機能と、道内各地域が持つ食や観光などの資源を結び付けていくため、国とも連携し、都心アクセス道路整備や北海道新幹線の札幌延伸などにより、交通結節機能の強化を図っていきたい。

(3)国土強靱化に資する道路整備の推進について

〇災害時において、道路は救急救命活動や復旧支援活動を支える役割を持つことから、札幌市としても、その機能を維持し強化することは重要と認識。

〇このため、緊急輸送道路の無電柱化のほか、橋梁の耐震補強や老朽化対策に加え、骨格道路網の整備など道路ネットワークの機能強化を進めているところ。

〇これらの必要な事業を推進し、早期に効果を発現するため、5か年加速化対策など、国の補助制度を積極的に活用するとともに、舗装補修などの維持管理に活用可能な国の交付金制度の新設や、交付対象の拡充について、様々な機会を通じて国に働きかけてまいりたい。

(4)障がい者スポーツの振興について

〇障がいの有無に関わらず誰もがスポーツを楽しめる環境を整えることは重要なことであり、これまでも障がい者スポーツの裾野拡大や支える人材の育成、環境整備を重要課題と捉え、その解決に向けて取り組んできたところ。

〇障がい者スポーツのさらなる振興のためには、体験会や指導者養成講習会の拡大に向けた検討を進めていくほか、障がい者が日常的にスポーツを行える環境整備や裾野拡大から競技力向上までを一貫して支える中核的な機能が必要と認識。

〇障がい者スポーツ専用の学校開放は、札幌みなみの杜高等支援学校のみであり、既存の学校開放において、障がい者優先の利用枠を設けることができるよう、関係団体と協議を進めているところ。

〇障がい者スポーツセンターについては、引き続き、先進事例の調査やパラスポーツ関係者と議論を進め、中核的な機能を担う拠点施設として、設置に向けた検討を深めてまいりたい。

2札幌市の経済振興について

質問

(1)AI等の先端分野における産業人材の育成と確保について

本年10月に策定された「第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン<ビジョン編>」では、「目指すべき都市像」の実現に向けて、経済分野では、「強みを生かした産業が北海道の経済をけん引しているまち」など3つの基本目標が掲げられ、基本目標ごとに9つの「目指す姿」などが示されたところであります。

札幌市の持続的な経済発展に向けては、これらの基本目標や「目指す姿」はいずれも大事であることは言うまでもありませんが、中でもとりわけ、札幌市が人口減少局面を迎え、生産年齢人口の減少という課題に直面する中にあっては、様々な分野でAIやIoTといった先端技術を活用し、生産性向上やイノベーション創出を実現していくことが、ますます重要になってくると考えられます。

他方、札幌市は1980年代という早い時期から全国に先駆けてIT産業の振興に努め、産学官連携の施策によって、大学発の先駆的なベンチャー企業が生まれ、IT企業が集積する都市として発展してきました。そうした先人たちの努力の上に、このたびのビジョンにおいても、札幌市の新たな強みとなる産業の一つにIT産業が位置づけられたところです。

特に近年では、道内大学や地場のIT企業、そして札幌市による産学官連携組織「札幌AIラボ」が2017年に設立され、ラボ長には、全国的にも注目されているAI研究者である北大の川村教授が就任しており、川村教授を中心としたAI研究を原動力として、その研究成果を社会実装できるAI人材の活躍により、札幌でAI技術を活用したスタートアップ企業が生まれ、成長を遂げております。

さらに今後、AI人材の集積を進め、数多くの高等教育機関を有する強みを生かしながら、世界的な市場の成長も捉え、札幌市がAI開発企業の集積地となっていくことが期待されます。

一方で、先端技術を高度に活用し、地域の課題解決や企業の成長を牽引できるエンジニアなどのAI人材は、全国的にも獲得競争が激化しており、先端技術を活用した産業を札幌の強みとなる産業としていくためには、まずもってこうした人材の育成・確保に、産学官が一体となって取り組んでいくことが不可欠であると考えます。

そこで質問ですが、AI等の先端技術を活用した産業の振興に必須となる人材の育成、確保について、市の認識と今後の取組の方向性を伺います。

(2)今後のインバウンド誘致施策について

2020年1月以降の新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、観光需要は世界的に低迷し、観光関連産業は、長期間に亘り厳しい状況に置かれてきました。

