人にやさしい福祉施策・教育の推進について
(1)心のバリアフリー推進に係る今後の取組について
障がいのある方や難病の方などが、地域で安心して暮らせるためには、さまざまな施設や設備のバリアフリー化はもちろんのこと、市民一人ひとりが障がいのある方に対する理解を深め、思いやりを持って手を差し伸べる「心のバリアフリー」の推進が求められます。
本市は、このたび、2020年東京オリンピックのマラソン・競歩の会場になることが決定し、さらには2030年の冬季オリンピック・パラリンピックの招致を目指していますが、各国から、また、全国から多くの方々を受け入れるに当たっての「おもてなしの心」の基本となるのは、心のバリアフリーの考え方、つまり、「異なる立場の人に手を差し伸べる」という思いやりの心です。
そこで質問ですが、心のバリアフリーの更なる推進に向けては、より多くの市民や企業に、心のバリアフリーの考え方を浸透させるような普及啓発活動が重要と考えられますが、本市で今後どのように取り組んでいくつもりなのか、伺います。
(2)複合的な問題を抱える高齢者に対する支援体制について
札幌市の65歳以上の高齢者の人数は、10月時点で53万人を超えております。
我が会派は、全世代型の社会福祉の実現を目指し、高齢者の心身の状態や生活状況と、その必要度に応じた、医療・介護・介護予防・住まい・生活支援が一体的に提供され、高齢者が住み慣れた地域で、可能な限り自立した日常生活を営むことができる地域包括ケア体制の推進に積極的に取り組んでおり、以前より様々な機会において提言してまいりました。
超高齢社会を迎え、高齢者を支える札幌市の体制整備は着実に進んでおりますが、一方で新たな課題として高齢や介護の問題に限らない、複合的な問題を抱えた高齢者も増えてきているのではないかと考えます。
厚生労働省によると、支援を必要とする人の6割は2つ以上の問題を、3割以上は、3つ以上の問題を抱えているとのことです。
つまり、高齢者の相談支援と言っても、従来の高齢者福祉だけの枠組みでは対応しきれないというのが実情です。
現在も区役所、地域包括支援センター、障がい者相談支援事業所などの関係機関の連携や地域ケア会議の開催などにより、複合的な問題であっても必要な支援につなげてきておりますが、今後のさらなる高齢化、問題の複雑化に備え、断らない、孤立させない相談支援体制を充実強化することが急務です。
そこで質問ですが、地域包括ケア体制を推進する上で、複合的な問題を抱える高齢者に対する支援策について本市の考えを伺います。
(3)有料老人ホームにおけるサービスの質の確保・向上について
平成31年3月に厚生労働省の補助事業として実施された「有料老人ホーム等に対する指導監督等に関する実態調査研究事業」の報告書によると、全国における有料老人ホームの届出施設数は、平成12年の介護保険制度施行時には約200施設であったものが、毎年約1,000施設の新規設置があり、平成29年には約13,000施設にまで増加しています。
定員数は、平成29年は約50万人、これは老人保健施設の定員数約36万人を超え、特別養護老人ホームの定員数約59万人に迫るものであり、有料老人ホームは高齢者向け住まいの中核的な事業となっています。
有料老人ホームに入居されている方は、自立している方、介護度の軽い方、重い方と幅広く、提供されるサービス内容は多様化してきております。また、保健福祉局の担当部署には、入居者やそのご家族などから、施設職員の対応、利用料金、施設の設備などに対する相談が、多い年では年間100件以上あると聞いており、これに対応する行政の役割も重要になっていると考えられます。
そこで質問ですが、有料老人ホームにおけるサービスの質の確保を図るため、札幌市ではどのような対応を行っているのか伺います。また、今後も高齢者が増え、施設数の増加が見込まれる中、どのようにサービスの質の確保・向上を図っていくのか伺います。
(4)高齢者の子育て支援参加に向けた取組について
超高齢・人口減少社会にあって、社会の安心と活力を高めていくためには、年齢や性別に関わらず全ての人が支え合える社会を構築することが必要であり、意欲と能力のある高齢者には、豊富な経験や知識を生かしながら、地域の一員として社会・経済を支える役割を担い、活躍することが求められるところです。
豊富な経験や知識を持つ高齢者による子育て支援への参加は、学童期まで続く地域の子育て世帯の見守りや、世代間交流など、地域活性化や次世代育成、経験・知識の継承という観点からも、一層期待されるものであると考えます。
そこで質問ですが、本市としてこれまで高齢者の子育て支援の参加のため、どのような取組を行ってきたのか伺います。また、高齢者の子育て支援活動への参加を更に促すため、今後、どのような取組を行っていくのか、伺います。
(5)特別支援教育を担当する教員の専門性向上について
