新型コロナウイルス感染症対策における市長の政治姿勢について
(1)これまでの対応の評価と今後の対策について
札幌市内における新型コロナウイルス感染症患者の発生から3か月以上が経過し、感染拡大の第1波を乗り越え、被害の大きかった第2波も収束の兆しが見える中、5月25日には緊急事態宣言の解除に至り、現在、新しい生活様式として新北海道スタイルを徹底する中、感染拡大防止に向けた、対応強化を図られているところであります。
これまで、本市は感染者の詳細情報を公開し、市民への情報提供に努めるとともに、感染症対策室を設置し、市長のリーダーシップのもと職員一丸となり対策に取り組まれて来たところです。
とりわけ、市長自ら、あらゆる媒体を活用し、市民に直接語り掛ける場面も多くつくられて来たことは評価するところです。
今回、あらためて新型コロナウイルスの発生から感染拡大の第1波、第2波の封じ込めへの経過を顧みると、当初の認識をはるかに超える感染症へと変異拡大、私たちの日常を一変させてしまうほどの脅威にまでなったものと言えます。本市においては2月に感染者が確認されて以来、これまでの感染症対策の経験を活かし、対策本部を中心に医療資源や人材を総動員し対応に当たり、今日に至ったものと考えます。この戦いは、今後も感染拡大の波をいくつか迎えて長期戦になることも覚悟する必要があります。
そこで質問ですが、市長として2月の発生以降、これまでの対応をどう評価しているのか、そしてこれまでを踏まえ、新たな感染拡大防止に向け、今後どのような対策を考えているのか、特に体制確保の観点からお伺い致します。
(2)札幌市の医療体制の在り方と市立札幌病院の役割について
①札幌市の医療提供体制の在り方
今回の感染症は、特効薬やワクチンの開発にも時間がかかることが予想されており、当面はこのウイルスといかに共存し、封じ込めていくかが重要と言われております。これまで、医療機関では、新型コロナへの対応を優先し、他の病気の診察は不急なものは、先延ばしにするなどの対応をして参りました。
しかし、いかなる疾病であれ患者の立場からすれば、一刻も早く診察や治療を受けたいと思うのは当然であり、ましてガンなど早期発見・早期治療が求められる患者の皆さんの不安は、非常に大きなものがあると考えます。
新型コロナウイルス感染症の治療に当たられている、医療機関や医療従事者のご尽力、また調整に日々昼夜を問わず従事して頂いている保健所や感染症対策室の努力には、あらためて、感謝するところでありますが、病院やそこで働く医療従事者にとって、大変な負担となっており、現場の疲弊はかなりのものとなっております。私のもとにも、多くの医療従事者から窮状を訴える声が寄せられており、市立札幌病院においても、コロナ対応に注力することで、通常の診察に支障をきたしていることから、人的体制の強化が必要と考えます。
そこで質問ですが、新型コロナウイルス感染症の収束がいまだ見通せない中、今後の第3波、第4波に備え、札幌市の医療体制の在り方をどのように考え、これからどのように整備していくのか。
②市立札幌病院の役割
また、特に市立札幌病院が果たすべき役割はどのようなものか、そしてその役割を果すための体制や機能をどのように整備していくのか。現時点における見解をお伺い致します。
(3)複合災害への備えと避難所運営について
今年に入り、新型コロナウイルスの感染拡大の猛威が世界を席捲し、私たちの日常生活を激変させる事態となりました。こうした新たな感染症の脅威が世界的に注目されるようになったのは1990年代のエボラ出血熱からと言われ、その後のサーズ、マーズと約10年に1度のペースで発生しており、感染症への危機管理体制の整備は、喫緊の課題と言えます。
国全体が新型コロナウイルスに翻弄される一方、日本海溝と千島海溝を震源域とする、巨大地震の想定も公表され、こうした地震による影響は本市も例外ではなく、複合災害への備えを確実にしていく必要があると考えます。
これまで、札幌市は、先の北海道胆振東部地震を教訓にしながら、地域防災計画の見直しを進めて参りました。これからの備えは、大規模な自然災害と同時に、今回のような大規模感染症が蔓延した場合も想定しておく必要があり、とりわけ避難所運営における感染症対策を見直すことが不可欠と考えます。
避難所における感染症対策は、避難者の健康状態の把握をはじめ、手洗い、咳エチケットの徹底のほか、十分な換気やスペース確保といった衛生環境の維持が基本となります。
これらの対応をより実効性のあるものとするために、マスクや消毒液、体温計などの衛生用品の備蓄は必要不可欠であり、地域資源活用の観点から、官民連携、協定締結を進めることも重要であります。さらには、感染症の拡大防止策を具体的に想定したマニュアルの再整備も課題であります。
そこで質問ですが、新型コロナウイルスなどの感染症まん延時に、大規模な自然災害が同時発生した場合の避難所運営について、現在の状況と今後の取り組みを伺います。
(4)高齢者施設等の感染予防対策について