我が国においても、国内需要の減少に加えて、感染が確認されて以降は、段階的に水際対策が強化され、国際線の運休や減便が相次ぐなど、インバウンド誘致は大きな影響を受けてきたところです。

このため、札幌市においても、外国人宿泊者数が2020年度11,187人、2021年度11,464人となり、両年度ともコロナ禍前の2019年度の2,423,236人に比べて99.5%減と大幅に減少しました。

その後、ワクチン接種の進展によって、各国における出入国規制が緩和される一方で、我が国においては諸外国に比べて厳しい制限が続けられてきたところですが、10月11日からは、入国者数の上限が撤廃され、個人旅行も解禁されるなど、水際対策の大幅な緩和が実施されて、まもなく2か月が経過するところです。

先月公表されたJNTO(日本政府観光局)の統計によると、2022年10月の訪日外客数は498,600人となり、前月の206,500人から2倍以上の増加となったとのことです。

これは、中国を除く東アジアからの訪日者数が前月から大きく増加したことや、東南アジア、欧米豪中東市場からも順調な回復が見られたことが大幅な増加の要因であると分析されております。

また、報道によれば、百貨店の免税売上高がコロナ前の2019年10月に比較して増加した所もあるなど、インバウンドの増加に寄せる地域の期待は大きくなっていますが、東京都や大阪、京都などの、いわゆるゴールデンルートが、コロナ前と同様に外国人観光客に人気とのことです。

確かに、水際対策が緩和されたとはいえ、現状、札幌に多くのインバウンドが戻ってきている状況にはないと私も感じますが、日本政策投資銀行が10月に公表した「アジア・欧米豪訪日外国人旅行者の意向調査」によると、札幌は、日本国内で訪問したい場所として、ゴールデンルート、沖縄に次ぐ順位となっていることから、これらにはない札幌の魅力を発信し、実際の誘客に繋げていただきたいと考えます。

人口減少を迎えている日本にとって、国内外からの交流人口を生み出す観光は、成長戦略の柱、地域活性化の切り札として期待されているところであり、これまで、折々の議会で、我が会派も述べてきたとおり、札幌市にとっても、観光は経済成長をけん引する極めて重要な産業であります。

インバウンドが消失したコロナ禍の期間、札幌市においてはアフターコロナに備えてWEBやSNSを中心とした継続的な情報発信によって、将来的な来札意欲の喚起に取り組んできたところですが、世界的な旅行需要の回復に加えて、今まさに円安によって訪日への割安感が高まっているという好機を生かし、札幌としても、より一層、インバウンド誘致に力を入れていく必要があると考えます。

そこで質問ですが、インバウンドの復活に向け、今後、どのように誘致に取り組むのか伺います。

(3)丘珠空港の周辺地域との調和と共生について

今般策定した「丘珠空港の将来像」には、実現に必要な滑走路延伸や路線の拡充、空港へのアクセス強化などの取組が盛り込まれているほか、周辺地域との調和と共生が掲げられております。

空港の機能強化に伴い、空港及びその周辺において賑わいの創出や環境への配慮などを行うことにより、地域に受け入れられ、根付いていくことは将来的に重要と考えられます。

丘珠空港の将来像案に対し、3,800件余の意見が寄せられ、将来像案への肯定、否定のほか、原案以上の機能強化を求める意見や、周辺環境への影響に関する意見など様々であったようですが、総じて前向きな意見が多く、市民の皆様の意見を参考、反映したうえで策定に至ったと認識しております。

札幌市においては、この多くの市民の皆様の期待の声をもとに、滑走路の延伸や空港運用時間の拡大などの機能強化を国に要望し、取り組んでいただきたいと思います。

一方で、丘珠空港の将来像に理解を示しつつも、航空機騒音への不安、また防音対策の検討を求める声があったことを、市はしっかり受け止め、検討する必要があります。

我が会派には、新たな丘珠空港への期待の声が多く寄せられておりますが、先に掲げている周辺地域との調和と共生を考える際は、賑わいづくりとともに、航空機騒音への対応をしっかり進めることで、住民の生活の安定及び福祉の向上に寄与することが肝要と考えます。

周辺の環境保全の配慮を徹底して行い、環境、経済、社会がともに発展し、持続可能な丘珠空港と地域の発展を遂げることにより、初めて地域との調和と共生が図られると考えます。