国において学校教育法が改正され、それまでの障がいの種類や程度に応じた場において手厚い指導を行う特殊教育から、その子の一人一人の教育的ニーズに応じた特別支援教育への転換があったのが平成18年でした。
それから、10年以上が経ち、少子化が進む一方で、特別支援教育の対象者は増え続け、国として、平成20年度当時、義務教育段階の全児童生徒数1079万人に対し、特別支援教育の対象者は約23万人、割合2.13%に対し、平成30年度では、全児童生徒数989万人に対し約41万7千人、割合4.2%と10年前の2倍になっています。
これらのことを受け、国では、平成31年4月に文部科学省が障害者活躍推進プランを打ち出し、共生に向けた「学び」の質の向上プランとして、教師の特別支援教育に関する専門性を高めるための仕組みの検討を進めることを掲げています。
特別な教育的支援を必要とする子どもの障がいの状況や程度などがより一層多様化している状況から、特別支援教育を担当する教員は、これまで以上に、単に障がいを理解しているだけではなく、一人一人の障がいに応じた適切な指導方法を選択し、実践する力が求められていると考えます。
そこで質問ですが、このような状況を踏まえ、本市では特別支援教育を担当する教員の専門性の向上を図るため、現在、どのような取組を行っているのか、また、今後をどのように取り組んでいくのか伺います。
(1)心のバリアフリー推進に係る今後の取組について
○心のバリアフリー推進のためには、援助や配慮を必要とする方々への理解が深まるよう、まずは、ヘルプマークの周知啓発を、引き続き進めていくことが重要と考えている。
○さらに、より多くの市民や企業が、心のバリアフリーに関心を抱き、支えあいの大切さを、より身近なこととして感じられるよう、啓発のためのシンボルマークを公募し、当事者も含めた選考委員会で選定したところ。
○今後はシンボルマークの周知を図りつつ、新たに、市民や企業向け研修の実施、障がいのある方への配慮方法などをまとめた子ども向けガイドブックの配布などにも取り組み、心のバリアフリー推進を図ってまいりたい。
(2)複合的な問題を抱える高齢者に対する支援体制について
○区役所や地域包括支援センターが高齢者から受ける相談は、高齢福祉や介護の問題だけにとどまらない課題も多く、それぞれ関係部署と連携し、対応している状況。
○今回、アクションプラン2019案において、複数部署を横断的に調整し、複合的な問題を抱える世帯への支援の拠点となる、基幹型地域包括支援センターを各区役所に設置することとした。
〇これにより、さらなる連携強化を図り、様々な困りごとを抱える高齢者を孤立させることなく必要な支援につなげてまいりたい。
(3)有料老人ホームにおけるサービスの質の確保・向上について
〇札幌市においては、有料老人ホームの適正な運営、サービスの質の確保、入居者保護を図ることを目的とし、開設後1年以内、その後は介護事業所と同様に6年に1回の頻度で実地検査を実施している。この他にも集団指導の実施や定期報告の提出を受けている。
〇また、入居者やその家族などから、入居している有料老人ホームに対する相談があった場合は、速やかに事業所に確認し、必要に応じて指導しているところ。
〇今後においても、国の指導指針に従い、これまでの取組を継続しつつ、集団指導の内容について適宜検討を加えながら有料老人ホームのサービスの質の確保・向上に努めてまいりたい。
(4)高齢者の子育て支援参加に向けた取組について
〇札幌市では、地域で子育て家庭を支える人材の確保に向けて、子育てボランティアの育成事業に取り組んでおり、高齢者にも参加していただいているところ。
〇ボランティアの登録に当たっては、子育て支援に関する知識や技術を身に付けるための講習会等を実施しており、登録後は、希望する活動内容に沿った活動先を紹介するなどの支援も行っている。
〇今後も、子育てボランティアについて、興味や関心、意欲を高めるような事例紹介など、わかりやすい情報を、高齢者に効果的に届けるような手法について検討し、高齢者の参加をさらに進めてまいりたい。
(5)特別支援教育を担当する教員の専門性向上について
〇札幌市においても、特別な教育的支援を必要とする児童生徒が増加
するとともに、障がいの状況や程度が多様化しており、担当する教員の専門性の向上を図ることは非常に重要であると認識。
○これまで、障がいに応じた専門研修の開催や、特別支援教育に係る先進的な実践事例等を定期的に研究、協議する機会を設けるなど、教員の資質向上に努めてきたところ。
〇今後は、教員自らがより一層主体的に実践的指導力を高められるよう、特別支援教育を担当する教員の育成指標を年度内に策定し、経験年数に応じて身に付けるべき資質等を明確にすることとしている。
〇併せて、大学や病院等の関係機関と連携するなどして、障がいの多様化に応じた研修内容の充実を図り、特別支援教育を担当する教員の専門性のさらなる向上に努めて参りたい。