厚生労働省によると、今回の感染症については、罹患しても約8割の方は軽症で経過し、治癒する例も多いことが報告されております。一方、季節性インフルエンザと比べて死亡リスクが高いことも報告されており、特に、高齢者や基礎疾患のある方は重症化するリスクが高いことも報告されております。
札幌市においても、連日感染者が発生しており、その数は減少しておりますが、複数のクラスターが発生しており、引き続き予断を許さない状況です。
また、高齢者施設・介護サービス事業所に従事する職員の方々は、感染者を発生させてはならないという緊張感の中、業務を遂行しております。
こうした中、市内の介護老人保健施設「茨戸アカシアハイツ」では大規模クラスターも発生いたしました。今後こうした事態を未然に防ぐために、高齢者に対する感染予防対策や初期対応の在り方が、特に重要と考えます。
そこで質問ですが、現在、高齢者施設等ではどのような感染予防対策を行っているのか、そして感染者が発生した場合、札幌市ではどのような対応をとっているのか、また、市内の数多くある高齢者施設等に今後どのような対策や指導・支援を行っていくのかお伺い致します。
(5)現金給付等に係るマイナンバーの利用について
緊急経済対策として、国民一人当たり10万円を給付する特別定額給付金は、目下、郵送または、オンラインによる申請の受け付けが、されております。
当初、一刻も早く給付を行うため、期待されたマイナンバーカードによるオンライン申請は、入力誤りや権限のない方による申請、重複の申請などをシステム上で防ぐ手段が構築されておらず、職員が手作業によるチェックの必要から、結果として、郵送の申請よりも給付が遅くなるという事態が、全国的に報告されております。
こうした状況から札幌市では、市長自ら、郵送申請を推奨するに至ったものと認識しております。なぜこのような事が起きたのか、早々に検証したところ、マイナンバー、すなわち12桁の個人番号そのものを事務処理に利用できなかったことが大きな要因であると考え、5月上旬、党国会議員を通じ国に提言を行ったところです。
個々人の情報が、紐づけされているマイナンバーを、適切に用いることができれば、事務処理が効率化され、より早い給付を必要とする市民の要望に応えることができると考えます。
現に最近では、現金給付に必要な口座番号の情報をあらかじめ紐づける議論も活発化しております。
そこで質問ですが、現在、国において議論されているように、有事における現金給付等を迅速化するため、当該事務処理にマイナンバーを利用することについてどのように考えるのか、お伺い致します。
(6)必要な支援と対策が確実に行き渡る情報発信について
今回の感染症は、長期に渡り、市民生活に多大な影響を与えております。市民が受けるべき支援制度としては、定額給付金はもとより、税の猶予や、介護保険サービス負担金の減免、国民健康保険料の軽減など多数ありますが、これらの制度は、適宜、段階的に決定され、市民への周知のタイミングにバラつきがあり、真に支援を必要とする人に、的確な情報が行き届かないことが懸念されます。
この問題は、先の北海道胆振東部地震においても同様でありました。市では被災者支援室を設置し、生活支援ガイド等により支援制度の周知を行って参りましたが、発災から1年が経過しても、り災証明書の存在を知らない被災者がいるという実態がありました。このことを昨年の第3回定例市議会において、我が会派が指摘したところ、市長は、各所管部局において、それぞれの被災者に対する、支援状況の情報共有が不十分で、支援制度の周知が十分でなかったとし、後に改めて広く周知を図った結果、申請件数が増加いたしました。
今回の感染症に関して、札幌市ではホームページ上で生活支援ガイド等を掲載し、生活に不安を抱える市民に対して総合的、かつ一体的な支援情報を提供しておりますが、ホームページにアクセスできない市民も多数おり、支援を必要とする市民が、適切な情報を得られる様にすることが必要と考えます。特に、初期対応が重要であり、各種支援制度を可能な限りパッケージ化して、市民に分かりやすく示すことが必要と考えます。
また、今回の大きな特徴は、徹底した感染予防と行動自粛にあり、2014年に策定された札幌市インフルエンザ等対策行動計画とは一線を画するものになりました。
なかでも、秋元市長自身が、ビデオメッセージを活用し、市民への協力を呼び掛けたり、積極的にテレビ出演を行うなどしましたが、今後は更に、広報誌での特集ページの充実や、YouTube・LINE等のSNS媒体を用いるなど、新たな方法を取り入れ、支援制度の情報提供や市民一人ひとりの行動ポイントを明確な形で広く示していくべきであると考えます。
そこで質問ですが、各種支援制度や、取るべき行動様式がより確実に市民に行き渡るよう、情報発信をしていく必要があると考えますが、今後どのように取り組んでいくのかお伺い致します。
(1)これまでの対応の評価と今後の対策について
〇この度の新型コロナウイルス感染症の流行にあっては、678人の市民が陽性患者となり、そのうち44人の方がお亡くなりになったこと(6月1日現在)に対し、心からお悔やみを申し上げる。