札幌市は例年、航空機騒音の調査を実施し、結果を公表しておりますが、さらなる対応として、空港の機能拡充の進捗に合わせて空港周辺地域へ丁寧に情報を提供し、住まわれている方々の声をお聞きする機会をつくることは、調和と共生という観点において重要と思われます。

そこで質問ですが、「丘珠空港の将来像」に掲げる「周辺地域との調和と共生」に向けて、空港周辺地域に対して、どのように取り組んでいくつもりか伺います。

答弁

(1)AI等の先端分野における産業人材の育成、確保について

〇近年、AI等の先端技術は、車の自動運転における制御や、工場における不良品検査の自動化、医療現場における画像診断の支援など、イノベーションの創出に不可欠な要素となっており、北海道大学などにおいて、そうした先端技術の研究が進み、その成果が蓄積されていることは、札幌の大きな強みとなっている。

〇そのような強みを活かすためには、実社会において先端技術を活かしたビジネスを構想する人材、それをもとにアプリケーション等を開発できる人材など、厚みのあるAI人材等を育成、確保することが必須であると認識。

〇このため今年度、市内IT企業のエンジニアがチームを組み、北海道大学の研究者等による指導を受け、実際の企業課題を題材としてAI開発を行う実践的な人材育成に着手したところであり、今後も、産学官の連携を強化しつつ、AI等の先端技術を活用できる人材、企業の集積に向けた取組を推進してまいりたい。

(2)今後のインバウンド誘致施策について

〇水際対策の緩和によって、海外から新千歳空港への直行便は、アジアを中心に再開してきており、ソウル、台北、香港便のほか、直近では、今月から、クアラルンプールやバンコク便が運航再開となったところ。

〇こうした動きを受け、アジアに向けては、すでに韓国や台湾で開催された旅行博への出展や現地インフルエンサーの招請を行ったほか、今後は、マレーシア、タイなどへの誘客プロモーションを予定している。

〇また、アジアに比べて来札者の少ない欧米豪に向けては、都市型スノーリゾートシティやアドベンチャートラベルのデスティネーションとしての魅力を発信することによって、札幌の認知度と来訪意欲の向上を図ってまいりたい。

〇特に、コロナ禍前には、12月~2月の冬期間における来札者が多い傾向にあったことから、インバウンド誘致に当たっては、札幌が誇る雪まつりを始めとした冬の魅力を積極的に伝えることにより、インバウンドの早期来札に繋げてまいりたい。

(3)丘珠空港の周辺地域との調和と共生について

〇先月末に策定した「丘珠空港の将来像」の実現に向けては、空港の機能強化と併せて、周辺の賑わい創出や環境への配慮などに取り組むことで、周辺地域との調和と共生を図っていくことが必要と認識。

〇将来像策定に当たり実施したパブリックコメントにおいては、調和と共生に関する事柄について、空港緑地の機能の維持や周辺への商業施設などの誘致、航空機騒音の増加への懸念などといったご意見をいただいているところ。

〇今後は、これらのご意見を踏まえ、周辺の賑わい向上に繋がる取組や、航空機騒音の増加に対する不安の解消に向けた取組などについて、地域と協議する場を設けるなど、しっかりと検討していく考え。

3市民の暮らしと健康を支える施策について

質問

(1)第2次戦略ビジョンの実現に向けた若者との協働について

持続可能な札幌市のまちづくりには、これからの将来を担う若い世代の育成・参加が極めて重要です。

先般、会派で視察をした埼玉県の戸田市では、「戸田市SEEPプロジェクト」と銘打ち、これからの時代の主役である子どもたちに、AIでは代替できない力とAIを使いこなす力を身に付けてほしいという考えのもと、著名なイエール大学の成田助教授やインテルなどの大企業を始めとした70以上の企業等と連携して教育改革を行っていると伺いました。

このような取組は、未来に向けた人材育成の取組として、本市における今後の展開にも、大変参考となる点も多いと考えます。

また、未来を担う若者のまちづくりへの参加の必要性については、あらためて指摘するまでもありませんが、若者を手段にしてしまうような形での参加であってはなりません。

アメリカの環境心理学者のロジャー・ハートが提唱した「参加のはしご」というモデルでは、大人の社会に子ども・若者が参加する段階を8つに分け、下から3段を「あやつり参加」「お飾り参加」「見せかけ参加」という「非参加的段階」とし、4段階目の「役割を与えられ情報を受ける参加」から真の「参加」の段階になり、一番上の8段階目を「子ども・若者が主体的に取りかかり、大人と一緒に決定する」段階としています。

子ども・若者が枠組みや仕組みをつくる側に立ち、様々な意思決定に若者の声が反映されるような形を構築していくことがますます求められております。

札幌市において、まちづくりのパートナーとして、若者と戦略的な協働を進めていくためには、若者としっかり向き合い、まずは、戦略ビジョンに掲げる「目指すべき都市像」や「まちづくりの重要概念」を共感してもらうことによって、まちづくりを自分事として捉え・考え・行動する若者が増えてくる、というのが理想の姿ではないでしょうか。

そこで質問ですが、第2次戦略ビジョンの実現に向けて、まちづくりに主体的に参加する若者が増え、若者と行政、あるいは地域の協働が広がっていくよう、どのように取り組んでいく考えか伺います。

(2)今後の婚活支援事業の取組について

来年令和5年は、4月に子ども・若者の様々な施策の司令塔として、「こども家庭庁」が発足し、また、子ども施策の基本理念や基本となる事項を定めた「こども基本法」が施行されるという、子ども・若者政策の大きな転換点の年となります。この「こども基本法」の中では、子ども、若者に関わる施策を策定、実施、評価するにあたり、子ども・若者の意見を聴取することが最も重要視されております。

11月8日に、我が党が公表した「子育て応援トータルプラン」においても、子どもや若者の意見を聞かずしてこれからの日本は無いとうたっているところであり、さらにその中で、少子化・人口減少という未曾有の事態を乗り越えるために、結婚支援の拡充を重要な柱と位置付けており、民間事業者と連携しつつ地域の実情に応じた結婚支援を継続して着実に推進していくことを目指しております。

結婚支援は今や、少子化対策、人口減少対策という次世代を育んでいくといった側面だけではなく、若者が希望を持って自身のライフプランを築き上げる、未来の札幌を担う若い世代に活躍してもらうことを社会全体で応援する、という重要な役割を担うものと私は考えております。

以前は、若者たちの出会いや結婚について、行政が介入すべきものではなく、それぞれの個人的な価値観に委ねられるものという考え方が一般的でありましたが、すでに多くの自治体で、国の地域少子化対策重点推進交付金を活用し、結婚への支援を積極的に行っております。その中で、行政のひとりよがりな施策にならないよう、従来のやり方にとらわれず、AIを活用したマッチングシステムの導入やオンラインでの結婚相談など、若者のライフスタイルや考え方に合わせた支援事業を展開し、実績をあげている自治体もあると聞きます。

札幌市においても、若者の声を丁寧に聞き取り、若者が利用してみたいと思える、より具体的なより実効性のある結婚支援を推し進めていくことを早急に検討すべきであると考えます。

そこで質問です、若い世代にとって理想のライフプランを実現するための支援の在り方について、若者の意識を踏まえ、どのように婚活支援事業に取り組んでいくのか伺います。

(3)ケアラー支援の推進について

これまで我が党では、2018年に、全国の議員約3,000人により100万人規模の訪問調査を行い、また2021年には高齢者支援等についてアンケートを実施し合計で15万7135件のお声を伺ってまいりました。調査では住み慣れた自宅で暮らし続けたいという希望が多い中、家族など在宅介護を支えるケアラーの声とその課題についても伺い、アンケートにおける高齢者支援では「自分や家族が認知症になったとき」の不安が64%と最も多く、家族を介護するケアラーになる事に不安を抱いている現実も浮き彫りになりました。

我が会派では、こうしたお声や課題を踏まえ、介護施策の推進に向けてこれまで様々な政策に反映させてきましたが、昨年度は「札幌市ケアラー支援条例の構想提案」に関する調査書をまとめ、さらにケアラー支援条例をいち早く策定した栗山町や県市で条例を策定した埼玉を訪れ現地調査も行ってきました。

そうした中、令和3年第4回定例会では、ケアラーに対して市民の理解を深めて行く必要性について質問し、市長から、「ケアラーの存在に気づき、支援に繋げて行くことが重要であり、広く市民に向けた広報啓発を行うことで、ケアラー支援に対する市民や社会の理解を深めたい」との答弁がありました。

また、本年の第2回定例会においては、認知症の方と介護するケアラーの支援について質問し、副市長から「地域包括支援センターのさらなる機能強化に努め認知症の方とケアラーのニーズを捉えより効果的な支援体制を検討する」との答弁があり、ケアラー支援が進みつつあるところと認識しております。