〇また、医療機関等の多大なるご協力をいただき、必要な医療が受けられる体制を整えることができたほか、市民の皆様には外出自粛などの要請にしっかりとご協力いただいたことに厚くお礼申し上げる。
〇そのようなご協力のもと、札幌市では、市民のための電話相談窓口の設置、PCR検査体制の拡充、宿泊療養施設の運用など、全庁での応援体制により、一定程度、感染の抑制につなげたところ。
〇新たな感染拡大の防止に向けては、感染者を早期発見するための検査体制や感染状況に応じた医療提供体制の整備、集団発生を押さえ込むためのクラスター対策が特に重要と考える。
〇こういった対策を進めるため、引き続き全庁一丸となった体制で取り組んでまいりたい。
(2)札幌市の医療体制の在り方と市立札幌病院の役割について
○1点目の札幌市の医療提供体制の在り方について
4月、5月の患者発生の急増に対応するため、医療機関の皆様に献身的なご協力をいただき、関係機関が一堂に会する医療体制対策会議において、医療機関の役割分担を行いながら、入院可能病床を段階的に増加させてきた。
○さらに、軽症患者を受け入れる宿泊療養施設として民間ホテルを活用する等、第2波への対応に全力を尽くしてきたところ。
○現在、発生患者数は減少傾向にあるが、入院患者への対応は続いており、医療従事者の皆様に大きな負担がかかっている状況に変わりはないと認識。
〇今後の新型コロナウイルス感染症に対する医療提供体制については、医療従事者に過度な負担とならないよう配慮しつつ、患者の発生状況に応じた対応ができるよう、随時、関係機関や医療機関等と情報交換を行い連携するとともに必要な支援をしていく。
○2点目の市立札幌病院の役割について
札幌市の医療提供体制の中で、特に市立札幌病院は、感染症指定医療機関として、重症患者の受入れを積極的に行うなど、中核的な役割を担う病院として位置付けたところ。
〇新型コロナウイルス感染症の治療においては、院内での感染防止を徹底する必要があり、通常より多くの医療従事者を投入せざるを得ないことから、患者の受入れ体制を維持するため、これまで、診療報酬制度の見直しなど国の支援策の拡充を求めてきたところ。
○市立札幌病院がその役割を果たすためには、今後も国の支援策などを積極的に活用して財源の確保を図るとともに、今回構築した医療機関の役割分担を円滑に機能させ、市内医療機関が一丸となって、今後起こり得る第3波に備える体制の整備に一層努めてまいりたい。
(3)複合災害への備えと避難所運営について
〇避難所の衛生対策に必要なマスク等については、現在、最大避難者数分を調達していますが、新型コロナウイルス感染症の長期化も見据えて数量や品目の更なる拡充が必要と認識。
〇このため、マスク等の数量を増強するとともに、非接触型体温計やハンドソープなども新たに備蓄することとしており、6月中には調達を完了する。
〇また、現行の避難所運営マニュアルについて、新型コロナウイルス感染症に対応する見直しも進めており、今後速やかに公表してまいりたい。
(4)高齢者施設等の感染予防対策について
〇高齢者施設等においては、厚生労働省や札幌市から発出されている通知に基づき、入居者や利用者、職員の健康観察や面会の制限など、感染予防の取組を実施している。
〇感染者が発生した場合は、医師等の職員がすみやかに訪問し、濃厚接触者への適切な対応など感染管理に関する指導・助言を行い、集団感染のおそれがある場合は職員をさらに増員して対応を行ってきた。
〇今後はさらに、感染予防と拡大防止を目的として、施設長等を対象とした研修会を開催するとともに、感染症対策の専門家を派遣し、具体的な対策について検証とアドバイスを行う。
〇また、高齢者施設等向けに、新型コロナウイルス感染症対策ガイドを作成し配布する。
〇こういった対策により、感染予防対策の一層の徹底を図っていく。
(5)現金給付等に係るマイナンバーの利用について
〇有事における現金給付等については、市民の手元に一日でも早く届くことが重要であり、そのためには、市民の申請手続きが簡素であることと行政の事務処理が効率的に行われることが必要であると認識。
〇国においては、より迅速で円滑な給付の実現に向けたマイナンバーの活用の在り方について、法改正を含めしっかりと議論を進めていただきたいと考える。
(6)必要な支援と対策が確実に行き渡る情報発信について
○新型コロナウイルスの感染拡大により、今後の生活に不安を抱える市民の方に対し、様々な支援策や感染リスクを下げる生活様式などを分かりやすく情報提供することは、重要な責務と認識。
◯各種支援等については、各機関が提供する支援制度や相談窓口を取りまとめた「生活支援ガイド」の発行や、事業者向けのワンストップ相談窓口の開設など、市民の方の不安解消に努めてきたところ。
〇また、感染拡大の防止については、市民や事業者の皆様の適切な行動へのご協力が必要であることから、北海道と連携し、「新北海道スタイル」の実践に向け、積極的に周知を図ってきたところ。
〇今後も、ホームページや広報さっぽろなど、あらゆる媒体を活用するとともに、私自身、記者会見等を通じて、分かりやすく丁寧に市民に呼び掛けてまいりたい。