一方、ケアラー支援と一言で言っても、ケアを受けている方の年齢や置かれている状況、高齢者なのか障がい者なのかといったことによって、行政の主管部局、利用できるサービス、支援に関係する機関も様々であることから、関係者の理解や支援に対する熱量にはバラつきがあると感じます。

こうした中、次年度は関連する札幌市高齢者支援計画、さっぽろ障がい者プラン、札幌市地域福祉社会計画などの行政計画が計画期間の最終年度を迎えるため、各分野にまたがって共通の理念を打ち出すなど課題認識を共有しながら、施策の連携を強化する機会ととらえています。

そこで質問ですが、各計画改定に当たってその策定段階からケアラー支援について、各分野で共通認識を持って施策を進めることを盛り込むべきと考えますが、今後どのように各計画策定手続を進めていくか伺います。

(4)高齢社会を豊かにする「聞こえ」の支援について

我が国では、令和7年までにいわゆる「団塊の世代」が全て75歳以上となり、平均寿命が今後も延伸することを見込んで、人生100年時代の到来を踏まえた政策が重要となります。

先に議決された第2次札幌市まちづくり戦略ビジョンにおいても、「誰もが幸せを感じながら生活し、生涯現役として活躍できること。身体的・精神的・社会的に健康であること」を「ウェルネス(健康)」として「まちづくりの重要な概念」に定められています。

こうしたまちづくりを実現するためには、高齢者から若者まで、全ての人が元気に活躍し続けられる社会、安心して暮らすことのできる社会を構築する必要があり、これにより、さらなる健康寿命の延伸が期待されます。

健康寿命の延伸には、特効薬はありませんが、適度な運動や人と人との交流、つまり社会参加などが重要とされています。

しかし、定年退職された方など、一度、社会から離れた方や、とりわけ加齢に伴う難聴がある方などから、人と話す機会が減ったという声を多く聞きます。

加齢に伴う難聴については、誰にでも起こり得る可能性があり、症状の進行により適切な「聞こえ」が得られず、高齢者が社会的な孤立やうつ、認知症、フレイルに陥る危険性を高めるという研究結果も報告されております。

豊かな暮らしのためには、「聞こえ」の確保が欠かせませんが、それを支える補聴器は非常に高額のため、低所得者にとってはその価格が支障となり、補聴器が普及しない要因となっている現状があることから、障害者総合支援法の対象とならない、中程度以下の難聴の方々への助成制度が待たれるところです。

また、補聴器はメガネとは違い、店舗でのフィッティングだけでは適合判断が難しく、日常生活における様々な音の中で調整し判断する必要があることから、加齢性難聴に関する正しい理解と個々人に合った補聴器を購入できる環境の整備も重要であるとの言語聴覚の専門家の見解もあります。

これらに対応するため、認定補聴器技能者が配置されている店舗や国においては、補聴器販売技能向上研修も実施されていると聞いておりますが、まだまだ周知が足りないと感じているところです。

そこで質問ですが、ウェルネスシティを目指す札幌市にとって、高齢者の適切な「聞こえ」のために、補聴器の購入と適切な選定等を行うことへの支援が不可欠と考えますが、どのようにお考えか伺います。

(5)今後のがん患者への支援について

現在、がんは日本人の2人に1人が生涯のうちに診断されると言われており、厚生労働省と国立がん研究センターが発表したがん登録のデータによると、2019年に新たにがんと診断された罹患者数は約99万9千人とのことです。

また、厚生労働省によると、がん患者のうち約3人に1人は20代から60代のうちに罹患するとされており、2016年には全国で約26万人となっております。

このように、がんは働き盛りの世代で罹患する方も多く、治療後に職場に復帰したり、外来で治療をうけながら仕事を続けている方が多くいるものと思われますが、一方で、がん治療の副作用による脱毛や肌の変化などといった外見の変化のために社会復帰を難しく感じている方も多いと思われます。

こうした方たちに、医学的・整容的・心理社会的支援を用いて、外見の変化に起因するがん患者の苦痛を軽減する「アピアランスケア」という考え方があります。

アピアランスケアは、患者の心理的な苦痛を和らげ、「その人らしく、社会生活の中で今まで通りに過ごす」ことを支えるもので、治療をしながら日常生活を送る患者が増えるなか、その必要性が高まっております。

中でもがん治療による脱毛により、これまで通りの生活が送れるのか不安を抱える人も多く、対応としては帽子や医療用ウィッグの使用が挙げられますが、特にウィッグについては経済的な負担から利用をためらっている方たちの話も聞くところであり、今後公的な支援が必要ではないでしょうか。

そこで質問ですが、がん患者がアピアランスケア等により苦痛を軽減して過ごせる環境整備が必要と思いますが、市の認識について伺います。また、経済的な問題で治療中に社会活動が制限されることがないよう、医療用ウィッグの助成制度が必要と考えますが、今後の取組について伺います。

答弁

(1)第2次戦略ビジョンの実現に向けた若者との協働について

〇次世代を担う子ども・若者と協働していくため、まずは、まちづくりの基本的指針である第2次戦略ビジョンを共有することが重要と考え、この策定段階においても、学校等と連携し、これをテーマとした対話型の授業などを実施してきたところ。

〇今後は、学校等と連携した取組のほか、地域の課題解決に取り組む若手NPO職員との対話や、若手の経営者、フリーランスなど多様な方で構成される勉強会に参加し、意見交換を行うなど、これまで行政や地域と接点が少なかった年代にもアプローチする考え。

〇このような双方向の対話に重きを置いた取組を通じて、子ども・若者と行政・地域の垣根を取り払い、アイディアを引き出しながら、まちづくりに係る協働の輪を広げてまいりたい。

(2)今後の婚活支援事業の取組について

〇本年11月に市内及び札幌市連携中枢都市圏在住の18歳から39歳までの男女約400名にアンケート調査を行ったところ、6割を超える若者が行政による結婚支援を希望していることが明らかとなった。

〇また、交際相手の紹介など、出会いの機会創出を行政に求める人が多く、更には、「より価値観の合う人と出会えそうだ」とAI機能を使ったマッチングに期待する人も多数いたところ。

〇そこで今後は、AIを活用したマッチングシステムの導入やオンラインでの伴走型サポートなど、若者の理想とするライフプラン実現に向けた婚活支援体制づくりに取り組んでまいりたい。

(3)ケアラー支援の推進について

〇市民が抱える福祉課題が多様化、複雑化する中、行政、関係機関、地域が連携し、包括的に対応していく必要性は今後更に高まるものと認識。

〇こうした中、現在、高齢者支援計画などの改定に向けて、市民や関係機関に対してアンケート調査を実施するなどして、各種ニーズの把握を行っているところであり、調査項目には、ケアラーなど今日的な福祉課題も含めている。

〇これらの調査結果を踏まえ、次年度、計画改定作業を本格化させていくが、分野ごとの関係者における専門審議会等による議論と並行し、庁内関係部局においても、分野間の連携等が必要な課題について、協議を重ねていく予定。

〇このような検討経過を経て、最終的には、「札幌市保健福祉施策総合推進本部」にて、各分野の計画案を総合的に俯瞰しながら、一体的に議論してまいりたい。

(4)高齢社会を豊かにする「聞こえ」の支援について

〇現在、国において、補聴器による認知症予防に関する研究が進められているほか、補聴器の安全で効果的な使用に資する様々な取組が行われていることは承知しているところ。

〇認知症予防の効果が認められる場合には、国に対し、医学的エビデンスを踏まえたうえで、加齢性難聴者の補聴器購入に対する全国一律の公的補助制度等の創設を求めている。

〇今後も、研究の結果を早期に取りまとめ、補助制度等を創設するとともに、制度設計に当たっては、補聴器を必要とする方が適切に選定することなどへの支援を含めて、政策的・予算的に実現及び持続可能な制度とするよう要望してまいりたい。

4若者・女性・子育て支援について

質問

(1)HPVワクチン定期接種の今後に向けての動きについて

子宮頸がんの発生にはヒトパピローマウイルス「HPV」と呼ばれる皮膚や粘膜に感染するウイルスが関わっており、子宮頸がん患者の90%以上がこのウイルス感染が原因とされております。

HPVは、遺伝子型の違いにより200以上の種類があります。その中の約15種類が「高リスク型HPV」と呼ばれており、子宮頸がん患者から検出されております。

現在、定期予防接種において接種されているHPVワクチンは、2価ワクチンまたは4価ワクチンと呼ばれ、それぞれ、HPVのうちの2つの遺伝子型、4つの遺伝子型の感染などに対して予防効果を持つものです。いずれも「高リスク型HPV」のうち、子宮頸がん全体の50~70%の原因とされる「16型」と「18型」などに対して予防効果をもつワクチンです。

そして、これに加え、9つの遺伝子型に対応した9価ワクチンについて、令和5年度より定期予防接種の対象として加わることが国において審議が進められており、11月に開催された国の審議会において承認されたところです。

9価ワクチンが対応する9つの遺伝子型のHPVは、日本人女性の子宮頸がんにおける80~90%の原因を占めており、これまでの2価・4価ワクチンより、効果が期待できるワクチンと認識しております。

日本医師会によりますと一生のうちにおよそ73人に1人が子宮頸がんと診断されています。9価ワクチンが導入される令和5年度の本市の定期接種の対象は、キャッチアップ接種対象者も含め、少なくとも10万人は超えるものと推察され、ワクチン接種の機会がある方がこれだけ多くいるのだと認識しています。

4月の令和5年度の定期予防接種開始に間に合うよう対象者や保護者に接種について検討頂くため、2価・4価ワクチンに加え、効果が高いと言われる9価ワクチンの存在と検診の重要性について十分な情報を迅速かつ的確な時期に提供することは、行政としての大事な責務と考えます。

また、国においては、HPVワクチンの男性への接種についても議論が進んでいます。

HPV感染症は、女性のみならず、男性から女性、女性から男性、同性の間でも感染し得ることから、男性への接種についても大変意義があることと考えます。

更には、HPVは肛門がんなどの原因ともなることや、「低リスク型」HPVのうち「6型」、「11型」は、性感染症の尖圭コンジローマの原因ともいわれています。

既に米国・英国・カナダ等では、男性への接種が実施されており、日本国内でも4価ワクチンは、肛門がん及び尖圭コンジローマ予防を目的として、令和2年より9歳以上の男性が任意の予防接種の接種対象となっております。

一部自治体では、男性向けの4価HPVワクチンの任意予防接種への接種経費の補助という形で接種の促進を開始しており、自分自身やパートナーのHPV感染予防を目的とし、男性へのワクチン接種についても、定期予防接種の開始が望まれるところです。

本年4月にHPVワクチンの積極的な接種勧奨が再開したことに加え、このような検討も進んでいることを踏まえると、HPVワクチンに関する今後に向けての動きは、がんの予防や感染症の予防において重要なものと考えます。

そこで質問ですが、HPVワクチンの定期予防接種の現在から今後に向けての動きについて、札幌市ではどのように認識しているか伺います。

(2)予期せぬ妊娠に対する相談窓口の周知について

今年6月に千歳駅のコインロッカーで生後間もない男児の遺体が発見されるという事件が起きました。

報道によると、この男児の母は22歳で、道外から市内に来て市内のホテルやネットカフェを転々とし、市内のホテルで出産したのちに、生まれた子を窒息させ殺害してしまったということでした。

妊娠したと分かった時から、誰にも相談できず、地元にいることもできず、札幌に来てからも妊娠している子どもをどうしようと悩んでいたことが容易に想像できます。

国の「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第18次報告)」によると、心中以外の虐待死では0歳児が65.3%と最も多く、その月齢では0か月児が50%を占めております。また、虐待死で実母が妊娠期・周産期に抱えていた問題は、妊婦健診未受診が38.8%と最も多く、次いで予期しない妊娠が28.6%で、妊娠期に適切な支援を受けることなく出産し、子どもを死亡に至らせている事例が多いと考えられるとされています。

妊娠届が未提出であるため、妊娠の事実に周囲や公的機関、医療機関に把握されず出産に至ることは、虐待死だけでなく、女性にとって大きな健康リスクに直面することにもなります。

また、女性自身の命に関わる最悪の結果を招くことも懸念されます。わが党の社会的孤立防止対策プロジェクトチームと自殺防止対策プロジェクトチームが、今年5月、政府に緊急提言の申し入れを行い、その後、10月に公表された新たな「自殺総合対策大綱」においてその内容が反映されたところですが、そこでは、予期しない妊娠などで身体的・精神的な悩みや課題を抱えた若い妊婦に対する支援を推進することとされています。

若い世代は、自ら困りごとを発信することが苦手、SOSを発信する手立てが思いつかない、支援を受けることに迷いがある傾向にあるため、支援が届けられる工夫やSNS等を活用した相談体制整備、民間団体と連携した支援は非常に大事です。

わが党の北海道議会でも、9月の第3回定例会において、同様の必要性を訴え、北海道においては、SNSの活用や夜間休日に対応可能な相談機能の一層の充実を図る補正予算が加算されたところです。

このような地域ぐるみで特定妊婦を支える体制整備や相談窓口は、市においても保健センターや民間団体による相談窓口があり、その拡充が必要であると考えますが、まずは相談先があること、一人で悩むことはないということを予期せぬ妊娠で悩む方に知っていただく体制整備は急務であると考えます。

そこで質問ですが、札幌市においては予期せぬ妊娠に対する相談窓口の周知について、どのように取り組んでいくのか伺います。

(3)妊娠・子育て家庭への伴走型相談支援と経済支援の一体的実施について

今年10月28日に閣議決定された「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」において、支援が手薄な0歳から2歳の低年齢期に焦点を当てて、妊娠時から出産子育てまで一貫した伴走型支援の充実を図るとともに、様々な育児支援サービスの利用の負担軽減を図る経済的支援を一体とする事業を創設することが示されました。

わが党が2006年に「少子社会トータルプラン」を掲げ、これまでも2009年の出産一時金の拡充や2021年の不妊治療費支援の拡充、2022年からの保険適用等に向け取り組んできており、今回の総合経済政策における伴走型支援と経済支援の一体的実施についても、わが党としてその実現を強く求めたところです。

核家族化や地域のつながりが希薄化する中で、孤立・不安感を抱く妊婦と子育て家庭に対する支援の重要性から「子育てのスタートを孤立させないための第1歩」となる支援策であり、今年度内の事業の開始と来年度以降の継続的な実施を見据えた制度設計となります。

具体的には、妊娠期に5万円、出産後5万円、計10万円分のクーポン等の支給により妊娠、出産時の関連用品の購入助成や産後ケアや家事支援サービスなどの利用者負担の軽減を図るなどがあります。

大事なことは迅速な支援策の創設により、すべての妊産婦が公的支援につながる機会を確保し、妊娠期からの相談をきっかけとして、妊娠期から出産、子育て期まで一貫して身近で相談でき、様々なニーズに即した必要な支援をいち早く受けることができることで、安心して子育てできる社会が実現されることと考えます。

そこで質問ですが、この事業の実施に当たっては、各市町村が主体になりますが、札幌市においては妊娠・子育て家庭への伴走型相談支援と経済支援についてどのように認識されているのか伺います。

答弁

(1)HPVワクチン定期接種の今後に向けての動きについて

〇子宮頸がんは20歳代、30歳代での発症の割合が他のがんに比べ高いことから、HPVワクチン接種と20歳代からの子宮がん検診を両輪とする予防活動が重要と認識。

〇HPVワクチンは、今年度から積極的接種勧奨を再開し、個別周知などを行っているところであり、引き続き、接種の検討に必要な情報をお知らせしていくところ。

〇併せて、9価ワクチンについては、今後、国における予防接種実施規則改正を経て、定期予防接種として実施されることが決定した後は、速やかに接種開始できるよう準備を進めてまいる。

〇また、ご指摘の男性へのHPVワクチン接種については、定期接種化に向けた議論が始まったところであり、今後の国の動きを注視してまいりたい。

(2)予期せぬ妊娠に対する相談窓口の周知について

〇すでに相談支援を実施している民間団体へ札幌市から呼びかけ、関係部署で組織する「妊娠SOS相談事業検討会」において、課題の共有や連携体制についてはもとより、効果的な周知についても検討しているところ。

〇今後は、ホームページやステッカー、街頭広告など、目に触れやすい形での周知を図ることで、予期せぬ妊娠に悩みを抱える方々が必要な相談窓口につながるよう支援の強化に努めてまいりたい。

(3)妊娠・子育て家庭への伴走型相談支援と経済支援の一体的実施について

〇これまでも妊娠期から出産・子育て期まで、各種相談や訪問等を行っており、引き続き周産期の家庭に寄り添い、ともに歩み続けていくことが重要と認識。

〇今後の支援の実施・運用方法等については、国からの要綱等を踏まえ、経済的な支援を速やかに開始できるよう準備を進めるとともに、伴走型の支援の充実を図り、一体的な支援を行ってまいる。